Aさん(男性・83歳)の体に異変が起きたのは今年4月。自宅でのんびりしていた時、突然、左脇腹を激痛が襲いました。
「少し大きめな針を刺すような感じのシャープな痛みです。長い時間は続かない、断続的に何回かくるような。」
痛みはその日いっぱい続きましたが、翌日には治まりました。
しかし2週間後。Aさんがトイレに行くと、異様な色の尿が出たのです。血尿でした。
「ほうじ茶の濁った色でした。あれ?どうしたんだろうと、びっくりしました。」
さらに、下腹部にも違和感がありました。
「恥骨に近い位置が非常に重くなるというか。痛みという表現とは違い、全体がしぼられているような感じでした。」
その後も血尿や痛みは、たびたびありましたが、毎回、しばらく時間が経つと治まっていたので、Aさんはそのまま放置していました。
しかし、初めての血尿から2か月後、今度は排尿時に激痛が走りました。
「排尿しようとすると、さらに下腹部周辺にどうしようもない痛みが来ました。背伸びして逃げたくなるような痛み。普通じゃない。もう我慢も限界でした。」
その日は休日でしたが、いてもたってもいられなくなり、救急外来へ駆け込みました。そして、CT検査を受けたところ、激痛の正体がわかったのです。
それは石。「尿路結石」が痛みの原因でした。
「尿路」とは尿をつくる腎臓から尿管、ぼうこう、尿道までの尿の通り道のことです。「尿路結石」は、腎臓で尿の成分が結晶化して結石ができ、それが尿路のどこかにとどまっている状態です。
Aさんの場合、結石が詰まっていたのは尿管でした。そのため尿が流れにくくなり、腎臓が腫れ上がっていました。
そのために、脇腹に激しい痛みが起きていたのです。尿管は平滑筋という筋肉でできた管です。これが縮むことで尿を上から下へ運ぶのですが、中に結石が詰まっていると、縮んだとき尿管に引っかかって痛みます。そのときに結石が尿管の粘膜を傷つけると血尿が出るのです。
10ミリ以上の大きい石の場合、尿によって自然に体の外に出すのは難しいため、衝撃波などで石を小さく砕いて出す方法が検討されます。
ところがAさんの場合、尿管に詰まった石は、それほど大きくないことがわかりました。そのため、痛みを座薬で抑えながら、石を出しやすくするため大量の水を飲み、結石が出てくるのを待ちました。
すると...翌日、見事、尿とともに結石が排出されたのです。
「石が出た感じはまったくわかりませんでした。用便が終わって便器の蓋をしようと思ったら、何か沈んでいるから、あれ?と思って」
Aさんを苦しめていたのは、大きさ5ミリほどの石でした。
「石が出た時点でもうスッキリしていました。嘘みたいに症状が消えていました。痛みも無くなり、排尿も正常になりました。なるほどなと、すべて納得しました。」
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