腎臓を守るおいしい減塩料理のコツ 動脈硬化を予防して健康長寿へ

更新日

食の起源(NHKスペシャル)食で健康づくり

人間が生きるために必要な最低限の塩の量は1日にわずか1g~3gでした。(前記事参照)
それなのに私たち日本人は平均10gもの量を毎日食べ続けています。そんな生活を続けていると、"寿命を司る臓器"ともいわれる「腎臓」に思わぬダメージを与えてしまうことが最新研究から明らかになってきました。健康長寿を目指す人にぜひ試してほしい、減塩料理のとっておきのコツもご紹介します!

塩分とりすぎになるとわかっていても・・・
塩分とりすぎになるとわかっていても・・・

寿命を司る臓器"腎臓"が大ピンチ!

腎臓の大切な働きは尿を作ること。血液の中から老廃物や、余分な成分をこしとって、尿の中に排出してくれます。私たちが食事でとりすぎた塩分も、腎臓が必死にがんばってくれるおかげで尿として体の外に捨てられています。ところが、平均寿命が80歳を超えた今、腎臓がその大きな負担にたえきれなくなっているんです。

腎臓は、40歳を過ぎると小さくなっていく
腎臓は、40歳を過ぎると小さくなっていく

Denic A, Glassok RJ, Rule AD
Adv. Chronic Kidney Dis. 2016

上のグラフは、年齢ごとの腎臓の大きさを調べたデータです。10代のころを100とすると、20~30代まではほぼ同じ大きさなのに、40代から腎臓が次第に小さくなっていくことがわかります。そして60代以上になると、10代の頃よりも15%も小さくなってしまいます。腎臓に一体なにが起きているのでしょうか?

30代の腎臓 きれいなソラマメ型
30代の腎臓 きれいなソラマメ型
80代の腎臓 表面がデコボコしている
80代の腎臓 表面がデコボコしている

データ提供 京都大学 磯田裕義 特定教授

CTスキャンで撮影された腎臓の画像を比較してみると、若い頃の腎臓はきれいなソラマメのような形をしています。一方、80代の腎臓を見てみると、表面がデコボコになっている様子がわかります。腎臓の表面付近には血液から老廃物をこしとるための毛細血管がたくさん集まっています。ところが、長年にわたり大量の塩分や老廃物をこしとり続けた結果、大切な毛細血管が動脈硬化を起こしてしまったのです。

たった1.5g!減塩なのに"しょっぱい"料理

血液の成分をコントロールしている腎臓の機能が弱まると、全身の臓器に悪影響がおよび、最悪の場合、多臓器不全で命を落とすこともあります。人工透析を受ける事になれば、不自由な生活を余儀なくされます。

人生100年時代を迎える中、健康で長生きするためには腎臓の機能を守っていくことが大切。そのために是非とりくみたいのが、若い頃からの"減塩"です。でも薄味をガマンする必要はありません。ちょっとしたコツで、塩を減らしてもちゃんとおいしい料理を作ることができるんです。シリーズ「食の起源」のスタジオで出演者にも好評だった減塩料理のヒミツを大公開しちゃいます。

番組でご紹介したのはこちらの3品

番組でご紹介したのはこちらの3品
・豚汁
・カレイの煮付け
・小松菜のおひたし

3品合計で、塩分の量は食塩相当でおよそ1.5g。かなり塩分を控えていますが、満足できるレベルの塩味を感じられるように色々な工夫をこらしました。これらの「減塩料理」は、NHK総合テレビで毎週水曜日に放送している「ガッテン!」でご紹介したワザを活用して作ったものです。

豚汁

ポイントは「干しシイタケの戻し汁をダシとして使う」こと。干しシイタケに含まれる"グアニル酸"といううまみ成分を増やすことで、少ない塩分でもおいしく感じられます。大切なコツは、干しシイタケの戻し方。常温ではなく冷蔵庫で冷やしながら水戻しすると、"グアニル酸"たっぷりになり、うまみが格段にアップします。豚汁のレシピは普段ご家庭で作られているもので大丈夫。その際に味噌の量を1~2割程度減らしてみてください。

カレイの煮付け

カレイの煮付け 減塩のポイント

ポイントは「煮すぎない」こと。サッと短時間煮ることで、魚の身の内部まで塩分をしみこませず、表面にだけ塩味をつけます。舌に触れやすい身の表面に集中的に味を付けることで、少ない塩分でも十分濃い味に感じられます。

小松菜のおひたし

小松菜のおひたし

ポイントは「ゆですぎない」こと。沸騰したお湯で15秒ゆでたら、バットにあげて余熱で火を通します。こうすることで小松菜の香りやうまみを逃すことがありません。しょうゆ無しでもおいしくいただけますが、もし物足りない方は「スプレーしょうゆ」がオススメです。1プッシュで出るしょうゆは食塩相当でおよそ0.015gの塩分ですが、まんべんなく表面に塩味がつくことと、しょうゆの香りが立ちやすくなることで、満足感が高まります。

この記事は以下の番組から作成しています

  • NHKスペシャル 放送
    食の起源 第2集「塩」 人類をとりこにする“本当の理由”