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平成27年3月19日

経 営 委 員 会

監査委員会活動結果報告について

 

監査委員会の報告調査に対する見解

 

 本日、監査委員会からの報告を了解しました。
 報告書の中にある通り、関係者があらためてコンプライアンス意識を徹底し、協会が再発防止策を着実に遂行していくことを求めてまいります。

 

 

平成27年3月19日

監査委員会活動結果報告書

(「会長のハイヤーの私的利用をめぐる経理処理」事案に関する報告)

監査委員 上 田 良 一

監査委員 室 伏 きみ子

監査委員 森 下 俊 三

 

1.事案の概要

 会長が平成27年1月2日に私用目的で利用したハイヤーの代金(約5万円)が、他のハイヤー利用代金と区別せずに経理処理され、協会が2月27日に支払った1月分のハイヤー代金には当該ハイヤー代金が含まれていた。なお、会長は、当初から当該ハイヤー代金を自ら負担する意向を示しており、3月10日にその金額全額を協会に償還した。

 

2.協会の対応

 協会の総合リスク管理室は、会長が、業務用のハイヤーを私的に利用した旨の情報を受け、速やかにコンプライアンス統括理事に報告したうえで、事実確認を開始した。
 総合リスク管理室によれば、総務局の車両担当の部署に、1月2日に会長の自宅と小平市内との往復に使われたハイヤー乗車票(以下、「本件ハイヤー乗車票」)の控えがあること、代金は4万9,585円であること、および1月2日に小平市内のゴルフ場で新年のゴルフ大会があり、会長がこれに参加したことが確認された。なお、総合リスク管理室の調査では、会長が就任した平成26年1月から平成27年2月までの間に、会長名で休日にハイヤー乗車票が使われた事例は他にはないことも確認されている。
 コンプライアンス統括理事は、2月27日に監査委員に対し概要を報告し、また、その後3月5日までに順次判明した事実について報告を行った。

 

3.監査委員会の対応

 監査委員が3月6日に会長に事実確認の聴取を行ったところ、会長は1月2日に、自宅とゴルフ場への往復に協会が手配したハイヤーを利用したが、当初から当該ハイヤー代金を自己で負担する意向を示していたと述べ、ハイヤー代金はその場でただちに支払うと申し出た。
 監査委員会は、会長が私用目的でハイヤーを利用すること、およびその代金を協会が負担することは重大な問題となり得ることから、3月9日の監査委員会において、ただちに会長を含む関係者から事実確認のための聴取等を行うことを決定した。聴取等の概要は以下のとおりである。

  • 会長からの聴取
    3月9日と16日に、会長から事実関係等について聴取した。
  • コンプライアンス統括理事からの聴取
    3月11日、総合リスク管理室の調査内容と結果について聴取した。
  • 秘書室からの聴取
    3月11日から13日にかけて、秘書室長をはじめ職員から、事実関係(特に、本件ハイヤー乗車票起票の経緯等)について聴取した。
  • 関係部局職員からの聴取
    3月16日、総務局職員から協会による本件ハイヤー手配の状況等について、また、経理局職員から本件ハイヤー代金支払いの経緯等について聴取した。
  • 副会長からの聴取
    3月16日、秘書室を統括する副会長から再発防止策等について聴取した。

 

4.判明した事実

 上記3.記載の聴取等により本日までに判明した事実は、以下のとおりである。

 

(1) 協会によるハイヤー手配

 平成26年12月26日に、会長から秘書室に対し、「1月2日に小平市内のゴルフ場に行くため車の手配を頼みたい」旨の要請があった。秘書室は、ゴルフは私用目的であることから、公用目的で利用される「会長車」ではなく、ハイヤーの利用を会長に提案し、会長もこれを了承した。なお、会長は、私用目的でのハイヤーの手配を秘書室へ要請した理由について、安全の確保(セキュリティ)に配慮したことを挙げており、秘書室長も、そのほか情報管理や緊急時の連絡に備えた所在確認のため、長時間の外出には協会が手配したハイヤー利用が望ましいと考えたことを認めている。
 12月31日、秘書室職員が総務局のハイヤー配車担当者に連絡し、1月2日の午前8時に会長の自宅にハイヤーを手配するように依頼し、行き先については、当日会長の指示を仰ぐように伝えた。
 秘書室では、ハイヤー代金については会長の「後払い」によることにしたが、具体的な支払時期・方法については検討・確認を行わず、また、会長への説明も行っていなかった。(注)

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(注)協会は、協会が手配するハイヤー・タクシーについて私用目的での利用は内部規定上認めておらず、運用上も通常は業務遂行のための利用のみが認められている。
業務に利用するハイヤーについては、乗車場所・経路その他の必要事項を記載したハイヤー乗車票を起票して、ハイヤー配車担当者(総務局)に提出することで、配車の依頼を行う。このため、ハイヤー乗車票は、通常、ハイヤーの利用前に起票される。ハイヤー利用後、降車時に、使用者は、降車時刻と自身の氏名を記入し、運転者に渡すことが求められる。ただし、緊急を要する場合等には、ハイヤーの利用後に乗車票を起票することが認められている。

 

(2)ハイヤーの使用

 会長は、1月2日に、私用である新年のゴルフ大会に参加するため、自宅と小平市のゴルフ場との往復に協会が手配したハイヤーを利用した。ハイヤー乗車票によると、ハイヤーは午前7時に出車し、午後7時30分に帰車していた。

 

(3)ハイヤー乗車票の事後起票

 年始休暇が終わった1月6日頃に、ハイヤー配車担当者から秘書室に対し、本件ハイヤー代金の精算方法について照会があった。
 秘書室職員は、これを受けて1月13日にハイヤー乗車票に使用日時等を記入し、ハイヤー配車担当者に提出した。ハイヤー乗車票は通常、業務目的での利用に際し起票されるものであるが、業務内容として「外部対応業務」と記されているなど、本件ハイヤー乗車票には私用であることを識別し得る記載はななかった。また、本来使用者である会長が自署すべき使用者欄には秘書室職員が会長の氏名を記名して提出した。
 秘書室職員は、このような対応をとった理由について、「催促され、時間がないので、とりあえず伝票を出そう」ということになり、内容を精査しないまま記載して、本件ハイヤー乗車票を提出したと証言している。
 これらのハイヤー乗車票の起票等について、会長に対する報告は行われていない。

 

(4)その後の経理処理

 総務局車両担当者は、本件ハイヤー乗車票に記入漏れ等がないことを確認し、他のタクシー乗車票やハイヤー乗車票とともに、1月利用データとして、支払請求票を作成した。この支払請求票は、経理局中央審査部に回送された。審査・決定を経て、本件ハイヤー乗車票の代金は、2月27日、ハイヤー会社に他の代金とともにまとめて支払われた。
 なお、秘書室長は後になって秘書室職員がハイヤー乗車票を事後的に起票したことを知ったが、「途中で特定のハイヤー乗車票を回収することは異例な手続きであり、支払請求票の作成後、金額がわかった段階で、会長から協会に支払ってもらおうと考えていた」と説明している。
 これらの経理処理等について、会長に対する報告は行われていない。

 

(5)会長からのハイヤー代金の償還

 3月6日に監査委員が会長に本件に関する事実確認をした際、会長は、当初からハイヤー代金は自分で負担する意向であったと説明し、ただちにその場で代金を支払うことを申し出た。週明けの9日には、会長から秘書室長にハイヤー代金全額が手渡され、協会への償還手続きが10日に完了した。
 秘書室職員は「ハイヤー会社への振り込みが行われた後、速やかに支払手続きをとるべきだったが、失念していた」、また「職員の間で、支払手続きについても認識が不十分だった」などと説明している。

 

(6)秘書室の見解と再発防止策
 秘書室長は、監査委員会に対して、私用目的のハイヤー利用であることを認識していながら、支払時期・方法について十分な検討・確認を行わなかったこと、業務目的の場合と同様に本件ハイヤー乗車票を起票したことについて「不適切だった」との認識を示した。
 その上で、今後は、秘書室におけるハイヤー乗車票の管理責任者を明確にすること、管理責任者がハイヤー乗車票の起票が妥当かどうかについて適切な判断をすること、会長による私用目的の利用について必要がある場合には、協会が手配を行う場合であっても、ハイヤー会社から会長宛の請求書が届くように手続きを徹底させることなどの再発防止策をとるとしている。
 また、秘書室を統括する副会長も秘書室に対し適切な指導を行っていくことを表明している。

 

5.監査委員会意見

 上記「4.判明した事実」に基づく監査委員会の意見は、次のとおりである。

 

(1) 監査委員会は、会長が、私用目的であったとしても、その立場上必要な、身柄の安全、情報管理および所在確認のために、協会が手配するハイヤーの利用を必要とする場合があることを否定するものではない。
 しかしながら、協会の「倫理・行動憲章」の「行動指針」では「公私の区別を徹底し誠実に職務を遂行します」と明記されており、監査委員会は視聴者からの受信料で成り立つNHKにとって、公私の区別が極めて重要であり、とりわけ協会のトップである会長や会長を支える秘書室等には、高い倫理観と説明責任が求められていることを常に意識して行動すべきであると考える。協会は、会長のハイヤー・タクシー利用の在り方を検討する必要がある。

 

(2) また、秘書室は、①本件の会長によるハイヤー利用が私用目的であるにもかかわらず、ハイヤーを手配した時点、配車担当者からの照会があった時点のいずれにおいても、利用代金の支払時期・方法等の検討・確認を怠ったこと、②利用代金についてハイヤー会社からの直接請求など然るべき手続きを検討も実行もしなかったこと、③業務目的で利用する場合に用いられるハイヤー乗車票を安易に起票したこと、④本件ハイヤー乗車票の内容に鑑みれば、秘書室が支払い処理を積極的に申し出ない限り、精算が行われなかったおそれがあるが、監査委員が事実関係の確認のための聴取を行った時点でもまだ自主的な支払手続きを開始していなかったことなど、本件に対する対応はずさんであったとの誹りを免れず、早急に改善すべきと考える。
 秘書室の業務を統括する副会長も、会長からハイヤー代金の償還があるまで今回の事案について認識しておらず、監督責任を果たすことが出来ていなかった。

 

(3) さらに会長も、私用目的で協会が手配したハイヤーを利用する場合には、自身の支払いが終了していないことについて、適宜、注意を喚起し、必要に応じ適切な指示を出すべきであったと思われる。

 

 今回の件を受けて、関係者があらためてコンプライアンス意識を徹底し、協会が再発防止策を着実に遂行していくかどうか、監査委員会は引き続き注視していく。

 

 

以上