感染が広がる新型コロナウイルス。基礎疾患がある人がウイルスに感染して肺炎を起こすと、重症化するリスクが高いことがわかってきました。
中国のデータでは、ウイルスに感染して集中治療室に入った人のうち、4人に1人が心臓病をもっていたという報告があります。
心臓病のみなさんへ専門医からのメッセージです。
心臓病の方が重症化しやすい理由
心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。
このポンプを動かすエネルギーを運ぶのが冠動脈。心臓に酸素や栄養を送る血管ですが、この血管が狭くなると「狭心症」、さらに詰まってしまうと「心筋梗塞」になります。
また、心臓が拡大して働きが悪くなってしまう「拡張型心筋症」という病気もあります。
これらの病気で心臓の働きが低下すると「心不全」と呼ばれる状態になります。

新型コロナウイルスに感染して肺炎を起こすと、肺で酸素がうまく取り込めないため、血液中の酸素濃度が低下します。心臓にはいつも以上に負担がかかるので、心臓の疾患がある場合はさらに苦しくなり、心不全が悪化してしまうのです。
心臓と肺は密接に関係しているため、心臓が悪くなると、肺炎もさらに悪くなる……というように重症化してしまいます。
息苦しさやせき 心不全に似た感染症の症状
心不全の方は、心臓のポンプ機能が低下するため、全身のいろいろな臓器にうっ血の症状が出ます。うっ血の症状として、息切れや呼吸困難といった息苦しさがあり、場合によってはせきが出ることがあります。
新型コロナウイルス感染症の息苦しさやせきの症状と、こうした心不全の症状が似ているため、「感染した可能性」を見過ごしてしまう危険もあります。
熱を伴うときはもちろんのこと、いつもと違うせき、息苦しさを少しでも感じたら、診てもらっている先生にすぐに「電話で相談」をしてください。その上で、新型コロナウイルス感染が疑われる場合は自治体の相談窓口へ連絡しましょう。
心臓病を持っている患者さんのご家族や周囲の方々も、患者さんがせきや息苦しさを訴えたときには、早めに普段診てもらっている医師へ相談するようにしてください。

ウイルスが肺炎以外の症状を起こすことも
新型ウイルスは、多くの場合、鼻やのど、肺で増殖しますが、心臓の筋肉の細胞にも直接感染することが報告されています。
心臓の疾患がなく元気な人が新型ウイルスに感染し、肺炎は起こしていないのに「急性心筋炎」という心臓の筋肉の炎症を起こして、心不全になったという報告もあります。
心臓病の方へ 人一倍予防を徹底することが大切
心臓病の方、また特に心不全のある方は、マスク着用と手洗い、アルコール消毒といった一般的な衛生対策をしっかり行うようにしましょう。不要不急の外出を避けることや、人混みを避けるなど、人一倍、予防を徹底することが大切です。また、心臓病の治療もしっかりと継続して行い、心臓の状態を維持していくことも必要です。
外出の自粛などで、体を動かす機会が減るかもしれませんが、心不全の状態に見合った適度な運動をすることも大切です。運動不足だったり、生活リズムが変わったりすると、血圧が変化したり、体調が崩れやすくなりますので注意しましょう。
新型コロナウイルスの予防に効果的な正しい手洗い方法医師からのメッセ―ジ
心臓に病気を持っている方は、健康な方以上に、新型コロナウイルスの感染に注意する必要のあることが、おわかりになったと思います。
しかし、しっかりと衛生対策を実践していただければ、感染を予防することができます。
もし心臓病を持っている方が感染したとしても、私たち、心臓病の専門家が全力を挙げて治療に当たりますのでご安心ください。
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