コンプライアンス委員会

第2回(2013.2.12) 議事要旨

1 日  時  平成25年2月12日(火) 10:00〜12:00

2 場  所  放送センター22階 経営委員会室

3 出席者  (敬称略)

(1) 諮問委員
月尾嘉男(座長)、村上輝康(座長代理)、鈴木英夫、西浦裕二、松山良一

(2) 担当経営委員
石原 進、渡惠理子

(4) 関係者
冷水仁彦(NHK理事)、脇田哲志(NHK国際放送局長)、
川上 淳((株)日本国際放送(JIB)代表取締役社長)

 

4 議事要旨

(1)外国人テレビ国際放送の現状と課題について

  • ① NHKに対する質問への回答および補足説明
    諮問委員から事前に寄せられた質問(資料1)について、冷水理事、脇田局長より資料(資料2)に基づき回答および補足説明

 

(主な発言)

 

<委員>
 この5年間で、何ができて何ができなかったのかという点について、まだよくわからない。放送開始から5年経った今、NHKワールドTVが抱える本質的な課題、優先順位の高い課題は何なのか。
 当初掲げた目標はかなり達成できたと、とりわけ受信環境整備は当初目標を上回り、かなり整備されたが、実際はなかなか見てもらえていないということが、仮に本質的な問題だとすると、結局コンテンツの問題となる。
 このままの取り組みでは大きな絵柄は変わらない。課題があるから諮問を受けたと認識しているのだが、本質的な問題について補足をお願いしたい。

<NHK>
 BBCやCNNは、それなりの年月をかけて認知度を高めてきた伝統がある。われわれは今のようなかたちの放送をスタートしてから4年少々という非常に短い期間にしては、一定の成果があったと考えている。
 ただし、本来の目的や目標からすると、まだ途中段階にあるのも事実で、確かにコンテンツの問題もある。各国の国際放送がしのぎを削っている中で、得意分野を持つことも大切で、日本、そしてアジアの情報についてはNHKがきちんと伝えているということの理解をどんどん高めていき、時間がかかるかもしれないが、認知度の向上に結びつけていきたい。そのためには特にアジアを中心としたニュースの充実と、コンテンツの充実の両方を進めていくことが大事だと考えている。

<委員>
 そうであればなおさら、立ち位置や対象地域、番組内容等、何がしかフォーカスすべきではないか。例えば立ち位置は、日本なのかアジアなのか。フォーカスをしていかないと到底先行するサービスに追いつかない。あるいは一気に追いつこうと思うと膨大な予算が必要になる。

<NHK>
 日本かアジアかというよりも、やはり日本とアジアという枠組みだと思っている。アジアは世界の成長センターであり、これからもアジアをリードしていきたい。アジア地域の情報では負けないということを目指している。
 受信環境については、24時間と一部時間視聴可能世帯を含めて2億5,000万世帯まで整備してきているが、それぞれの地域で、普通にチャンネルを合わせたら見られるようになっているかというと、まだまだ十分ではない。アメリカにはまだ十分進出できていないし、参入できた地域でもつねに受信環境を見直していかないと認知度を高める状況にはならない。その一方で予算の限界も来ているというのが実態である。テレビの受信環境整備をもっと進めるべきなのか、あるいはインターネットでの配信にシフトしていくのかなど課題はまだある。一定の成果を上げたといって満足しているわけではない。

<委員>
 そもそも国際放送の強化の目的は何かということをはっきりしないとコンテンツも決まらない。次回以降、何のためにこの国際放送があるのかという点について議論したい。

<委員>
 内容は検証していないが、アメリカのケーブルテレビでNHKワールドTVが視聴可能なケーブルテレビの視聴料と、すでに加入しているケーブルテレビをあわせると現地のユーザーからみた場合に高額であり、NHKワールドTVを見るハードルになっているのではないかという話を聞いたことがある。われわれが考える受信環境の整備と、現地のユーザーサイドが受け止める受信環境、すなわち利用のしやすさに若干の違いがあるのではないか。受信環境整備についても、こちら側の目線だけでなく、アクセスする側からの目線を大切にした方がよい。

<NHK>
 北米ではNHKの関連会社であるNHKコスモメディア・アメリカがテレビジャパンとしてNHKの番組等を日本語で有料放送しているので、そのことか。NHKワールドTVは基本的に無料放送なので、ベーシックな契約をすれば必ず見られるというかたちで受信環境整備を進めている。視聴者にわかりやすい説明やプロモーションについては、しっかり取り組んでいきたい。

<委員>
 受信環境整備については努力の結果ある程度のところまでできていると思うが、いかに見てもらうかということが現時点の課題。東日本大震災のときには多くの人々に見てもらえたということを考えれば、見たいと思うようなコンテンツがあれば見てもらえるということだ。
 外国の人々は、日本人の価値観、日本人は自分の国をどうしようとしているのか、アジア、特に中国をどう見ているのかということについて知りたいのだと思う。そこ示していけば、おのずと認知度は上がっていくと考える。

<NHK>
 基本的な認識は同じ。認知度を上げる近道はない。国際放送に限らず、もう少し広い意味で、コンテンツの海外展開を考えると、日本は世界戦略商品の開発という点で、まだまだ努力する余地がある。国内での放送と海外展開を連動させた、世界に通用する大型コンテンツを開発していこうという機運が盛り上がっているので、そういう取り組みを強めていきたい。

<委員>
 外国の人の視点で、見てもらえるような番組をつくることが必要だ。

<NHK>
 まさに外国の人々に見てもらえる番組づくりが大切だということは、この国際放送5年間の一つの結論である。グローバルな視点で番組をつくるということを進めている。日本で放送している番組を単純に英語化すればいいということではないということは十分確認できた。

<委員>
 いくら受信環境整備が進んでも、実際に見てもらえなければ意味がない。例えば、参入が遅れているアメリカについても、果たしてNHKワールドTVを見てもらえるのか。BBC、CNNが先行する中に日本のワールドTVを入れようとすれば莫大なお金がかかる。それよりも、アジアを中心にしたらどうか。中国は外国の放送を規制して見せていないが、それ以外のアジアの国々に、できる限り日本のすばらしい放送を見せることをまず進めるべきではないか。
 使用言語についても、アジアをターゲットにするなら英語だけではなく、中国語やマレー語、ヒンディー語等で実施して、各国の人々の興味を引く番組を集中的に放送したらどうか。

<NHK>
 アジアに重点を置くということは、一つの考え方である。やり方は色々あり、全世界一斉同報型の国際放送もあれば、あるいは特定の国や地域にターゲットを絞り、現地の放送の中で日本のコンテンツを流すやり方もある。前者はNHKワールドTVがやっていることだが、後者はオールジャパンの枠組みが可能となり、ニーズに合った展開ができると考える。

<委員>
 NHKとしての戦略的な地域のプライオリティについて。アジアのための番組づくりをしていくのか、欧米の英語圏に広げていくのか。
 アメリカに住んでいる友人が、NHKワールドTVはリピートが多いと話していた。4時間ワンパッケージで、世界各地との時差を考慮して1日6回放送していると聞いているが、ワンパッケージが4時間であるということを見直す考え方はあるのか。

<NHK>
 例えば6時間ワンパッケージであればもう少し番組が充実できるという趣旨の発言だと思うが、その可能性についてかつて議論したが、経費の問題で見送った経緯がある。

<委員>
 放送によるサービスがある一方で、それとあわせてインターネットでニュースや番組を提供することで相互作用を持つ、最適なサービスが確立できるのではないかという問題意識がある。放送ではリアルタイムの視聴状況を把握できないが、インターネットはリアルタイムで把握できる。視聴率にあたるものを調べることもできる。インターネットでの取り組みを強調したいのは、可視化することで、これまで課題だったことを突破できるのではないかと考えるからだ。
 これまで、放送のための受信環境整備に重点を置き、かなり資本投入してきたが、インターネット配信のための資本投入は放送に比べてコストが割高になるのか、それとも各段に安いのか、放送とインターネットへの経営資源の投入についてどのように考えているのか。

<NHK>
 当初は放送がメインでインターネットはサブとして、放送の参入が難しい地域の視聴環境をインターネットでつくってきた。しかし、全世界で20億人と言われるネットユーザーにリーチできるという可能性や、リアルタイムで視聴傾向がわかるということもあり、インターネット配信の有効性はあると認識している。
 視聴傾向の把握は、まだ十分にできていない部分があるが、どのくらいの人に見られていて、どんな人が見ているのかというデータをインターネットの分野で把握できれば、次につながる答えが得られると考えている。
 今は、インターネットによるコンテンツ配信は、NHKのサーバーからしかできないという制約がある。海外の国際放送は自由に、いろいろなサイトを使って配信し、そこからもデータを得て視聴傾向等を分析している。そういう事例も踏まえながら実績を積んでいきたい。
 また、スマートテレビ対応のアプリケーションの開発にも取り組んでおり、とりあえずアメリカでやろうとしている。これもメーカーによってフォーマットが違い、対応のためにお金がかかる部分もあるので、状況を見ながら取り組んでいきたい。
 ストリーミングで配信することについては、放送の受信環境の整備よりも各段に安いと思う。パソコンでも見られるし、スマートフォン・タブレット端末でも無料アプリをダウンロードすれば見られるので積極的に展開していきたい。

<委員>
 ローカライズ、要するに多言語化が、これからの議論の中心になると思うが、現地語に吹替えるのと字幕を付けるのとではコスト的にどれくらい差があるのか。ニュースについては難しいとの説明があったが、番組はどうなのか。

<NHK>
 多言語化については、ノン・ライブ系の番組は、お金をかければ字幕化は可能。ライブ系の番組は、ハードルが高い。世にある自動翻訳システムを活用するなどの方法があるかもしれないが、それでも結構難しい。NHKでも国内の放送に日本語の字幕を付与するために、音声自動認識装置を開発したが、かなり精度は高まってきたとはいえ、オンエアするには精度が不十分で、手直しする要員を張りつけて修正を加えている。国内向けの生放送でも、字幕付与は完璧にできている段階ではない。
 最終的な修正だけであれば、簡単ではないかという意見もあるが、24時間体制で訓練を積んだ、大事なところを修正できるスキルを持った人を配置することは難しく、簡単にできるという認識ではない。

<委員>
 アメリカでチャンネルを1年間確保するための相場として1世帯1ドルかかるという話があったが、どのようなところにかかるのか。

<NHK>
 いろいろなケースがあるので一概には言えないが、ロサンゼルスのような大都市のケーブルテレビにチャンネルを確保しようとするとそれくらいかかる。カバーしている世帯が300万世帯であれば、3億円くださいと要求される。放送してもらうための代金がそれぐらいかかるということ。

<委員>
 日本を代表するとともにアジアを代表するという意味は、どのような意味なのか。

<NHK>
 BBCやCNNと対抗していく、あるいは追いついていこうとする中で、得意分野を持たないといけないだろうと考えている。そういう意味で、世界の成長センターであるアジアに目を向けて、地域の情報を対抗する他のメディアより多く、深く伝えていきたい。今、バンコクに専門の要員を配置し、現地発の情報発信も含めて体制を強化している。今後は北京に可能であれば専属キャスターを置き、北京発の情報を増やすことを考えている。そのようにしてトータルとしてアジアの情報はNHKを見れば最新の情報がわかるというような特徴をアピールしたい。

 

  • ② JIBに対する質問への回答および補足説明
    諮問委員から事前に寄せられた質問(資料1)について、川上社長より回答および補足説明。

 

(主な発言)

 

<委員>
 ある程度の成長は今の枠組みで可能だと思うが、一気に認知度を上げるという観点からは、今の枠組みにとらわれずに、いろいろなことを考え、実行する必要がある。恐らくいろいろなアイデアがあると思うので全部テーブルに出してみて、ブレークスルーを見つけるために一度整理してみる必要がある。
 オールジャパンという言葉が、やはりよくわからない。NHKの予算だけでは不十分なので経費をもっと負担してほしいと聞こえるが、私はオールジャパンというのは2つに分けられると思う。一つは同じ志を持った多様な活動との連携。例えばクールジャパンのようなプロジェクトとの連携。これまではどうもばらばらにやられてきている。それではすべてがサブスケールになってしまうので、連携をとりシナジーを発揮しながらやっていく必要があるのではないか。もう一つが、多様なリソースの活用。予算の制約がある中で、少しずつ人員を増やしていく、あるいは制作本数も増やしていくということだが、それだとオーガニックグロスというか、そこそこの成長はできても、抜本的な改善・改革にはつながりにくい。どうしたら日本にある多様なリソースをもっと取り込んでいけるか。例えば民放を既に退職した制作者を使うとか、外国の本社に対していかに日本の文化を理解してもらうかに苦労している日本の外資系企業に協力を仰ぐとか、多様なリソースを活用することで予算をあまり増やすことなく、応援団を増やしていくという発想はあると思う。

<JIB>
 今の意見はそのとおりだと思うところが多々ある。
 実際に民放関係の方の協力をいただきたいことは非常に多いのだが、それを阻む要素が結構ある。一番大きなものは番組の著作権処理の問題。これは別のところで議論すべき課題だと思うが、放送コンテンツ・番組は「権利の花束」みたいなもので、1本の花がノーというと、それは花束にならない。著作権処理のワンストップサービスがないと非常に処理に手間がかかるという課題がある。
 それから、従来の番組はどうしても国内向けにつくられている。それを外国人向けにバージョニングするということはなかなか難しい。最初から日本国内はこのテレビ局で放送し、外国向けはJIBで放送するというような企画であれば非常に処理が早くなる。そういう方向も目指していきたい。

<委員>
 チャンネル全体のプロモーションや、営業企画はJIBではなく、NHKがやっているのか。

<JIB>
 NHK部分のプロモーションはNHKの責任でやり、JIB部分はJIBでやるというのが原則。もちろん全体のチャンネルイメージが関連しなくてはいけないので、調整しながらプロモーションしている。

<委員>
 当初の想定より民放の協力が得られていないという印象を受けるが、外部の制作プロダクションの活用についても難しいということがあるのか。

<JIB>
 民放の方々が意図的にJIBを積極的に活用していないということはない。やはり採算がとれないのでコンテンツを提供できない、再編集や著作権処理があり元が取れないということが要因。実際に協力を拒否されるということは一切ない。

<委員>
 JIBの売上高のうち、NHKとの取引を除いた独自業務の売上は当初計画に比べてどのような状況か。

<JIB>
 設立時に計画していなかったNHKワールド・プレミアムの配信事業による収入が増えている。それを除いたJIB独自枠の売上は、広告収入や総務省の補正予算案件によるものだが、計画値に至っていない。

<委員>
 今日の説明の中でも著作権処理の問題が出された。外部からコンテンツを調達するときの課題について、具体的に説明してほしい(事務局が第3回会合に向けて準備することとした)。

 

 

(2)事務連絡
 今後のスケジュール(資料4)について確認し、次回は、3月12日(火)に開催し、諸外国における国際放送の事例研究と、放送番組の著作権と海外展開における権利処理の課題、日本から海外への情報発信の取り組み状況を把握したうえで、意見交換をすることとした。