詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年1月 号に掲載されています。

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健康診断で「尿酸値が高い」と指摘されたことはありませんか?尿酸値が高いだけなら特に症状はありません。しかし、そのままの状態が続くと、ある日突然、激しい痛みを伴う「痛風発作」が起こります。痛風治療のために医療機関を受診している人は年々増加しており、男性では100万人を超えています。
尿酸はプリン体が代謝され作られます。プリン体はビールに多く含まれていますが、肉・魚・野菜などほとんどの食品に含まれています。こうした食べ物由来のプリン体は全体の10~15%です。また、プリン体は私たちの体を構成する細胞の材料です。古い細胞が壊されて、新しい細胞になる新陳代謝の過程でプリン体は使われます。
さらにプリン体は筋肉が動いたり、脳が活動したりするためのエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)にも含まれています。このATPがエネルギーとして使われる過程でプリン体は代謝されるのです。このような身体活動で使われるプリン体は全体の85~90%です。尿酸値が高い場合には食生活の見直しも重要ですが、生活習慣全体を改善しなくてはいけません。
尿酸値の上昇には性別や体質も関係しています。痛風を発症するのはほとんどが男性。女性に痛風が少ないのは女性ホルモンのひとつ、エストロゲンの働きによって腎臓から排せつされる尿酸の量が増えるためです。
また、腎臓から尿として尿酸を排せつする力が弱い人もいます。血縁者に痛風の人がいる場合、尿酸を排せつする力が弱い体質があったり、食生活など生活習慣が似ているので尿酸値が上がりやすくなります。アルコールはそれ自体に尿酸が肝臓で作られるのを促進し、腎臓からの排せつも抑制します。またアルコールの利尿作用により体内の水分が減少するため、尿酸値が上がりやすくなります。プリン体ゼロや低プリン体のビールやプリン体をあまり含まない蒸留酒(焼酎・ウイスキーなど)でも注意が必要です。
ジュースや清涼飲料水には果糖が多く含まれています。果糖には尿酸値を上げる作用があります。肉や魚にはプリン体が多く含まれています。とくに内臓には多くのプリン体が含まれています。肥満によって内臓脂肪が増えると肝臓で尿酸がたくさん作られるようになります。また、肥満があると血糖値を下げるインスリンというホルモンが大量に分泌されるようになりますが、そのインスリンは尿酸の排せつを阻害するため尿酸値が上がりやすくなります。さらに肥満の原因である食べ過ぎ・運動不足・ストレスなども尿酸値の上昇に関係します。
また、薬の中には血液中の尿酸を増やす作用を持つものがあります。高血圧の治療薬であるループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬は尿酸の排せつを妨げます。また、血液を固まりにくくして血栓ができるのを防ぐアスピリン系の薬は尿酸値を上昇させます。さらに、尿酸は腎臓から排せつされるので何らかの病気が原因で腎機能が低下すると尿酸値が上昇します。
10項目中5つ以上当てはまると痛風のリスクが高い!セルフチェックはこちら血糖値が高い状態が続くと、血液中に溶けきれなくなった尿酸が結晶化して関節の軟骨や滑膜などに付着してたまっていきます。関節で結晶化した尿酸はある日突然、剥がれ落ちます。免疫細胞である白血球は、剥がれ落ちた尿酸の結晶を異物と見なし攻撃します。このとき、白血球が攻撃のため放出する炎症物質によって、激しい痛みや腫れが起きるのです。
痛風発作が起きた時には、できるだけ早く薬を使って痛みを抑えることが大切です。基本的には非ステロイド系抗炎症薬を服用します。腎機能障害や胃潰瘍などがあって、非ステロイド系抗炎症薬が使用できない場合や非ステロイド系抗炎症薬でも十分に効果が得られない場合は、ステロイド薬を服用します。痛風発作が起こる前の「足の指がピリピリする」「ムズムズする」などの前触れに気付いたらコルヒチンの服用が有効です。コルヒチンには、痛風発作を起こす白血球の働きを阻害して、痛風発作の本格化を防ぐことができます。
痛風発作の経過や起こりやすい場所痛風発作の痛みは数日から2週間程度で治まります。痛みが治まったからといって治療せずにいると、半年から1年後に再び痛風発作を起こします。徐々に痛風発作が起こる間隔が短くなって頻度も増え、痛みや腫れも長引くようになります。そして、痛風結節や腎障害・尿路結石などの合併症を起こすリスクも高くなるのです。
痛風結節とは関節周辺や皮膚の下に尿酸の結晶が沈着して、こぶのように盛り上がってくることをいいます。この痛風結節は徐々に大きくなり、関節が変形したり、骨が破壊されることもあります。また、尿酸は尿として排出されるため、腎臓や膀胱(ぼうこう)、尿管などに集まります。そのため腎障害や尿路結石につながります。
高尿酸血症・痛風がある人はメタボリックシンドロームに陥りやすく、高血圧や糖尿病、脂質異常症を併発している人が多くいます。これらの生活習慣病によって動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などの命にかかわる病気を発症する危険が高くなります。
痛風の治療では尿酸値を下げることが重要です。尿酸値を下げる薬には、体内で尿酸が作られにくくなる(尿酸生成抑制薬)、アロプリノール・フェブキソスタッドなどがあります。また、尿酸を体外に出しやすくなる(尿酸排せつ促進薬)、ベンズブロマロン・プロベネシドなどがあります。2020年からは新たに尿酸再吸収阻害薬のドチヌラドも使われるようになりました。
尿酸をコントロールする治療は長期間にわたります。処方された薬を適切に使用するとともに根気よく生活改善を続けることが大事です。
食生活では、栄養バランスのとれた食事を1日3回規則正しくとるようにします。そして、肥満につながる早食いやまとめ食いは避けます。また、アルコールは控えめにして、つまみにも気をつけるようにします。たとえば、枝豆。豆類には痛風発作を起こしにくくする作用があります。乳製品やコーヒーには尿酸の排せつを促して、尿酸値を下げる作用もあります。自分の好みや生活習慣に合った運動を習慣化すること、そして、こまめな水分補給で尿の量を増やして、尿酸の排せつを促すことも大事です。
注意したい食べ物やおすすめの調理法詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年1月 号に掲載されています。