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平成29年度 第3回
NHKキャンパス・ミーティング@立命館大学
(平成29年7月7日(金)開催)

 

<会 合 の 概 要>

 「経営委員会による受信者意見聴取」の平成29年度第3回は、対象を大学生に限定した企画型として、京都府京都市の立命館大学で実施した。
 なお、大学生に限定した企画型の「語る会」は、武蔵大学(平成21年度)、関西学院大学(平成22年度)、中央大学(平成25年度)、東京藝術大学(平成26年度)、埼玉大学(平成27年度)、お茶の水女子大学(平成27年度)、近畿大学(平成28年度)に続き、8回目の実施となった。
 当日は、参加した学生を3つのグループに分け、各グループに経営委員、理事がそれぞれ加わり、「公共放送NHKはどうあるべきか」「公共放送の財源『受信料』について」などのテーマについて35名の学生から意見を聴取した。

 

<会 合 の 名 称>

NHKキャンパス・ミーティング@立命館大学
視聴者のみなさまと語る会

 

<会 合 日 時>

平成29年7月7日(金) 午後4時30分〜午後6時30分

 

<出  席  者>

〔視聴者〕

公募による大学生・大学院生35名

〔経営委員〕

佐 藤 友美子  (委員)

 

宮 原 秀 夫  (委員)

 

森 下 俊 三  (委員)

〔執 行 部〕

根 本 佳 則  (理事)

 

荒 木 裕 志  (理事)

 

大 橋 一 三  (理事)

〔司 会〕

住 田 功 一  エグゼクティブ・アナウンサー

 

< 会    場 >

 立命館大学(京都府京都市)

 

< 開 催 項 目 >

 以下のとおり進行した。

 

1 開会あいさつ

2 経営委員による説明、協会の基本方針、重要事項について

3 意見の聴取(グループディスカッション)

 (1) 公共放送NHKはどうあるべきか

 (2) 公共放送の財源『受信料』について

4 各グループディスカッションの報告

5 閉会あいさつ

 

 「視聴者のみなさまと語る会」終了後、真野 修一チーフ・プロデューサーによる「『バリバラ』の作り方」と題した講演会を開催した。

 

<概要・反響・評価>

  • 公募の結果、ホームページなどを通じて申し込みがあった45名のうち35名が参加した。

  • 当日は、3つのグループに分かれて「公共放送NHKはどうあるべきか」「公共放送の財源『受信料』について」などをテーマにしてディスカッション形式で進行した。

  • 参加者からは、「公平公正な報道」「若い世代の接触率向上に向けた取り組み」「受信料制度の理解促進」「インターネット向けサービスの取り組み」など、多岐にわたる意見や提言が寄せられた。

  • 語る会終了後に行ったアンケートには、35名から回答があった。主なアンケートの結果は次のとおり

    <参加者の満足度>
     「大変満足」12名、「満足」20名、「普通」2名、「不満」1名

    <経営委員会の仕事について>
     「今回のイベントに参加して、経営委員会の活動について理解が深まりましたか」との質問に対し、「経営委員会の活動について理解が深まった」との回答が28名からあった。


◆協会の基本方針・重要事項の説明

 (佐藤委員)

 NHK経営委員の佐藤です。NHKの経営委員には、平成27年3月に任命されました。
 それでは、皆さまからのご意見をお伺いする前に、いま少しお時間をいただき、「公共放送の役割」とNHKの「経営委員会」について簡単に触れさせていただきます。
 公共放送NHKの役割は、まず、「命と暮らしを守る」です。NHKは災害対策基本法で、報道機関として唯一、指定公共機関に定められており、「防災・減災報道」はNHKの最大の使命の一つです。地震・津波・台風などの災害、人命や国民生活に重大な影響を及ぼす非常事態が起きた時、NHKは、公共放送として正確でわかりやすい情報をより早く伝えるために、全力をあげて取材・報道に取り組んでいます。
 続いては、「知りたいことにこたえる」です。NHKには、公共放送として、正確で公平・公正な情報や豊かで良質な番組を幅広く提供し、健全な民主主義の発展と文化の向上に寄与する、という役割があります。そのためにも、報道機関として不偏不党の立場を守り、番組編集の自由を確保し、何人からも干渉されず、ニュースや番組が外からの圧力や働きかけによって左右されてはなりません。NHKは、放送の自主・自律を堅持することを徹底しています。
 続いて「豊かで、かつ、よい番組の放送を行うこと。それにより文化水準の向上に寄与すること」です。これは、放送法でも定められているNHKの役割です。この基本理念のもと、NHKは多様な番組を作り続けています。
 NHKは、地上、衛星、ラジオ、それぞれ特徴を持った7つの放送波を使い、あまねく日本全国に放送を届けることで、公共の福祉の増進と文化の向上に最善を尽くしています。
 続いて、「放送の未来を創る」です。放送の発展の歴史において、NHKは放送技術の進歩における先導的な役割を果たしています。現在、情報技術の進展やインターネットの加速度的な普及などを背景に、放送を取り巻く環境は大きく変化しつつありますが、そうした新しい時代においても、NHKは新たなサービスやメディアの創造に向けたさまざまな取り組みを積極的に進めています。
 次は、「日本を世界に伝える」です。「日本発」の情報を世界に発信していくのは、公共放送の重要な責務の一つです。NHKでは、日本から世界へ、英語で情報を発信する国際テレビ放送『NHKワールドTV』をはじめ、4つの海外向けサービスを行っています。
 また、「地域を応援する」ために、NHKはすべての都道府県で地域に根ざしたさまざまな番組を制作しているほか、地域の活性化や地域貢献活動にも取り組んでおり、夕方6時台のニュースをはじめ、さまざまな地域放送番組の放送やイベントを開催しています。
 このような公共放送の役割を果たすための財源は、皆さまからの受信料です。税金でも広告収入でもなく、みなさまに公平に負担していただく受信料だからこそ、特定の利益や意向に左右されることなく、公共放送NHKとしての役割を果たすことができます。こうした考えから、放送法の中で「NHKの放送を受信できる受信設備を設置した者は、NHKと受信契約をしなければならない」と定められています。視聴者の皆さまに受信料を公平に負担して頂くよう努めることは、NHKの責務であり、テレビなどの受信機を設置された方にはNHKへのご連絡と受信契約をお願いしています。そして、受信料は、世帯ごとにいただいており、学生の方が親元から離れてひとり暮らしをされている場合でも、ご家族とは別に受信料の支払いが必要になりますが、同一生計でご家族と離れて暮らしている場合は、受信料が半額になる「家族割引」が適用されますので、是非、ご利用いただきたいと思います。
 このような公共放送としての重要な役割をNHKが果たしていくために、NHKの経営に関する基本方針の議決や、NHK執行部の役員の職務の執行の監督、会長の任命、副会長および理事の任命の同意など、NHKの経営に対して重い責任を負っているのが、経営委員会です。
 放送法には、経営委員会の設置や権限、組織などについて定められており、経営委員会の委員について、「衆参両議院の同意を得て、内閣総理大臣より任命される」、「委員の選任にあたっては、教育、文化、科学、産業その他の各分野及び全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならない」、「委員の任期は3年、定数は12名」、ということも定められています。
 そして、私たち経営委員がその重責を果たすため、視聴者の皆さまのご意見を直接伺うことも、放送法に定められており、本日は、その機会として立命館大学にお集まりの皆さまからNHKに対する忌憚のないご意見をお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、「NHKのインターネットサービス」についてお話しさせていただきたい、と思います。
 現在、NHKでは、インターネットを活用したコンテンツの開発にも力を入れ、若い世代の方々に向けた情報発信に取り組んでいます。本日は、学生の皆さまにお話しするせっかくの機会ですので、その取り組みについて、簡単にご紹介したいと思います。
 NHKは、インターネットサービスにおいても、公共放送が果たすべき役割に重点を置いて、放送と通信の融合の時代にふさわしい新たなサービスに取り組んでいます。
 「ニュース、災害情報発信の強化」として、ニュースや災害情報を、いつでもどこでも利用できるよう、パソコンやスマートフォン向けに正確かつ迅速に配信すること、大規模な緊急災害時におけるインターネットによるテレビ放送の同時提供や、関連している映像のリアルタイム提供、またスマートフォン向けに、「NHKニュース・防災アプリ」によるさまざまなサービスの提供などを行っています。
 また、NHKで放送しているラジオ番組をパソコンやスマートフォンで聴くことできる「らじる★らじる」による、東京や大阪をはじめとする全国8つの放送局のラジオ番組を聴くことができるサービスの提供や、外国人向けのテレビ国際放送『NHKワールドTV』のパソコンやスマートフォンでの提供、一部の番組による「見逃し視聴サービス」の実施など、インターネットを活用したサービスの提供に取り組んでいます。
 続いて、新たに立ち上げたNHKのポータルサイトについても、紹介します。
 『らいふ』は、生活実用的な情報をウェブ用にカスタマイズし、動画や記事を掲載しているポータルサイトで、「暮らしに役立つ1分動画」を通じて、“皆さんの毎日を楽しく豊かにしてくれる情報”をお届けしています。
 また、『1.5ch』は、NHKが本格的なネット動画にトライしているポータルサイトで、『NHKスペシャル』『ガッテン』などのさまざまな番組の大事なポイントを、ギュっと濃縮した動画をネット向けに再構成して配信しています。
 このように、NHKでは、放送を基軸にしながら、インターネットサービスにおいても、正確で公平・公正な情報や豊かで良質のコンテンツを幅広く提供し、健全な民主主義の発達と文化水準の向上に努めています。
 最後に、公共放送NHKの使命や、長期的なビジョンを考える上でも、今日、立命館大学にお集まりの皆さまからいただくご意見やご要望は、大変、貴重なものになると考えています。本日、ここにお集まりいただいた皆さまから頂戴するご意見・ご要望を私ども経営委員全員はもちろん、執行部とも共有して、今後のNHKの経営に反映させて参りたいと思います。

 

 (住田アナウンサー)
 佐藤委員からの説明でした。きょうは、参加していただいた皆さま全員からお話を伺えるよう、3つのグループに分かれて、「公共放送NHKはどうあるべきか」「公共放送の財源『受信料』について」という2つのテーマについて、皆さまからご質問、ご要望、ご意見などを伺っていきたいと思います。

 

《グループディスカッション》

 

○Aグループ  森下 俊三 委員、根本 佳則 理事

 

(森下委員)
 「何でNHKはこうなっているのか」「なぜNHKの番組を見ないのか」ということを皆さんに伺い、「NHKは、どこを直さなければならないのか」ということを考えるのが、経営委員としての私の立場です。
 きょうは、20代を中心とした学生の方のご意見、インターネット世代の人たちから見て、「どういう形の放送がよいと思うか」など、何でも聞かせていただきたい、と思っています。

(根本理事)
 私は、もともと番組制作部門のディレクターとして、報道のドキュメンタリー番組や、「おはよう日本」の制作などに携わってきました。皆さんは、放送内容についてもいろいろなご意見をお持ちだと思いますので、経営に関するご意見とあわせて忌憚のないご意見をいただければと思っています。

【会場参加者】
 私は、大学院生ですが、1歳の子供がいるのでEテレを多く見ているため、子ども向け番組や子育て番組、福祉番組を比較的多く見ている、と思っています。
 NHKの強みは、社会的に見て敬遠されがちなテーマを取り上げていることだと思いますが、すばらしい問題提起をしていても、番組を見る人は、当事者や限られた範囲になってしまっていて、当事者ではない人たちをどう巻き込んでいくのか、ということが課題だと思っています。
 おそらく、当事者以外の人たちにアプローチしていかなければ何も変わっていかないのではないか、と思っており、テレビとして、どのような形で実現可能なのか、ということをお伺いしたいと思います。

(森下委員)
 子育て番組は、子育てする人にとって有益な情報になるようにつくられているけれども、それだけでは不十分であり、子育てをしていない人たちも関心を持てるような番組をどのように制作していくのか、というご意見ですね。

【会場参加者】
 公共放送ということを考えると、子育てだけではなく、障害者の問題やマイノリティーの人たちの問題などに対して、「自分が無関係」だと思っている人をどのようにして巻き込んでいくのか、ということが必要であり、当事者だけで話題にしていても、根本的な解決にはならず、議論が広がらないように思います。

【会場参加者】
 NHKは、受信料を財源としているので民放と比べて資金が潤沢にあり、クオリティーの高い番組が多いように感じています。
 また、受信料を支払っていない人の割合など、実情について知りたいと思っています。

(根本理事)
 現在、世帯の約78%の方から受信料をお支払いいただいており、残りの約22%の方が未払いや未契約となります。
 受信料の公平負担については、「ことしは何%上げる」という目標を立てて取り組んでおり、29年度末に支払率80%を達成することを目指して取り組んでいるところです。

(森下委員)
 最近は、オートロックマンションの増加や、働く時間の多様化などにより、訪問しても接触することができない、という課題があり、東京や大阪など都市部では、支払率が悪くなってしまう傾向があります。
 さまざま対策に取り組みながら、不公平の解消に取り組んでいますが、コストもかかってくるので、苦労しているところです。
 また、民放も信頼性の高い、よい番組をつくることに取り組んでいますが、NHKには「文化を広めていく」という責任がある分、経費をかけて番組づくりをしているというイメージを持たれる、ということもあると思います。

【会場参加者】
 私は、NHKに「ターゲットを絞って、ひとつひとつの番組をつくっている」というイメージを持っており、また、「大人が見るものを私たちの世代も一緒に見る」というイメージがあります。
 私たちの世代は、テレビをあまり見ず、動画を見る世代ですが、動画を選択できる時代に「わざわざ流れてくるものよりも見たいものを見る」と考えており、映画を見たいのであれば、「映画を多く配信しているサイトにお金を支払ってでも見る」と考えます。このような世代に対して、「興味がない人にどのように番組を見せるのか」ということは難しい課題だと思っています。
 また、新聞で、「NHKがインターネットで同時配信を行う」という記事を読み、関心を持ったので、話を伺いたいと思っています。

(森下委員)
 皆さんは、「インターネットで動画を見る」と言われましたが、「テレビの番組は自分の見たいものを見る」という世代であり、その傾向は進んでいるように思っています。
 また、台風や豪雨が起こった場合、「今、どうなっているのか」ということを知りたい、と思いますが、今は、インターネットで最新の情報が出てきます。
 インターネットが非常に身近な存在となり、放送もインターネットと組み合わせていかなければならない時代になった、と考えています。そして、現在、「インターネットで番組を同時に配信する」ということについて議論が行われています。
 NHKの中でも議論を重ねており、受信料の問題については、第三者の人に入ってもらって検討していただき、検討結果について、総務省の委員会などで民放の方にも説明したり、パブリックコメントを求めたりしています。
 いずれにしても、インターネットと放送を一緒に考えていかなければならない時代になっており、「料金の制度も含めてどうすればよいのか」という大きな課題について議論が行われています。
 そして、「テレビはあまり見られない」「パソコンやタブレットで見ることが多い」「ニュースは、テレビでも新聞でもなくインターネットから得る」という人が増えていることは、放送業界にとってみると「今のままでよいのか」ということが大きな課題になっています。

【会場参加者】
 私たちの世代は、小学校から帰ってきて、『おじゃる丸』とか『忍たま乱太郎』を見て、『クインテット』見て、『天才てれびくん』見て、晩ご飯、という流れがあって、その頃に見た番組の話をすると大体通じます。このような「みんながわかるNHK」という部分は、残してほしいと思っています。
 また、私はお笑いが好きなのですが、『NHK上方漫才コンテスト』に漫才だけでなく、ピン芸人やコント師の人が出ているのに、「漫才コンテスト」という名前で放送していることに疑問を持っています。
 受信料徴収の件については、あまり深く考えたことがなかったのですが、かつて読んだ小説の中で、徴収の仕事をしている方が、一緒に子供を連れて行っていて、その子供がすごくしんどかった、という内容があり、すごく切なく感じたことを不意に思い出し、受信料徴収の現場は大変だと思っています。

(森下委員)
 新年度の番組の編集に関する基本計画を経営委員会で議決していますが、ことしの4月からの番組では、世代を分け、ターゲットをある程度絞った番組を編成しています。
 例えば、家族で見る番組は、親から子供も含めて議論になるような番組、若い世代に向けた番組では、若い人たちが関心を持っていることをテーマにするなど、ターゲットを分けるようにしています。
 また、今年度の番組は、アナウンサーの担当も含めて、かなり新しくしていることで、50代や60代の方などから批判が出てくることもあります。
 一方、若い人から見ると、「今までよりもおもしろい」と感じてもらっている部分もあり、非常に今年度はチャレンジャブルな番組編成になっていますので、ぜひ、番組を見ていただき、意見を言っていただきたい、と思っています。

【会場参加者】
 私は、あまりNHKを見ておらず、オリンピックなどの大きなイベントや、地元が福岡でソフトバンクが好きなので、ソフトバンクの試合を中継しているときしかNHKを見ることがありません。
 「なぜNHKを見ないのか」と考えてみると、教育番組を放送していることから「堅い」というイメージを持っており、「難しい言葉を使っているのではないか」「ニュースも専門的なことしか言っていないのではないか」と感じているからではないか、と思っています。
 NHKのよいところは、ほかの番組ではできないようなマイノリティーの人の話などを聞くことができる機会を与えてくれるところですが、堅いイメージがあると、「そこから新しいことを知ろう」と思う機会にはならないように思っています。
 私は、家に帰るとすぐにテレビをつけて、つけたままにしていることが多いのですが、NHKには、堅いイメージがあるので、気軽にチャンネルをあわせようとは思いません。
 せっかく、知らないことを知ることができる番組をつくっているのに、チャンネルをあわせる機会が気軽ではないので、結局、見られないということは、もったいなく思います。

(根本理事)
 野球中継の放送については、放送の権利についてどのように交渉しているか、ということであり、例えば広島では、カープファンの方が多いので、地域放送としてどれだけ放送するのか、全国放送としてどれだけ放送するのか、毎年度計画を立て、中継権を買って放送しています。
 また、北海道では、北海道の地域放送として「日本ハムの試合をこれだけ放送しよう」と決めているように、関西では阪神ファンが多いので阪神の試合を中心に放送権を買う、ということになります。そして、全国放送では、1年間でできるだけ各チームを平準化して権利を買うようにしており、BSを中心に放送しています。

(森下委員)
 「堅いイメージがある」「内容が難しい」という指摘があることを踏まえ、4月からさまざまな取り組みを行っています。
 例えば『ニュースウオッチ9』では、できるだけわかりやすくしようと取り組んでおり、難しい言葉が出てくることが多い政治や経済の話題についても、かみ砕いてわかりやすく解説するように取り組んでいます。
 一方、50代、60代の人から見ると、「少し軽いのではないか」という意見を持つ人もいらっしゃるようですが、いずれにしても、まだ十分ではないかもしれませんが、できるだけかみ砕いて解説を行い、視聴者の皆さんにわかるようにしようと取り組んでいます。
 しかしながら、最初の取っ掛かりである「最初に気楽にチャンネルをあわすことができるか」というイメージの部分は、もう少し考えていかなくてはならないと考えています。

【会場参加者】
 私は、中国からの留学生で、現在は、テレビを持っておらず、ラジオも聴いていないのですが、中国にいたときに日本語力の向上のために、NHKのラジオニュースを聞いていました。
 ちなみに、NHKラジオのアプリは、アナウンサーの声がきれいで、よく聴き取れるため中国でも人気があるらしいです。
 また、NHKには『NHKワールドTV』というアプリがあり、17の言語でニュースを伝えていますが、「情報量がやや少ない」「教科書のようで堅い」というイメージを持っています。そして、留学生向けの情報がないので、日本にいる海外からの留学生に役立つ話題についても取り上げてほしいと思っています。

(根本理事)
 「NHKワールド・ラジオ日本」では、17の言語でニュースをお伝えしていますが、地域ごとに放送時間を分けて放送しているため、17の言語を並行して24時間放送するということができず、1つの言語あたりおよそ25分位の放送時間となっています。
 そのため、インターネットでは、いつでも聴くことができるように対応していますが、同じニュースを繰り返し出しているため、ご指摘のように「情報量が少ない」と感じられるかもしれません。
 テレビでは、毎時間30分ずつ英語でニュースを放送していますが、ラジオで今後どのように対応していくのかについては、まだ難しい課題があるものと考えています。

【会場参加者】
 「NHKは、視聴率にこだわらずに番組を制作、放送できる」ということですが、視聴率が取れない番組とは、結局、視聴する人がいない、ということであり、そのような番組は、やはり、おもしろくありません。
 そして、視聴率にこだわっていないのに、いわゆる「やらせ」といわれる演出が問題となることがなぜ起こるのでしょうか。
 また、NHKには、もっとジャーナリズムにこだわった報道をしてほしい、と思います。年号ではなく元号にこだわっているのかもよくわかりませんし、NHKの報道からは、何かご機嫌をうかがっているような感じが伝わってきます。NHKが受信料を財源とし、独立しているのであれば、もっと思い切った報道をしてほしい、と思います。

(森下委員)
 受信料を支払っているのに、見る番組が何もなければ、皆さんが「受信料を支払いたくない」と思ってしまいますので、「視聴率を無視する」ということではなく、「視聴率だけに頼らない」ということもあります。
 例えば、Eテレの教育番組は、視聴率は低いですが、教育のためには必要だからこそ放送しています。一方で、大河ドラマなどのように視聴率をひとつの評価基準にしている番組もあります。
 また、防災や災害報道は、公共放送としての一番の使命ですので、視聴率は関係なく、お伝えしなければなりませんが、民放では、スポンサーとの関係もあり、NHKのように長時間にわたり番組を休止して、伝えるようなことはありません。
 一方、視聴率にこだわる番組も放送しており、バランスをどのように取っていくのか、ということは大変難しいところです。

(根本理事)
 報道について厳しい言葉をいただきました。
 「NHKのニュースはおもしろくない」と言われることがありますが、NHKの報道には、「正確で信頼される情報を伝える」ということが大前提にあり、放送法に書かれている公平公正な番組を制作、放送するために、NHK自らガイドラインを作成し、日々、心がけています。
 民放のニュースや報道番組と比較されることがありますが、NHKの場合、自分たちで基準を作成し、基準に沿って伝えていく、というところが民放と異なるところではないか、と思います。
 また、民放の場合は、いろいろな方が自由闊達に話す、いわゆる「しゃべり放題」のような番組でもよいのですが、私たちは、国民、視聴者の皆さんが考える材料として、事実をそのまま提供することがNHKの役割だと考えており、スタンスの違いが番組にも出てきているのではないでしょうか。
 新聞は、各社のいろいろな考え方を自分たちでスタンスを決めて語っていくことができますが、NHKの場合は、「NHKの主張はこれです」とは示さず、とにかくニュートラルに、事実を押さえて、客観的に伝えていることで、「当たりさわりがない内容だな」という印象を受けることがあるのかもしれません。

【会場参加者】
 公平公正を気にし過ぎるあまり、「当たりさわりがない」というイメージを強く与えてしまっているように思います。また、取り上げている多様な意見、というのも、当たりさわりのない意見を取り上げているように思います。

(森下委員)
 公共放送として、皆さんから受信料をいただくかわり、皆さんに、きちんと放送していくことが求められており、どのような問題にも、いろいろな意見を持った人がいる中で、できる限りさまざまな意見を取り上げていくことが必要だと考えています。

(根本理事)
 ニュースの中だけでは伝えきれない問題もたくさんあります。そのような問題については、視聴者の皆さんと議論する特別番組を制作したり、「NHKスペシャル」のような大型の番組の中で取り上げるなどの対応ができるように努めています。

【会場参加者】
 私は、大学で音声表現を学んでいます。NHKは、アナウンサーを育てるという点では、すばらしいと思っていますが、最近のアナウンサーのアナウンス力について疑問に感じるときがあります。
 もちろん、上手な音声表現の方もいらっしゃいますが、話し方の型にとらわれ過ぎて、音声表現のプロなのに伝達力が弱く、双方向のコミュニケーションがとれていないように思えることがあるので、多くの人材がいるNHKの中で、音声表現のあり方を変えていってほしい、と思っています。
 また、NHKのニュースを見ていると、無味乾燥な感じがします。公平性を言いわけにして、考えることから少し逃げているのではないか、とも思っており、思っていることを表に出すということが表れていないことが残念に思います。

(根本理事)
 アナウンサーには、正しい日本語で正しく表現して、用意された原稿をきっちり伝えるという役割があり、番組の司会を務めた場合は、番組を取りまとめていくという役割を担うという役割があります。
 一方、キャスターは、みずから取材した経験を豊富に持っている人が、自分の経験も交えながら、ニュースを読むだけではなく、そこに今のものの捉え方などを一緒に価値として付けて話をしているという役割の違いがあります。ご指摘の点は、役割なのか、本当にアナウンサーそのものの能力なのか、それとも両方ということがありますが、まずは、役割の違いということをご説明させていただきました。

【会場参加者】
 私もかつては、Eテレの番組をよく見ていましたが、大きくなってからはNHKの番組を見なくなりました。
 受信料について、「見ていないから支払いたくない」という人も多いと思いますが、「全員から受信料を支払ってもらう」といっても、現在、NHKを見ていない人から受信料を支払ってもらうことは難しいように思います。
 全員から支払ってもらうのは、強制的な方法などもあるとは思いますが、どのように解決していくのか、関心があります。
 また、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックで、4K・8Kの実験をしたということですが、今後どのように広がっていくのか、ということについても関心を持っています。

(森下委員)
 受信契約の締結は、放送法によって定められていますが、受信料の公平負担に向けては、営業部門を中心に日々努力を重ねています。
 現在、外部法人の活用などさまざまな取り組みを行っていますが、やりすぎると、苦情が発生してしまうこともあります。営業現場では、非常に苦労しながら受信料を集めていますが、現在、受信料制度について、「インターネットの同時配信が実現した場合の受信料のあり方」や「受信料の公平負担」などについて議論が行われているところです。

(根本理事)
 来年12月に4Kと8Kの新しいチャンネルができる予定になっています。今のテレビで映るわけではなく、新しいチューナーを取り付ける必要がありますが、テレビの高画質化が進み、現在、皆さんがご覧になっているハイビジョンの画像が、4Kの画質に移行していくことになる、と思います。まずは、衛星放送から高画質化を進め、いずれは地上放送の高画質化も進むことになると思います。
 8Kは、4Kとは仕組みが違っており、一般家庭に普及するのは時間がかかるかなと思いますが、オリンピックを8Kで見ると、選手の動き一つ一つがよくわかりますので、イベントなどで8Kの映像を見ていただいて、8Kのよさを体験いただく機会をつくる取り組みを行っていく予定です。

【会場参加者】
 受信料で集められたお金の流れがどうなっているのか、もっと示す必要があると思います。現状では、支出の状況についての発信や広報が、まだ不十分であり、このような状況が不信感につながっていくのではないでしょうか。
 NHKから一方的に伝えるのではなく、タレントを起用して番組制作の裏側を紹介することなどにより、理解が進むこともあると思います。
 また、受信料を集める現場の最前線をドキュメント番組にするなど、積極的に伝えていく、という取り組みを実施してもよいのではないでしょうか。
 現在、NHKには、去年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックのYou Tubeのチャンネルが残っていますが、このような試みは画期的であり、再生回数も多くなっています。
 これは、インターネットが普及した現在でもよいコンテンツは評価されているということであり、これから2020年に向けてインターネット空間にアーカイブを残していくということは、ますます人々の時間や生活スタイルが多様化していく中で、垣根を越えていく大変重要なことだと思います。有料にするのか、無料にするのかということは難しい部分があるかと思いますが、ぜひ、検討していただきたいと思います。

(森下委員)
 経費の使い方を公開していくということは、これまでも取り組んではいますが、まだまだ不十分なところがあると思っています。

【会場参加者】
 NHKの昨年度決算で収支差金が出た、ということをニュースで伝えていましたが、「余ったお金は、今後の放送をよくするために使います」というような言い方をしており、「余ったお金が毎年繰り越された結果、現在どうなっているのか」「なぜ、余っているお金があるのに受信料を集めるのか」ということに腑に落ちない部分があります。
 NHKの番組では、『BS世界のドキュメンタリー』や『映像の世紀』が大変好きで、レベルの高いコンテンツであり、核心にも迫っていて、アーカイブとしてもデジタルリマスターの技術面も優れたものとなっていると思います。これは、潤沢な資金があるからこそできる事業だと思いますので、このような事業は、これからも発展していただきたいと思います。
 一方、政治的な面やジャーナリズムという面では、かなり批判的に見ており、前会長が就任時に「政府が右と言ったものを左と言うわけにはいかない」などと言うような組織には、疑問点が残っています。
 「公平公正」「事実を報道する」と言われますが、前会長の発言や前文科省事務次官のインタビューを放送しないなど「忖度していきます」という姿勢が伝わってしまうことが大変残念であり、個人的には「信頼感がない」と思っています。

(森下委員)
 収支差金について、放送局の建て替えなどに備えて積み立てることも必要ですが、基本的には、余ったお金は、値下げを行うなどにより視聴者に返す必要がある、と考えています。
 今後、インターネットへの対応を含めて検討する中で「受信料制度をどうしていくのか」という議論も進めながら、中長期の計画を策定している最中ですが、収支の見通しを作成したうえで、値下げができるのであれば値下げを行うということになる、と考えています。
 毎年、予算と決算が合致するということはなく、経営努力によりよい実績となった結果として利益が積もった場合は、値下げなどによりお返ししたり、4K・8Kなど新しいことに活用するなどの対応が必要となります。いずれにしても、しっかりした計画を策定していく必要があると考えています。

(根本理事)
 視聴者の皆さんそれぞれに報道に対する受け止め方があると思いますが、取材現場では、いろいろな情報を集め、分析し、どのようなタイミングでどのくらいの量をお伝えするということを判断して、最善の形でお伝えするために日々、努力しています。

(森下委員)
 経営委員は、報道現場に関与できませんので一般論として申し上げると、多くの取材をしていても、ニュースではその一部しか放送することができません。また、「フェイクニュース」ということが問題になっていますが、報道するためには、その人の言ったことが本当なのか、一方的なのかチェックする必要がある、と思います。
 難しい問題については、立場の違いもあり、さまざまな解釈が出てきますが、NHKは、公平公正な立場で取材を行い、間違いのないことを報道することが求められています。

【会場参加者】
 なぜ、「NHKオンデマンド」で実際に視聴できる番組が限定されているのでしょうか。学術目的であれば、多くの番組にアクセスすることが可能だと思いますが、「アーカイブを開く」ということが一つの公共性であるならば、わざわざハードルを設けていることを疑問に思います。
 また、「おもしろくないから受信料を支払いたくない」という考え方は、根本的にずれていると思います。このような考え方が出てくるのは、「受信料が何なのか」ということが伝わっていないこと、そして、制度に構造的な問題があるからではないでしょうか。
 長期的に考えたとき、「受信料をどのように徴収するのか」ということではなく、「見ていないから受信料を支払わない」と言っている人たちに「民放では放送しないような問題、無視することができない問題を扱う意義がある」ということを理解してもらわなければ、何の解決にもならない、と思います。
 また、なぜ受信料をテーマにした番組がないのかを非常に疑問に思っています。自己批判のようなことができるのがNHKであるはずなのに、なぜ、そのようなことが行われてこなかったのでしょうか。

(根本理事)
 「番組を見ているから」「おもしろいから」などを理由に受信料をお支払いいただくのではなく、「公共的基盤」「情報の社会的基盤」として、全ての国民、視聴者の皆さんに情報を提供することが基本です。
 NHKの成り立ちは、大正時代の関東大震災の際に流言飛語で多くの方が亡くなったという反省から「日本にも正しい情報を伝える放送機関をつくらなければならない」ということでラジオ放送局が設立されたことにあります。
 戦時中は、国策放送を行わざるを得なかった時代がありましたが、終戦後、放送法が成立し、公共放送という中立な立場で、情報を国民の皆さんに平等にお伝えするという役割を担うことになったことを踏まえると、NHKが担っている役割は、戦前も戦後も同じ役割だと考えています。
 また、「根本的な議論を行ってこなかった」というご指摘については、受け止めてまいりたいと思います。
 アーカイブについて、多くの番組を開放していきたいと考えていますが、著作権の問題があり、権利者の方の了解を得たものでなければ提供することができません。
 例外として教育や学術分野で利用する場合は、権利を放棄していただくという合意があり、大学などの研究などに提供させていただく場合があります。
 NHKのアーカイブには、何十万本という番組が入っていますが、全ての権利処理が完了しておらず、提供できないものもある、ということをご理解いただきたいと思います。

【会場参加者】
 NHKのお笑い番組には、比較的、関東の方が出ていることが多いように思います。文化の向上や公共性ということを言っているにもかかわらず、なぜ出演者の比率が異なるのか、不思議に思います。

(森下委員)
 ことしのNHKは、かなりチャレンジングな番組を放送していますので、ぜひNHKの番組を見ていただきたい、と思っています。
 また、皆さんはこれから社会の中心になる世代ですが、われわれは、今、「20代の人にいかに見てもらえるか」という大きな課題を持っています。皆さんには、これからもNHKを見ていただき、意見をお寄せいただきたいと思います。ありがとうございました。

(根本理事)
 本当にきょうは役に立つご意見をいただくことができましたので、これからの参考にさせていただきます。ありがとうございました。

 

 

○Bグループ  宮原 秀夫 委員、荒木 裕志 理事、住田 功一 アナウンサー

 

(住田アナウンサー)
 まずは「どんな番組を見ているのか」、あるいは「番組は放送ではなくインターネットで見ている」など、皆さんの放送への接し方について、お伺いしたいと思います。

【会場参加者】
 NHKの番組では、ドキュメンタリー番組などが好きです。また、大学ではLGBTサークルに所属していて、『バリバラ』も楽しみに見ています。

【会場参加者】
 私は、下宿を始めてからテレビを持っていないので、NHKを見る機会が少なくなりました。昔は、大河ドラマや『その時歴史が動いた』といった番組がとても好きで、幼いころから見ていました。

【会場参加者】
 朝はいつも『あさイチ』を見ています。

【会場参加者】
 1回生のころ、早起きをしていたので、朝の連続テレビ小説をよく見ていましたが、最近は起きる時間が遅くなり、あまり見ていません。

(住田アナウンサー)
 朝の連続テレビ小説は、BS放送で夜遅くにも放送していますし、土曜日の午前中に1週間まとめて放送していますので、ぜひご覧ください。

【会場参加者】
 NHKの番組では、『サラメシ』や『ドキュメント72時間』などが好きです。

【会場参加者】
 幼いころ、NHKの子供番組を見て育ったので、すごく強い思い入れがあります。学生になって、ひとり暮らしを始めてから、テレビと接する機会が少なくなりました。

【会場参加者】
 学校の授業が終わってから、家に帰ると夜9時ごろになるので、9時のニュースを中心に見ています。
 また、教育系を専攻しているので、『バリバラ』や自分の教育学に関わるドキュメンタリー番組など、新聞の番組表をチェックして、録画して見ています。

【会場参加者】
 私は、民放のテレビ局で、カメラアシスタントのアルバイトをしているのでニュースを見ることが多いです。
 NHKの番組では、『プラネットアース』がとても好きです。ふだん行くことはできないところを、すごくきれいな映像で見ることができ、毎回楽しみにしています。

【会場参加者】
 私は、朝の連続テレビ小説や大河ドラマをよく見ています。年末になると、家族で『紅白歌合戦』を毎年見ています。

【会場参加者】
 私も、朝の連続テレビ小説を楽しみに見ています。朝の連続テレビ小説は、ツイッター上でも、たくさん人がつぶやいているので、それを一緒に読みながら、楽しんでいます。
 また、寝る前に『2355』を見ることもあり、1日1回はNHKの番組を見ていると思います。

(住田アナウンサー)
 ツイッター上で読んだことをきっかけに、見てみようと思った番組はありますか。

【会場参加者】
 ツイッター上に多くの人が番組のことを発信しているのを見て、『真田丸』を途中から見始めました。

【会場参加者】
 私はNHKスペシャルをよく見ています。特に北朝鮮のミサイル開発を伝えた番組は、映像を交えてとてもわかりやすい内容でした。

【会場参加者】
 私は生粋のテレビっ子なので、NHKだけでなく、あらゆる放送局の番組を毎日見ています。
 NHKでは、『LIFE!』や『バリバラ』も見ていますし、BSで放送している映画も、家族と一緒に見て、楽しんでいます。

(住田アナウンサー)
 それではここからは、最初のテーマである「公共放送NHKはどうあるべきか」について、伺いたいと思います。
 例えば、「民放とは違いNHKはこうであってほしい」、あるいは「今のNHKはここが違うのではないか」など、自由なご意見を伺いたいと思います。

【会場参加者】
 毎年8月に放送している原爆関連の番組は、落ち着いて見たいと思うので、民放よりもNHKで見ることが多いです。
 NHKには、これからも公平で、落ち着いた番組をつくってほしいと思います。

(住田アナウンサー)
 NHKの番組が、「公平で、落ち着いている」と感じるところは、どのようなところでしょうか。

【会場参加者】
 民放の場合、番組の中でバラエティー的なところが少しありますが、NHKの番組には、そういう要素があまり見当たりません。原爆関連の番組では、心境的にも落ち着いて、余計なことは考えずに、時を過ごしたいと思うので、NHKの番組は、落ち着いて見ることができます。

【会場参加者】
 報道番組やバラエティー番組の放送時間は放送法で規定されていると聞いたことがありますが、実際はどうなのでしょうか。
 NHKは、報道番組の放送時間が長く、公平な報道をしていることから、信頼度が高いと思っています。

(荒木理事)
 報道番組の割合は、総合テレビの場合は全体の43%くらい、また、BS1の場合は50%近くあります。報道番組の中には、スポーツも含まれていますが、娯楽番組や教養番組より、全体的に高くなっています。
 最初に編集方針を立てるときは、総合テレビの報道番組を全体の35%程度としていますが、九州北部豪雨の緊急報道など、「いざ」という時に、きちんとした報道を伝えるため、報道番組の時間が長くなり、結果的に報道番組は総合テレビで40%以上、BS1だと50%近くになります。これは、民放と比較しても、はるかに高い数値だと思います。

(宮原委員)
 皆さんのご意見を伺っていると、NHKの番組をよくご覧になっているし、NHKに対して好意的な発言が多いので、おそらく、そういう方がここに来ていると思います。
 あえて伺いたいのですが、皆さんの友達とかで、「NHKはおもしろくない」、「NHKなんか見ていない」という人は、たくさんいらっしゃるのではないかと思います。
 私も数年前まで大学で講義していましたが、「テレビなんか見ない」と言う学生はたくさんいたと思います。
 「テレビ自体見ない」、「ニュースは、テレビよりもインターネットで見る」など、皆さんの友達とかで、そういったご意見はありますでしょうか。

【会場参加者】
 きょう来ている方は、テレビが好きで、NHKをよく見ている方が多いようですが、私の友達はテレビを見ない人が多いです。テレビがあったとしても、NHKを見ない人は、正直多いと思います。
 テレビを見ている人でも、民放のバラエティーやドラマを見ている人が多く、NHKの番組は、学生からすると、少し堅苦しく感じられると思います。若者はしっかりとした報道よりも、「楽しくわいわいした番組」を好んでいると思います。
 私は、NHKと民放はやっていることが違ってよいと思いますし、NHKはしっかりとした報道を伝え、民放は楽しむ番組を伝えればよいと思います。

(宮原委員)
 ニュースについて「民放はバラエティー化している」という意見がありましたが、NHKのニュースを皆さんは、見ていますか。
 例えば、「Yahoo!ニュース」のように、インターネットで見る方がたくさんいらっしゃると思います。NHKのインターネットサービスをご覧になっている方はいらっしゃるでしょうか。
 私は、主にインターネットで情報を得る若い人がたくさんいる状況で、公共放送としても、若い人たちにもっと訴求していかなければならないと思います。
 NHKは公共放送であり、「報道に力を入れています」と言っても、結局は見てもらえなくなってしまうのではないか、という危機感を持っています。
 どうすれば皆さんのような若い人たちにもっと訴求できるのか、ということは最大の課題だと思っていますので、皆さんから何か解決のヒントとなることを伺いたいと思っています。

【会場参加者】
 私は、インターネットのように、いろいろな情報が錯そうするメディアより、今、テレビで話題になっていることを凝縮した形で知りたいので、NHKのニュースを見ています。
 私の周りにも、テレビを持っていない友達もたくさんいますが、そういう人は、ツイッターやインターネットなど、ほかのメディアから情報を得て、特定の分野に特化した情報を知っていたり、新しい情報を知っていることもあります。
 私は、テレビで情報を取りたい人もいるし、インターネットやほかのメディアで情報を得たい人もいるので、人それぞれ違ったニーズがあってよいのではないか、と思います。

【会場参加者】
 私は、インターネットよりも新聞でニュースを読みます。時間があるときは、各紙の見解の違いを読み比べたりします。
 新聞の場合、一面でぱっと見たときに一番重要なことがわかりやすく、めくった時に見たい情報を詳しく読めるので、情報を得やすいと思います。

(宮原委員)
 新聞であれば、全体を見渡すことができますが、スマートフォンやパソコンの場合は、一つ一つクリックしないと見ることができないし、全体を見ることができない。これは、実質インターネットが抱える大きな問題だと思っています。
 例えば、テレビで放送しているニュースと同じものを、インターネットに同時に流したとき、皆さんはそれでもインターネットで見ていただけるでしょうか。

【会場参加者】
 私は最近、NHKより民放のニュースをよく見ています。
 基本的にテレビを付けっ放しでいることが多く、民放のニュースは、おもしろくつくっているので、何か作業をしながら楽しく耳に入ってきます。
 一方、NHKの場合は、淡々とニュースを読み上げるので、別の作業をしているとあまり頭に入ってきません。
 テレビの利用方法は皆さんそれぞれだと思いますが、私の場合、「ながら見」をしていることが多く、そのときにNHKをつけることはありません。

【会場参加者】
 情報を得るためのメディアは、自分の生活スタイルに合わせて、選択しているのだと思います。
 例えば、朝ご飯を食べているときは、テレビを見ながら時刻や天気の情報を得ていますが、移動中はスマートフォンのアプリや新聞を読みながら過ごしています。
 私も最近、インターネットから情報を得ることが多くなりましたが、それは、インターネットの情報が一番早いからだと思います。
 新聞は、決められた時間帯しか配られませんし、テレビは速報も出ますが、まずはテレビの電源を付けなければなりません。
 一方、インターネットは通知してもらえるので、地震が起きたこともわかりますし、そこからいろいろなサイトを開いて、今の状況を調べることもできます。

【会場参加者】
 NHKのニュースは民放と比べてシンプルで、わかりやすいと思います。特に、テロップの付け方がとても丁寧だと思います。

【会場参加者】
 両親の影響かもしれませんが、地震が起きたとき、「ちょっと揺れたな」、と感じるとすぐにNHKを付けるような習慣があります。

(住田アナウンサー)
 NHKはインターネットや民放、あるいは新聞とも競争しています。そういった状況で、「NHKがこれから勝負するところ」は、どこだと思いますか。

【会場参加者】
 私は、速報性はテレビではなく、インターネットでよいと思います。
 NHKの優れているところは、情報のまとめ方が丁寧であることや、過去の映像を民放よりも豊富に持っているところだと思います。そのため、今起こっていることでも、過去の事例と関連させて、わかりやすく紹介することができると思います。

【会場参加者】
 NHKの優れているところは、情報の正確性だと思います。
 民放の場合、司会者の主観やいろいろな人の意見が混在しており、まとめられていない情報も含めて発信されている印象がありますが、NHKの場合、より正確な事実に基づいて放送している印象があります。
 そのため、新しいニュースを正確に知りたいときは、NHKを見ることが多いです。

【会場参加者】
 『NHK手話ニュース』や『バリバラ』などは、民放ではなかなかできない、公共放送だからできる番組だと思います。

【会場参加者】
 NHKは、民放と勝負する必要はないと思います。
 NHKの場合、利益を求めているわけでもなく、視聴率が悪いから番組が打ち切られることもないと思いますが、民放の場合は、視聴率を取らなければいけない目標があります。
 NHKの役割は、国民が知らなければいけないことを、きちんと伝えることだと思います。

【会場参加者】
 NHKは、視聴者に対するきめ細かな気遣いや、人の心を丁寧に扱っていると感じています。これからも、NHKにはそういう姿勢で番組を作り続けてほしいです。

【会場参加者】
 以前より、大河ドラマなどでも視聴率についていろいろとニュースになっていますが、NHKの役割は、視聴率のことをあまり気にせず、よい番組をつくることだと思います。

(住田アナウンサー)
 NHKを見ていない人に見てもらうためには、どうすればよいと思いますか。

【会場参加者】
 きょう、NHKのアプリについて紹介がありましたが、今まで知りませんでした。まずは、NHKのアプリを広めて、多くの人に使ってもらい、NHKというメディアに興味を持ってもらえれば、「番組を見てみよう」ということにつながると思います。
 若者は、みんなスマートフォンを使っていて、ニュースアプリなどで情報を得ているので、まずはNHKのアプリを使ってもらうことが大事だと思います。

【会場参加者】
 NHKには、「堅苦しい」「真面目」というイメージがありますが、それを逆手にとった番組が最近増えていると思います。
 『ねほりんぱほりん』もそうですし、『バリバラ』も民放の番組の裏で放送して、とても話題になったと思います。
 若者は、ツイッターの「トレンド」を参考にしている人が多いので、そこに掲載されるくらいの話題性をつくり、注目を集めることが一番必要ではないでしょうか。
 そして、ツイッターの「トレンド」は、番組を見るための入口になるのではないかと思います。
 NHKが今までの固定観念や先入観で見られていたことを逆手に取ることで、話題性を高められるのではないかと思います。

【会場参加者】
 皆さんの意見を伺っていると、「NHKを信頼してはいるが、インターネットで情報を収集し、テレビは見ていない人」が多いように思います。
 情報は即時性が求められますが、家に帰らないとテレビを見ることができません。そのため、すぐに確認できるインターネットで情報を収集し、テレビを見なくなるのだと思います。

【会場参加者】
 NHKのニュースサイトを見ると、ほかのニュースサイトと違い、ニュース原稿と動画が一緒になって掲載されていますが、もっと「プッシュ通知」を行えばよいのではないでしょうか。
 NHKの記者が書いた原稿を読むことができ、加えて映像とアナウンサーの声も入っています。
 ほかのニュースサイトよりもはるかに信頼度が高いと思いますし、放送直後のものを使っていると思うので、即時性もあると思います。

(荒木理事)
 NHKは、スマートフォンでNHKのニュースや災害情報を閲覧できる「ニュース防災アプリ」を提供しており、「プッシュ通知」の機能もあります。
 最新の重要ニュースを、原稿と映像で掲載していますし、雨雲マップや土砂災害の危険度も知ることができますので、ぜひご利用ください。
 このアプリを使用すると、NHKもインターネットの展開にも力を入れていることがわかると思いますが、テレビでアプリを宣伝しても、テレビを見ていない人には伝わらず、今後の展開については、NHKの課題だと思っています。皆さんには、このアプリを使っていただき、友達にもご紹介してほしい、と思っています。
 また、このほかにも、「らじる★らじる」はラジオ放送をインターネットで聞くことができますし、『NHKワールドTV』は英語で日本のニュースを世界に発信しているサイトです。ヒアリングの勉強にとてもよいという話も伺ったことがありますので、ぜひご利用ください。

【会場参加者】
 「ニュース防災アプリ」は、今の説明を聞いて、ニュースもあることを知りましたが、ロゴやデザインだけを見ると、防災の時にしか役に立たない、入れてもスマートフォンの容量を使うだけだと思っていました。
 もう少し、若者の心をつかむようなロゴやタイトルにした方がよいと思います。

(宮原委員)
 テレビで放送しているニュース番組を、そのままインターネットでも同時に流したとき、皆さんはご覧になりますか。

【会場参加者】
 外で見ると、通信料がかかってしまうので、インターネット用に編集し直して、流してほしいと思います。

(荒木理事)
 昨年、CNNのメディア担当者と話す機会があり、「テレビのコンテンツを、そのままインターネットで流すことがインターネット展開だと思ったら、大間違いです。」ということを強調されていました。
 CNNでは、コンテンツをパソコン用、スマートフォン用と、すべて別々につくっている、という話を伺い、私たちも同感だと思うとともに、考えさせられました。

(宮原委員)
 NHKとしても「インターネットにテレビと同じコンテンツを同時に配信して、皆さんに見ていただけるのか。」という問題を考えないといけないと思っています。

(住田アナウンサー)
 次に、2つ目のテーマ「公共放送の財源『受信料』について」、皆さんから意見を伺いたいと思います。

【会場参加者】
 受信契約の取次で、NHKの人が訪問してきますが、とても不快に感じます。
 今は、テレビを持っていない若者や下宿生もたくさんいますが、その人に対して、ワンセグ機能付きのスマートフォンを持っているだけで、ワンセグを見ていなくても、契約が必要と言われました。
 また、一律で受信料を徴収することに疑問があります。テレビを見ているか、見ていないかに関わらず、「必要だから」と言われても、どうしてお金を支払わなければならないのか、理解ができません。

【会場参加者】
 受信料の支払いを、何かしらの形で逃れている人が存在することに、不公平感を感じます。
 私の知り合いで、NHKの人が訪問してきたときは、「テレビを持っていない」と言い、その後にテレビを購入している人がいました。
 受信契約の取次を訪問活動で行っているので、公平性に欠けるのではないか、と思います。また、私は、全世帯から一律に受信料を徴収してもよいのではないか、と思います。

【会場参加者】
 私は一律で取るのではなく、必要性を感じている人から、受信料を徴収すればよいと思います。必要と思っていないのに、お金だけ支払うことはおかしいと思います。

(宮原委員)
 NHKは、全国どこでも、分け隔てなく視聴できるようにする公共放送としての考え方があるので、お金を支払った人だけ見ることができるような仕組みにすることは、難しいと考えています。

【会場参加者】
 「自分に得がないのに、受信料を支払わないといけない」「受信料を支払わなくてもテレビを見ることができる」となると、支払っている人は、とても損した気分になります。
 そのため、受信料を支払いたくなるような、受信料を支払うことで付加価値があるような、取り組みが必要だと思います。

【会場参加者】
 NHKの訪問活動は、少し怖いイメージがあります。
 私も大学に入ってからひとり暮らしを始めましたが、突然、NHKの方が訪問してきて、「怖い」と思いました。
 「NHKです」と言われても、詐欺や勧誘とかもあるので、いきなり来られても不信感を抱いてしまいます。
 そういうところも、受信料を支払うイメージを悪くしている要因ではないか、と思います。
 できれば、書面等で事前に訪問することを教えてほしいと思います。

【会場参加者】
 スマートフォンで課金されるゲームがありますが、何かしらのボーナスが得られるので、お金を支払うのだと思います。
 しかし、NHKの場合は、受信料を支払っても支払わなくても、状態が同じです。そのため、支払うことで、何かプラスになるようなシステムにすれば、たくさんの人に支払っていただけるのではないでしょうか。
 例えば、「おもしろい番組や興味深い番組は、支払った人だけ見ることができる」ようなシステムはいかがでしょうか。

【会場参加者】
 契約取次の訪問活動は、受信料の価値を知る前に、イメージを悪く持つ人がたくさんいると思います。
 また、NHKはオンデマンドの配信サービスも行っているので、テレビを持っていない人や、受信料を支払っていない人でも、スマートフォンやパソコンで、オンデマンドを利用したい人はいると思いますので、そこは番組ごとに課金する仕組みにすればよいと思います。

(宮原委員)
 公共放送は、国民が安心・安全な生活を送るために必要な情報を、国民全体に分け隔てなく伝えることを、基本的な役割として担っています。
 そのため、受信料制度は、「お金を支払ったからサービスを受ける」という考え方ではなく、「国民全体が幸せになるような情報を得るための、皆さんで公平に分かち合って、負担していただくお金」という考え方になります。

【会場参加者】
 それでは、税金にすればよいのではないでしょうか。

(荒木理事)
 今は、資本主義がどんどん進む中で、格差の広がりが指摘される時代で、公共放送が果たす役割は何か、ということが問われている時代ではないかと思います。
 例えば、貧困の中でいろいろな面で苦労している人たちは、孤立して暮らしているところもあり、情報そのものが入ってこない傾向があります。
 そういった人たちに向けても、NHKは情報の社会的基盤として、さまざまな情報を届けていかなければいけない、と思っています。

【会場参加者】
 負担金として国民全体の安心と安全を保証するためのもの、と考えるならば、国民全員がその情報を得られるようにするべきではないか、と思います。
 現状では、NHKを必要としていない人も多いかもしれませんが、国民全体のことを考えるなら、災害や緊急事態があったときに、すべての国民に、生活に関わる情報を伝えるサービスを確立するべきではないかなと思います。
 それは、やはりテレビだけではなく、オンデマンドのサービスや、紹介していただいたアプリでも、もっと身近に感じてもらえるようにするべきではないか、と思いました。

(宮原委員)
 全くおっしゃるとおりで、それは「放送と通信の融合」の目的のひとつとなっています。
 放送は、テレビを持っている人に対して一方通行でサービスをしていますが、通信は双方向のサービスとなりますので、災害時は、被害情報を伝えるだけでなく、被害を多く受けている人たちの情報を逆に吸い上げることができます。
 それが、今までの放送技術の世界ではできなかった通信の大きな特徴であり、放送と通信が融合する大きな意義のひとつだと思っています。

【会場参加者】
 きょう、宮原委員の話を伺い、公共性の大切さと、受信料が国民みんなで公平に負担するお金であることの大切さを、学ぶことができました。
 もし、私がここに来ていなければ、受信料を支払っていることに対して疑問を持ち続けていたと思いますし、NHKの訪問活動に対しても、悪い印象を持ち続けていたと思います。
 そのため、NHKは、災害時などにNHKの情報がどのように役に立っているのか、受信料がどのように使われているのかを、若者を含めた国民にきちんと伝えるべきだと思います。今は、それが伝わっていないと思います。

(住田アナウンサー)
 受信料制度や放送と通信の融合についてなど、さまざまなご意見をいただけたと思います。きょうは貴重なお時間、本当にありがとうございました。

 

 

○Cグループ  佐藤 友美子 委員、大橋 一三 理事

 

(佐藤委員)
 まずは、きょうお集まりの皆さんが、ふだんどのようなテレビをご覧になっているか、教えていただきたいと思います。

【会場参加者】
 私は、情報番組やニュースよりも文化系の番組をよく見ています。
 NHKでは、Eテレの『ふるカフェ系 ハルさんの休日』が好きで、よく見ています。

【会場参加者】
 私は、ふだんあまりテレビを見ていませんが、学校に行く前に朝の連続テレビ小説と『あさイチ』は、見ています。
 今は下宿していますが、親がNHKを見ていたので、昔からNHKをよく見ていました。

【会場参加者】
 家でテレビを付けたままにしておくことが多いですが、NHKの番組は、災害などがない限り見ることがありません。民放の番組では、『NEWS ZERO』を見ています。

【会場参加者】
 私は、録画した番組を見ることが多く、リアルタイムで見ることはあまりありません。
 朝の連続テレビ小説『ひよっこ』は、毎日録画して見ています。また、『クローズアップ現代+』も見ています。

【会場参加者】
 私は、録画した番組を見ることもありますし、リアルタイムで見ることもあります。
 NHKの番組では、ドキュメンタリー系の番組が好きで、『ドキュメント72時間』はとてもおもしろい番組だと思っています。民放では、報道系の番組をよく見ています。

【会場参加者】
 テレビはよく見るほうで、特にお笑い番組を見ることが好きです。
 NHKでは、『LIFE!』を見ています。また、災害ニュースや天気予報は、NHKを見るようにしています。

【会場参加者】
 私は祖父母に育てられていたのですが、祖父母がよくNHKを見ていたので、小さいころからNHKをよく見ています。
 朝の連続テレビ小説や大河ドラマは毎回見ており、朝も『あさイチ』を見てから学校に行くことが生活習慣になっています。
 『LIFE!』は、若者向けの番組ですが、最近、祖父と一緒に見たときに一緒に笑うことができて、とてもうれしかったです。

【会場参加者】
 高校時代に受験を控えていたときにNHKの語学講座や地理などの教育番組を見ていましたが、今はアルバイトで忙しいこともあり、テレビをあまり見ていません。
 録画して見ることはありますが、『世界の車窓から』のような番組をよく見ています。

【会場参加者】
 私は、サークル活動などのために、テレビを見る時間があまりありませんが、『おはよう日本』や深夜のNHKニュースを見ています。
 子どものころは、『天才てれびくん』などの教育テレビの番組を見て育ちました。

【会場参加者】
 私は、バラエティー番組が好きなので、『LIFE!』を見ています。
 また、NHKで見る番組ではスポーツ系が多く、テニスや野球等のスポーツ中継をよく見ています。また、全然知らないスポーツを取り上げた番組を見ることも好きです。

【会場参加者】
 私もお笑い系の番組が好きで、『爆笑オンエアバトル』や『サラリーマンNEO』などをよく見ていました。
 今は、ドキュメンタリーが好きで、『ドキュメント72時間』や『プロフェッショナル』などを見ています。
 以前、『プロフェッショナル』で、島根県の地方公務員を取り上げた回がありましたが、視点がとても新しいと思いました。NHKは、新しいことを積極的に進めているところが、とても好きです。

(佐藤委員)
 それでは、最初のテーマである「公共放送NHKはどうあるべきか」について、お話を伺いたいと思います。まず、大橋理事から、「NHKと民放の違い」について、簡単に説明していただきたいと思います。

(大橋理事)
 日本では、戦後から受信料を基本財源とする公共放送NHKと、コマーシャル料を主な財源とする民間放送の二元体制で、限られた電波を有効に活用して、放送文化の根幹をなしてきました。
 NHKと民放が、さまざまなジャンルの番組で切磋琢磨することで、視聴者の皆さまのさまざまな要望や期待に応える放送を行っています。
 しかし、コマーシャル料を主な財源とする民放の場合、利益や視聴率につながるコンテンツに集中し、結果として番組内容が画一化し、視聴者にとっての選択肢が広がらない恐れがあります。
 NHKは、広く視聴者に負担していただく受信料を財源とする公共放送として、特定の利益や視聴率に左右されず、社会生活の基本となる確かな情報や、豊かな文化を育む多様な番組を、分け隔て無く提供する役割があります。
 常に民放とNHKが補完をしながら、また、お互い競争する分野は競争しながら、放送文化を高めています。

(佐藤委員)
 きょうお集まりの皆さんは、テレビを見ている方が多いようですが、「若者はあまりテレビを見ていない」というデータもあります。
 皆さんのご友人のことも思い浮かべながら、「公共放送NHKはどうあるべきか」、についてご意見をいただきたいと思います。

【会場参加者】
 4月に引っ越してから、NHKの方が訪問してきて受信契約をしましたが、大学の同級生と話をしていると、受信料を支払っていない人もいます。受信料を支払っていない人に対してどのような対策を行っているのでしょうか。

(佐藤委員)
 今、受信料の支払率は78%くらいであり、残りの20%位の世帯に受信料をお支払いいただけていない状況です。特に都心では、支払率が低い傾向があります。
 受信料の不公平感を解消することは、NHKの大事な仕事だと考えています。

(大橋理事)
 受信料制度は、放送法で「NHKの放送を受信できる受信設備を設置した者は、NHKと受信契約をしなければならない」と定められています。
 今は、80%近い方が支払ってくださっていますが、残りの20%あまりの方が支払っていない状況にあり、支払っている方からすると不公平感があります。
 公平負担の徹底に努めることはNHKの責務であり、支払っていないお宅を1軒1軒訪問したり、はがきを郵送したりして、契約をお願いしています。
 また、それでもなお契約していただけない方には、不本意ですが、法的な手続きなども実施して、公平負担の徹底に、最大限の努力をしています。

(佐藤委員)
 先ほど、「公共放送の役割」について話をさせていただきましたが、NHKは、「防災・減災報道」や「正確で公平・公正な情報」など、いろいろな情報を正確にお届けする役割があります。また、全国に放送局がありますので、地域の情報を全国や世界に発信することもできます。
 このほか、首都直下地震などで東京から放送を出せなくなった場合、大阪から放送を出す機能や、停電になった場合でも放送を継続できるような設備を全国の放送局に整えています。
 このような、目には見えない「公共放送の役割」を皆さんに知っていただき、理解していただくことで、受信料を支払っていただく方が増えていくのではないかと思っており、このような機会に話をする意味もあると思っています。

【会場参加者】
 民放とNHKについて、「ここが違う」ということがはっきりしないと、受信料を支払うことにつながらないように思いますが、具体的に民放にはできなくて、NHKにはできることは、何でしょうか。

(佐藤委員)
 たとえば『バリバラ』のような、障害者をテーマにした番組や、教育番組などが具体例にあたるかもしれません。NHKは、スポンサーがつかないような番組も、たくさんつくっていて、そういう番組は民放にはできないことだと思います。
 NHKの場合、『ドキュメント72時間』のように、何気ないところの情景や人に焦点を当てた番組をたくさんつくっていますが、それだけではだめだと思います。若い皆さんが、グッと引きつけられる番組も必要だと思います。

【会場参加者】
 放送の場合、放送そのものが時間によって区切られているので、見たい番組を放送している時間帯に見られるとは限りません。
 NHKでは、インターネットで月額料金がかかるVODサービスを提供していますが、受信料とはまた別の料金体系になっており、インターネットでたくさんの動画が配信される時代となる中、このサービスは、そのままでもよいのではないか、と思っています。

(佐藤委員)
 皆さんがテレビを見ているといっても、番組は、テレビの画像、インターネット、スマートフォンなどさまざまな端末で見ることができます。今、時代が大きく変わりつつあるということを、NHKでも大きな課題として認識しており、さまざまな検討が行われています。例えば、受信契約は、受信設備を持っている世帯を単位としていますが、今後もそれでよいのか、ということも議論になっています。
 今は、テレビ以外への番組配信や見逃し配信をしているところもあります。先ほど、皆さんは「テレビを見ている」と伺いましたが、これからは、番組をテレビで見ているとは限らないことになると考えています。

(大橋理事)
 NHKの受信料は、テレビを設置した人に支払っていただいており、ほとんどそのお金で、NHKは運営されています。
 放送をインターネットで見たいという人が増えてきていますが、テレビを見ている人からいただいているお金を使って、インターネットで見ている人にサービスを提供してよいのか、という考え方もあります。
 そのため、現在、NHKで提供しているVODサービス「NHKオンデマンド」は、受信料とは別料金になっています。
 しかし、これだけインターネットとテレビの区別が付かない時代に変わってきているので、世の中が「テレビからいただいた受信料をインターネットにもう少し使ってよい」、ということになれば、NHKでももう少しインターネットを強化することができます。

【会場参加者】
 インターネットでニュースを見るのであれば、自分の興味があることを調べて見るので、得る情報や知識に偏りが出ることもある、と思います。
 一方、テレビは見ているだけで、嫌でもいろいろな情報に触れることができる、ということがテレビの強みだと思います。

(大橋理事)
 ご指摘のとおり、テレビのよさの一つに「気づき」があります。これは、家で何気なくテレビを付けていると、「こんなニュースをやっている」「こんなおもしろいことをやっている」というように、本来見ようと思っていないことを、「見たい」と気が付くわけです。
 インターネットの場合、検索して、自分が知りたいものを見に行くので、知りたいことを知ることはできますが、知らないことに「気づく」ことができません。このことは、テレビの特徴でもあると思います。

(佐藤委員)
 学生の皆さんにも、同じような欲求があると思いますが、実際はどうでしょうか。
 例えば、『ドキュメント72時間』のような番組を、皆さんはよくご覧になっているようですが、最初から「自分で見たい」と思って、見ている番組なのでしょうか。

【会場参加者】
 私も『ドキュメント72時間』を見ています。最初は、親が見ていたので、興味を持つようになりました。自分からはなかなか「見たい」と思わず、親や周囲の人の影響も大きいと思います。

【会場参加者】
 姉の影響でNHKの医療番組を見ていましたが、とてもおもしろく、知識を得ることができました。家族の影響も大事なことなのではないか、と思います。

(佐藤委員)
 家族の影響以外でも、例えば、「SNSをもっと使って、もっと番組をPRしてはどうか」という話もよく出てきます。
 皆さんにとても人気のある人が、「この番組を見たらおもしろいよ」とツイートしてくれたら、皆さんもご覧になっていただけるのではないか、という話も聞いたことがあります。

(大橋理事)
 私は、昨年近畿大学で開催した、「キャンパス・ミーティング」にも参加しましたが、「NHKはよい番組をつくっているのに、インターネットを見ている世代に向けた宣伝が足りない」という意見を多くいただきました。
 皆さんの中に、インターネットの情報で「NHKの番組がおもしろそうだな」と思って、実際にテレビをご覧になった方は、いらっしゃいますか。

【会場参加者】
 『おげんさんといっしょ』は、インターネット上で、とても話題になっていたので、それをきっかけに番組を見ました。

(大橋理事)
 番組に出演している方によるツイッターなどを通じた番組PRがきっかけとなって、番組をご覧になっている人もいると思います。

【会場参加者】
 インターネットからの情報で番組を見ようとはあまり思いませんが、人から勧められたら、結構見ることがあります。
 この前、友達から、『浦沢直樹の漫勉』という番組を薦められましたが、それを見てとても感動しました。

(佐藤委員)
 経営委員になっていろいろな話を伺っていると、NHKは、たくさんのトライアルを行っており、「若い人たちに何をしたら理解されるのか」「何をすれば楽しんでもらえるか」ということをよく考えている、と思っています。

(大橋理事)
 NHKの『1.5ch』というインターネットのサイトでは、『ガッテン!』や『所さん!大変ですよ』、『ドキュメント72時間』などの番組を1分程度に編集してインターネットで配信しています。NHKのホームページから、「1.5ch」で検索すると、いろいろな番組が入っていますので、ぜひご覧ください。

【会場参加者】
 短い時間であれば「見ようかな」と思えるので、3分ぐらいでまとめたダイジェスト版をYou Tubeなどで流し、それをきっかけに興味を持ってもらう、というのはどうでしょうか。

(大橋理事)
 You TubeにもNHK公式チャンネルがあり、短い動画を出すこともありますが、恒常的には出していません。
 『1.5ch』で配信した『クローズアップ現代+』の動画をYou Tubeでも配信し、見ていただいた人に評価をいただく取り組みも行っています。

【会場参加者】
 私は、動画サイトで見ることはあまりなく、ミュージックビデオを見る程度しか利用していませんが、ツイッターやフェイスブックといったSNSに投稿された短い動画であれば最後まで見ることが多いので、もっとSNSを利用することが、より多くの人がNHKに触れるきっかけになるのではないか、と思います。

(佐藤委員)
 皆さんは、SNSの情報をどのようにして拡散しているのでしょうか。

【会場参加者】
 リツイートや、インスタグラムの口コミとかを使っています。
 最近では、『逃げるは恥だが役に立つ』という民放のドラマも、インスタグラムの口コミで、爆発的に広がっていました。

【会場参加者】
 私は家にいる時間より外にいる時間が長いので、いろいろな情報をインターネットで調べますが、情報をあまり信用していません。
 また、周りの人が「おもしろい」と言っても、自分が見ておもしろく思わなければ、あまり見ないと思います。

【会場参加者】
 私が好きなNHKの番組を見始めたきっかけは、たまたまおもしろい番組を偶然見たからでした。
 NHKの番組はおもしろい番組が多いので、見るきっかけがあれば見るようになると思います。

(佐藤委員)
 その「見るきっかけ」が大きな課題だと思っています。

(大橋理事)
 いろいろなお話を伺っているかぎり、NHKは若い人にはおもしろい番組をつくっているがきっかけ作りが苦手なのか、もしくは、番組自体が若い人に受け入れられないのか、どちらかではないかと思っています。

【会場参加者】
 「民放のドラマとNHKのドラマは異なる」と思っており、ドラマの中のバラエティーの要素など、民放とNHKの役割分担ができていると思います。
 私は、NHKのドラマを見ていませんが、時代劇などはNHKでしかつくることができないのではないか、と思います。

(大橋理事)
 今、時代劇はとても貴重な存在になってきて、民放は、ほとんど制作しなくなってしまいました。NHKだけが時代劇のドラマを制作しているのが、実情です。
 やはり、時代劇は特殊なつくり方があるらしく、そういう文化を残さないといけないという意味もあって、NHKは時代劇を制作し続けています。

【会場参加者】
 若い人たちは、同世代の人が出演している番組を注目すると思います。
 Eテレの『人生デザインU-29』で、20代前半で脱サラし、コーヒーショップをしている方の物語が放送されたのを見て、多くの共感する部分がありました。
 また、以前放送していた10代の人が討論する『真剣10代しゃべり場』という番組も、若い人たちが自分と同世代の人の意見を聞ける番組で、人気があったと思います。

【会場参加者】
 NHKは全国に放送局があり、「地域の応援団」の役割もあるとのことなので、高齢者向けの身近なニュースや番組を多くつくっている印象があります。
 私は『Rの法則』をよく見ますが、同年代の人が頑張っているとか、自分と照らし合わせるような番組があったら、すごく意見も言いやすいし、ツイッターなども発言しやすいと思いました。

【会場参加者】
 一度、私のことをニュースで取り上げてもらったことがあり、周りのみんなが見てくれたことがありました。
 身近なところまで取材に来てくれることがNHKの魅力だと思うので、身近な若い人のことをもっと取り上げてくれたら、もっと若い人もNHKの番組を見るようになる、と思います。

【会場参加者】
 NHKの番組を、インターネット上に動画として投稿することは難しいと思いますが、『1.5ch』の1分動画を“シェア”したり、自分なりの番組表をつくって誰かに提供し、「自分のお気に入りの番組はこれです」ということが活発にできたら、もっと若い人たちの間で“シェア”が広がり、同じ興味を持つ人に広がっていくのではないかと思いました。

(佐藤委員)
 いま、受信料は「世帯」単位でいただいていますが、これからは「世帯」という概念が無くなるかもしれません。
 例えば、「テレビを家族で見ている」とおっしゃった方がいますが、それはテレビが家族のコミュニケーションツールのひとつになっていることであり、実際は、別々の番組を見ているということもあるように思いますが。

【会場参加者】
 私は、むしろ、NHKは個人のニーズに合わせて番組をつくっているという印象があります。
 NHKには、「知らせるべきことを伝える」という基本姿勢があると思っており、視聴ニーズをきちんと分けて、障害者向けの番組や、手話ニュースなども放送しているのだと思っています。

【会場参加者】
 私は、幅広い層に向けて、例えば、視聴率に関係なくても高齢者向けの番組を放送していくことがNHKの役割だと思うので、演歌の番組などもつくっていく必要があると思います。

(佐藤委員)
 NHKがお笑い系などのバラエティー番組をつくることについて、どのように思われますか。

(大橋理事)
 お笑い系の番組では、視聴者のご意見が二分していて、「若い人向けによく頑張っている」と褒めていただく人と、「NHKにそのようなことは期待していないので、民放とは違う堅い番組をつくってほしい」と批判する人がいます。

【会場参加者】
 NHKがお笑い系の番組をつくっているイメージがあまりなく、高齢者の方がよくテレビを見ているゴールデンタイムの時間帯には、お笑い系の番組は放送していないと思います。
 若い人が見る深夜時間帯に、ライブやコント番組など、民放のようなお笑い番組を放送しても問題はない、と思います。

(佐藤委員)
 皆さまからいただいている受信料でつくった番組を、皆さまに見てもらえないことは、ある意味お金のむだづかいでもあります。
 「若い人たちにとって、これからのテレビで見たいものは何だろうか」、ということを、私たちはとても真剣に検討しています。
 いろいろな実験をしても、それほど視聴率が上がらないのは、番組が悪いのではなく、PRが足りないだけかもしれません。

【会場参加者】
 NHKの番組は、見たらおもしろい番組がたくさんありますが、みんなが見ていないから、見ても周りの人に話すことができません。“シェア”や共有ができないのです。
 民放の番組を見たら、「これあったよね」「この企画おもしろかったよね」とみんなで話すことができますが、NHKの番組の場合、そのような機会が少ないと思います。

【会場参加者】
 年末に放送している紅白歌合戦の視聴率が下がっている、ということを聞いたことがありますが、それは、高齢者向けの歌謡曲も、若い人向けの曲も、どちらも取ろうとして、結局、どちらの人も離れてしまっているのではないかと思います。
 若い人も高齢者の方も、みんなが楽しめる番組というのは、なかなか難しいと思います。

【会場参加者】
 「You Tubeでチャンネルをつくったらよい」という意見がありましたが、私はあまりしてほしくありません。
 NHKにはもっと堂々としてほしいので、周りを巻き込んで、口コミでたくさん広がる、「賢者のイメージ」を守ってほしいと思いました。

【会場参加者】
 昨年の紅白歌合戦で専用のアプリを使ったAKB48の紅白選抜メンバーを決める取り組みを行っていました。
 投票するためにはアプリをダウンロードする必要があり、投票したい人は必然的にNHKのアプリをダウンロードしなければならない仕組みでしたが、若い人に見てもらうために、このような積極的な取り組みは、とても有効だと思いました。

【会場参加者】
 NHKの番組では、『LIFE!』しか見ていません。この番組のおもしろさは、民放にはない派手過ぎない、ずっとげらげら笑うと言うよりは、くすっと笑うようなNHKならではの魅力があると思っています。
 ほかの世代からは、いろいろな批判があると思いますが、若い人をターゲットにするならば、深夜帯に『LIFE!』のようなNHKならではの「規制の中でやるおもしろさ」という番組が増えたらよいと思います。

【会場参加者】
 若い人に見てもらうことは、そこまで難しいことではないと思います。
 若い人に人気のタレントを呼んできて、去年の紅白歌合戦のようにNHKのアプリを入れるような仕組みを取り入れることで、必然的に見てもらえるのではないか、と思います。しかし、それではNHKらしくないように思え、民放と棲み分けてほしいところだとも思います。
 NHKらしさを残しつつ、若者を取り入れることは、とても難しいことだと思いますが、私にとってNHKは、高齢者の方が見る番組や、自然災害が起きた時の報道のイメージが強いので、日常的に見ることがありませんでした。
 そういうイメージを変えていかないと、若い人がついてこないかもしれませんが、それではNHKらしくなくなってしまうとも思います。
 番組のPRも、NHKの番組で宣伝するのではなく、「この番組おもしろいよ」ということが自然にSNSで広まっていくことが、NHKらしくてよい広まり方だと思います。

【会場参加者】
 皆さんも言っていますが、若い視聴者を得るために民放のようなバラエティーに力を入れ過ぎては、本来の視聴者層がいなくなって、NHKがなくなってしまうと思います。

【会場参加者】
 例えば、新聞でも「自分の親が取っていたから、自分も同じ新聞を取ろう」と思ったりしますので、テレビも、子供のいる世代の人たちをターゲットにして、家でNHKを見る習慣をつけてもらえれば、大人になっても、NHKを見てもらえるようになるかもしれません。

(佐藤委員)
 一番見ていない30代の子育て世代に、見て頂けるような番組をつくらなければいけない、というご意見ですね。

【会場参加者】
 これからインターネットの時代に需要は少ないかもしれませんが、見たい番組を同じ世代の人と一緒に、同じ時間に見たい、と思います。

(佐藤委員)
 NHKでは、8Kの映像を皆で視聴するパブリック・ビューイングの機会をつくっていますが、そういうニーズに応えられる番組をつくると、おもしろいかもしれません。

【会場参加者】
 私もお笑いが好きですが、『LIFE!』のような笑いが苦手で、もっと大きな笑いがある番組のほうが好きです。
 落ちついて見ることができるところがNHKのよいところでもありますが、そのために少し選びにくく、友達と“シェア”をしようと思っても話題になりにくいのだと思います。

【会場参加者】
 皆さんからは、「NHKらしさは大事」という意見があり、私もNHKが好きなので、もっと広まってほしいなと思います。
 これから、よい番組が口コミなどで広まり、いろいろな人に見てもらえたらよいと思いました。

(佐藤委員)
 皆さん、貴重なご意見をありがとうございました。若い方ならではの、いろいろな意見を伺えて本当によかったです。

 

 

≪各グループディスカッションの報告≫

 

(住田アナウンサー)
 それぞれのグループで、どのような内容が話し合われたのか、どのようなご意見や質問が出たのか、グループの代表の方にご報告をお願いしたいと思います。

 

【Aグループ代表者】
 NHKの番組に対して、堅いイメージを持っていて、「NHKの番組を見ない」という学生がたくさんいました。
 一方で、『紅白歌合戦』や『クインテッド』など、NHKには誰もが知っている番組も多くあり、「みんながわかるNHK」というところは残してほしい、という意見もありました。
 テレビのように流れてくるものを見るだけでなく、見たいものを選べる時代になったことで、番組の質が問われている時代になった、という意見や当たり障りのない報道が多く、ジャーナリズムを追及していないという厳しい意見もありました。
 「NHKを見ていないから受信料は支払いたくない」という人に対するアプローチについて、NHKを見る、見ないにかかわらず情報の社会的基盤として、必要な組織であることを理解していただくことが大事、という意見や、受信料の使い道をもっと発信することがNHKの信頼につながるのではないか、といった意見が出ました。
 また、NHKには貴重な映像がたくさんある、という強みがあり、インターネットなどを活用して、貴重な映像をもっと発信することを期待しています。

 

【Bグループ代表者】
 「公共放送NHKはどうあるべきか」というテーマでは、大きく分けて4つの意見が出ました。
 1つ目は、「ニュートラルであるべき」ということです。例えば、戦争や原爆投下に関するニュースは、公共性のあるNHKの番組で見たい、という意見がありました。
 2つ目は、「即時性を持つべき」ということです。例えば、今はインターネットの普及により、スマートフォンでもニュースを知ることができますが、テレビをつける前にインターネットでニュースを見ると、テレビを見なくても情報を得ることができます。
 普段、あまりテレビを見ていない若者がテレビをつけて、しかもNHKの放送を見てもらうためにはどうするべきか、といった課題に対しては、即時性のあるスマートフォンのアプリやインターネットの戦略をもっと考えるべきではないか、といった意見が出ました。
 3つ目は、「多くの人が理解できるようなニュースを放送するべき」ということです。「手話ニュース」や「多言語放送」で伝えるニュースは、これからも続けてほしい、という意見がありました。
 最後に、「視聴者の心を丁寧に扱ってほしい」という意見がありました。現在の放送でも、NHKの番組は視聴者に対して細やかな気遣いがある、という意見があり、これからも続けてほしいと思います。
 次のテーマ「受信料について」ですが、大きく分けて2つの意見が出ました。
 1つ目は、「受信料取次の訪問活動を見直すべきではないか」、ということです。例えば、ひとり暮らしをしている人に対して、急にNHKの担当者が訪問してくると、少し怖いと思ってしまうので、訪問する前に手紙やはがきで案内を出してから訪問してほしい、という意見がありました。
 2つ目は、「受信料を支払っている人が、損をした気分にならないような取り組みが必要なのではないか」といった意見がありました。例えば、支払っている人にしか入らない情報などがあるとよい、と思いました。
 受信料を支払っている人の中にも、「何で支払う必要があるのだろう」、と疑問に思うことがあると思います。きょうのグループ討議の中で、「受信料は国民の安心・安全のための負担金」といった意見があり、そのような考え方が普及すれば、支払っている人がもっと納得するのではないか、と思いました。

 

【Cグループ代表者】
 最初に、自己紹介を兼ねて、NHKのどのような番組を見るか、意見を出し合いましたが、Cグループの皆さんは、災害時の報道番組だけでなく、『LIFE!』などのお笑い系の番組やドキュメンタリー番組を見ている人がたくさんいました。
 佐藤委員から、「若い世代の視聴率が低い」という課題があると伺いましたが、NHKの番組はおもしろい番組が多いので、その番組を知るきっかけ作りをきちんとできれば、若い世代も取り込んで、もっとたくさんの人が見てくれるのではないか、という意見でまとまりました。
 具体的には、ツイッターやインスタグラムなど、SNSの活用や、『1.5ch』のように、番組を短時間でまとめて、それをYou Tubeで広めていくことがよいのではないか、といった意見がありました。また、若者に人気のある出演者が活躍している番組があると若者は見たいと思うので、出演者がSNSなどを通じて番組情報をシェアすることで、若者世代を巻き込むことができるのではないか、と思います。
 このように、若い人がアクセスするところにたくさん発信することで、NHKのおもしろい番組を知ってもらうことができ、一度見てもらえれば、その後も見続けてもらえるのではないか、と思います。
 一方で、NHKらしさを忘れないでほしい、という意見もありました。時代劇や民放にはまねできないような視聴率によらない番組など、今後も続けながら、若い世代にも見てもらえるような取り組みをしてほしい、という意見がありました。
 Cグループは、NHKが好きだからこそ、たくさんの意見が出たと思うので、ぜひ参考にしてほしいと思います。

 

(住田アナウンサー)
 それぞれの3つのグループで活発なご意見をいただきました。ありがとうございました。
 最後に、きょうのミーティングを通して、各経営委員から感想とお礼を皆さまに申し上げたいと思います。

(佐藤委員)
 きょうは、本当に貴重なご意見をありがとうございました。
 私は、とてもNHK愛にあふれたグループに参加して、皆さんがNHKの番組を楽しみに見ていただいていることを知りました。
 しかしながら、最初から「NHKのこの番組を見よう」ということではない現状も聞かせていただきました。
 よい番組を制作しても、それを届けられないのでは意味がないので、「どうやって届けるか」、ということをこれから考えていきたいし、きょうの話を経営委員の中だけではなく、執行部にもぜひ伝えて、せっかく制作した番組を皆さんに楽しんでいただけるようにするためには、どうすればよいのか、ということを共有していきたいと思っています。
 きょうは、本当にありがとうございました。

(宮原委員)
 数年前まで大学で講義していましたが、久しぶりに若い方々と楽しい議論ができてよかったです。もっと厳しい、針のむしろに置かれるのかと思っていましたが、学生の皆さんからはNHKに対して非常に参考になる好意的なご意見をいただきました。
 しかし、そういう人たちがここに来ていただいているのであり、やはりそうでない人はここに来てない、ということも、われわれはきちんと認識しなければならないと思いました。
 いろいろな議論を聞かせていただいて、われわれ経営委員としても非常に参考になる意見をたくさんいただきました。
 きょうは、どうもありがとうございました。

(森下委員)
 きょうは、ありがとうございました。
 いろいろな意見が出て、私が期待していた以上に皆さんが考えてくれていることが、本当にうれしかったです。
 きょうは、基本的なジャーナリズムとしてのあるべき姿や、インターネットとのあり方など、いくつか宿題を持って帰ります。特に、よい番組を制作して、それをYou Tubeなどにもっと流したらよいのではないか、というご意見は、本当によい意見だと思いました。
 われわれとしては、執行部に対してもっと若い人がアクセスしてくれるような取り組みをしなければいけない、と言うことを伝えたいと思います。本当に、ありがとうございました。

(住田アナウンサー)
 本当にきょうは貴重なご意見をありがとうございました。
 分科会の中で、もっと言いたかった、聞きたかった、という方もいらっしゃるかと思います。お手元のアンケート用紙に、きょうの感想などとあわせてご記入いただきたいと思います。
 いただいたご意見は、大切に受けとめて、経営や番組づくりに生かしてまいりたいと思います。

 

 

<NHKキャンパス・ミーティング@立命館大学>参加者当日アンケート

※全表の単位はすべて人数

質問1:性別

男 性 女 性
6 29

質問2:年齢

10代 20代
3 32

質問3:今回のイベントに参加していかがでしたか

大変満足 満足 普通 不満 大変不満
12 20 2 1 0

質問4:今回のイベントを何でお知りになりましたか(複数回答)

HP(NHK) 放送(テレビ) 放送(ラジオ) メール・Twitter 大学 友人・知人 その他
1 0 0 0 22 7 6

質問5:一番印象に残ったコーナーはどこでしたか(複数回答)

経営重要事項 分科会 講演会 特になし 未回答
0 20 10 0 7

質問6:NHK経営委員会の仕事を知っていましたか

よく知っていた 知っていた 知らなかった その他
0 2 33 0

質問7:今回のイベントに参加して、NHK経営委員会の活動について理解が深まりましたか

理解が深まった 変わらない わからない その他
28 6 1 0

 

 

<アンケートに寄せられた主なご意見>

 

経営全般について

  • NHKの役割やあり方を知り、受信料を支払う意義を理解することができた。
  • 一律で国民全員が受信料を支払う現在の制度はおかしいと思う。公平に情報を与えなければならないのであれば、税金で賄うべきだと思う。
  • 受信料は公平に負担するべきだと思うが、支払わずにNHKを見ている人もいるので、より公平性の高い徴収方法を考えてほしい。
  • 受信契約の訪問活動はイメージが悪いので、明るいイメージに変わってほしい。
  • 訪問活動の事前告知制度を、ぜひ実現してほしい。
  • 受信料に関する訪問活動や、受信料の使い道を説明するような番組を、NHKみずからつくり、健全な情報公開に取り組むべき。
  • 公共放送の重要性を、多くの人にもっと知ってもらうような広報を行うべき。
  • NHKの公式アプリなどを活用し、若者などテレビを見ない人をテレビの発信する情報に近づけられることができるかが課題。
  • ツイッターで「いま話題になっていること」を知ることがきっかけとなり、新聞やテレビニュースなどのメディアで情報を得ることが多い。
  • インターネットの常時同時配信は、受信料制度の本質を捨てるような行為だと思う。
  • 台湾でもテレビニュースは、インターネットで見ることができるので、日本のテレビニュースもインターネットで視聴できればよいと思う。

 

放送について

  • 公平・公正を目指すのはもちろんだが、一般論や客観的な視点にこだわりすぎて、真相に迫るジャーナリズム活動ができていないように思う。
  • 政権寄りの報道が多いように思われるので、政府に批判的な意見をもっと取り上げる必要があるのではないか。
  • 災害時に本当に得たい情報はSNSやインターネットで調べることができる。NHKには本来の目的に力を入れつつ、独自の特色を生かした報道をしてほしい。
  • NHKは、公共放送なので民放との競争は考えず、公共放送にしかできない番組をつくることに重点を置いてほしい。
  • NHKに対して「堅い・暗い」というイメージを持っている人は多いと思うが、それがNHKの魅力であり、だからこそ民放にはできない番組づくりができるのだと思う。
  • NHKの堅いイメージを少し崩して、若者向けの番組づくりや、番組の宣伝にも力を入れてほしい。
  • 仕事をしている手を止めてでも見たくなるような、また、大勢の人とテレビを囲んで見たくなるような、番組をつくってほしい。
  • NHKの番組は、独自性があっておもしろいので、今後もより質のよい番組を制作してほしい。
  • NHKの番組は、質のよいものが多く、いろいろな人に見てもらいたい。
  • 『バリバラ』のような番組は、NHKに対するイメージが変わり、インパクトがある分、訴える力が強いと思った。

 

運営、その他について

  • 議論することで、NHKのよさや重要さを改めて感じることができた。
  • 参加者がNHKに対してさまざまな考えを持っており、とても勉強になった。
  • 「視聴者のみなさまと語る会」は、視聴者の意識を変えるよい企画だと思う。
  • 「キャンパス・ミーティング」の議論をより活発に行えるような、話題や材料をもう少し準備してほしい。