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5ヵ年経営計画(執行部案)についての経営委員会の見解

2007年9月25日

NHK経営委員会

 

1.結論

 経営委員会は、本年7月24日以降、通常の会議の他に臨時経営委員会を開催すると共に集中討議をするなどして、執行部提案の平成20年度から平成24年度までの5ヵ年経営計画(以下「5ヵ年経営計画案」という)の内容を鋭意検討し、その不十分な点を指摘し、再検討を求めてきたが、執行部がこれまでに修正、補充等した内容であっても、未だ十分なものであるとは言えない。そのため、現時点では5ヵ年経営計画案を承認することはできず、執行部に対し、更なる検討等をした上で、あらためて提案するように求めるものである。
 また、平成20年度の予算案、事業計画等作成のためには相応の準備期間を要することに照らすと、同予算案等は5ヵ年経営計画案と分離して作成すべきであると考える。そのため、今後、執行部が作成する中・長期経営計画は、平成21年度を初年度とするものとなるが、その経営計画を作成するにあたり、本見解で示した経営委員会の意見に十分留意し、充実した内容を伴った案を作成するように要望する。
 加えて、経営委員会においても、同委員会の下に「経営改革ステアリングチーム(仮称)」を設置し、執行部による経営改革案へのガイドを明示すると共により綿密なチェックを行い、抜本的改革のために多様な観点から示唆・アドバイスをする等、中・長期経営計画の作成に積極的に関与する決意である。
 なお、平成20年度は、既に決定済みの平成18年度から平成20年度までの「3ヵ年経営計画」(以下「3ヵ年経営計画」という)の期間中であるから、その間の業務執行は同計画に沿ってなし、その目標達成に努めるとともに、その際には、本見解で示された経営委員会の意見にも十分留意するように要望する。

 

 

2.経営委員会の基本的考え方

 今、NHKは厳しい状況下にある。すなわち、改革の意欲を持つ職員が少なくないにもかかわらず、未だに発生している不祥事のため、国民、視聴者のNHKに対する信頼は揺らいでいる。国民、視聴者の信頼を取り戻すために、NHKには健全で効率的な経営を行うための抜本的改革が求められている。
 また、NHKを取り巻く環境の変化は激しい。「デジタル化、IT化、放送と通信の融合化」、「少子高齢化の進展による人口減少」、「地域格差の拡大」、「若者のTV離れ」等が急速に進んでいる。これらの変化に対応するために、公共放送としてNHKが将来にわたりどのような役割を果たしていくのかを掘り下げて検討し、ビジョンを明確にすることが求められている。
 このような時期に、しかも、3ヵ年経営計画の最終年度を残して、新たな中・長期経営計画を決定するのであれば、その内容は更に充実した、効果的なものでなければならない。抽象的、部分的な改善策ではなく、上記視点を見据えた抜本的に踏み込んだ改革策が求められる。問題を先送りすることなく、正面から取り組まなければならない。もし仮に、これらの内容を備えない中・長期経営計画を拙速に作成したならば、新時代にふさわしいNHKの確立が遅れ、ひいては国民、視聴者の期待に十分に応えることが出来なくなる恐れがあると考える。

 

 

3.結論に至った理由

 執行部作成の5ヵ年経営計画案はその一部に評価すべき内容もあり、今後中・長期経営計画を作成する際の資料の1つとなりうるものではあるが、前述の経営委員会の基本的考え方に照らすと、十分なものとは言い難いため、上記結論に至ったものである。5ヵ年経営計画案で不十分と考えられる主な点は以下の通りである。

 

 (1)コンプライアンス体制確立について組織改革を含む実効性ある施策立案が十分になされていない。

 平成16年の不祥事の発覚を契機に現執行部が発足したが、その後も職員等の不祥事が発生している。これは現在のコンプライアンス体制が十分なものでないことを表している。
 経営委員会の諮問機関であるコンプライアンス委員会も、現在のコンプライアンス体制が十分に効果をあげていない旨を指摘している。
 これらを踏まえ、より効果的なコンプライアンス体制を確立するため、より実効性のある施策を示すべきである。

 

 (2)公共放送としてのNHKの将来のビジョンが十分に示されていない。

 「放送と通信の融合」の進展によりその垣根が低くなり、また少子高齢化による人口減少も予測されている。NHKを取り巻く環境は今後激変が予想される。また、加えて、地域格差の拡大、若者のTV離れが進んでいる。これらに対応するため、NHKの将来のビジョンを掘り下げて検討し、それを明確に示すものが次期経営計画であるべきだと考える。
 報道、教育、地域放送の分野については、多くの国民、視聴者が公共放送たるNHKに大きな期待を寄せていることは調査等でも明らかであるが、娯楽やエンターテインメントについては必ずしも明確でない。これらの番組に対してどのように取り組むのかという考え方を示すと共に、保有すべきチャンネル数やその位置づけ、コンテンツ等について、国民、視聴者の納得が得られるような具体的内容を伴った考え方を示すべきである。また、若者向け番組の取り組みについても、具体的内容を伴った考え方を示すべきである。

 

 (3)抜本的な構造改革の施策が十分に示されていない。

 NHKは子会社・関連会社34社を有するグループ企業と言える。抜本的改革を検討する上では、NHK本体だけではなく、グループ全体での最適化を考える必要がある。執行部はこのようなグループ全般の経営を見渡す視野を持ち、人事制度、技術・管理部門のスリム化、関連子会社の整理統合、NHK本体と子会社間の取引に関する透明性の確保、NHK本体との取引に依存している子会社の体質改善、所有資産売却の要否等、経営効率化について具体的施策を示すべきである。また、後述の「受信料の公平な負担」を実現するための施策とともに、受信料を徴収するための経費のあり方についても、効率化の観点から具体的施策を示すべきである。
 なお、経営効率化は一律的、形式的な経費削減であってはならない。無駄を省き、不要な経費を削減する一方、公共放送たるNHKの将来に必要な資金を減ずるべきではない。経営効率化が、地方局の疲弊を招いたり、改革の意欲に燃える職員のやる気を削ぐ内容のものであってはならない。

 

 (4)アーカイブス・オンデマンド等副次収入増加の施策が十分に示されていない。

 番組強化にコストをかける方針は提示されているが、それによって生み出された番組コンテンツを有効活用する事は、国民、視聴者の利益になると同時に、その提供を有料化することができればNHKの収入向上にもつながる。その実現には法整備や国民、視聴者の理解を得ることが前提となるが、今後、「デジタル化、IT化、放送と通信の融合化」の更なる進展が予想されることを考慮し、番組コンテンツを効果的に提供するアーカイブス・オンデマンド等の具体的施策について、著作権等の権利処理を進めつつ、コンテンツの二次利用にかかる、収益性のあるNHKモデルの策定を進めるべきである。

 

 (5)国際放送を強化するための施策が十分に示されていない。

 グローバル化が進む中、国民、視聴者はNHKに日本、アジアに関する多くの情報(文化、報道など)を世界に発信することを求めている。しかるに、現在のNHKの国際放送は海外放送局と較べて大幅に立ち後れており、その差は益々拡大している。この立ち後れを挽回し、国民、視聴者のNHKに対する期待に応えるべく、国際放送を強化するための具体的施策を示すべきである。

 

 (6)地域放送を充実させるための施策が十分に示されていない。

 前述のとおり、地域格差が進んでいる中、多くの国民、視聴者が地域放送について公共放送たるNHKに大きな期待を寄せている。その期待に応えるべく、地域放送を充実させるための具体的施策を示すべきである。

 

 (7)「受信料の公平な負担」を実現するための施策が示されていない。

 5ヵ年経営計画案では、受信料収入が今後増加するとしているが、その根拠に十分な説得力がない。
 また、現在、受信料支払契約の未契約者が全体の20%を超えているにもかかわらず、その未契約者を減じるための十分な施策が示されていない。その効果的な解決策を見いだすことは決して容易ではないが、「受信料の公平な負担」が公共放送にとって不可欠な条件である以上、問題を先送りすることは許されず、たとえ困難であってもそれを解決するための施策を示すべきである。
 選択肢の1つとして「受信料の支払い義務化」の方法があるが、これは、法制化を国会に求める必要がある上、国民、視聴者の理解を得る必要もある。そのため、「受信料の支払い義務化」の方法を目指すのであれば、国民、視聴者の理解を得るための方法も、併せて示す必要がある。また、「受信料の公平な負担」を「受信料の支払い義務化」以外の方法で実現しようとするのであれば、その方法を示すべきである。

 

 (8)受信料値下げについて

 受信料の値下げは、最初に数字ありきの問題ではない。抜本的改革と「受信料の公平な負担」の実現の結果として、可能となるものであり、実行すべきものであることに留意すべきである。執行部が本見解において示された経営委員会の意見に留意して抜本的改革に取り組み、併せて受信料の公平な負担を実現できれば、国民、視聴者の理解が得られる程度の受信料の値下げが可能となるはずである。

 

 

4.補足

 本見解によると、5ヵ年経営計画案に示されていた「平成20年10月から約6.5%の受信料値下げ」との方向性も決定されないことになる。そのため、受信料の早期値下げを期待していた国民、視聴者には心外な結果と感じられるかもしれない。
 しかし、抜本的改革も、受信料の公平な負担もなく、更に将来の十分な展望もないまま、単に受信料の値下げを実施したならば、「デジタル化、IT化、放送と通信の融合化」等、厳しい環境に置かれるNHKに、回復し難い弊害を生じさせ、「豊かで、かつ良い番組をあまねく全国に放送する」というNHKの役割を将来十分に果たせなくなる恐れもなしとしない。万一、そのような事態になれば、国民、視聴者の期待を大きく裏切ることになる。
 また、もしこのまま5ヵ年経営計画案が決定されたならば、その長い期間、抜本的改革、受信料の公平な負担が実現されず、それに伴い実現できたであろう大幅な受信料値下げも望めなくなるであろう。そのような事態に陥ることは、避けなければならない。
 今回、5ヵ年経営計画案の決定をしなかったが、抜本的改革、受信料の公平な負担を実現する具体的方策を盛り込んだ、新たな中・長期経営計画を早急に作成し、実施することにより、国民、視聴者の期待に応え、揺らいでいる信頼を取り戻したいと考えている。そして、経営委員会はその中・長期経営計画作成に積極的に関与する決意である。
 以上の点を踏まえ、今回の経営委員会の決定について国民、視聴者の理解を賜りたいと切に願っている。
 なお、本見解は経営委員会委員の全員一致をもって決定されたものである。

 

以上