今年73歳になるAさん。7年前に仕事を退職して忙しい日常から解放され、悠々自適に暮らしていました。ところが、ある日突然、右耳が聞こえなくなりました。実はAさんは、約30年前にも突然耳が聞こえなくなる「突発性難聴」を経験したことがありました。
「これは、また突発性難聴になったんだろう」と思い、すぐに近所の耳鼻科を受診。神経の働きを改善する薬などで治療を開始しました。
【患者体験談】メニエール病を空気圧で治療!?中耳加圧療法とは
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メニエール病が薬で治らなかったとき -私のチョイス-
突然、片方の耳が聞こえなくなった!
めまいまで繰り返すように
かつての経験から、1~2週間もすれば良くなるだろうと楽観視していたAさん。しかし、耳の聞こえはなかなか元に戻らず、さらに、めまい発作まで起こすようになったのです。グルグルと時計回りに周囲が回っているように見える回転性のめまいでした。
めまいは、最初のうちは1か月に1回程度でしたが、徐々に頻度が増し、2年後には1週間に1回はめまいが起きるようになっていきました。また、めまいが続く時間は最低でも1日、長い時には3日間も続くようになりました。ひどいときには嘔吐することもあり、いつ発作が起こるかも分からないため、当時は外出も控えていたといいます。
診断は「メニエール病」
ひどいめまいに悩まされ続けたAさん。大学病院を紹介してもらい、受診しました。診断の結果は「メニエール病」でした。メニエール病はストレスによって引き起こされることが多いため、生活習慣の改善に取り組むとともに、めまい発作を抑える薬による治療を開始しました。しかし、治療開始から4か月が経っても症状は改善しませんでした。
メニエール病の特徴メニエール病の治療「中耳加圧療法」とは?
そこでAさんが医師から勧められたのが「中耳加圧療法」でした。中耳加圧療法とは、チューブの先から出る空気の圧力で耳に刺激を与えて症状を改善するものです。空気圧の強さは医師が設定します。専用の機器をレンタルして自宅で朝晩2回、1回3分間治療します。この中耳加圧療法は2018年から保険適用になりました。
治療を続けること5か月、Aさんのめまい発作は、ほぼ起こらなくなりました。
なぜ、中耳加圧療法は効果があるのか?正確なメカニズムはわかっていませんが、メニエール病の原因となるリンパ液の流れの異常を改善する働きがあるのではないかと考えられています。
耳の奥にある平衡感覚や聴力をつかさどる内耳はリンパ液で満たされています。このリンパ液は少しずつ補給される一方、余分なリンパ液はリンパ管を通って排出されるため、通常はリンパ液の量は一定に保たれています。ところが、このリンパ液の流れが滞り、大量のリンパ液がたまってしまうと、内耳を圧迫し、めまいや難聴などの症状を引き起こします。これがメニエール病です。
中耳加圧療法では、空気圧による刺激がリンパ管に伝わり、その結果、リンパ液の流れが良くなって余分なリンパ液が排出されるようになるのではないかと考えられています。
目指すは気象予報士
中耳加圧療法によってめまい発作が治まったAさん。安心して外出もできるようになり、現在、週に2回、聴講生として大学に通っています。目標は気象予報士の資格をとることですが、なにより若い学生たちと一緒に勉強するのが楽しいと言います。
「何かやっていれば頭も活性化していいんじゃないかなと思って始めました」