漢方薬でアンチエイジング!?十全大補湯などの「補剤」のチカラ

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東洋医学体がだるい全身

漢方薬は、その役割によっていくつかのグループに分けることができます。なかでも注目されているのが、「補剤(ほざい)」と呼ばれる漢方薬の仲間です。これは、健康な体に必要な気力や血液、エネルギーなどをその名のとおり“補ってくれる”力を持っています。


漢方薬「補剤」のチカラ タイトルイメージ画像

「三大補剤」とは

代表的な3つの補剤と主な使い分けは次のとおり

  • 「補中益気湯」・・・疲労けん怠+虚脱状態、だるい、食欲不振 など
  • 「十全大補湯」・・・疲労けん怠+貧血、産後の体調不良 など
  • 「人参養栄湯」・・・疲労けん怠+呼吸器のダメージ、息苦しさ など

代表的な補剤3つの説明画像

補剤が免疫を左右する!

いろいろな場面で使われる「補剤」ですが、いま、その効果の詳しいメカニズムの研究が進んでいます。

金沢大学附属病院・臨床教授の小川恵子さんが調べたのは、「十全大補湯」の免疫に対する効果です。

実験では、「十全大補湯」を4週間、倦怠感で悩む患者に投与。


患者に補剤を投与している実験イメージ イラスト

体内の悪い細胞を攻撃する免疫細胞の一種、NK細胞を調べました。

免疫細胞の表面には、その活性度合いを示す目印があります。

補剤を服用した患者は、その目印が増加。つまり、補剤をのむと、免疫細胞が活性化されることが示されたのです。

さらに、補剤の持つ力はそれだけではありません。

実は、補剤を服用した患者は、免疫細胞の「抑制」を示す目印も増えていました。


免疫細胞の「抑制」を示す目印も増えた イラスト

免疫は働きすぎると、身体の他の細胞を攻撃してしまいます。

たとえば、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー性の疾患などは、免疫が働きすぎるために症状が起きています。「補剤」は、免疫細胞の機能を調整する効果があるのです。

アンチエイジングに効果も!?

漢方薬の「補剤」が持つ老化への効果を研究しているのは、北里大学・特任教授の岡田典弘さんです。

岡田さんの専門は、分子生物学。生物の体内にある遺伝子などを調べることで、その行動や進化を解き明かす学問です。これまで、カバやクジラ、シーラカンスなどの進化の謎を次々と解き明かしてきました。

そんな岡田さんが、いま大注目しているのが、補剤が持つ老化への効果です。

「人類の英知が、延々として溜め込んだ知識として漢方薬があるのだとすれば。それが一体どういうメカニズムで効くのかというのを、分子生物学的にきちんと明らかにするというのは、非常にエキサイティングな分野にこれからなるのではないかと思います」(岡田さん)

用意したのは、通常のマウスと老化の速度が速い特別なマウス。

どちらも見た目はほとんど変わりませんが、体内の遺伝子を調べると、わずかな違いが生じています。

通常のマウスは、遺伝子のもつ情報が正しく、次々と読み取られていくのに対し、老化速度の速いマウスでは、遺伝子の情報を読み取るときにエラーが発生。これが積み重なることで、細胞がダメージを受け、老化が早まってしまうと考えられます。

では、この老化速度の速いマウスに「補剤」を与えると、どうなるのか。

増加していたエラーの数が、なんと通常のマウスと同じ程度まで回復していました。


エラーの頻度 比較したグラフ

つまり、漢方薬が遺伝子のレベルで、老化の進行を抑える可能性が初めて明らかになったのです。

補剤の服用には、注意も必要

免疫への効果や、アンチエイジングと期待の高まる漢方薬の「補剤」。

でも、誰でも同じように効果があるわけではなく、それぞれの症状に適した漢方薬でなければ、副作用のリスクもあります。

まずは、主治医やかかりつけ医に相談し、必要であれば、大学病院や専門医(※1)を紹介してもらいましょう。

※1 日本東洋医学会が「漢方専門医」を任命しています。ホームページでも検索できます。

この記事は以下の番組から作成しています。

東洋医学

東洋医学ホントのチカラ「今こそ元気に!健康長寿SP」

2021年2月27日(土)午後7:30~[総合]