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2019年度 第3回
NHKキャンパス・ミーティング@名古屋大学
(2019年7月12日(金)開催)

 

<会 合 の 概 要>

 「経営委員会による受信者意見聴取」の2019年度第3回は、参加対象を18歳以上の学生に限定し、「NHKキャンパス・ミーティング@名古屋大学」として、名古屋市千種区の名古屋大学東山キャンパスで開催した。
 なお、学生に限定した「語る会」は、武蔵大学(2009年度) 、関西学院大学(2010年度)、中央大学(2013年度)、東京藝術大学(2014年度)、 埼玉大学(2015年度)、お茶の水女子大学(2015年度)、近畿大学(2016年度)、立命館大学(2017年度)、NHK放送技術研究所(2018年度)に 続き、10回目の実施となった。
 当日は、参加した学生を3つのグループに分け、各グループに経営委員、理事がそれぞれ加わり、「ネット時代の公共メディア」というテーマで、東 海地方にお住まいの10大学の大学生、大学院生27人から意見を聴取した。

 

<会 合 の 名 称>

NHKキャンパス・ミーティング@名古屋大学
視聴者のみなさまと語る会

 

<会 合 日 時>

2019年7月12日(金) 午後4時30分〜午後6時30分

 

<出  席  者>

〔視聴者〕

公募による大学生、大学院生 27人

〔経営委員〕

森 下 俊 三  (委員長職務代行者)

 

井 伊 雅 子  (委員)

 

中 島 尚 正  (委員)

〔執 行 部〕

中 田 裕 之  (理事)

 

松 坂 千 尋  (理事)

 

正 籬  聡   (理事)

〔司 会〕

内 山 俊 哉  アナウンサー

 

< 会    場 >

 名古屋大学東山キャンパス(名古屋市千種区)

 

< 開 催 項 目 >

 以下のとおり進行した。

 

1 開会あいさつ

2 経営委員による説明、協会の基本方針、重要事項について

3 意見の聴取(グループディスカッション)

  テーマ:「ネット時代の公共メディア」

4 各グループディスカッションの報告

5 閉会あいさつ

 

 「視聴者のみなさまと語る会」終了後、「もっと知りたい『チコちゃんに叱られる!』」と題して、制作局の水高満チーフ・プロデューサーによる講演会を開催した。

 

<概要・反響・評価>

  • 公募の結果、ホームページなどを通じて申し込みがあった44人のうち27人が参加した。

  • 当日は、3つのグループに分かれて「ネット時代の公共メディア」をテーマにしてディスカッション形式で進行した。

  • グループディスカッションでは、参加者が付箋にテーマについての意見をキーワードで書き、それらをすべてボードに貼り、意見を可視化した上で議論を進め、限られた時間の中でより多くの意見を聴取することができた。

  • 参加者からは、「受信料制度の理解促進」「インターネット向けサービスの取り組み」「公平・公正な報道」「若い世代の接触率向上に向けた取り組み」「地域発信」など、多岐にわたる意見や提言が寄せられた。

  • 語る会終了後に行ったアンケートには、27人から回答があった。主なアンケートの結果は次のとおり。

    <参加者の満足度>
     「大変満足」6人、「満足」12人、「普通」1人、「不満」0人、「大変不満」0人、未記入8人

    <経営委員会について>
     「今回のイベントに参加して、経営委員会の活動について理解が深まりましたか」との質問に対し、「理解が深まった」との回答が25人からあった。


《協会の基本方針・重要事項の説明》

 (井伊委員)

 経営委員の井伊雅子です。きょうは、NHKキャンパス・ミーティング@名古屋大学にお越しいただき、本当にありがとうございます。皆さんの声を直接伺う機会をとても楽しみにしてきました。
 NHKの経営計画や活動について説明をする前に、私たち経営委員についてお話をしたいと思います。
 NHKの経営委員は、放送法という法律に基づいて、国会の同意を得て内閣総理大臣から任命されています。さまざまな分野や地域から12人が選ばれていて、経営委員会で経営の基本方針や予算、事業計画などを決めています。また、NHK会長の任命も行います。執行部が決められた方針に沿ってNHKを運営できているかどうかチェックすることも、経営委員の仕事です。私たち経営委員は、NHKの経営にあたり、視聴者のご意見を踏まえ、適切な判断や検討を行うことが求められています。そのため、放送法に基づき、本日のように皆さまから直接お話を伺う会合を日本各地で開いています。
 さて、皆さまから事前にいただいたアンケートにこんなご質問がありました。「スマホでいろいろな番組が見られるようになりましたが、NHKはこのような時代にどのような経営戦略を立てていますか」。とてもよい質問をありがとうございます。
 NHKもテレビやラジオだけでなく、パソコンやスマートフォンでご覧になれるインターネットサービスをすでに提供しています。また、今年度中には、テレビと同じ番組を、どこにいても、例えば電車の中などでも、スマートフォンなどでいつでもご覧になることができるように準備を進めています。
 こうした変化の時代に、放送やインターネットでNHKがどのようなメディアを目指しているのか、それが書かれたものがNHK経営計画です。経営計画は経営の基本方針です。私たち経営委員と執行部が話し合いを重ねてまとめました。
 ことしは3か年の計画の2年目です。私たちが取り組む重点方針はこちらの5つです。
 1) “公共メディア”への進化
 2) 多様な地域社会への貢献
 3) 未来へのチャレンジ
 4) 視聴者理解・公平負担を推進
 5) 創造と効率、信頼を追求
 NHKの取り組みについてご紹介するビデオがありますので、まずそれをご覧ください。
 (ビデオ「公共放送NHK」よりNHKの活動について紹介)

 

 このように、NHKは視聴者の皆さまのそばで役に立ち、情報の社会的基盤としての役割を果たす公共メディアへの進化を目指しています。来年行われる東京オリンピック・パラリンピックに向けては、NHKの放送をパソコンやスマートフォンを通じて、いつでもどこでも皆さんにご覧いただけるよう準備をしています。
 皆さんからいただいたアンケートの中にこんなご意見もありました。
 「NHKは視聴者からの受信料を使って情報発信をしているので、みんなが納得して見られるメディアであってほしい」。
 全くそのとおりだと思います。
 NHKは皆さまからいただく受信料で運営されています。税金でもなく、民放のような広告収入でもなく、皆さまに公平に負担していただく受信料だからこそ、特定の利益や意向に左右されることなく、公共放送NHKとしての役割を果たすことができます。こうした考えから、放送法で「NHKの放送を受信できる受信設備を設置した者は、NHKと受信契約をしなければならない」と定められています。
 ここで受信料について皆さんにお知らせしたいことがあります。親元などから離れてひとり暮らしをされている学生の方でも、ご家族とは別に受信料のお支払いが必要になりますが、家族割引という受信料が半額になる制度があります。また、親元などから離れて暮らす学生のうち、経済的理由が選考基準となっている奨学金制度や、授業料免除制度の適用を受けている学生の方は、受信料が免除されます。
 受信料の値下げも実施します。2018年度の受信料収入見込みの4.5%程度を値下げします。まずは、消費税引き上げが行われることし10月に受信料額を改定せず、地上契約と衛星契約を実質2%値下げします。そして、来年10月から地上契約と衛星契約を2.5%値下げします。
 最後に、こんなご意見もありました。「NHKは若い世代とどうかかわっていますか。公共メディアは必要なのでしょうか」。
 これからのNHKが公共メディアとして皆さまの役に立つメディアであるためには、未来を担う皆さんのような若い世代にとっても、魅力的なメディアであるということがとても大切だと考えています。皆さんは、どんなNHKなら必要だと思うでしょうか。これがまさに、きょう私たちが皆さんからぜひ伺いたいと思っていることです。皆さんの意見をNHKの経営に生かしていきたいと思っています。
 この後のグループディスカッションで、率直なご意見をお聞かせいただくことを、とても楽しみにしています。よろしくお願いします。

 

《グループディスカッション》

 

〇 グループディスカッションでは、活発に意見を出していただくため、参加者に「ネット時代の公共メディア」についての課題や意見をキーワードで付箋に書いていただき、それらをボードにすべて貼って、全員の意見を可視化した上で議論を進めた。

 

○Aグループ  森下 俊三 委員長職務代行者、中田 裕之 理事、内山 俊哉 アナウンサー

 

(内山アナウンサー)
 このグループの進行を務めるのは、アナウンサーの内山です。そして、森下代行と中田理事が同席いたします。

(森下委員長職務代行者)
 まず、さまざまな面から意見を出していただいて、皆さんがいろいろな意味で問題意識を持たれていると思いました。
 どれも非常に重要なことで、基本的にネットで流すものに皆さんは何を期待しているか、ネットではどういうことが期待されているか、という面から見ていかないといけないと思います。
 皆さんの意見も、そういう意味で出ているのではないかと思いますが、結局は「NHKらしさとは何か」というところが1つのポイントになります。私が考えるNHKらしさとは、信頼できる放送ではないかと思いますが、付箋にもいくつか出ていますので、その点について皆さんの意見をお聞かせいただきたいと思います。
 「公平な視点の放送」、「N H K にしかできないもの」、「責任感」、「政治的中立」、「見る価値のある放送」、「正しい情報を伝える」、このあたりから伺いたいと思います。

【会場参加者】
 公平・公正という話をよくされていますが、何が公平・公正なのかという基準は人によって違います。
 経営委員の皆さんがいろいろな分野から選ばれているとは言え、国会の同意を経て選ばれていて、権力に近い立場にいることを考えると、本当に公平なのか、という疑問が残ります。
 政治的中立という点では、やはり政権に寄らないことは難しいかもしれませんが、政権を批判する特集番組をあまり見たことがないので、そういう番組も見てみたいという期待を込めて書きました。

【会場参加者】
 NHKは、いろいろな番組があることがよいところだと思っています。
 印象に残っている番組をイメージして書きましたが、性的多様性を扱った番組があって、とても印象的でした。
 一方で、ほかの番組では男らしさや女らしさを話しているところがあって、そういうことが気になる人はいるだろうと思います。誰が見ても嫌だと思わないような番組も逆に味気ないと思いますが、何か統一的な考えがあってもよいのではないかと思います。

(森下委員長職務代行者)
 「NHKにしかできないもの」を書かれた方は何をイメージしていますか。

【会場参加者】
 私は教職課程を取ることがきっかけで、教育番組をよく見るようになりました。
 伝え方やいろいろな年代に向けた番組をつくっていることに関しては、民放ではあまりできないことだと思うので、とても価値があると感じています。
 ニーズは低いかもしれませんが、例えば教職を目指す人に向けた教育番組など、NHKにしかできない魅力的な番組をたくさんつくってほしいと思っています。

(森下委員長職務代行者)
 「コアな放送」と書いた方は、どのようなイメージを持っていますか。

【会場参加者】
 一般の人が楽しめる番組だけではなく、少数でも楽しめるような番組という意味です。
 ネット時代なので、見たいと思える番組の基準が多様化してきていると思うので、「攻めた番組」というのも若者を引きつけるやり方としてよいのではないかと思います。
 しかし、その「攻める」というのは文化レベルを下げるという意味ではなく、見たいと思えるような、だけれども、今までなかったような番組をつくってほしいという思いで書きました。

(森下委員長職務代行者)
 視聴率がたくさんとれるような人気番組ではなく、特定の方が深く知りたいと思う番組、ということでしょうか。

【会場参加者】
 はい。

(森下委員長職務代行者)
 「見る価値のある報道」というのは、いかがでしょうか。

【会場参加者】
 ニュースを見ていると、重要なのはわかりますが、同じことを何回も繰り返していることがあります。
 ほかにも知らなければいけないことや、世界で起こっているニュースもあると思います。繰り返しばかりで同じことを言っていても意味がない。それはやはり見る価値がないと思うので、そこを改めれば、もっとおもしろくなるのではないかと思いました。

(森下委員長職務代行者)
 「視聴者が少なくてもニーズがあれば伝える」というのは、先ほどの「コアな放送」の話と基本的には同じでしょうか。

【会場参加者】
 はい。少し違いを述べるとすると、「ニーズがあれば伝える」というのは、例えばNHKでは手芸の番組を放送していますが、手芸が国民全体で行われているわけではないけれども、それでも見たい、知りたいと思う人がいるのであれば、生活を豊かになるような情報発信を積極的にしてほしいと思います。

(内山アナウンサー)
 それはひょっとすると、番組という形ではなく、それこそユーチューブに手芸のやり方をアップするようなことを、NHKがやってもよいのではないか、という意味を込めたご意見でしょうか。

【会場参加者】
 そうした意味もあります。

(森下委員長職務代行者)
 ネットだから、全員が見なくてもよいということですね。
 NHKはこれから常時同時配信をやりますが、それは今の放送をそのまま流すものです。しかし、その先にはそういうものもあってよいのではないか、ということですね。

【会場参加者】
 そうです。

(森下委員長職務代行者)
 「災害で信頼できる情報」、これはどなたでしょうか。

【会場参加者】
 災害の時に、NHKは一番頼りになります。
 この間、豪雨の翌日に朝から「あさイチ」を普通に放送していましたが、もう少し災害時に必要な情報を求めている人に向けて放送してもよかったと思いました。
 日常を感じたいという人もいるかもしれませんが、まだ大変なところがあるときは、通常の番組ではなく、もう少し必要な情報を流し続けてもよいのではないかと思いました。

(中田理事)
 先日の九州豪雨の件ですね。
 「あさイチ」は全国放送でしたが、九州の方にとっては、そのように強く感じるのではないかと思います。
 ただし、「あさイチ」の時間帯はやっていなかったと思いますが、地域だけの特設ニュースをたくさん放送しました。
 もっと大きい災害だと、「あさイチ」もやめて地域ごとにニュースを出すことは、当然行っています。
 おっしゃるように、その兼ね合いが放送では難しく、局地的な災害の時にどこまでを全国放送でやり、どこまでをローカル放送でやるか、そのバランスが難しいところです。
 今は県全域のローカル放送しかできないので、県内で局地的な災害が発生したときに、同じような問題が起きてしまいます。
 しかしネットであれば、将来的に必要な情報発信を放送と別に出すことは可能になると思います。きょうのテーマは「ネット時代の公共メディア」ですが、災害のときにネットはより威力を発揮すると思います。放送は同じものをずっと出しますので、自分の地域の情報がいつ流れるのか、なかなかわかりませんが、ネットなら自分で情報を取りにいくことができます。自分の知りたいピンポイントの情報をNHKが発信し、そこを見ていただくことができると思います。

(内山アナウンサー)
 2週間ほど前に台風が来て、愛知県も大雨警報が出たということがありました。私はその時間に宿直勤務をしていて、全国ニュース、全国の番組の時間帯に名古屋向け、東海地方向けに台風情報などをお伝えしました。ただ、その時間にならないと見られないという条件が今、テレビにはあります。
 それがネットを使えば、自分が知りたい時にその情報を確認できます。
 テレビの特設ニュースでそのときどきの詳しい情報をお伝えすることもできるし、まず今どうなっているのかという一報はネットを使う、というような補完のやり方があるのではないかと思っています。

(森下委員長職務代行者)
 「公平な視点」とか「政治的中立」は非常に重要なことです。
 NHKには視聴者の皆さんからいろいろなご意見をいただいており、経営委員会では執行部から1か月単位でまとめたものを報告いただいています。
 皆さんからいろいろなご意見がありますが、起きていることについて、できるだけすべてをきちんと報道してほしいとお願いしていますし、経営委員会としてはチェックをしています。
 特にインターネットの世界では、フェイクニュースが大きな問題となっていますので、そういうときだからこそ、NHKは客観的にいろいろな意見をきちんとまとめて報道すべきだと思いますし、そこが非常に重要なポイントだと思います。
 次に私が関心を持っているのは、「多様な視点からの報道」、「幅広い世代が楽しめる番組」、「少数派の意見も取り上げる」、「視聴者が多く登場する」、「幅広い年代が見ている」などのキーワードです。このあたりについて書かれた方で、まだ発言されてない方はお願いします。

【会場参加者】
 私は「視聴者が多く登場する」と書きましたが、実際、NHKの番組は視聴者が多く登場していると思います。
 番組によっては専門家やその道のプロが話をすることもよいと思いますが、あるニュースに対して、われわれのような若い世代だったり年配の方だったり、働いている方などの意見を紹介することで、多様な視点を見ることもできると思います。

(森下委員長職務代行者)
 「幅広い世代が楽しめる番組」と書いたのはどなたでしょうか。

【会場参加者】
 これは、「紅白歌合戦」をイメージして書きました。いろいろなところで議論になっていますが、私はとてもバランスが取れている番組ではないかと思います。
 ネットでは少数派の意見を採り上げることも多く、みんながそれぞれ好きなものを取りに行ける時代だと思います。だからこそ、逆にテレビはいろいろなものを流したほうがよいのではないかと思っています。
 幅広い世代に向けて、意見を深掘りすることはもちろん大事ですが、さらっといろいろと紹介することも、テレビがやるべきことではないかと思います。

【会場参加者】
 少数派の意見を取り上げること自体はよいのですが、たくさんのカテゴリーがあった中ですべてを紹介すると一つ一つが短くなるし、一つを深く掘り下げると、ほかのカテゴリーが取り除かれて、また少数派のようになってしまう。この兼ね合いをどうするのかが、とても難しいと思います。

【会場参加者】
 私は、まずはさらっと流すことが、巨大メディアのすることで、ネットは自分で取捨選択するメディアではないかと思います。

(内山アナウンサー)
 テレビ局によって違いますが、おおむね皆さんが興味を持っていることを伝えているのが、今のニュース番組だと思います。

【会場参加者】
 そうであれば、ニュース番組は子供が見ているかもしれないし、大人でもわからないこともあると思うので、ネット時代だからこそ、URLなどを活用してはどうかと思います。

(森下委員長職務代行者)
 Eテレではいろいろな取り組みをしており、視聴率が1%にも満たないような番組でも、特定の人が見る番組や若い人向き、専門家向きといった番組をつくっています。
 一方、総合テレビでは一般的にみんなに見てもらえるような番組を放送し、衛星放送ではNHK以外のところがつくった番組も含めて、よい番組を放送するというように、各チャンネルはそれぞれ異なる性格を持って放送しています。
 こうしたことに、NHKはとても真面目に取り組んでいます。私も経営委員になって4年になりますのでわかりますが、その放送がどういう考えで企画され、放送後はどうだったのか、すべての番組で検証し、チェックしています。
 Eテレはいろいろとおもしろいことをやっていますが、なかなか知られていないところが課題だと思います。これこそ、ネットをもっとうまく活用すればよいのではという気がします。極めて専門的なこともあるし、中にはやり過ぎてしまって批判を受けることもありますが、本当にできるだけ幅広い世代の人に見てもらえるような番組をつくっています。
 総合テレビの番組も今のままでよいかというとそうではなく、やはり20代や30代の皆さんに見てもらえるような番組をつくらないといけませんし、NHKは堅いとか暗いといったイメージがあるので、できるだけやわらかい番組にする努力もしています。そういう番組には、逆に年配の方からやり過ぎとか、民放のまねをするなという意見もあります。

(中田理事)
 私も先ほどの皆さんの話を伺って、なるほどと思ったことがありまして、NHKは総合テレビ、Eテレ、衛星放送2波とたくさんのチャンネルがあって、さらに昨年から4K放送、8K放送と2つのチャンネルが増えました。
 総合テレビは幅広く皆さんにご覧いただき、Eテレは幼児やお子さん、あるいはもっと専門的なことを知りたいという方に、BS1は主にスポーツとニュースを放送し、BSプレミアムは総合テレビでは満足できない方にもう少しじっくり深くご覧いただく番組なども放送するなど、今までずっと仕分けをしてきました。
 さらにネットでも発信するとなったとき、NHKはいま一度テレビの役割を考えないといけないのかもしれません。ネットにはネットの欠点があり、見たいものしか見ない、自分の好きなことしか見なくなってしまう、という問題があります。
 先ほど、テレビはさらっと流せばよいとおっしゃったことがそういうことかもしれませんが、世の中にはいろいろなことがあることを知らせることが、もしかしたらテレビの役割なのかもしれません。
 それから別の方が話されましたが、ニュースでわからないことがあっても、テレビは止めることができませんが、URLやQRコードなどを使い、ネットを使ってより深くお伝えすることができるかもしれません。
 ネットを活用することを考えたときに、テレビをどうするかということと、テレビでできなかったことをネットでやることと、双方を兼ね備えることがきょうのテーマである「ネット時代の公共メディア」なのではないかと、皆さんのお話を伺って、私ははっとさせられたというか、なるほどと思いました。

(内山アナウンサー)
 ネット時代ということで、皆さん関心があるのは、SNSとどう連携するかというところではないでしょうか。皆さんのほうがSNSに関しては詳しいと思いますが、それに加えて、いつでも見逃した番組を視聴できるサービスもはじまります。
 既にNHKオンデマンドでは過去の番組を配信するサービスをしていますが、このあたりについて皆さんからご意見をいただけますでしょうか。

【会場参加者】
 ツイッターやインスタグラムをやっていますが、NHKの情報は自分が興味を持って見にいかないとわかりませんし、みんなが勝手にリツイートすることもあまりありません。
 ただし、ドラマ10「トクサツガガガ」はS N S でもすごく評判になったので、NHKに興味がない人たちも自然と興味が湧いてきたのではないかと思います。

【会場参加者】
 NHKではSNSに情報を出していますか。それともできないのでしょうか。

(中田理事)
 もちろんやっています。かなりやっています。

(森下委員長職務代行者)
 ユーチューブでも流しています。

(中田理事)
 ユーチューブのN H K 公式チャンネルもありますし、「@N H K _P R 」というNHKのPRをしているツイッターもあり、そのフォロワーはもう200万人以上です。

【会場参加者】
 それをフォローしていない人に、広告という形で流すことはしていますか。

(森下委員長職務代行者)
 そこまではやっていません。

【会場参加者】
 SNSとの連携という点では、テレビ番組でツイッターの意見を取り入れることはとてもよいと思いますが、番組内でツイートがどんどん流れていくという演出がとても見にくいと感じる人も多いと思います。私もその一人で、しっかり見たいと思ってもツイートはどんどん進んでいくし、けれども番組も進んでいくから両方を追うことができません。
 ツイッターの意見も使い道をもう少し考えるべきではないかと感じています。NHKの皆さんはどう思われているのか知りたいです。

(中田理事)
 私がまだ番組制作の現場にいたころに、「日本の、これから」という討論番組を2か月に1回くらい放送していました。これは必ず皆さんの意見を画面の下に出すようにしていましたが、同じようにうるさいという人や、やめてくれという人もいらっしゃいました。ただ、やめてしまうとご意見があまり来なくなってしまいます。意見を募集していることがわからないし、たくさんご意見をいただかないと意味がありません。
 ただ、うるさいと言われていることについてはずっと悩んでいまして、ときどきデータ放送やdボタンを押すと出るようにするとか、いろいろな工夫をしましたが、なかなかうまくいきませんでした。
 番組によってはインターネット上に意見を出し続けているものもあります。
 若い人は片手にスマホを持ちながらテレビを見て、インターネット上では、見たい意見はゆっくり見れるし、どうでもよい意見は読み飛ばすこともできますが、テレビだと画面をある一定の時間でどんどん切り替えないといけません。スマホやタブレットと一緒にテレビをご覧になれば成立すると思いますが、今はなかなか難しいと思います。

【会場参加者】
 NHKが不定期に放送している、岡崎体育さんとヤバイTシャツ屋さんが一緒に出ている番組は、ファンがどういう世代かを意識してコメントを出していると感心しました。
 今、中田理事を含めてNHKの皆さんが頑張って考えていらっしゃるんだなと思って、大変感動しました。

(中田理事)
 それは、「テンゴちゃん」です。
 まさにツイッターで積極的に情報発信することをコンセプトにした土曜深夜の番組で、月に1回放送しています。
 定時番組になってTikTokにも発信しています。
 まだうまくいっているかどうかわかりませんが、新しいことをチャレンジする枠もつくって、いろいろと努力はしています。

【会場参加者】
 おもしろいです。

(中田理事)
 ありがとうございます。

【会場参加者】
 幅広く情報を伝えることは、とても大切だと思いますが、私たちはSNSのほうが見る時間が多く、どうしてもテレビでニュースを見る機会は、昔に比べて減っていると思います。
 最近「チコちゃんに叱られる!」のキャラクターで、キョエちゃんの「ばーか、ばーか」という口癖を聞いて、NHKは少し堅いイメージがあったので、すごく驚きました。しかし、私たち世代には親しみが持てるところだと思うので、そういうキャラクターなども増やして、真面目にやるところは真面目にやって、先ほどの岡崎体育さんの番組のような若者向けの番組も増やすというように、両立させていくことも大切だと思いました。

(森下委員長職務代行者)
 「ニュースのアーカイブス化を」についてはいかがでしょうか。

【会場参加者】
 今でも1日分くらいはホームページで見ることができると思いますが、もう少し期間を延ばしてもよいのではと思っています。

(中田理事)
 1週間ぐらいは見ることができると思いますが、今後、常時同時配信がはじまると、見逃し配信のサービスを考えていますので、見逃したニュースも後で見ることができます。

(内山アナウンサー)
 「NHKニュース・防災アプリ」には、ニュースの解説コーナーもたくさんあります。
 そのアプリの中に、若い皆さんに向けて、「政治マガジン」という政治の動きについて担当記者が書いている記事があります。私が見ても非常にわかりやすく、政治家の人間性が見えるようなものや、地方自治など極めて身近な事例を紹介しているもの、例えば過疎が進んで議員がいなくなってしまう現状など、全国ニュースで見ることができないような話題も掘り下げて、紹介しています。
 ぜひ、ニュースと合わせてご覧になっていただきたい、新しい挑戦です。

(森下委員長職務代行者)
 「スマホでの番組録画」と書かれた方はどういうイメージを持っていますか。

【会場参加者】
 アーカイブや動画のストリーミングだと、気が乗らない時に見なくなってしまいますが、タイムキーパーのような役割のあるテレビをいつも録画して、いつも見る習慣をつけていると、見たくなくても何となく癖で見るようになります。
 ネット時代でも、この感じを残してほしいと思っています。

(中田理事)
 見逃し配信によって、「ある一定期間内だったらいつでも見ることができます」ではだめなんですね。

【会場参加者】
 まさに、そういうことです。

(中田理事)
 自分で録画しないと見ようと思わない、ということですね。テレビでもよいかと思うのですが、やはりスマホなのでしょうか。

【会場参加者】
 テレビでもよいのですが、そのハードルを下げるのがスマホだと思います。

(森下委員長職務代行者)
 「番組配信サービスがもっと利用しやすく」はどのようなイメージですか。

【会場参加者】
 今でも有料のサービスをしていると思いますが、昔やっていたドキュメンタリーなどをもう一度見たいと思って調べたら、なぜか見ることができませんでした。
 見ることができるものとできないものがあるようで、NHKはよい番組がたくさんあるので、できることなら過去の番組はすべて見ることができるようになってほしいと思います。

(中田理事)
 基本的には出せるものは出していると思います。いろいろな理由が考えられますが、もしかすると権利関係かもしれません。または、その当時とは事情が変わって、いま放送をご覧いただくことがふさわしくないと判断したものかもしれません。

(森下委員長職務代行者)
 常時同時配信を始める時に、見逃し配信をどうするかは課題の一つです。
 1週間程度は無料で見逃し配信を行い、それを過ぎたら今度は有料で見ることができるようにする、という考えはありますが、まだはっきり決まっていません。そういう過去の番組の配信をどのように行い、値段をどうするか、今やっていることもすべて見直さないといけないと思います。
 再放送については、毎月まとめている視聴者からの意見の中に、再放送の要望もまとめられており、要望が多い番組はできるだけ再放送をしています。
 ただ、少ない番組は取り上げていないので、それはアーカイブでご覧いただくというような流れになるかもしれません。
 いずれにしても、これも課題だと思います。

(内山アナウンサー)
 「全国の地域番組を見たい」、「ローカルのよさを全国発信」、「日本だけにとどまらない情報発信」、このあたりはどうでしょうか。

【会場参加者】
 昼の12時台に各地から放送していた番組がなくなってしまって、各地の話題が少なくなっていると感じています。

(内山アナウンサー)
 今、総合テレビの午後3時台に地域で制作したドキュメンタリーを全国に放送していますが、どうでしょうか。

【会場参加者】
 地域から生で伝えてくれる番組がなくなってしまったのではないかと思いました。

(内山アナウンサー)
 日本の情報を世界に発信するという考えはいかがでしょうか。

【会場参加者】
 NHKは日本放送協会ですので、日本に向けて発信している部分がもちろん大きいと思いますが、高校の時に研修でシンガポールに行った際にテレビでNHKを見ましたが、ふだん見ているような番組ではなく、とても堅苦しい、真面目な政治番組を放送していました。
 それをシンガポールにいる方が見るわけがないし、私のような旅行者も見ないと思います。
 もう少し海外でも、もっと楽しく見ることができるような番組を流してほしいと思います。

(中田理事)
 ご覧になったのは、日本語でしたか。

【会場参加者】
 日本語でした。

(中田理事)
 ご覧になったのは、「NHKワールドプレミアム」という外国にいる日本人向けの日本語放送で、たまたまご覧になったのが難しい番組だったのかもしれませんが、大河ドラマや朝の連続テレビ小説など、楽しい番組も放送しています。
 一方で、外国人向けの英語放送では、まさに日本の情報を世界に発信し、日本への理解を深めてもらう番組を放送しています。国際放送は毎年のように充実を図っていて、日本の課題や社会のニュース、日本の魅力を伝えるようような番組を放送しています。
 世界への情報発信は非常に重要なことですので、国際放送はインターネットでもご覧いただけるようにしています。

(森下委員長職務代行者)
 地元のローカル番組を見たいという要望もあります。
 例えば北海道の人が東京に転勤したが、北海道の放送を見たいといったことですが、ネットであれば実現の可能性があります。

(内山アナウンサー)
 先ほど「NHKニュース・防災アプリ」を紹介しましたが、「らじる★らじる」というNHKラジオのインターネットサービスもあり、名古屋、大阪、福岡といった各地域のラジオ放送を聞くことができます。
 「NHKワールドJAPAN」という、先ほどご紹介した海外向けのサービスは、ネットでも見ることができます。

【会場参加者】
 テレビの常時同時配信も、「らじる★らじる」のように地域を選べるようなイメージを考えているのでしょうか。

(森下委員長職務代行者)
 今はまだできませんが、次の可能性としては考えられます。今年度から始まるサービスは東京の番組を配信する予定で、現在の電波を使った放送の補完的なサービスとして行うものです。しかし、だんだん広げていかないといけないと思います。

【会場参加者】
 私は「受信料租税化」と書きました。
 放送法第64条に関連した判決も読み、その担当者も受信料は負担金であって租税ではないと言っていますが、「憲法第84条の租税法律主義には該当しない」と国民の人が一般に思えるのか、疑問です。
 放送法第64条の「受信設備を設置」という解釈を、公共メディアとして公共性を訴えるのであれば、租税としたほうが明確になるのではないかと思います。

(森下委員長職務代行者)
 受信料制度にはまだ課題があり、常時同時配信はあくまで受信契約者を対象とした補完的なサービスとなっていて、契約をしていない方に向けたサービスとはなっていません。
 一方で、スクランブルをかけて受信料を支払わない方には視聴できないようにする考えもありますが、災害などの緊急時には、受信料を支払っている、支払っていないにかかわらず、NHKはすべての方に情報を伝えなければならない社会的な責任があり、問題があると考えます。
 また、ご意見のように租税化したほうがよいのではないかという考えもありますが、NHKの運営資金が国の影響を受けることになり、事業運営の自主性が損なわれ、報道機関としての役割を十分に果たせなくなるおそれがあります。
 そのためNHKとしては、皆さんに受信料を支払っていただけるように、公共放送の意義や受信料制度についてていねいに説明し、ご理解をいただけるように努力をしています。
 しかし現実には、支払率は80% を超えたくらいで、いまだ20% 弱の方が支払っていません。今後、テレビを持たず、インターネットだけの人が増えてくるので、これは放っておけない課題です。いずれにしても、今後きちんと議論をしていかなければいけないと思います。

(中田理事)
 まさに、公平・公正というところに関わっており、NHKは政権からも、何人からも独立して、視聴者の立場で放送を出すという考えですので、税金ではなく受信料として支払っていただくことをお願いしています。皆さんにご理解いただきたいと思います。

 

 

○Bグループ  井伊 雅子委員、正籬 聡 理事

 

(井伊委員)
 ふだんNHKを見ない人は、今日はどうしてここに来ようと思ったのでしょうか。この後の講演会の「もっと知りたい『チコちゃんに叱られる!』」に興味があったのでしょうか。

【会場参加者】
 ゼミの担当の先生に勧められて来ました。

(正籬理事)
 「ひきこもり」と書かれた方がいますが、ひきこもりについてNHKにどんなことを期待されているのでしょうか。また、NHKの取り組みをどのようにご覧になっているのか教えてください。

【会場参加者】
 NHKは、ひきこもりやホームレス、外国人など、少数派であまり表に出て来ない人々の意見を取り上げるべき存在だと思います。ネットではそうしたことに関する情報が飛び交っているものの、NHK以外の番組では、深くインタビューをしたり掘り下げたりしているのは見たことがない気がします。そのようなつかみにくい情報を積極的に取りに行ける存在がNHKなのではと思うので、期待したいと思います。

(正籬理事)
 この間、神奈川県川崎市でひきこもっていた中年の男性が小学生を殺したという痛ましい事件がありました。あの時はニュースが非常によく見られたほか、ネットのコンテンツのアクセスも爆発的に増えました。「8050問題」と言って、80歳という高齢のご両親が50歳のひきこもりの息子や娘の面倒を見ているケースが全国で約60万人いると推定されているのですが、「NHK NEWS WEB」というサイトで「ひきこもりクライシス」という特集記事を載せたところ、大変なアクセスがありました。私たちは、これからも目をそむけたくなるような社会問題について、きちんと取材し、ニュースや「クローズアップ現代+」で取り上げたり、ホームページでより深く見せたりということを追求していきたいと考えています。
 ネットは新聞などのような字数制限がないため、放送や、テキスト、ショート動画などを結びつけて、関心のある人にぐるぐると回遊しながら見てもらうということをやっていきたいと思っています。

(井伊委員)
 「生活者視点」と書かれた方は、ご意見をお聞かせください。

【会場参加者】
 NHKは、いろいろな場所に拠点があるからこそ、家族や人々の生活に寄り添った、言わば「生活者の視点」に立った報道ができるのではないかと想像しています。就職活動をしている時に、いろいろな企業で生活者の視点に立って物を作る、発想することが大切だと聞きました。NHKは、拠点の数を生かして、ネット時代にあっても、どこかの地域で実際に起きていることやネットにつながりにくい人たちの意見や考えを拾って、あらゆる生活者の視点を取り入れてほしいという意味で書きました。

(井伊委員)
 「フェイクニュース」というワードがありますね。ネットの世界では、生活者の視点で書かれた役立つ情報もありますが、一方で間違った情報も流布されていて、なかなか見分けがつかないということがあります。ここには非常に深い意味があると思いますが、これについて発言したい方はいますか。

【会場参加者】
 NHKを見ていると、社会問題や社会的弱者を扱った番組などで、他局ではできない細部までよく取り上げていると思います。ただ、私の周りにはあまりNHKを見ている人がいないのが現状です。

【会場参加者】
 私はNHKの番組が大好きで、「いつでも、どこでも」と書きました。今、ユーチューブやツイッター、インスタグラムなど、携帯一つでいろいろなものを見ることができますが、いつでもどこでも正しい情報を入手できるというのが一番うれしいことだと思っています。私はまだ高校を卒業したばかりですが、未熟な状態で、うそ偽りの多いツイッターなどの情報をきちんと判断するのは難しいと思っています。若者たちからすると、NHKが公共放送として正確な情報を確実に迅速に報道してくれて、それがネットで見られるというのはうれしいことです。

【会場参加者】
 私は「民放などを圧迫する存在にはなってほしくない」と書きました。NHKから発せられる情報は信頼できると思います。でも、いろいろな放送局の番組を見ていると、一つの問題に対していろいろな見方がなされていて、そうしたいろいろな見方ができるからこそテレビは面白いと言えると思います。もし、NHKが公共メディアとして肥大化していったら、力が大きくなり過ぎて他のメディアとの競争がスムーズに行われなくなり、テレビが面白くなくなってしまうのではないかと思います。ぜひ、他のメディアにも目を向けていただきたいと思います。

(正籬理事)
 放送法の改正が行われて、今年度中には、常時同時配信と言って、“いつでもどこでも”スマホやタブレットでNHKの番組をご覧いただけるようになります。
 今、民放の公式テレビポータルの「TVer」のアプリを入れている方はいますか。TVerやフジテレビのFODなどの配信サービスは、見逃し配信でドラマなどをさかのぼって見ることができますが、放送の常時同時配信は行われていません。NHKの常時同時配信では、スマホのアプリで今放送している番組を生で見ることもできるし、見逃した番組を後から見ることもできるようになります。
 朝の連続テレビ小説「なつぞら」を見ている方はいますか。2人いらっしゃいますね。皆さんのような若い人が見ても、面白くてはまる要素もあるかと思います。朝8時の放送の際はまだ寝ていたり、既に家を出ていたりして見られないという方も、今後は、見逃し配信で見られるようになります。また、ドラマや番組だけでなく、ニュースも「NHKニュース・防災アプリ」という無料でダウンロードできるアプリで、いつでもどこでも見ることができます。テキストだけでなく動画が入っているニュースもありますので、参考にしていただければと思います。
 先ほど、「正確な情報」、「フェイクニュース」という話が出ましたが、例えば2016年の熊本地震の際に、動物園からライオンが逃げたという情報がツイッターで一斉に広がったことがありました。それは完全なフェイクニュースで、映像もどこか関係のないところから引っ張ってきたものでした。
 そうした時に、フェイクニュースに惑わされずに、NHKはどう伝えているのかなと「NHKニュース・防災アプリ」を見てもらえるようにしていきたいと思っています。
 何も起きていないことを証明するというのは、「悪魔の証明」と呼ばれ難しいものですが、「こういうデマが流れているけれど、それは熊本県庁は否定しています。」というニュースを流すこともできると思います。「いつでも、どこでも」見られるスマホなどの世界で、いざという時に頼りにされるNHKになっていきたいと思います。
 この中で「人類誕生」というNHKスペシャルをご覧になった方はいますか。あの番組で、人類の祖先のホモサピエンスとハイエナが肉を一緒に争いながら食べていたという、約3分間のショート動画があって、ユーチューブのNHKの公式チャンネルにアップしているのですが、世界中で1億回以上再生されています。話題になった「筋肉体操」は、「腹筋」という動画が、約300万回再生されています。いろいろなコンテンツを、1つのウインドウでこんなのもあるよ、こんなのもあるよとつなげて回遊して見てもらえるように、仕組みの強化に向けて取り組んでいるところです。
 また、先ほど「民放などを圧迫する存在にはなってほしくない」という話がありましたが、NHKもTVerに参加して、民放と一緒に協力しながらやっていこう、一緒にテレビ業界を盛り上げていこうと、取り組みを進めているところです。

(井伊委員)
 私の勤める大学の学生も、ほとんどラインニュースを見ています。ラインニュースは自分の関心のあるものが上に来る仕組みになっていますが、例えばテレビで夜の7時のニュースや9時のニュースなどを見ると、どういうニュースがトップニュースとして取り上げられているのか、いやが応でも知ることができます。どれをトップニュースとするかは人が選ぶものなので完璧とは言いませんが、トップニュースを見て、今どんなことが話題になっているのかを知って考えることで、大学生の皆さんにとって世の中の見方を鍛えることができますし、そうした習慣を持つことは大切です。

【会場参加者】
 質問ですが、私は「NHKニュース・防災アプリ」を入れていますが、テレビで放送した内容がそのまま入っているという感じがします。テレビの情報は載せたうえで、この記事についてはもう少し詳しく載せるといった情報はないのでしょうか。

(正籬理事)
 「N H K N E W S W E B 」のサイトのほうは、「N e w s U p 」や「WEB特集」という、ニュースを深堀りしているコンテンツがあるのですが、下のほうにあって操作性はよくないかもしれません。「WEB特集」ではニュースをかなり深堀りしています。例えば、放送では取り上げていなかった、ひきこもりの人が作った「ひきこもり新聞」について「WEB特集」で取り上げたところ、大変な数のアクセスがありました。そうしたコンテンツもありますが、なかなか見つからないというのは問題なので、改善したいと思います。

【会場参加者】
 では、帰ってから下のほうもよく見てみます。

(正籬理事)
 パソコンのサイトでは「W E B 特集」に行きやすいのですが、スマホの「NHKニュース・防災アプリ」からでは、確かになかなか出てこないようですね。

【会場参加者】
 横にスクロールして行けるとうれしいです。

(正籬理事)
 横ですか。なるほど、ありがとうございます。

(井伊委員)
 「時代の空気感を蓄積」というのは、どういうことでしょうか。

【会場参加者】
 私は2011年の震災後に始まった「ニッポンのジレンマ」という番組が大好きだったのですが、その番組のスタート時期と終わりの時期を比較すると、何となく議論の空気感が違うことがわかります。NHKがアーカイブとして番組を蓄積していくことで、後に参照される歴史のようなコンテンツがたくさんできると思います。それが公共メディアに必要なのではないかなと思います。

(井伊委員)
 そういうアーカイブにも簡単にアクセスできることが大事ですね。
 例えば、放送でシリーズ番組を見て、面白かったら3年前はどんな内容を放送していたのか見てみるとか。

【会場参加者】
 同じ話題に対しても、その時代背景によって話されている内容や熱量も変わってきたりするので、そういう見方ができると面白いと思います。

(井伊委員)
 アーカイブは、大きな強みとなります。

(正籬理事)
 先ほど、いろいろなコンテンツに回遊性を持たせて関心のある人に見てもらいたいと言いましたが、アーカイブも含めての回遊性ができるとよいなと思っています。
 ただ、著作権の問題があり、例えばネットと放送はそれぞれ別に著作権の許可を取らなければならず、出演者一人一人の許諾を得るなど、一つずつ問題をクリアしていかなければなりません。著作権を一括で取れるような仕組みができないか、関係各所にお願いしたりもしていますが、今はまだ、高い壁となっています。そうした問題に取り組みながら、アーカイブも含め、過去の時代の空気感や議論の視点の違いを見たりできるよう、努力していきたいと思います。

【会場参加者】
 私は「選ぶ、受け取る」と書きました。テレビは実家でつけていることが多く、受動的に何かを「受け取る」という形でしたが、ネット時代になると、SNSなどでは自分から「選ぶ」ほうに転換していて、「選ぶ」「受け取る」という違いから、別の意味が現れてくるのかなと感じます。

【会場参加者】
 災害時に一番に触ってもらえるアプリや情報メディアにしたいということでしたが、自分も含め、今の若い子は最初にツイッターで検索すると思います。ハッシュタグで検索するといろんな人の意見を見ることができて、それを引いたところから総合的に見るという感じです。NHKも、ハッシュタグで引っかかるようにして、さらにそこからNHK独自のニュースメディアに飛べるようにしてもらえたら、最初からNHKのアプリを開く可能性が低くても、NHKの情報にたどり着くかなと思います。

(正籬理事)
 やはり皆さん、災害時もツイッターでハッシュタグ検索をするところから入るのでしょうか。

【会場参加者】
 それが一番多いと思います。

【会場参加者】
 自分のタイムラインを見ることで、身近な人の出来事に対する態度を見るのと、リアルタイムのハッシュタグ検索で全国的な状況を見ます。

(井伊委員)
 まずNHKを見るということはないでしょうか。

【会場参加者】
 ないです。

(正籬理事)
 今の意見は、本当に目からうろこですね。「NHKニュース・防災アプリ」を入れてほしいと言っても学生にはなかなか入れてもらえないかもしれませんが、いっそのこと、ツイッターから来やすくする、ハッシュタグで検索しやすくすることを考えるほうが早いということですね。

【会場参加者】
 「NHKニュース・防災アプリ」を入れてと言われても、なかなか入れるまでの心理的なコストが大きいかなと思います。

【会場参加者】
 NHKは公式ツイッターがものすごく多いですね。

(正籬理事)
 理事になる前に広報局長を2年やっていましたが、「@ N H K _P R 」というツイッターはフォロワーが約200万人います。結構ニッチなコンテンツもやっていますが、朝ドラや「クローズアップ現代+」など、いろいろと数があり過ぎるのかもしれません。
 フォロワーが一定以下のものはやめるなど、少しまとめたほうがよいのかとも思っています。インスタで「NHKアニマル」というのを作って、いろんなドラマに出ている犬や猫を上げていたのですが、1年続けてもフォロワーは1万人ほどとあまり伸びませんでした。今は、例えば海辺の猫に限るなど、絞り込んで先鋭化したサイトもいろいろあって、なかなか難しいなと思います。ツイッターから行く場合、公式ツイッターが多過ぎるのもよくないでしょうか。

【会場参加者】
 私は好きです。

【会場参加者】
 NHKのツイッターは面白いです。ユーモアがあるので好きです。

(正籬理事)
 必要なのはPRでしょうか。

【会場参加者】
 そうだと思います。ツイッターはとても取っつきやすいです。

(正籬理事)
 ツイッターの担当者は喜ぶと思います。ラジオ体操を絵文字で表現したら、古めかしくて受けたこともありましたが、結構難しく、職員と専門の人に相談しながらどういうコメントをしようかずっと考えています。

(井伊委員)
 ほかはどうでしょうか。あまりテレビを見ていなくて、大学の先生に言われて来たという方もいらっしゃいましたが、どうしたらNHKの番組を若者に見てもらえるようになると思いますか。

【会場参加者】
 NHKのニュースだったと思いますが、ニュースについてハッシュタグを付けて語り合っているのが画面に出てくることがあります。それは、みんなで一緒にそのニュースを見ている感じがして、ああ、こういう意見を持っている人もいるんだなとわかることもあり、すごく面白いと思いました。

【会場参加者】
 3月までやっていた「ニュースチェック11」ではないでしょうか。ツイッターの言葉が画面にピコンと出てきていました。

【会場参加者】
 あの時だけは、私も必死につぶやいていました。

(正籬理事)
 つぶやかれた言葉を自動的に載せられればよいのですが、ニュースの内容に関係のないつぶやきもたくさんあるので、選ばなければならず、結構大変でした。ただ、画面に出てくることで、みんなで見ているという感じがあるかもしれませんね。そういう共感、参加感も必要かもしれませんね。

【会場参加者】
 私は「コミュニティをつくる、続ける」と書いたのですが、せっかくハッシュタグでコミュニティみたいなものができても、そこで終わってしまうのがもったいないと思っています。視聴者がリアルタイムでいろいろつぶやいたり、公開収録などに行ったりしても、それだけで終わってしまうので、ネット上でもオフラインでも何か定期的に仕掛けを作ることで、コミュニティが維持されるのかなと思います。

(正籬理事)
 共につくる参加感は大事ですね。1つの例として、「8月31日の夜に」というE テレの番組は、9月の新学期が始まる前の8月31日に、学校行きたくない、死にたくなってしまうという子どもたちがたくさんいるので、そういう子どもたちに向けて作りました。そのとき、放送のかなり前からネット上でも意見を募集し、掲示板を立てたりコメントを書き込めるようにしたりしたところ、苦しんでいる子どもや、お父さん、お母さん、学校の先生から、たくさんのつぶやきがあって、そこがまるで違う生き物のように、ぐるぐると回っていったということがありました。そういう場をNHKが提供できることもあるのかな、もっとそうしたことをやっていくことが必要なのかなと、今のお話を聞いて思いました。

【会場参加者】
 私はよく周りの友達から「何でNHKを見るの」「何でそんな堅くて真面目なものを見るの」と言われるのです。私は、NHKは全然堅くないと思っています。堅い部分はもちろんありますが、娯楽の部分では一番ふざけていて、ユーモアがあってよいなと思います。周りの友達は、はじめから堅いと思ってNHKを見ないという感じが多いのかなと思います。

(井伊委員)
 そういう方は、民放は見ているんですか。

【会場参加者】
 最近はユーチューブを見ている人が多いです。

【会場参加者】
 NHKのぶっ飛んでいる部分を知らない人が多いのではないかと思います。ニュースのイメージだけで堅いと思っている。自分もぶっ飛んでいる部分に触れたことで「おやすみ日本」などが好きになったんですが、まずは知るというところが大事かなと思います。

【会場参加者】
 「LIFE!」や「チコちゃんに叱られる!」、「有田Pおもてなす」など、バラエティー番組はかなり充実していると思います。NHKのバラエティー番組は、民放と比べて、ふざけていてもどこか品が感じられます。

【会場参加者】
 それは本当にそうです。

【会場参加者】
 見ていて不快になりにくいというか、こういうバラエティーは大事だなと思います。

(井伊委員)
 私も経営委員になっていろいろ見学の機会がありましたが、ドラマにしても歌番組にしても、とても丁寧につくっていますね。それだけ時間と知恵を集めて作ったものなので、活用しないともったいないと思います。

【会場参加者】
 たくさんの人が関わっているということが、すごく伝わります。

(正籬理事)
 例えば、コント番組は作るのに大変な時間かかります。スタジオで、生で話す番組は、作るほうにとっては割と楽なのですが、コント番組は、30分なら30分の中で尺もすべて決めて、起承転結で落として、後から編集でつなぐという作り方をするので、台本作りをして、本読みをして、演じてと、ものすごく手間がかかるんです。だから民放などでは、スタジオバラエティーはたくさんあっても「LIFE!」のようなコント番組は少なくなってきたのではないかと思います。

【会場参加者】
 去年「コントの日」という番組がありましたが、ビートたけしさんと芸人さんがコント一色で、民放のみんなが一度は見たことがあるようなコマーシャルをどんどんアレンジした映像を作っていて、NHKはすごいと思いました。ほかの番組を見ても、よい意味でふざけています。

(井伊委員)
 ドラマやコント、歌番組と好きな番組は人それぞれだと思いますが、NHKの番組には質の良いものがたくさんあります。ユーチューブもよいものはあると思いますが、中にはそうでないものもあって、質が標準化されていないです。できれば皆さんのように若い時に、よいものをたくさん見て目の肥やしにしてほしいです。

(正籬理事)
 ユーチューブは、自分の視聴履歴を元にお勧め番組が表示されますよね。
 皆さんはそれを見ることが多いのでしょうか。それとも検索して見ることが多いのでしょうか。

【会場参加者】
 私は、ユーチューブはSNSだと思っています。毎日投稿するクリエイターでは、毎日何時に投稿するというのが決まっている人もいます。

【会場参加者】
 通知が来るようにはしていませんが、ホーム画面にタイムラインで表示されるので、習慣で見てしまいます。

(井伊委員)
 7時になると7時のニュースを見るといった感じでしょうか。

【会場参加者】
 その感じです。そこから関連したクリエイターのアカウントに飛んでユーチューブを見ます。インターフェイスが使いやすいので、習慣になりやすいことはあります。

(井伊委員)
 どのぐらいの時間見るのでしょうか。

【会場参加者】
 毎日、帰ってから2、3時間は見ています。先ほど、堅いN H K と、はっちゃけたNHKという話がありましたが、NHK側としてはその二面性をどういうふうにとらえているのでしょうか。完全に分けて考えているのか、どこかでつなげて考えているのか、気になります。

(正籬理事)
 両方あると思います。安全・安心という点で、いざというときにNHKの番組をつけてもらえる、ハッシュタグやアプリで見て頼ってもらえる、という信頼を重視する堅い真面目な面は、NHKの根幹の部分だと思います。いざというときに頼ってもらえなければ、存在意義がないのではないかと思います。
 その一方で、心を豊かにしたり気持ちを和らげたり、「チコちゃんに叱られる!」のように、家族で揃って見て共通の話題にできるような、心が温かくなるコンテンツも出していきたいと考えています。優等生的な回答のようですが、どちらかに偏ることなく、両面をやっていきたいと思います。
 チコちゃんは、番組の中で「岡村」といった呼び捨てをするキャラクターですが、当初はそのことについて苦情も来ました。しかし、あの呼び捨ては親愛の情の表現だと思っています。しばらく経つうちに好評意見も増えてきて、最近は広く受け入れられてきたという感じがします。

【会場参加者】
 最近、チコちゃんのスタンプが出たので、買いました。

【会場参加者】
 僕も買いました。割とよく使います。声も出るので楽しみです。

【会場参加者】
 最近、小学校では、子どもたちがすぐにチコちゃんの口調をまねして「じゃねえよ」と言うので、来日したばかりの外国人の子どもも、すぐに「じゃねえよ」という言葉を覚えてしまいます。

(正籬理事)
 抵抗感がありますか。

【会場参加者】
 学校側としては、はやりの言葉と大目に見ている感じかと思います。反発や反対するといった声はあまり聞かないです。

(正籬理事)
 「外国人」と書かれたものがありますが、外国人の子どもたちが学べるようなコンテンツについて書かれたのでしょうか。

【会場参加者】
 はい。外国人の子どもたちに家に帰ってテレビを見るかと聞くと、ほとんど見ないと言います。でも、日本に来て間もない子どもには、日本の文化を感じてもらわないと、授業や子どもたち同士の会話の背景もわかりません。外国人が増えていますので、外国人に向けた日本語の番組があってもよいのではないかと思います。

(正籬理事)
 外国人に向けた日本語の番組ということですね。「News Web Easy」というサイトには、外国人や小学生中学生向けにやさしい日本語で書いたニュースを掲載しています。多言語でも展開していますが、やさしい日本語で書かれたもののほうがよいということですね。

【会場参加者】
 そうです。今、特にベトナムやネパールの人が増えていますが、英語がなかなか通じないので、やさしい日本語のほうがよいと思います。

(正籬理事)
 仕事で使う日本語としては、初級から中級はベトナム語などでもやっていますが、まだまだ十分ではないと思います。

(井伊委員)
 皆さんはまだ学生なので、親元に住んでいる方は受信料を支払っていないと思いますが、これからネット中心の時代になっていく中で、受信料を支払って公共放送を支えるということについてはどう思いますか。

【会場参加者】
 今朝ちょうど、家にNHKの訪問員が来たので、テレビがないことを伝えました。テレビがなくてもネットがあれば受信料が必要ということになれば、自分がNHKを見て直接コンテンツに触れているという実感や、形として見えるアプリなどがあると支払いやすくなるのかなと感じます。ネットフリックスなどのコンテンツにお金を使うことには全く抵抗がない人が多いと思うので、サブスクリプションのようなイメージだとよいと思うのですが、NHKの方向性とは違うのでしょうか。

(井伊委員)
 NHKを見たくない人もいるのでスクランブルをかければよいというご意見もあるのですが、それだと、全国どこでも視聴でき、何かあったときにはすぐに情報を提供するという公共放送の役割に反してしまいます。

【会場参加者】
 私はひとり暮らしをしているのですが、訪問員にドアをドンドンと強く叩かれたことがあり、NHKの印象が悪くなりました。きちんとNHKの人が説明してくれたら、支払おうかという気にもなると思うのですが。

(正籬理事)
 今、各ご家庭の訪問は法人委託のスタッフなどにお願いしています。マナー向上に向けた取り組みも行っているのですが、ご迷惑をおかけしたとのことで本当に申し訳ありません。すべてNHKの職員が伺って丁寧に説明してご理解いただくのが一番よいのかもしれませんが、職員の人数も限られているため、スタッフをきちんと指導して、今後そうしたことのないように徹底していきたいと思います。

(井伊委員)
 研修の一環などで、職員がご家庭に伺うこともありますね。

(正籬理事)
 入局時や10年目などの節目の際には、研修として各ご家庭を訪問しています。また、法人に委託した際、最初は営業職員も一緒に回るということもあります。

【会場参加者】
 友達が、NHKの訪問員が来たら無視してよいと先輩に言われて、そんなものだと思っていたと話していました。確かにNHKが好きでなかったら、見もしないのに、いきなりこれを支払ってください、決まりですからと言われたら、なぜ支払わなくてはいけないのか疑問に思うと思います。だから、今の若者に向けては、NHKは何に役立っているのか、私たちにどういう情報を届けているのかを発信していくことが、一番大事なのではないかと思います。

(正籬理事)
 公共放送という形態は、日本だけではなく、イギリスのBBCや韓国のKBSなどもとっています。公共メディアとして、災害などいざというときに必要な情報を届ける、接触すればいろんな情報を取得できるという、情報の社会的基盤としての機能を果たしています。
 ただ、どういう存在で何に役立つのか、きちんと説明しないと納得感が得られないと思います。お話を聞いていて、そのための努力はまだまだ足りていないと改めて感じました。訪問して説明するのがよいのか、ツイッターやネットなどでわかりやすく説明する仕組みがよいのか、いろいろと考えていく必要があると思います。

【会場参加者】
 これから、海外に出て行く日本人もどんどん増えていくと思いますが、そのときはまず「NHKワールド」を見ると思います。今はわかりませんが、私が海外に住んでいたころ、半分くらいは外国語で放送されていて、副音声で全部日本語を流してくれたらとよく思いました。番組が日本語でも放送されると、海外に行った時に安心だなと思います。

(正籬理事)
 海外で見られる「NHKワールドプレミアム」というのがあって、アメリカやヨーロッパでは日本語放送を行っています。

【会場参加者】
 東南アジアではどうでしょうか。

(正籬理事)
 国によるので今すぐにはわかりませんが、どこでも日本語の放送が見られるようにしたほうがよいということですね。

(井伊委員)
 今後実施される常時同時配信は、国内の放送について行うということですね。

(正籬理事)
 はい。国内の放送の補完となります。海外でも見られるようにしてほしいとの要望は強いのですが、難しい権利問題があります。例えばオリンピック中継では、日本国内の放送権利を民放とNHKで巨額なお金を支払って購入するのですが、海外での放送は権利に含まれないため、海外で番組を流す際は、該当部分は静止画の写真に差し替える「ふたかぶせ」という対応を取ることになります。
 ネットはボーダレスの世界とも言われますが、著作権や放送権などは大変難しい問題で、特にスポーツなどは権利関係で非常に厳しい制限があります。その中で、できるだけのことはやっていきたいと思います。

(井伊委員)
 「情報の見せ方の美しさ、デザイン」というのはどんなことでしょうか。

【会場参加者】
 私は、NHKのデザインがすごく好きです。
 今、情報をビジュアルで見せるというのがはやっていますが、例えば災害のニュースなどで、一目でわかるデザインと、その情報を提示する見せ方の美しさというのが保たれていくとうれしいなと思います。

(正籬理事)
 そのことは大きな課題だと思っています。今、新聞などもグラフィックスに力を入れて、一目でわかる、格好いいもの、美しいものを作っています。それについて、私たちはまだまだ足りないと思っています。イギリスのBBCでは、政治部の記者とグラフィックスデザイナーが一緒に取材に行き、政治の話をどのようにグラフィックスにするのかを考えるといいます。
 公共メディアとなった時に、グラフィックスの持つ影響力やわかりやすさはとても重要だと思うので、デザイナーもよい人材を採用し、グラフィックスをとことん追求していかなければならないと思っています。

【会場参加者】
 NHKの番組表のアプリが今年の3月まであったはずなのですが、なくなってしまい寂しく思っています。アプリで見たり、自分の興味のあるワードを入れておくとそれに沿って番組が紹介されたりするのでありがたかったです。

(井伊委員)
 きょう言い足りなかったことや言いにくかったことがあった場合は、NHKでは皆さんからの質問や要望を受け付けていますので、そちらへお寄せください。

(正籬理事)
 NHKには、毎日大変多くの電話やメールが来ます。多いのは、再放送の問い合わせや放送内容への質問、要望などです。電話でもメールでも受け付けています。

(井伊委員)
 NHKの放送は、受信料をいただき、みんなでつくっていくものなので、視聴者も一緒に番組をつくってほしいと思います。ぜひよろしくお願いします。

 

 

○Cグループ  中島尚正委員、松坂千尋理事

 

(中島委員)
 「すぐわかる正しい情報、正確さ」と書いてある付箋がありますが、現実はそうではないということか、あるいはもっとそれを強く出してほしいのか、どのような意味でしょうか。

【会場参加者】
 今が遅いという意味ではなく、ネット時代には、スマホではテレビよりも簡単にアクセスができるので、テレビのニュースと同じように情報がすぐわかるというのが大事だと思います。

【会場参加者】
 私は新聞を最近あまり読まなくなったのですが、携帯を開くといろいろなニュースが入ってくるので、新聞では情報が遅いと感じます。テレビのニュースも同じで、もうネットでさっき見たということが出て来ます。テレビのニュースでも遅いとなると、ネットの公共メディアが一番速く、正しい情報になるのではと思います。ただ、ニュースソースによっては、これは本当に正しいのだろうかと思う時があるので、正しいニュースを届けてほしいです。

(中島委員)
 ネットを介しますと、そのニュースに接した人の意見も反映されて出てきますね。それが新聞とは違うところで、即時性という点でも大きく違います。
 ネット時代のメディアとして、人の意見を聞けるということは、どんなふうに位置づけていますか。

【会場参加者】
 例えば新聞でも事実を述べる欄と、社説のような欄があると思いますが、ネットも事実を述べる欄と、例えばクリックをすると意見を聞けるように明確に分かれて、これは事実なのか、意見なのかが明らかになっているとよいと思います。

【会場参加者】
 ネットは誰でも見られるツールで、誰でもその意見を書くことができてしまいます。新聞だとその分野に詳しい方、専門家の方の意見を知ることができるという点は大きいです。ネットの情報は誰が書いているかわからないものが多かったりします。それが新聞社のオンライン版であったりとかしたら正確なのでしょうが、若者でそこまで見る人はなかなか多くはいないのかなとは思っています。それによってフェイクニュースのように、誤った情報を捉えてしまうことは結構あります。最近でも、ジャニーズ事務所のジャニーさんがお亡くなりになる前に、「亡くなった」という偽情報をネットで見て、それを信じて親にその話をしたら違ったということがありました。その時、テレビではそのような報道は全くされておらず、テレビは情報の裏をきちんととったうえで報道するからかなと思いました。信頼性においては、やっぱりネットは一番危ない感じがします。テレビと新聞は同じくらいなのかなというのが私の持つイメージです。

(中島委員)
 ネット時代になると、情報をただ受け身で受けるだけではなく、積極的にそれの評価もあわせて行う必要があるということでしょうね。

(松坂理事)
 「差の発生」と書かれていますが、これはどういう意味なんでしょうか。

【会場参加者】
 ネットというと、若者がたくさん使うイメージがあり、ネットを使ったツールがどんどん発展していった時に、若者は使えるけれども、高齢で使い方がわからないという人との間には差が生まれると思います。そういう点では公平性や平等性が欠けるのではないかと思い「差の発生」と書きました。

(松坂理事)
 とても身近で使いやすいけれども、ネットに対する習熟度で差が出てしまうのではないかということですね。

(中島委員)
 「国際的」とあります。特に国際化ということを意識した放送としてはNHKの国際放送があるわけですが、これを書かれた方はいかがでしょうか。

【会場参加者】
 NHKの国際放送を見たことはありませんが、ネットは世界につながっているものだと思うので、日本のことを世界に発信したり、逆に世界で起こっていることを伝えたりということに使えるとよいと思いました。

(中島委員)
 実際には国際放送などに接する機会は、日常の生活では非常に少ないという現実もありますか。

【会場参加者】
 アプリの存在は知っているのですが、あまり見たことはありません。

(松坂理事)
 NHKは「NHKワールドJAPAN」という国際放送を放送しています。国際放送をやることはNHKの本来の業務として定められているので、力を入れてきました。在日外国人や、訪日外国人観光客が増えているので、そういう人たちのための情報提供に力を入れてほしいということも言われます。他国のニュース番組をもっと流してほしいというご意見もあります。BS1で朝に「BS世界のニュース」という番組を放送していますが、その番組を好きだという方も多くいらっしゃいます。NHKには、日本の情報を国際発信する、また世界で何が起きているかということをきちんと伝えることを、積極的にやってほしいという意見がここでも結構多いのだなと思いました。

【会場参加者】
 僕は「ワールドTVの放送」いう言葉を書いたのですが、以前、総合テレビで国際放送の番組が短く放送されていて、とてもおもしろいと思ったのをきっかけに、アプリを入れて見始めました。そういうきっかけが地上波でもBSでももっとたくさんあれば、よりたくさんの人に知ってもらえるかなと思いました。

(松坂理事)
 国際放送と同じ番組を総合テレビやBSでも放送する時もあります。それから「地方と世界」と書いてあるのは、どなたのご意見ですか。

【会場参加者】
 私です。私がNHKを見ていていらいらするのは、東京に関する番組が多過ぎるからです。例えば東京に台風が来るのと九州に台風が来るのでは取り扱われ方が違う気がします。全国の1割の人が東京に住んでいるという事実があるかもしれませんが、ネットであれば、東京集中ではなくて地方のことをもっとできるのではと思いますので、地方をもっと取り上げてほしいということと、やはり世界も取り入れられるのがネットじゃないかなということで、「地方と世界」と書きました。

(中島委員)
 なるほど。東京中心の報道ということは時々耳にしますが、実態としてはどうなんでしょうか。

(松坂理事)
 確かに首都圏は人口がとても多いですし、同じぐらいの雨が降っても風が吹いても、首都圏だとすぐ電車が止まったりして影響も大きいことがあり、たくさん扱う傾向になります。一方で、去年も西日本で豪雨がありましたし、全国各地で災害が起きますので、地域のより細かい情報が欲しいという要望は非常に強く、できるだけ災害などでも地域放送をやるように努めています。
 また、情報番組では、地方の視聴者も、東京で何がはやっているのかというのは、興味がある方が多いのですが、一方で、少し首都圏に偏り過ぎるのではというご意見も確かにいただいています。

(中島委員)
 私の学校は全寮制ですので、生徒は全国から来ています。首都圏のニュースを見て、大雨ではないと思って安心してはならないですね。九州や北海道はどうかということで、そういう観点で地方の限られたところの情報を知るのに、ややもどかしさを感じることが確かにありますね。

【会場参加者】
 私は「グローバルなNHKワールドニュースと在日外国人のための番組」という言葉を書きました。私はBS1のワールドニュースが好きです。日本人が取り上げた世界のニュースと、その現地の方が取り上げて現地で放送されているニュースというのは、伝え方が全然違う印象です。衣装もアナウンサーの方がミニスカートをはいていたり、いろいろです。私はいろいろな言語のニュースをおもしろくて聞いていますが、在日外国人にとっては、母国語で聞けるニュースというのはとても限られていると思うので、おそらく大きな情報源なのではと思います。
 これからはスマホで見るようになるのかもしれないですが、テレビで見るニュースは臨場感が違うと思います。たとえば、紛争が多い地域から来日している方が、母国が今どういう状態かを見るためには、現地がつくっているニュースを見ることを必要としているんじゃないかなと思います。

【会場参加者】
 情報を隠さないでほしいと思います。たとえば、東日本大震災でボランティアが支援に行った際、実は女性が暴力を受けていたこともあったと聞いて、都合の悪い情報を隠しているのではないかと感じました。ネットにはそのような情報も書かれていることがあるので、それが事実ならテレビでも許容できる範囲で、隠さずに放送してほしいです。

【会場参加者】
 「パケットが・・・」というのは私が書きました。ネットで常時同時配信が始まると聞きましたが、外出先でWi−Fi環境が整っていないところはまだたくさんあり、そのような場所で配信を見ようと思ったら、かなりパケット代がかかるのではと感じます。だから実際見るとなれば、家などWi−Fi環境のある場所に限られるのかなとも思いました。

(松坂理事)
 この数年、試験的に番組を配信して調査をしてきましたが、意外と家で見る方が多いです。一番の理由は、やはりWi−Fiがあるということでした。通信料は非常に気になるところで、今年度から始めようとしているサービスでは、リアルタイムのほかに一定期間、動画を見逃し視聴でご覧になることができますので、それをWi−Fiがある環境でご覧になる方も多いと思います。
 ただ、一方で、移動時間中でもリアルタイムで見たいというニーズもあり、確かに「パケット」は課題だということは利用者の方からもこれまで言われています。

【会場参加者】
 「ニュースをまとめて見られる」と書きました。ネットのニュースは、自分で選んで見ないと見られないので、それが嫌で、私は結構テレビでニュースを見ています。もしネットでも自分の好きなニュースを見るのではなく、新聞をばっと見るみたいな形で、その起こっていることをまとめて見られたらよいと思います。

【会場参加者】
 私が気になったのが、「公平な視点」という言葉です。どういう点においての公平なのかが気になりました。どなたか書かれた方、お願いします。

【会場参加者】
 「公平な視点」というのは、私が書きました。ネットのニュースだと、かなり意見が偏ったニュースになってしまったり、こんな意見の人もいれば、あんな意見の人もいるというような視野の広さがあまりなかったりするニュースも多いです。NHKは公共メディアとして、ニュース全体が見渡せるように、幅広い意見を取り入れてニュースや番組をつくってほしいと思います。

(中島委員)
 「都合の悪い情報を隠さない」、「公平な視点」というのは、現状の報道に対しての指摘だと思いますが、ほかの「信頼できる」「信用できるもの」、それから「フェイクニュースに惑わされないのか」という言葉は、現実をどのように評価あるいは批判しているのでしょうか。現在の報道についてはどのように思っていますか。

【会場参加者】
 今の時代、さまざまな情報源から来るどんな情報に対しても、ある程度疑いを持ちながら受け入れている感じがしています。特に新聞だったら信頼できる、テレビだったら信頼できるなどという感じがなくなっています。教科書も時代とともに、その知識が正しくなくなることもありますので、別にそれで信頼できなくなるという意味ではなく、そういう正しさとか私の中にそんなにこだわりがないと思っています。
 スマホのアプリで情報を見られるようになったら、感覚的に、もうそんなに信頼していない気分で受け入れているかもしれないと思います。

(中島委員)
 「自分の国にとって都合のよい報道」という言葉を書かれた方、お話聞かせてください。

【会場参加者】
 以前、安倍首相がイランを訪問した際に、日本では訪問がイランに歓迎されていると報道されていましたが、イラン側から見るとそうではなく、日本はアメリカの味方だと見られたようで、そこに日本と海外の報道では何か違いがあるのかなと思ってしまいました。

(松坂理事)
 「短い番組」と書かれた方、お話聞かせてください。

【会場参加者】
 Eテレの「びじゅチューン!」という番組が好きなのですが、よくEテレで放送している5分の番組など短い番組の動画をネットで一気に、空いている時間に見られたら、おもしろいと思います。

(松坂理事)
 「Eテレとスマホ、教育ツールとして」というのはどういうご意見ですか。

【会場参加者】
 私はE テレがとても好きで、小さいころは「いないいないばあっ! 」や「おかあさんといっしょ」がずっとテレビで流れているような環境でした。今、改めてEテレを見ると、「にほんごであそぼ」や「すイエんサー」、音楽の番組など、教育という目的でつくられる放送番組がとてもおもしろいと思います。今の若い親は子どもにユーチューブを見させることも多いようです。Eテレもユーチューブなどに番組の動画があったら、おもしろさに気づいてもらえるし、子どもの教育にもよいのではと思います。

(中島委員)
 たとえば「ピタゴラスイッチ」なども幼児には人気があるようで、今は親と一緒にテレビで見ていると思いますが、それがネットで、スマホで幼児だけが見ることになる可能性についてはどう考えますか。

【会場参加者】
 以前、お母さんが運転する自転車の後ろに座っているお子さんがタブレットで動画を見ていて危ないなと思ったことがありました。でも、親子の会話が動画で弾むこともあるでしょうし、病院など静かにしなくてはいけない場所では、タブレットがあれば子どもは集中しておとなしくしていられるというのはあると思います。

(中島委員)
 幼児がタブレットに接する機会というのは、これからずっと増すであろうということですね。

(松坂理事)
 「受信料」、「お金」と書かれた方はいかがですか。

【会場参加者】
 海外の放送局ではネットが無料のところも多いので、NHKもネットはただで貫いていただきたいなと思い、「無料」と書きました。

(松坂理事)
 常時同時配信を今年度中に始めたいと思っていますが、それは受信契約者の方に限定するという形でスタートします。今のようなご要望があることは、受け止めさせていただきたいと思います。
 こちらの「未払い」と書いた方はどなたですか。

【会場参加者】
 はい。大学生の友達の中には、先ほど経営委員の説明にもあったように奨学金をもらっていて、受信料の支払い免除対象の人もいますが、支払わなくてはいけない人もいます。受信料の契約については、訪問員の勧誘が強いという話を聞きます。友達は居留守を使うこともあるそうです。
 でも、受信料がないとNHKは成り立たないと思います。私の周りには未払いの人も多いので、お互いが気持ちよく、受信料を支払ってもよいと思えるようなアプローチのしかたが必要ではないかと思います。

(松坂理事)
 「コンパクト」「使いやすさ」「見やすさ」など、ここに書かれているようなことを、私たちも最近議論しています。放送というのは、時間をずっと埋めていくわけです。長い番組のほうが埋めるという意味ではよいのですが、スマートフォンでご覧になる人には、コンパクトじゃないとなかなか見ていただけないということもあります。「短い番組が見やすい」というご意見がありましたが、放送番組のつくり方も、よりコンパクトな番組で伝える努力もしないといけないのではないかと話したりしています。参考にさせていただきます。

(中島委員)
 「世代に合わせた番組」とありますが、若い人たちに興味のある番組が少ないのではないかという意味での指摘でしょうか。

【会場参加者】
 最近、アナウンサーよりお笑い芸人などのタレントを使うことが多くなった気がします。若者に人気のあるタレントを使い、番組の内容も若い世代に合わせたものが増え、私もNHKを見る機会が増えました。逆に私の祖母は「うるさい番組が増えた。ニュースは見るけど、最近のNHKはちょっとついていけないわ」と話していて、「ガッテン!」や「鶴瓶の家族に乾杯」など、世代に合わせた番組もやはり必要なのかなと思いました。

(松坂理事)
 NHKの経営計画には、NHKが追求する6つの公共的価値が掲げられています。「正確、公平・公正な情報で貢献」、「安全で安心な暮らしに貢献」、「質の高い文化の創造」、「地域社会への貢献」、「日本と国際社会の理解促進」、「教育と福祉への貢献」です。きょうの皆さんのご意見には、それらを求めるようなものが多いなと思いました。ありがとうございました。

 

 

≪各グループディスカッションの報告≫

 

各グループの代表者が、グループディスカッションで出た意見が貼られたボードを見せながら発表した。

 

(内山アナウンサー)
 それぞれのグループで、どのような内容が話し合われ、どんなご意見や質問が出たのか、グループの代表の方にご報告をお願いします。

 

【Aグループ代表者】
 私たちのグループでは、まず、公平と公正の基準に関して話し合いをしました。公平の基準を常に考え続けること、また、何者にも干渉されない独立した機関であることが大事だということになりました。
 その上で、NHKならではというところを出してほしいという意見や、災害時に必要な情報を届ける役割を担ってほしいという意見が出ました。
 次に、ネットとテレビの関係について話し合いをしました。ネットは自分で見にいく媒体、テレビは受動的に流れてくる媒体と位置づけていて、テレビは幅広くいろいろな意見を紹介するという役割で、ネットはその中から自分がもっと知りたいと思うことを調べられる、そういうコンテンツの展開を期待しているという流れになりました。
 最後に、NHKの過去の番組や違う地域の番組をいろいろ利用しやすくなるとよい、という話がでました。

 

【Bグループ代表者】
 私たちのグループでは、大きく分けて5つのテーマが出ました。
 最初に、NHKのジャーナリズムについて話しました。ここに「ひきこもり」という付箋が貼ってあります。これは、ひきこもりの状態の人たちを含め、接触が難しい人々が社会には多くいて、NHKのニュースや番組では、そういう人たちにもアプローチをしていることがすごい、という意見でした。
 NHKが目を背けたくなるような現実にもどんどん深掘りしていき、公共メディアとしてネット活用も含めて進んでいくと、ネットは字数制限がないので、今まで以上に深掘りができるのではないかという意見も出ました。
 2番目に話したのは、若い世代との関わりというテーマです。Bグループは9人でしたが、そのうちの2人はテレビを全く見ないという方でした。そういう人は、ネットをテレビよりも愛用しているということでした。このようにテレビ離れが進む中で、公共メディアはより必要になるのではないか、フェイクニュースなどいろんな情報が錯そうするこのメディア社会において、公共メディアはそれを先導していく存在になっていくのではないか。だから必要なものではないか、という意見が出ました。
 3番目にはNHKのイメージについて話しました。やはり堅いイメージが多いのですが、私たちのグループからは、堅い面もあるけれど、バラエティー番組などくだけた面を結構最近は出してきているという意見が出ました。この堅いイメージとくだけたイメージを、NHKは両方大事にしていて、堅いイメージがあるからこそ、知恵を集めて質のよいさまざまなジャンルの番組をつくることができるとわかりました。
 次に、受信料についてです。私たちのグループにも受信料制度についてあまりよいイメージがなく、訪問で来た人の対応が悪く、NHKの印象が悪くなってしまったという人もいたのですが、NHKは改善の努力をしていて、マナーアップキャンペーンというものも行われているそうです。それから、N H K の事業収入の90% 以上が受信料だということです。この受信料があるから、質のよいさまざまなジャンルの番組をNHKがつくれるので、受信料も大切な存在だと気づかされました。
 最後に、グローバル社会においてのNHKです。Bグループには、海外から来た子どもたちに日本語を教えていて、NHKの番組を使って教えたいという人がいました。グローバル化が進む中で、海外から来た人への日本語の番組もどんどんつくっていただきたいなと思います。NHKワールドJAPANという国際放送は英語の放送ですが、日本語の放送もあります。まだ、海外での放送は権利関係など課題があるので、これからそのような問題を解決してほしいという意見が出ました。
 最後にNHKには、日本のマスメディアを先導し、世界に誇れる存在に、なっていただきたいと思います。ありがとうございました。

 

【Cグループ代表者】
 私たちのグループでは、主に信頼性・正確性、アクセスのしやすさ、それから、世代に合わせた番組、地方に合わせた番組、また、外国人の方に合わせた番組、それから、スマホとNHKということについて話をしました。
 信頼性・正確性については、公共メディアとして、日本にとって都合のよい報道だけではなく、きちんと公平な視点を持った報道を事実として伝えることや、偏った意見ではなく、幅広い意見を取り上げるということが必要であるという意見が出ました。
 アクセスのしやすさについては、ネット時代はスマホが重要なツールになってくるので、NHKとスマホがどのように関わっていくかについて話し合いました。受信料制度や、ネット配信でパケットの通信料がかかってくる問題、Wi−Fi環境がないとなかなか見にくい問題などが取り上げられました。
 テレビは長尺の番組があるけれども、スマホで見るとなると短い番組でしか興味が湧かず、見る気にならないという意見も出ました。スマホで見るコンテンツに対しての制作のあり方の話になり、コンパクトな番組がよいという意見が出ました。
 世代に合わせた番組というキーワードからは、Eテレの教育番組について、私たちの大学生の若者世代に合わせた番組、また高齢者、お年寄りの方を対象にした番組など、それぞれの世代に合わせた番組づくりが必要ではないかという話が出ました。また、東京の人口が多いのはしかたがないのですが、地方に住んでいる人々への情報提供の強化についても意見が出ました。
 災害時に、スマホを持っていないお年寄りなどには、なかなか情報が届きにくいのではないかという意見も出ました。
 国際については、NHKでは「NHKワールドJAPAN」などの国際情報の提供は義務だということを聞きましたが、在日外国人に向けた番組のつくり方などは、もう少し何か工夫ができるのではないかという意見もありました。

(内山アナウンサー)
 グループの代表の皆さん、ありがとうございました。最後に、経営委員からの感想です。

(井伊委員)
 大学生の皆さんがとてもしっかりした意見を持っていて感激しました。私のかわりに経営委員会に出て発言していただきたいと思ったくらいです。
 公共放送があるということを私たちはとても当たり前のように思っていますが、例えばアメリカでは、全国規模のNHKのような公共放送というのは存在しません。これから公共放送というより公共メディアと呼ぶべきなのだと思いますが、公共メディアがあるということの幸運を感謝したいです。
 きょうお集まりの皆さんは、これからの日本を担っていく方たちなので、この会が日々の生活に公共メディアをどのように生かしていくのかを考える機会になったのならば、とてもうれしく思います。言い足りないことや思いついたことなどは、NHKのホームページなどを通して発信してくださればと思います。また、NHKで将来働きたい、社会のために何かしたいと思う人は、NHKを将来の職場の一つとして考えてくださればと思います。
 きょうはとても楽しかったです。ありがとうございました。

(中島委員)
 私もグループディスカッションに参加し、時間が短く感じられるぐらい非常に活発で真摯(しんし)な意見が出て、非常に頼もしく思いました。
 ニュースなどの情報源が新聞ではなく、もはやテレビに移っているということ、いろいろな発言からまさに実感しました。それだけにNHKの信頼性、また意義が非常に問われるかと思いますが、私の印象では大体肯定的であったと思いました。
 それから、インターネットをスマホで見る機会が非常に多いのでしょうが、その可能性や展開に関しては、ぜひ若い人たちの意見も参考にしながらまとめていくことも必要と思いました。
 非常に密度の濃い時間を共有させていただき、ありがとうございました。

(森下委員長職務代行者)
 きょう皆さんと話をして、まず、公共メディアというのは何だろうということを、もう一度私たちもしっかりと考えないといけないと思いました。そのポイントは、やはりいかに公平・公正、正確な情報を届けているかということです。特にネットの時代には、情報がたくさんネットに流れてきて、見るものが非常に偏ってくるわけです。そういう中でいかに正確な情報が伝わるかが重要です。NHKがこれからネットで常時同時配信を行う時に、NHKのネットの配信は非常に正確で、特定の意見だけではなく、いろいろな意見がきちんと入っていて信頼できるということが、一番大事であるということが、きょう皆さんの意見をお伺いしてあらためて感じたことです。
 それから、ネットに流すことの意味については、地域によって、あるいは人によって、さまざまな情報が求められていますが、ネットに流すことによって、個別の地域の情報や、関係するいろいろな情報、解説の情報などが見られるようになります。放送の幅が広がっていくということです。
 当面は常時同時配信が一つの流れですが、ネットで流していくことの可能性というのが非常に大きいわけです。それについて、きょう皆さんからいろいろな意見をいただきました。特にSNSとの連携などは、まだまだ取り組んでいる初歩のところだと思います。この先、可能性をもっと広げていかないといけないと思います。ぜひ皆さんから積極的に意見を出していただき、公共メディアを育てていくのに生かしていきたいと思っています。これからもよろしくお願いします。ありがとうございました。

(内山アナウンサー)
 学生の皆さん、きょうは貴重なご意見をありがとうございました。

 

○参加者が書いた「ネット時代の公共メディア」の課題や意見のキーワード

【Aグループ】
【Aグループ】

 

【Bグループ】
【Bグループ】

 

【Cグループ】
【Cグループ】

 

 

<NHKキャンパス・ミーティング@名古屋大学> 参加者当日アンケート

※全表の単位はすべて人数
参加者数 27 名
回収数  27 枚

質問1:性別

男 性 女 性
6 21

質問2:年齢

10代 20代 30代以上
10 13 4

質問3:今回のイベントを何でお知りになりましたか(複数回答)

ホームページ 放送(テレビ) 放送(ラジオ) メール・Twitter 大学からの案内 友人・知人 その他
2 3 0 2 17 3 1

質問4:今回のイベントに参加していかがでしたか

大変満足 満足 普通 不満 大変不満 未記入
6 12 1 0 0 8

質問5:印象に残ったコーナーはどこでしたか(複数回答)

経営重要事項 分科会
(グループ討議)
グループ発表 講演会 特になし 未記入
0 12 3 11 0 6

質問6:NHK経営委員会の仕事を知っていましたか

よく知っていた 知っていた 知らなかった その他
1 2 24 0

質問7:今回のイベントに参加して、NHK経営委員会の活動について理解が深まりましたか

深まった 変わらない わからない その他 未記入
25 0 0 0 2

 

 

<実施後のアンケートに寄せられた主なご意見>

 

経営全般について

  • NHKは自分が思っていたよりいろいろな取り組みをしていて驚いた。もっと広く認知されるとNHKの努力が伝わると思う。
  • 公共メディアとしてのNHKの役割や、経営委員会の存在を知ることができ、興味深かった。
  • 私は全くテレビを見ない。受信料をなぜ支払う必要があるのかわからなかったが、NHKの放送への姿勢を知って感銘を受けた。印象が変わった。
  • 「受信料を支払ってください」とNHKで放送しているが、「なぜ」「どうして」の視点が足りない。そこをもう少し伝えてみてはどうか。
  • 受信料を支払うことは、私たち一人ひとりが放送コンテンツ事業に携さわれるツールだな、と肯定的にとらえるようになった。
  • 受信料を租税化して、国民全員から料金を徴収すればNHKの拡大と公平性を担保できるのではないかと思う。
  • NHKがどのような取り組みをし、番組を制作しているのか、過程を伝えることもできるのではないか。

 

放送・インターネットサービスについて

  • ネットが普及した中での「テレビ」は、さまざまな困難がありながらもさまざまな可能性もあるのだと実感した。しかし、NHKの強みは「信頼性」だと思うので、その部分は根幹にあり続けてほしい
  • ネットという新しい媒体を手に入れても粗製乱造にならず、現状のような質の高い情報をさらに広く深くとなるよう期待している。
  • 地上波で高度な放送技術の開発に取り組んでいることに感動した。
  • 最近、アプリが多くてうっとうしいので、アプリの数を少なくしてほしい。
  • NHKのインターネットコンテンツが充実して、検索した時にNHKのコンテンツがヒットする機会が増えると、今まで興味がなかった人にも届くようになるかもしれないと思った。
  • NHKの解説はとてもわかりやすいと思うので、番組内で使った解説アニメーションを辞書のようにして利用できるようになったらよいと思う。
  • これから在日外国人はもっと増加するので、外国人児童向けの番組なども必要になるのではないか。

 

運営・その他について

  • グループディスカッションでは、いきなり発表ではなく意見を各自で考える時間があったので参加しやすかった。
  • 「チコちゃんに叱られる!」のプロデューサーの話が聞けてとても満足だ。
  • 公共メディアについて同年代で議論するのは、予想以上に楽しかった。
  • 同年代が、世の中をどう見て、そして世の中がどう動いているのか、直に感じることができて、楽しかった。
  • グループ討議では、多くの人がNHKを見ていた。もし改善点を若い世代に聞くのであれば、NHKを見ていない人たちを多く集めるべきだ。または、NHKをよく知る人たちがNHKを知らない人たちに魅力を伝える会を開催してもよいのではと思う。
  • 課題はたくさんあると思うが、NHKはこれからも日本や国民を支える放送機関としてがんばってほしい。
  • グループディスカッションでとても活発な意見を出し合うことができた。