2018年1月13日(土)

新春スペシャル第2弾 「永守重信さんに聞く 経営の極意」

photo

部分はクリックで用語解説表示

photo

八木
「今夜のゲストはこの方です。モーター開発一筋45年。4人で始めた町工場を、売り上げ1兆2,000億円の巨大グループに育て上げた日本電産の永守重信さんです。よろしくお願いいたします。」

photo

スマートフォンのバイブレーション機能に欠かせない超小型モーターから自動車のパワーステアリングに使われるモーターまで、身近なところで使われているモーターの多くで世界トップクラスのシェアを誇るのが、永守さんの会社「日本電産」です。創業以来、売り上げは拡大を続け、いまやグループ全体で1兆2,000億円に迫ります。

photo

本社の1階には、永守さんが創業当時、工場として使っていたプレハブ小屋が展示されています。

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「これが一番の原点。これを見てると、あのときの昔の苦しみが、お金がなかったときとか、いっぱい出てきます。たまに、ここに来て見ると、いまの困難とか苦しみぐらい知れてるなと。」

photo

ライバル企業に勝つために小型で消費電力の少ないモーターを開発。強烈なリーダーシップで取引先を開拓していきました。

日本電産 会長兼社長 永守重信さん(当時42)
「これができるかと聞かれたら、注文が欲しいから何でもできますと。開発の基本はすべて、熱意と情熱と執念。」

今、永守さんが加速させているのがM&A。海外の企業を次々と買収しています。

photo

SMBC日興証券シニアアナリスト 渡邉洋治さん
「世界的に見てもM&Aをここまで成功させている会社は非常に少ない。決断力、スピード感が永守さんのすごさ。」

技術と情熱、積極的な企業買収で競争を勝ち抜いてきた永守さんに経営の極意、そして、日本のものづくりの進むべき道を聞きます。

●モーターで世界を席けん 日本電産 永守会長 生出演

photo

野口
「改めまして、永守重信さんです。よろしくお願いします。」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「よろしくお願いします。」

野口
「ニュース番組の生放送ですが、久しぶりですか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「ときどきやらせてもらっています。」

野口
「今日(13日)は、記者会見同様にいろいろお話を聞きたいと思っています。」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「生放送ですから、失言をしないように(笑)」

野口
「ここで、日本電産がどんな会社か、簡単に紹介させていただきたいと思います。」

photo

八木
「創業は昭和48年、京都に本社があります。業績で注目したいのは、本業のもうけを示す営業利益を売上高で割った営業利益率です。いかに効率良くもうけているかを示す数値なんですが、日本の製造業の平均が6.5%とされる中で、2倍近い11.6%ということです。」

野口
「これは驚きの数字です。ちょっと下世話ですが、アメリカのフォーブス紙の調べでは、永守さんの総資産は約3,890億円、日本人12位ということになっております。まず、創業のところに戻りますが、そもそもモーターを手がけようと思ったのはなぜですか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「今はどうか分かりませんが、小学4年生かなんかのときに理科の時間にモーターを作ったんです。それでいろいろ競争させて、その中で学年で一番いいモーターができたということでほめられました。それが動機になって、将来は会社をつくろうと。それと自分の友人に非常に裕福な子どもがいて、いつもおいしいものを食べていたんです。“君のお父さんは何をしているんだ?”と聞いたら、“会社の社長だ”ということで、そのへんからずっと独立のことを考えました。そのときはまだ漠然としていましたが、だんだんモーター開発の仕事に流れがいきました。」

野口
「モーターがこれだけいろんなところに使われることは、その当時から“来るな”と?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「私が創業しようと思ったときは、まだ日本では一家に3個か4個ぐらいしかモーターはなかったんです。しかし、アメリカに行きますと、大体一家に60個ありました。だから、これは将来大きな成長が可能な産業だと思ったんです。そのときは、日本がアメリカのようになるまでには100年かかるという話もありましたが、非常に速く世の中の近代化が進んで、おそらく今、日本だって1つの家庭に200個ぐらいのモーターが軽くあります。車1台に80個ありますから、平均的に200個ぐらいあるでしょう。」

●モーターで世界を席けん 永守イズムとは

野口
「永守さんと言えば、ビジネス書など、いろんなところで経営理念“永守イズム”と言われています。例えば、こんなことがあります。」

photo

八木
「こちらは日本電産の『三大精神』と呼ばれるものです。『情熱 熱意 執念』『知的ハードワーキング』『すぐやる 必ずやる 出来るまでやる』ということです。」

野口
「一番下なんかはよく聞く言葉かもしれませんが、この三原則はどんな思いから、やっぱり社員一人一人にということなんですか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「素晴らしい開発をするには、例えば、IQが高くないといけないとか言います。だけど、たくさんの人のIQの差というのは、せいぜい最高5倍だと思っています。天才は別にして、通常2~3倍でしょうね。だけど、『情熱 熱意 執念』とか『知的ハードワーキング』は100倍ぐらい差があるんです。IQの高い人よりもEQ(心の知能指数)の高い人のほうがはるかにいい仕事をする。当然、創業したころは、IQが高いような優秀な人材は来ません。二流とか、三流以下の大学の人しか来ません。そんな町工場にそんな立派な人は来ないんです。しかしながら、こういうことで頑張る人が絶対に成功できるというか、うまくいく。この三原則はわが社じゃなくても、ほかのところでもこのイズムでやれば、必ず会社はうまくいくと思います。」

野口
「努力をすれば達成できるということなんでしょうけど、おそらく永守さん自身が知力も体力も、ずっとこれまで元気というか、トップレベルで維持されてきたと思うんです。」

八木
「その体力について、永守さんの朝の様子を取材させていただきました。」

●永守会長 元気の秘密は…

photo

朝8時に出社してきた永守さん。15階でエレベーターを降ります。

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「ここから僕は(会長室のある)20階まで歩くんです。」

八木
「15階から20階まで歩くのは、やっぱり体力づくりの一環なのでしょうか?」

photo

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「そうですね。朝起きてもこうやって階段を上ります。昔は1階から20階まで階段で上がったんです。」

野口
「最近は5階分だけ上がる?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「あまり無理してもいけませんからね。」

photo

野口
「これ真っ暗ですね。普通、会長が来られたら、電気がこうこうとついているような感じしますが?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「電気はつけていません。」

八木
「このあたりも節約ということなんでしょうか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「節約と言えば節約ですけど、あまり意識していません。」

野口
「例えば、ジムに行かれたりして、いろんなかたちで体力は維持しないと?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「ジムには行っていませんが、これぐらいまで来ますと、体力はいちばん大事ですから、健康が第一です。」

●国内外で57社 永守流M&Aとは

photo

野口
「健康な永守会長のもとに成長してきた日本電産なんですが、早速、経営の話をしていきたいと思います。まず、こちらは創業以来の売り上げ高の推移です。リーマンショックで一時期ちょっと下がっていますが、基本的には右肩上がりで、前年度は1兆1,993億円。この大きな原動力の1つが、ずっと進められているM&A、企業買収なんだと思います。」

photo

八木
「そのM&Aについて、こちらをご覧ください。日本電産が買収した企業です。日本だけでなく、アメリカやアジア、ヨーロッパなど57社にものぼります。しかも、2017年だけで8社を買収。業界では“日本電産が次に買うのはどこか”と常に注目されています。」

野口
「そんな中、永守さんは“私、M&Aでは失敗しないので”とおっしゃっていました。失敗はされていないんですか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「失敗しないような買収案件ばかりを狙っています。高く買わないとか、買ったあとのPMI(Post Merger Integration=M&A成立後の統合プロセス)と言いますけど、会社の経営をうまくできる人をあてる。それからシナジー(相乗効果)がちゃんと出てくるもの、関係ないものは買わない。基本的にわが社はモーターを中心にしています。モーターの応用製品だとか、あるいはそれに関係する事業でずっと成長してきました。だから、会社を大きくしたいためにM&Aをしているわけではないんです。あくまで強い会社をつくりたいということが基本になっていますから、あまり関係ない会社は買いません。」

野口
「いわゆる多角化にはあたらないとは思うんですけれども、実は、日本企業はそんなにM&Aが成功しているとは言い難い現状もあるんです。」

photo

八木
「こんな調査があります。M&Aを行った日本企業170社に対して、“目標の8割以上を達成したか?”、つまり“買収は成功したか?”と聞いたところ、『成功した』と答えたのは、およそ3割。また、海外企業の買収になると、わずか1割しか成功と答えていないんです。」

野口
「それだけ買収には高いハードルがあるわけですが、なぜ、日本電産はM&Aを成功させ続けてきているのか、その極意を取材しました。」

●永守流M&A 成功の極意とは

photo

八木
「今、ご覧いただいたドイツのケースでは、シュルテさんに託すまでに7年と、ちょっと時間がかかったようにも思うんですが、日本企業とはやり方が違ってくるのでしょうか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「やはり日本の企業と少し違うんです。なかなか我々の考え方、イズムをやりすぎますと、みんな辞めちゃいますから、少し時間をかけながら、後のカーブを上げていく。日本の場合は、急激にがーっと上げるんです。日本の企業が1年でできることを、アジアの企業は2年、ヨーロッパは3年、アメリカは5年かかると思っています。あまり変なアメリカの企業を買いますと、ものすごい大変なんです。日本の企業は少々赤字が出ても、その会社はすぐ良くなります。」

野口
「そもそも、これだけM&Aをされている最大の理由というか、目的はどんなところですか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「時間を買うわけです。我々みたいなのは新興会社ですから、競争相手はすでに創業して100年ぐらいの企業がいっぱいあるわけです。最も若い新興会社ですから、同じような時間をかけていると勝てません。開発もそうですし、新しい工場をつくるのも工場を買ったほうがいい。人材もそうです。歴史ある会社を買いますと、いい人材がいますから、そういうことによって時間を買うということがあります。同時に、それはM&Aだけでは企業は大きくなりません。自分たちで会社を大きくする、足りないところだけをM&Aで補強することにしないと。会社を買ったらいくらでも大きくなりますけど、なかなか強い会社はできません。」

野口
「御社は、いろんなモーターの分野で圧倒的なシェアをとっていくことで成長してきているわけですけど、よく日本では、大手電機メーカーはシェア争いで負けて、中国企業とかに価格競争でボコボコにされるということがあるんですが、勝ち続けている秘訣は何ですか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「基本的に社員の意識ですね。コスト意識、節約意識とかいっぱいありますが、そういうものをきちんと社員が持ってくれると気持ちが強くなるんです。」

野口
「先ほどのVTRはそうですね、まさに当事者意識を持たせると。」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「ドイツ人であろうがフランス人であろうが、アメリカ人であっても日本人も一緒なんです。ただ、外国の場合は少し時間がかかる。だけど、10年なら10年たったで結論は一緒なんです。VTRにあった、ホンダから譲り受けた日本電産エレシスは日本の企業ですから、言葉も一緒ですし、比較的意識は早いです。いろんな日本企業でお互い見あったり勉強しあったりしていきます。だから、海外の場合はあまり焦らない、じっくりといく。」

photo

野口
「よくコモディティー化と言うじゃないですか、製品が安くなりすぎて、価格競争で日本が中国に負けるパターンがいろいろありましたけど、それはいかがですか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「価格競争が起きるというのは、我々みたいな新興勢力にとっては、非常にいいチャンスなんです。価格が下がったことによって、マーケットが広がるとか、シェアがもっと上がるとか。我々は絶対に安物から逃げないという方針です。普通、日本の企業は、付加価値が減ってくると値段の高いほうにいっちゃうんです。低価格のものは捨てちゃって、“中国や韓国に渡せばいいじゃないか”という考え方があるが、それは絶対に負けの条件につながります。」

野口
「その時点で負けだと?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「負けですね。だから、中国企業や韓国企業であっても絶対に価格競争に負けない。そういう強い気概と執念を持たないとだめです。」

●永守流M&A 今後の戦略は

photo

野口
「2017年に日本電産は8社を企業買収しているわけですが、“これからどうするのか?”という話でいくと、こちらはホームページにあったモーターの『三本柱』です。2016年度の売り上げは、『精密小型』4,371億円、『家電・商業・産業用』3,109億円、『車載』2,611億円でした。永守さんの考えでは、『精密小型』『家電・商業・産業用』はそれぞれ6,000億円、『車載』についてはもっと伸びるだろうと、1兆円ぐらいにまで持っていこうということですが?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「2030年に10兆円なんて言ってますが、若干これはホラ吹いてます(笑)そのときには『車載』が大体4兆円になると見ているんです。『家電・商業・産業用』は今後、ロボット関係のところにいきまして、これも2兆円くらいになってくると見ています。もともと小さなモーターで失敗したのは、小さなモーターは設備コストが安いです。『家電・商業・産業用』や『車載』にいくと、膨大な投資をしないといけません。だから、だんだんこちらにいっているんです。今後、車はEVに変わってきますし、ロボットは出てきます。それから、家電関係は省エネタイプで、電力を消費しないモーターがどんどん出てくるんです。これは明らかに価格競争なんですが、価格競争はイコール技術競争なんです。値段を決めるのは技術なんです。日本の企業が韓国の企業とかに負けた際、“自分たちは技術は負けていない”とおっしゃるんです。しかし、技術では負けていないけれども、コストで負けているんです。コストで負けているということは、言い換えれば技術で負けているんです。だから、“技術はなくて値段だけで勝負している”ということは絶対にありえないんです。コスト競争力があるということは技術力があるんです。技術力がなくてコスト競争力はつきません。これは非常に誤解されています。」

●永守流M&A 次はどの企業?

野口
「『車載』がこれだけ期待されているということは、半導体なんかも入るのかなと思うんですけど、2018年以降、買収を進めていく企業の職種としては、『車載』の部分に強いところが中心になるかなと思いますが?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「『車載』は非常に大事ですが、問題は、ガソリン車が今後、EV、電気に変わってきますから、買収先を考えないと、“買ってみたらガソリン車ばっかりだった”となりますから、これはよく注意しないといけません。だから、我々は技術革新の波に乗っていこうとしています。技術革新が起きたときに、我々みたいな新興勢力が新たに参入できるチャンスなんです。昔のことには全然興味がない。車でも新しくついたモーターに興味があるわけで、従来のモーターにはあまり興味がない。家電産業についても技術革新の波に乗っているわけです。ロボットとかドローンとか、どんどん新しいものが出てきます。それは、今までなかったものなんです。そこへ出て行くことで歴史のある会社と戦っても過去の歴史は関係ありませんから、足りないところは会社を買う。買う場合も、誰かが持ってくる会社しか買うのではなくて、“世界にこういう会社があるから、我々はこの会社がほしい”と。今まで買収でいちばん時間がかかったのは、16年ぐらい待っているものがあるんです。会社買うのに、大体3~5年かかっています。思いつきでぽーんと買う方もおられるんですけど、だから失敗が多いと思います。我々は、いわば愛している人だけに近づくというアプローチなんです。」

八木
「愛している相手には、引き続きラブコールを送り続けるということですね。」

野口
「何人かいそうですね。」

photo

八木
「では、おなじみの『未来人のコトバ』。永守さんが、いま大切にしているコトバは“人材は教育で変わる”。ものづくりの未来のために地元・京都で新たな挑戦を始めています。」

●永守重信さん “人材は教育で変わる”

photo

京都学園大学です。2017年、永守さんは驚きのプランを発表しました。この春から大学の理事長に就任すると宣言したのです。目的は、2年後にモーターの研究などに特化した工学部を新たにつくることです。建設費などの資金100億円は、永守さん個人が寄付をします。根底には“即戦力となる人材が育っていない”という危機感があると言います。

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「我々の商品だって作っている製品、開発している商品は、マーケットのニーズに応じたものを開発しているわけですから、人材だって同じように世の中が欲する人材を出していかないことには、京都学園大学でそういう人材を育てようと。」

●“人材は教育で変わる” 私財100億円で学部新設

photo

八木
「こちらが京都学園大学に2年後に開設する計画の工学部の構想です。1学年200人程度で、モーター学科とロボット学科を備えます。半数は、東南アジアなどからの留学生を受け入れるということです。また、英語教育にも力を入れます。そして、工学部の施設建設の費用として私財100億円を寄付するということで、100億円を寄付というのは大変驚いたんですが、いかがですか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「金額のほうは別に驚いていただく必要はないんですけど、我々はモーター専用の会社で、それを応用する会社なんですが、最大の悩みは、モーターを学んだ学生がまったく世の中にいないんです。今年(2018年)も500人近い人材を探しています。このままいくと2020年には1,000人ぐらい探すことになります。その中で、モーターを専攻してきた人がいない、そういう学科がないんです。京都大学でも20年前からモーター講座がなくなっているので、2017年4月に寄付講座をさせてもらったんです。欲しい人材が出てこないんです。だから、我々は自前で大学で自分たちが欲しい人材を是非、育成しようという決断になったんです。日本の大学で学んだ学生は、入社してきても英語はできないし、全然戦力になっていないんです。入ってから3年とか5年かけて、もう一回再教育をしないといけない。これは欧米と比べたら、日本の大学教育は少し違った方向に行っているんじゃないかと思います。」

●永守重信さん “人材は教育で変わる”

野口
「もちろん海外の人材も大事なんでしょうけれども、日本で生まれ育った人が技術と語学力を持って会社に入ってほしいと?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「わが社は今、世界43か国に展開しているわけですが、英語力がないとどうにもならないんです。働き方改革もやっていますが、生産性が上がらないのは語学力の不足です。それから専門能力が足りません。経済学部、経営学部を出ても決算書も読めない。そんな人材がどんどん入ってくるわけです。本来、それ商品なら売れませんよね。世の中で売れない商品を出してきて、それを買わないといけないということは日本の将来、あるいは、わが社にとっても非常に深刻な問題。」

野口
「少し言い方が失礼ですけど、シャープがああいうことになったり、サンヨーもあったり、東芝もそうですけど、そうした中で、技術系の人たちを結構、中途でも採用されていたと思います。そういうことがなければ人材確保は相当深刻だと思っていますか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「2017年も何百人と中途で採用しています。それによって我々も非常に助けられています。しかし、基本的には自前で人を育成しないといけません。中長期にわたって、10年20年30年先を見て、人材を育成しないといけませんから、やはり一般の大学から応募される方だけでは、なかなか自分たちの欲しい人材がいないんです。特に今はIQよりもEQの高い方、やる気があって、“会社を大きくしよう!”と頑張れる方、そういう夢のあふれた若い人を集めないといけません。」

野口
「人口が減っているだけに、そういうダイヤモンドを探すのは難しいと思います。永守さんは、会社入ってから教育するより、もっと手前からやったほうが早いということなんですが、それに呼応するかのように日本電産は国内の生産を増強しようとしています。」

●工場を国内に新設 永守さんのねらいは…

野口
「1月9日でしたか、新年度1,500億円の設備投資を行うと。その中の150億円は長野だと聞いています。人件費が安いので海外にいっていたのが製造業の動きでしたけど、今は国内を徹底的に強めようというお考えですか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「もう一回、国内回帰できるようにと、特に工場もどんどん自動化が進んで、そういう技術も非常に発達してきました。必ずしも海外に行く必要のない生産はたくさんあります。もちろん過去には研究所を中心に投資していたんですけれども、是非、国内回帰をして、数年間かけて国内にも新しい工場をつくっていこうと。世界のバランスですね、特にリスクのことを考えても、いろんな国に分散する。当然、日本にも働く場所の確保ということもあります。国内生産も今後、もう一回拡大しようと。」

野口
「そういう日本電産の新しい試みですが、もう1つあるんです。」

八木
「永守さんがいち早く着手しているのが、働き方改革です。目指すのは、“2020年に残業ゼロ”です。」

●“2020年に残業ゼロ” 永守流 働き方改革

photo

八木
「永守さん、先ほどの『すぐやる 必ずやる 出来るまでやる』という言葉と働き方改革とは、どういった関係があるのでしょうか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「VTRでは残業のことばかり言っておりましたけど、残業ゼロは目標ではなく手段です。あくまで生産性を2倍に上げるのが、我々の運動なんです。もともと私も会社をつくりまして、よく働きました。人の倍働こうとか、土曜も日曜もなしに働こうとか、一時はブラック企業の代名詞みたいなことを言われたこともあるんです。だけど、成長する場合、企業はそういう時期があるんです。しかし、1兆円企業になったんだから、抜本的に考え方を変えないといけないということで、今の運動に変えたわけです。これは2年半前からやっているわけで、他の会社より早かったんです。ですから、最近では日経新聞なんかのランキングでも働きやすい会社の上位にきています。考えられることは、すべては生産性を上げたい。そのためにはお金も使うし、いろんな制度も変えていく。そうすると、全部何でもありだということで、VTRにもありましたように、女性も非常に前向きに働いてもらっています。時代も変わりましたし、世界と戦っていくには、絶対に生産性を上げないと勝てません。残業なんかしてたら勝てません。」

野口
「猛烈サラリーマンみたいなイメージがありますし、永守さん自身も毎年、正月の元旦の午前中しか休まれてなかったのを、今年から…。」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「そういうイメージは、もう消していただきたい(笑)全然変わっています。今年は、私も45年ぶりに三が日を休ませていただきました。“1日ってこんなに長い時間あるのか”と思いました。それは、トップみずから示して、生産性を上げて早く帰ると。しかし、大事なことは、“残業手当がなくなったら収入が減った”と言われないように、2020年の段階では“残業がなくなっても、年収は減るどころか増えた”と社員に実感してもらえるような会社に変えていかないといけない。会社だけが都合よく残業をゼロにして、社員の収入が減って会社がもうかっただけではだめなので、これは経営者として非常に強く意識しないといけないと思います。」

●モーターで世界を席けん 日本電産 永守会長 生出演

野口
「いま、お聞きして思うのは、人材をどうしても確保しないといけない、育てないといけない。生産性を上げないといけない。例えば、設備投資もそうですし、賃金を上げるのも1つの手ですよね?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「もちろん、それもやります。だから、それは生産性を上げないといけない。生産性を上げないで賃金を上げたら、会社は競争力を失うわけです。だから、私は“仕事をしないで定時に帰るな。それならば残業してくれ”と言っています。先ほど言ったように、人間は教育で変わるんです。だから、大学教育もそうですし、社内に入ってからの教育も、教育費にもっとお金を使わないといけない。人材教育にお金を使うようにしていかないと、これから勝てません。ただ“頑張れ!頑張れ!”だけでは、もう無理です。」

●日本電産 永守会長 売り上げ10兆円の戦略は

photo

野口
「どこの企業も同じ悩みを抱えているんでしょうが、日本電産のこれから先の話です。2030年度には売り上げ10兆円を目指すんだと。永守さんみずから“大ボラ”とホームページでおっしゃっていますが、ここへの現実的なロードマップというか、どういうふうにしていこうと考えていますか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「まず2020年に2兆円ということを言っています。これはもう、おそらく夢ですから、夢は必ず実現するんです。ですから、それ以後、次は4兆円とか、順番に“小ボラ”“中ボラ”があります。過去にも夢を描いて、“小ボラ”“中ボラ”“大ボラ”を繰り返しているわけです。ただ、“大ボラ”といっても、“やろう!”という気概を持っているわけですから、少し意味が違うんです。私は自分で“ホラ”と言ってますけど、実際は“絶対にやろう!”という気持ちがあります。将来の大きな夢の姿を描かないと、だめだと思うんです。」

●日本電産 永守会長 どうなる後継者

野口
「最後に1つだけ、社長の後の社長をどうするかということで、先日の記者会見でも、相当若い人にするんだとおっしゃっていますけど、ひと言でどんなふうに、いつごろ決めるとかありますか?」

日本電産 会長兼社長 永守重信さん
「もう候補者はだいぶ絞ってきていますから、本来は70歳のときに決めたかったんですが、ちょっと遅れました。最悪、75歳までには決めたいと思います。」

Page Top