詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年12月 号に掲載されています。

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家族性高コレステロール血症という病気があります。悪玉LDLコレステロールの値が生まれつき非常に高くなります。患者の方にお話を聞きました。大阪府にお住まいの栗山幸生さんです。
栗山さんは活発な青年時代を送っていましたが、20歳のころにはもうコレステロールの値が高かったと言います。勤め先の健康診断では総コレステロールが500mg/dL程度。悪玉LDLコレステロールでは300~400mg/dLに当たります。脂質異常症の診断基準は140mg/dL以上ですから相当高い値です。しかし栗山さんは重大なことだとは思いませんでした。「どこにも自覚症状というのはありませんでしたから」と振り返っています。
ところが40代の初めごろ、通勤で駅の階段を上がったときに心臓がぎゅーっと締めつけられるように感じました。病院に行くと狭心症と診断されました。
その後入院しましたが、「同じ病室の人は年をとった人ばかり。発症するのが若すぎるんじゃないか」と思ったそうです。
家族性高コレステロール血症の人は、中高年で悪玉が高くなった人とは違い、生まれたときからずっと血管が悪玉LDLコレステロールの高い状態にさらされます。そのため治療しないでいると、男性は30~50歳、女性は50~70歳で心筋梗塞や狭心症を発症することが多くなるのです。
なお、家族性高コレステロール血症の大半のケースでは、両親のどちらかがこの病気だと、子どもは2人に1人の確率でこの病気を発症します。栗山さんの場合、お父さんが50代後半で心臓病の発作を起こして亡くなっています。ご兄弟にも狭心症や心筋梗塞を発症した方がいます。
「家族性高コレステロール血症による狭心症・心筋梗塞の発症率」についてはこちらしかし家族性高コレステロール血症はほとんど知られていない病気です。栗山さんも自分がこの病気だと知ったのは、狭心症を起こして10年以上もたってからでした。家族性高コレステロール血症の人が100人いても、正しく診断されているのはたった1人という報告もあります。
この病気が疑われるのは次の3つの場合です。
これらに思い当たる人は、脂質異常症などに詳しい医療機関を受診することがすすめられます。家族性高コレステロール血症を早く発見して早く治療を開始すれば、心筋梗塞や狭心症をかなり食い止められます。
栗山さんは、悪玉LDLコレステロールを下げる複数の薬をのんでいます。新しく登場したPCSK9阻害薬という注射も受けています。
生活習慣にも注意し「たばこはやめました。肉はなるべく抑えています。卵は1日1個までです」と言います。
さらに栗山さんは、LDLアフェレシスという特別な治療を2週に1回通院して受けています。器械に血液を循環させLDLを取り除くもので、透析と同じような治療です。ただし、LDLアフェレシスは薬だけでは悪玉の値が十分下がらない場合や動脈硬化のリスクが特に高い場合に行うもので、家族性高コレステロール血症の人の多くは薬だけで治療しています。
家族性高コレステロール血症の患者会があります。「難治性家族性高コレステロール血症患者会」です。比較的重い家族性高コレステロール血症の方やその家族の方が集っています。専門医の支援を受けながら、情報交換をしたり、病気に関する啓蒙や診療体制の整備を目標にした活動を行ったりしています。
現在栗山さんがこの会の代表を務めています。かつて栗山さん自身も、この会を通じて自分の病気に関する理解が深まっていったと話しています。
詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年12月 号に掲載されています。