進歩したC型・B型肝炎の治療と肝炎ウイルス検査の受け方

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ウイルス性肝炎C型肝炎B型肝炎肝がん・肝臓がん肝臓

多くの人は感染に気づいていない

肝炎を引き起こすウイルスには、主に「C型肝炎ウイルス」「B型肝炎ウイルス」があります。国内では、この2つのウイルスに感染している人が300~400万人いると考えられていますが、その多くが感染に気づいておらず、治療を受けていません。

慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん

ウイルスが原因で肝炎を発症し、「慢性肝炎」へと進行すると、やがて肝臓が硬くなって機能が大きく低下する「肝硬変」「肝臓がん」に進むことがあります。肝臓がんの約8割が、C型肝炎とB型肝炎によるものです。

近年、C型肝炎・B型肝炎ともに治療法が大きく進歩しており、効果的な治療が可能になっています。早期に発見し、治療に取り組むことが大切です。

完治が可能になった「C型肝炎」

完治が可能になった「C型肝炎」

C型肝炎の治療は従来、注射薬のインターフェロンが中心でしたが、現在はより効果の高いのみ薬の「抗ウイルス薬」が中心になっています。抗ウイルス薬は、ウイルスに直接作用してウイルスの増殖を抑える薬で、2種類を併用します。治療期間は抗ウイルス薬の種類によって異なりますが、最短で8週間、最長で24週間です。抗ウイルス薬を使うと、95%以上の患者さんで、ウイルスを完全に排除できます。

進行した肝硬変でも使える薬が登場

以前は、肝硬変が進行した患者さんは抗ウイルス薬を使うことができませんでしたが、2019年に「ソホスブビル/ベルパタスビル」という薬が登場し、C型肝炎のほぼすべての患者さんが抗ウイルス薬を使えるようになりました。

薬が効かない場合「耐性ウイルス」を疑う

抗ウイルス薬による治療を行っても完治しない場合、多くは、薬の効きにくい「耐性ウイルス」が原因です。

薬が効きにくい場合、耐性ウイルスが考えられる

抗ウイルス薬を3か月間使い続けても効果が現れない場合は、耐性ウイルスの存在が疑われます。その場合、ウイルスのタイプや、耐性ウイルスの有無を調べる「ウイルス遺伝子検査」を受けることが重要です。ウイルス遺伝子検査は、各都道府県にある「肝疾患診療連携拠点病院」で受けることができます。

ウイルスのタイプに合わない薬を使っていた場合

C型肝炎ウイルスには1b型、2a型などのタイプがあります。ウイルス遺伝子検査の結果、使っている抗ウイルス薬がウイルスのタイプに合っていなかった場合は、タイプに合う薬に変更して治療を続けます。

ウイルスのタイプに合う薬を使っていた場合

ウイルスのタイプに合う薬を使っていても、薬をのみ忘れるなど、適切に使っていないと耐性ウイルスが現れやすくなります。耐性ウイルスができると、その薬では効果が得られなくなります。ウイルス遺伝子検査の結果、耐性ウイルスが判明した場合は、タイプに合う薬の中から別の種類の薬に変更して治療を続けます。

「B型肝炎」の治療

B型肝炎ウイルスに対する治療

B型肝炎ウイルスは、ウイルスを完全に排除することが難しいため、薬によりウイルスの増殖を抑えます。それによって、肝臓の状態を維持して、肝硬変や肝臓がんに進行するのを防ぐことが治療の目的になります。主な治療法は「核酸アナログ」「インターフェロン」の2つです。

のみ薬の「核酸アナログ」

抗ウイルス薬の一種である核酸アナログを服用します。使っている患者さんのおよそ9割程度でウイルスの量が減少し、肝機能が改善します。ただし、長期間(10年以上)にわたってのみ続けることが必要で、自己判断で薬をやめるとウイルスが再び増殖してしまいます。必ず医師の指示を守って適切に服用するようにします。

副作用の心配が大きく減った 新しい核酸アナログ

副作用の心配が大きく減った 新しい核酸アナログ

近年、高齢の患者さんを中心に、核酸アナログを長期にわたってのんでいる人に、腎機能の低下や骨密度の低下などの副作用がみられるようになってきました。そこで薬の開発が進められ、2017年に新しい核酸アナログ「テノホビル・アラフェナミド」が登場しました。

この薬は、従来の核酸アナログと比べて、腎機能を表すe-GFRの値の低下が平均で1/4に、骨密度の低下が平均で1/3に抑えられることが2019年に明らかになりました。新たに治療を始める人にとっては、副作用の心配が大きく軽減されました。

また、従来の核酸アナログを使っている場合は、腎機能と骨密度を調べ、低下がみられるようであれば、新しい薬への切り替えが検討されます。

注射薬の「インターフェロン」

インターフェロンは、週1回、通院での注射を48週間続けます。インターフェロンの効果が現れる患者さんの割合は、全体の20~40%と核酸アナログほど多くはありませんが、効果があった患者さんのうち30~40%は薬をやめることができます。ただし、ウイルスを完全に排除できたわけではないので、その後も半年に1回程度、定期検査を受けることが必要です。

インターフェロンは、頭痛、発熱、かゆみ、発疹、吐き気、脱毛などの副作用が現れることが多くあります。

「核酸アナログ」と「インターフェロン」 治療の選び方

B型肝炎の治療は、強い副作用を避けたい場合や週1回の通院が難しい場合は、核酸アナログを使うことが多いです。そうでない場合は、たとえば、インターフェロンによる治療を48週間続け、効果があれば治療を終わらせられる可能性があります。治療を終わらせられなかった場合でも、そこから核酸アナログに切り替えて治療を続けることができます。

「肝炎ウイルス検査」がすすめられる人

C型肝炎もB型肝炎も、適切な治療を受けるためには、ウイルスの感染を早く見つけることが重要です。そこで、血液検査で調べる「肝炎ウイルス検査」を受けることがすすめられます。感染のリスクがある場合のは、必ず検査を受けるようにしてください。

C型肝炎ウイルスの感染

C型肝炎ウイルスは、主に血液を介して感染します。特に感染のリスクが高いのは、1992年以前に輸血を受けたことがある人です。また、輸血を受けた記憶がなくても、1992年以前に大きな手術を受けたことがある人もリスクがあります。

ほかにも感染のリスクがあるのが、不衛生な状態でタトゥーや入れ墨を入れりピアスの穴開けをしたりしたことがある、人とかみそりを共有して使うなどです。

B型肝炎ウイルスの感染

B型肝炎ウイルスは、血液や性液を介して感染します。かつては母子感染が多く、予防対策がとられるようになった1986年より前に生まれた人はすべて感染の可能性があります。現在は性交渉による感染が主なため、パートナーがB型肝炎ウイルスに感染している場合、感染しているリスクが高くなります。

C型・B型の肝炎ウイルス検査

C型とB型の肝炎ウイルス検査は、地域の保健所や指定の医療機関で受けることができます。費用は、無料だったり、一部自己負担だったりします。受けられる医療機関や費用については、地域の保健所に問い合わせるなどで確認することができます。検査結果は、1~2週間後にわかります。

検査結果が「陰性」の場合は、感染している可能性ほぼありません。「陽性」の場合は感染している可能性が高いため、必ず医療機関を受診して、詳しい検査を受けてください。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年11月 号に掲載されています。

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