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第1317回
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平成30年11月30日(金)公表
※5 審議事項(1)「平成31年度予算編成の考え方」(「NHK経営計画(2018-2020年度)」修正議決(受信料値下げ)に関わる部分のみ)  は平成30年12月14日(金)公表
5 審議事項(1)「平成31年度予算編成の考え方」(全文)は平成31年2月1日(金)公表

※「NHKのガバナンスについて」は2019年11月1日(金)公表
※情報公開・個人情報保護審議委員会の答申をふまえた追記は2020年7月31日(金)公表

日本放送協会第1317回経営委員会議事録
(平成30年11月13日開催分)

第1317回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1317回経営委員会

 

<会 議 日 時>

平成30年11月13日(火)午後1時00分から午後5時45分まで

 

<出 席 者>

〔委  員〕

  石 原  進 森 下 俊 三 井 伊 雅 子
    槍 田 松 瑩   小 林 いずみ 佐 藤 友美子
    堰 八 義 博   高 橋 正 美 中 島 尚 正
    長谷川 三千子   渡 邊 博 美  
  ◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔役  員〕

  上 田 会 長 堂 元 副会長 木 田 専務理事
  坂 本 専務理事 児 野 技師長 松 原 理 事
  荒 木 理 事 黄 木 理 事 菅   理 事
  中 田 理 事 鈴 木 理 事 松 坂 理 事

 

 

<場   所>
放送センター  22階経営委員室  21階役員会議室

 

<議   題>

 

○ 経営委員会事務局職員の同意人事

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(新潟)登壇者報告

 

○ 監査委員会報告

 

付議事項

 

1 会長報告

 

2 議決事項

 (1) 国際放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 (2) 新放送会館の用地取得について(資料)

 (3) ラジオ中継放送局の設置計画について(資料)

 

3 報告事項

 (1) 平成30年度中間決算・中間連結決算(概要)について(資料1)(資料2)

 (2) 新松江放送会館の整備方針・概要について(資料)

 (3) ラジオ中継放送局の開局について(資料)

 (4) 放送局再免許交付について(資料)

 (5) 契約・収納活動の状況(平成30年9月末)(資料)

 (6) 2018年秋季交渉について(資料)

 

4 その他事項

 (1) 会計検査院による平成29年度決算検査報告について(資料)

 

5 審議事項

 (1) 平成31年度予算編成の考え方(資料1)(資料2)(資料3)

 

○ 意見交換「平成31年度予算編成の考え方」

 

 

議事経過

 

 石原委員長が開会を宣言し、経営委員会を開催。

 

 

○ 経営委員会事務局職員の同意人事

 経営委員会事務局職員の評価について堂元副会長より説明を受け、同意した。

 

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(新潟)登壇者報告

 11月3日土曜日に開催された「視聴者のみなさまと語る会(新潟)」に登壇した佐藤委員、渡邊委員から感想の報告を受けた。

 

 

○ 監査委員会報告

 最近の不祥事について、監査委員会より説明を受け、意見交換を行った。

 

 

<会長、副会長、専務理事、理事入室>

 

 本日の付議事項および日程について説明。第1316回(平成30年10月23日開催)の議事録を承認し、所要の手続きを経て、平成30年11月16日に公表することを決定した。

 

 

付議事項

 

1 会長報告

 (上田会長)
 私から3点ご報告いたします。まず放送素材の誤送信について、説明いたします。
 今月1日、宗教団体を取材していた札幌放送局のディレクターが、住民インタビューの音声ファイルを入手できる情報が入ったメールを、誤ってその宗教団体に送信する事案が発生しました。また、この事案の再発防止策を打ち出した最中の今月9日から10日にかけて、バラエティー番組の業務委託先のディレクターが、映像ファイルを入手できるメールを第三者のメールアドレスに誤って送信する事案が起きました。こうした放送素材を誤送信することは、放送事業者として決してあってはならないことであり、関係者にご迷惑やご心配をおかけするとともに、国民・視聴者の皆さまの信頼を著しく損なう結果となりました。深くおわび申し上げます。
 いずれの事案もNHKが定めたルールを逸脱したことによって引き起こされたものであり、事実関係を詳しく調べた上で厳正に対処いたします。再発防止に向けては、これまでの対策を抜本的に改め、機密性の高い情報の取り扱いを一層厳格にいたします。
 事案の経緯や再発防止策については、木田放送総局長より説明いたします。
 (木田専務理事)
 ただいま会長が申し上げたとおりですが、特に札幌の事案は、住民とは対極にある宗教団体に誤送信するという、報道機関として許されないことだと認識しております。外部ディレクターの事案も含め、深くおわびいたします。
 まず、札幌の事案について、説明いたします。NHKでは、素材を共有する際は、業務用に指定しているシステムを使うよう定めています。このサーバーにパスワードをかけて保存すると、ファイルをダウンロードできるURLを取得することができます。このURLとパスワードを、相手先にメールで伝えます。このメールを受け取った人が、URLにアクセスしてパスワードを入力するとファイルを引き出すことができる仕組みになっています。ところが札幌の事案では、こうしたルールがまったく守られていませんでした。
 この誤送信は、札幌放送局のディレクターが、住民インタビューの内容を文字に起こす作業を契約先の業者に依頼した際に起きました。
 まず問題1点目です。大原則であるNHK指定のシステムではなく、外部のファイル共有システムを使っていました。しかもその際、問題2点目、パスワードをかけていませんでした。問題3点目は、このURLを契約先の字起こし業者に送った際、宗教団体の広報部に誤って送信してしまいました。同じ取材班の記者と宗教団体の広報部のアドレスが似ていたため、誤って選択したということです。機密性の高い情報を扱う際は、送り先のアドレスを確認するというルールを守っていませんでした。実は、外部サーバーへの保存の時点でもう一つ問題がありました。これが問題4点目です。保存の際には、ファイルを削除できる暗証番号が表示されるのですが、ディレクターはこれを書き留めていませんでした。このため、誤送信に気づいた後もただちに削除することができませんでした。
 今回の問題では、インタビューに応じていただいた住民の方々への対応が最も重要であると認識しております。
 音声ファイルに入っていた6人については、これまでにすべての方と連絡が取れ、経緯をご説明するとともに謝罪いたしました。今後も関係機関と連携を取りながら、住民の方々の安全確保と不安の解消に万全を期す所存であります。
 続いて、制作局での誤送信について説明いたします。誤送信はNHK制作局の業務委託先である制作会社のディレクター2名と、別の制作会社の編集担当者の間で起きました。
 今回も問題1点目、指定外の外部サーバーが使われていました。それから問題2点目、パスワードもかけられていませんでした。そしてなぜ誤送信が起きたかというと、問題3点目、委託先の編集担当者が、自分のアドレスを間違えてディレクターに伝えていました。誤送信の発覚後およそ2時間でアクセスを遮断しましたが、ファイルがダウンロードされたかどうかについては、外部システムの運営会社を通じて、現在、調査を進めているところです。
 誤送信された映像ファイルは計70件あまりで、あわせて33人の映像が含まれていました。スタジオ出演者の4人には、10日午後、経緯の説明と謝罪を行いました。ほかの29人は東京と大阪で行った街頭インタビューの対象者で、連絡先が不明のため、番組ホームページで、心当たりのある方は連絡をしてほしい旨を呼びかけており、確認が取れ次第、謝罪をしてまいります。
 再発防止策です。再発防止に当たっては、5日、放送総局長名で機密性の高い情報の管理とメール送信先の確認の徹底を指示しました。10日夜にも、外部ディレクターの誤送信を受けて、緊急対策を徹底するよう再度指示しました。その上で、NHKグループとしての抜本対策をまとめました。
 対策の柱は次の3点です。
 1つ目は、放送用素材のファイル共有に関する緊急確認の実施です。本部、地域、関連団体、外部プロダクションを含め、NHKの放送に関わるすべての組織を対象に緊急確認を実施し、ルールの順守状況を確認してまいります。
 2つ目は、誤送信を防ぐシステムの拡充と改修です。NHK本体が指定している安全なファイル共有システムの利用対象を、関連団体や外部プロダクションにも拡充します。あわせて、メール誤送信を防ぐためのシステム改修など、人為的ミスを防ぐためのシステム改修を速やかに段階的に実施してまいります。
 3つ目は、放送倫理とITリテラシーの再教育の徹底です。機密性の高い情報を扱う放送人に求められる倫理意識とITリテラシーの向上を主眼に、放送用素材を扱うすべての人を対象にした勉強会、セミナーなどを年内に実施します。
 こうした対策の実効性について毎年検証を行い、課題を明らかにしながらPDCAを回して再発防止に取り組んでいきます。

 (森下代行)

 この件については、報道機関として、極めて重要な案件だという認識を十分持っていらっしゃると思いますが、私が気になるのは、1件目が起こったときに、協会が文書を出して指導したのに、1週間ぐらいでまた別のところで起こったということです。2件目は委託先でもあり、若干事情は違うということでしょうが、現場サイドが、本部で出した文書をどう受け止めているのか。要するにマネジメントはどうなっているのかということが非常に気になるところです。基本的なことを言えば、これは非常に重要な取材源が表に出るわけですから、報道機関としては大変なことですので、そういった重要性を感じていれば、当然のことながら本部からそういう文書が出たところで、局長クラスで各放送局長、あるいは報道部長など、そういった立場の者が現場サイドに徹底的に緊急に指導しないといけません。それが本当にされていたのかというのが非常に気になるわけです。ということは、結局は現場の規律が緩んでいるのではないか、効率化優先、便利さ優先になっているのではないかということで、どうしてもやるべきルールを守っていない、使うべきシステムを使っていないということになるのです。それはやはり管理ができていないのではないかという気がしてならないのです。そういった意味で、今回の再発防止策の中で、まず緊急の周知徹底や確認の実施と伺いましたが、本部から通知をする、あるいは現場で放送局長が職員に対して教育をするというだけでは、なかなかその体質は変わらないだろうと思うのです。なぜかと言えば、彼らは悪意を持ってやっているわけではなくて、使い勝手が悪いとか、こっちがやりやすいとか、何かいろいろな理由があって、勝手なことをやって、ルールを守っていないということだと思うのです。だから、まずはそこを徹底的に調べないといけないのです。システムを改修するにしても、そこをぜひよく分析して、現場サイドではそういう余計なことをやらないでいいようなシステムに変えないといけないということを徹底してもらう。そのためには、やはり現場で実際に作業する人たちにどうしたらこういうことを防げるのかということをみんなで一緒に議論してもらわないといけないと思います。そうしないと、現場サイドに本当に徹底されない。かつて大阪放送局で「クローズアップ現代」の問題が起こったときに、ディレクター、プロデューサーの方々に議論してもらったと思うのですが、今回もそういうことをぜひやってもらって、本気になってみんなが、現場の人がきちんとルールを守れるように徹底させるということをやってもらいたいと思います。PDCAを回すということですが、やはりそれをやらないと、形だけやってもだめなので、ぜひそこはお願いしたいと思います。それから、そういったことを監査委員会でよく見ていただくことが必要だと思います。もう一つは、なぜ外部のシステムを使わなくてはいけなかったのか。そこのところもよく見ていただいて、特にこういう取材源に関するもの、素材に関するものはできるだけ外のものを使わないでいいような仕組みが要るのだろうと思います。また、業務委託をするところもありますので、そのあたりを含めて抜本的にきちんとした仕組みにしないといけないと思います。特に現場サイドは、たぶん働き方改革や、全体最適など、どうしても効率化を求めたいということがあって、ついつい安易な方向に走っていく可能性があり、それが規律を乱していくということにもつながるので、ぜひ本腰を入れてやっていただかないといけないと思います。よろしくお願いしたいと思います。

 (木田専務理事)

 森下代行のおっしゃるとおりです。周知徹底がまだ行きわたらない、そこにタイムラグができている間にこのような第2の事案が起きたことをわれわれとしましても、緊急の指示の周知が不徹底であることを本当に反省しております。特に、対症療法的なことだけではなくて、おっしゃるようにシステムであるとか、今後予想されるITの進展も見極めながら、より抜本的で、しかも安全確実な取り上げ方を現場と一緒になって、やはり一番よい方法はこれだと、きちんと腹に落ちて仕事ができるような体制に、一刻も早くもっていきたいと考えております。

 (石原委員長)

 それでは、私のほうからも一言申し上げます。今回、とりわけ厳格に扱わなければならない取材情報が、1週間あまりのうちに、二度までもメールの誤送信という形で漏えいしました。このことは報道機関として組織運営の根幹に深刻な影響をもたらす重要な問題であり、まことに遺憾です。番組の制作過程において、さまざまなICT技術を活用した業務がありますが、今回のように決められたルールが順守されなかったことは大変残念であり、コンプライアンス意識が欠如していると言わざるを得ません。NHKで働くすべての者がこのようなことを二度と起こさないという強い自覚を持ち、情報管理等のコンプライアンスを徹底し、再発防止に向けた取り組みを実施することを強く求めます。

 (上田会長)
 それでは2番目の報告です。前佐賀放送局長の懲戒処分について報告します。前佐賀放送局長について、職員の服務規定に反する不適切な行為があったとして10月31日に出勤停止14日の懲戒処分を行いました。また、11月5日には放送局長の職を解き、人事局付とする異動を発令しました。地域放送局の先頭に立つべき局長がこのような不適切な行動をとったことは言語道断であり、誠に遺憾です。執行部を代表いたしまして深くおわび申し上げます。後任の局長には現在、福岡放送局で放送部長を務める職員を充てることとし、11月7日に内示済みです。明日14日に発令となりますが、局内の人心を取りまとめ、速やかな信頼回復に努めるよう指示しました。また、11月6日には、私からコンプライアンス統括の鈴木理事に指示し、全職員に向けてコンプライアンスの徹底と信頼回復に向けて努めるよう呼びかける通達を発出したところです。
 このほか先月には、報道局のチーフ・プロデューサーが盗撮の疑いで逮捕・送検されました。指導や監督にあたる立場にある管理職がこうした不祥事を引き起こしたことを重く受け止めています。今後の捜査の状況を見極めながら、厳正に対処いたします。
 前佐賀放送局長の処分および再発防止に向けた取り組みなどにつきましては、人事労務担当の松坂理事から説明します。
 (松坂理事)
 処分についてです。10月31日に理事で構成する責任審査委員会を開催し、職員の服務規定に反する不適切な行為があったとして、先ほど会長から説明がありましたとおり、出勤停止14日の懲戒処分とするとともに、後任人事も含めて異動先を検討し、11月5日付で局長の職を解き、人事局付とする異動を発令しました。
 再発防止に向けましては、コンプライアンス担当理事が全職員に向けて通達を出したほか、人事労務担当理事の私から各拠点局長に事案の概要を口頭で説明した上で、管内の局長に対する一層の注意喚起を求めました。今後、さまざまな機会を捉えて全国の局長に対して綱紀粛正を求めるとともに、自ら先頭に立って信頼回復に取り組むよう指示を行います。また、コンプライアンスに関する研修などの場を通じて、職員一人ひとりに、公共放送に携わる者としてより高い倫理観を持って職務にあたるよう、教育や指導を徹底するなど、再発防止に向けた取り組みを進めてまいります。
 NHKを代表して地域の視聴者と向き合い、重い責任を負っている地域放送局長が今回のような事態を起こし、視聴者の信頼を失ったことを、重ねて深くおわび申し上げます。
 また、先月25日、報道局のチーフ・プロデューサーが、東京都の迷惑防止条例の盗撮の容疑で逮捕・送検された事案につきましても、公共放送に対する信頼を大きく失墜させたことを極めて重く受け止めています。現在、警察による捜査が行われており、その状況も踏まえて厳正に対処してまいります。

 (小林委員)

 以前も似たような事件があって、そのときも申し上げたと思うのですが、こうした問題を起こす職員というのは、必ずしも突発的にこのような行動を起こすというわけではなく、大体の場合、後で振り返ってみると、組織内でも何らかのうわさがあったり、ちょっと行動に問題があったりということが結構多いのです。このような問題を起こす人たちが、それなりの役職に昇進し、本来であればリーダーとして模範を示すべき立場にありながらこのような不適切な行動を取ったということですが、NHKの昇進、評価のあり方について、何か問題があるのではないのかという点です。昇進をどういう基準で行うのかということについて、もう一度見直していく必要があるのではないかと感じました。

 (上田会長)

 今のご指摘を踏まえまして、慎重に対応したいと思います。

 (石原委員長)

 こういうことを二度と起こさないためには、出勤停止14日という懲戒処分が妥当なのかという話になりませんか。

 (松坂理事)

 懲戒処分につきましては、本人や関係者のヒアリングなどをもとに、外部の3人の弁護士の方の意見なども踏まえまして、理事で構成する責任審査委員会で総合的に判断しておりますが、処分が甘いのではないかというご指摘も踏まえ、懲戒処分制度の運用のあり方について見直しを検討していきたいと思っています。それから、2007年に設けた管理職を対象とした降格制度というものもあるのですが、これは運用が非常に少ないということなので、今、人事局では、この降格制度も含めて、どのような対応にしたらよいのかについて、見直しを進めたいと考えているところです。

 (石原委員長)

 ただいまの報告を受け、私から一言申し上げます。地域放送の先頭に立つべき放送局長に、職員の服務規定に反する不適切な行為があり、処分を受けたことは極めて遺憾であり、大変残念でなりません。また、本件を含めて不祥事が続いていることは、NHKにはコンプライアンスの精神が極めて欠如していると言わざるを得ません。執行部は、このことを厳粛に受け止め、NHKの社会的責任に対する自覚を組織全体に根づかせ、コンプライアンス意識の徹底と再発防止に全力で取り組んでいただくようお願いします。

 (上田会長)
 PBIの出張報告です。前回の経営委員会終了後に、韓国のソウルに、PBIに出席するために出張しましたので、報告します。
 私は、10月23日から25日の日程で、韓国のソウルに出張し、現地で開かれましたPBI・国際公共放送会議に出席いたしました。
 PBIは、世界70か国あまりの公共放送の代表が毎年集まり、公共放送の役割や課題などについて話し合う国際会議です。
 私は、この会議の最初のセッション「Connected Platforms and Media’s Next Big Bang」で基調講演を行いました。この中では、NHKが2020年度までの3か年経営計画の重点方針として、6つの公共的価値を追求し、公共放送から公共メディアへの進化の実現を目指すことを説明しました。その上で、インターネットを活用した取り組みとして、「ニュース・防災アプリ」、「NHK for School」、「クローズアップ現代+」のショート動画などを紹介しました。
 また、会議に出席したイギリスBBCのトニー・ホール会長や、今回の会議のホストを務める韓国KBSのヤン・スンドン社長と個別に会談いたしました。2人ともお会いするのは初めてでしたが、情報と通信の融合時代への対応など、公共放送をめぐるさまざまな課題に関する意見交換を通じて、お互いの信頼関係を築くことができたのではないかと感じています。来年11月に東京で開かれますABU・アジア太平洋放送連合の総会への出席を打診したところ、2人とも快く応じてくれました。
 BBCのホール会長は、来年1月にEBU・ヨーロッパ放送連合の会長に就任することになっています。これを機会に、先月、私が会長に就任いたしましたABUとの間でも協力関係を構築できればと思っております。

 (長谷川委員)

 前回お伺いしたように、6つの価値のうち、公平・公正に関する反響はいかがでしたでしょうか。今回は少し強調できるかもと言っていらっしゃったと思いますが。

 (上田会長)

 今申し上げましたように、6つの公共的価値、それから、放送と通信を融合させたような形で、NHKがどういうことに取り組んでいるかということをご紹介させてもらいました。極めてよい反響で、BBCのトニー・ホール会長も非常に高く評価してくれました。それからABUでも、この私のプレゼンテーションを、73か国、279の放送事業会社等がありますが、そこに流したいということを言っていました。

 (長谷川委員)

 何よりでございました。

 

 

2 議決事項

 (1) 国際放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)
 (荒木理事)
 国際放送番組審議会委員につきまして、次のとおり委嘱を行いたいと思います。
 12月1日付で新規委嘱、お一人です。
 名古屋大学副理事で、大学院国際開発研究科教授の岡田亜弥さんです。略歴は別紙のとおりです。専門分野は国際開発・国際貢献で、これまでに国連地域開発センターや国連児童基金といった国連機関で仕事をされた経験もお持ちです。名古屋大学の副理事は2015年から務めていらっしゃいます。
 今回の新規委嘱によって、国際放送番組審議会の委員数は11人となります。委員の顔ぶれは別紙の委員名簿のようになります。また、分野別、年代別、性別については、委員構成として最終ページにまとめてあります。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (2) 新放送会館の用地取得について(資料)
 (松坂理事)
 新松江放送会館の用地取得についてご説明いたします。
 現在の松江放送会館は、1966年度に建設され、52年が経過しております。新会館の用地取得につきましては、2016年2月にNHKと松江市との間で基本合意書を結びました。その後、協議を重ねてきました結果、契約条件等が整いましたので、ご審議をお願いします。
 取得予定地の概要をご覧ください。取得予定地は松江市灘町101の一部です。敷地面積は4,693平方メートル、松江市立病院の跡地の一部です。用途地域は商業地域、建ぺい率80%、容積率約500%となっております。
 契約条件についてです。契約先は松江市、契約額は3億5,666万8,000円で、1平方メートルあたりの単価は7万6,000円です。この額は、取得した不動産鑑定評価を参考に、松江市と折衝したものです。
 本日議決いただけましたら、契約書締結手続きを取り進めてまいります。
 契約予定日は松江市議会終了後の12月26日、支払いおよび受け渡しは1月11日を予定しています。
 それでは、取得予定地、位置図をご覧ください。
 取得予定地は赤で示しています。青が今の現会館です。その隣になります。宍道湖の東湖畔に位置しており、県庁、県警、市役所などにも近く、業務上好適な環境にあります。JR松江駅からは約1.1キロメートル、新会館の西側に約25メートル、南西側には約10メートルの道路が面しています。
 スケジュールです。設計者選定の後、2019年度に基本設計で各室のレイアウトやデザインなどを決め、さらに詳細な実施設計を行います。その後、2020年度に建築工事に着工し、2022年度に建物完成、運用を開始する予定です。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (3) ラジオ中継放送局の設置計画について(資料)
 (児野技師長)
 ラジオ中継放送局の設置計画につきまして、議決いただきますようお願いいたします。
 今回の設置計画局所は鹿児島県の種子島です。ラジオの受信改善を目的として設置を行うものです。FM波を利用したラジオ中継放送局開設の制度を活用し、2020年度前半の開局を予定しています。この設置により、種子島、屋久島の約4,400世帯の受信状況が改善される見込みです。
 設置の位置は裏面の地図をご覧ください。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

3 報告事項

 (1) 平成30年度中間決算・中間連結決算(概要)について(資料1)(資料2)
 (松坂理事)
 平成30年度のNHK単体と連結の中間決算がまとまりましたので、ご報告します。
 それでは、お手元のA3判の資料をご覧ください。青色が単体の中間決算、裏の緑色が連結の中間決算になります。
 まず、単体の中間決算から説明します。資料の左側に、一般勘定の事業収支について、予算と中間期の実績を比較しています。
 30年度中間期の事業収入は、受信契約件数の増加により受信料が順調に推移しており、3,675億円となっています。予算に対して51.3%の進捗率です。このうち受信料収入は3,553億円で、進捗率は50.8%になっています。
 事業支出ですが、国内放送や国際放送の充実等に取り組む一方、効率的な業務運営に努めた結果、3,368億円となり、予算に対して47.3%の進捗率で、標準進捗率を2.7ポイント下回りました。
 以上により、事業収支差金は、306億円の黒字となり、予算の40億円に対して266億円の収支改善となっています。
 その下、資料の中段に、営業業績を記載しています。
 契約総数は中間期実績で50.7万件の増加、年間計画に対して253.5%の進捗率です。衛星契約数は41.6万件の増加で、計画に対する進捗率は90.5%、契約総数、衛星ともに標準進捗率を上回っています。
 一方、未収数ですが、4.4万件削減しています。112.1%の進捗率となっています。
 その下ですが、支払率は81.5%、衛星契約割合は51.4%と、順調に推移しています。
 その下のグラフは受信料収入の推移です。30年度中間期は、3,553億円で、29年度中間期に対して、104億円の増収となっています。
 それから、右上の表をご覧ください。先ほどの一般勘定に、放送番組等有料配信業務勘定と受託業務等勘定を加えた、協会全体の損益の状況です。
 経常事業収入は、30年度中間期は3,681億円となり、29年度中間期の3,577億円に対して104億円の増収になっています。受信料の増収などによるものです。
 中間事業収支差金は、先ほどご説明した一般勘定の306億円と、放送番組等有料配信業務勘定が2億円の黒字となっており、これを合わせた合計308億円となっています。前年度中間期に対して28億円の増益で、昨年度に続きまして、増収増益の中間決算となりました。
 その下の表は資産と負債等の状況をまとめたものです。
 30年度中間期末の資産合計は、現金及び預金の増等により、29年度末と比べて186億円増加の1兆1,557億円となりました。
 負債合計は3,856億円となり、未払金の減等により、29年度末と比べて122億円減少しています。
 純資産合計は7,700億円で、30年度中間事業収支差金が308億円発生したことによる増となっています。
 自己資本比率は66.6%となり、29年度末に対して1.6ポイント上昇しており、引き続き健全な財政状態を維持しています。
 続きまして、裏面、緑色の面です。中間連結決算の概要です。
 まず連結の範囲ですが、連結子会社13社、持分法適用会社1社の計14社で、前年度から変更はありません。
 損益の状況です。30年度中間期の経常事業収入は3,943億円となり、受信料の増収等により87億円の増収となっています。一方、番組の充実等を図りつつも効率的な事業運営に努めた結果、中間事業収支差金は、292億円となり、29年度中間期に比べて55億円の増益で、連結ベースでも昨年度に続き増収増益となっています。
 左側の下のグラフは、経常事業収入と中間事業収支差金の3か年の推移を示しています。グラフの中の四角で囲んでいる数字は、連結のNHK本体に対する割合である連単倍率を示しております。30年度中間期の経常事業収入の連単倍率は1.07、中間事業収支差金は0.95となっており、NHK本体の比重が高い割合となっています。
 次に、右側の上をご覧ください。経常事業収入の内訳を記載しております。
 NHKは、受信料の増収等により、30年度中間期は3,657億となり、29年度中間期に対して106億円の増収となっています。一方、子会社は、映像提供事業等の売り上げ減少により、子会社全体では286億円となっておりまして、29年度中間期に対して18億円の減収となっています。
 その下の表は、資産と負債等の状況をまとめたものです。30年度中間期の資産合計は1兆2,798億円となり、29年度末から210億円増加しております。なお、自己資本比率は66.6%となり、29年度末に対して1.3ポイント上昇し、連結においても健全な財政状態を維持しています。
 以上が30年度中間決算の概要です。
 なお、財務諸表につきましては、現在、会計監査人による監査を受けており、この後、監査報告書を受領する予定です。11月27日の経営委員会では、財務諸表に会計監査人による監査報告書を添付して、改めてご提出します。
 また、視聴者への公表ですが、この概要資料を、きょうこの後、NHKオンラインに載せる予定です。正式な財務諸表については、11月27日の経営委員会報告後、公表する予定としています。

 (堰八委員)

 最終的な事業収支差金がこれだけ大幅に改善しているというのは、大変結構なことだと思います。ただ、そもそも年度で40億円と見ていたものが、中間期ですでに306億円というのは、このあと議論する平成31年度予算編成にもかかわることですが、基本的に収支均衡という考え方がある中で、これだけ上振れしているということは、私としては結構なことだと思うのですが、NHKとしてはどういう評価をしているのでしょうか。
 また、下期に向けてはさらに効率的な業務運営をして、この収支差金が結果的に年度で、単純に言うと倍になってしまう可能性もありますが、引き続きこの調子で差金が増えていくということを目指して頑張っていくということなのか。それとも、これだけ差金があるので、変な言い方ですけれども、例えば制作費分についてはもう少し上乗せしてできるかなという感じになるのでしょうか。そうではないとは思うのですが、その辺の評価と、今後の下期に向けての考え方が、今の時点でどういうものなのか、お聞かせいただきたい。

 (松坂理事)

 現時点で300億円を超える中間期の事業収支差金が出ていることにつきましては、効率的な事業運営をやっていることもありますが、一番大きいのは受信料収入が非常に好調であるということだと思っています。今年度は、予算ベースでは6,995億円の受信料の収入を年度末で予定しているのですが、この予定を大幅に上回って受信料収入が増加しておりまして、7千億円を超えるのは間違いなく、さらに大きく伸びるのではないかと思っています。
 ただ、この中間時点での収支差金の今後なのですが、4K・8Kの本放送は12月から始まりまして、その番組制作費などはまだ計上されていないというようなこともありますし、設備関係の維持費など、年度の後半に予定されている支払いもあります。昨年度も年度の中間期より後半期にかけて、この事業収支差金は50億円ぐらい減っています。今年度もそうした年度後半の支出が想定されていますので、この事業収支差金は年度後半に向けて減ってくると見ています。
 全体的に見て受信料収入が非常に好調ですので、最終的な決算では、このままいけば事業収支差金は200億円は超えるのではないかと見ています。後半期の支出につきましても、効率的な事業運営に努めていくということを考えています。

 

 (2) 新松江放送会館の整備方針・概要について(資料)
 (松坂理事)
 先ほど、用地取得についてご審議いただきましたが、放送会館の建物の整備方針の概要について、お手元の資料をもとにご説明します。
 まず、2ページの基本コンセプトをご覧ください。新会館の整備にあたっては、4項目を掲げています。
 1点目は、災害に強い放送局です。新会館の用地は、湖畔に面した海抜の低い敷地であり、大雨や台風による浸水被害を受ける可能性があります。大規模な自然災害が万が一発生した場合であっても、安全・安心情報を発信し続けられる放送会館を建設します。
 2点目は、市民の交流拠点です。新会館では、4K・8Kスーパーハイビジョンのパブリックビューイングなどを実施することで、にぎわいの創出と交流拠点の役割を果たし、地域の期待に応えてまいります。
 3点目として、水の都の中心に位置する新会館として、周囲の景観との調和を重んじ、環境に配慮した放送会館を目指します。
 4点目は、現会館でも実現されているオールワンフロアを維持します。スムーズな意思伝達を図り、放送局機能の強化と風通しのよい職場環境を構築します。
 3ページには、新会館の概要を記載しています。敷地面積は、先ほども説明しましたが、4,693平方メートル。延床面積は5,200平方メートルです。階数は地上3階程度とし、2022年度の完成を目指します。
 建設費ですが、建物は31億円程度、放送設備は24億円程度を見込んでいます。建設方式は、NHK単独での建設です。
 なお、新会館の用地は現会館同様、島根原子力発電所から10キロ圏内に位置しています。万一の事故発生時は、松江局で策定しておりますBCPに基づき、島根県内の放送を確保し、災害報道を行います。出雲市に取材の拠点などを設けることにしています。
 その下の、会館の主要機能をご覧ください。まず、(1)の防災機能強化では、具体的な対策を記載しております。河川の氾濫による洪水に備えるため、建物の1階の床レベルを地盤面から1メートル程度かさ上げします。建物は免震構造とし、2系統受電、100時間運転可能な自家発用オイルタンク、中継車両用の軽油を1,000リットル程度備蓄できる設備なども整備します。
 4ページです。放送部などの放送センター機能とともに、局長室や放送管理事務室などの管理機能についても同じフロアに一元的に配置し、迅速な意思決定ができるようにします。
 ニューススタジオは、160平方メートル、2層を確保して、18時台などのローカル番組に対応します。
 汎用スタジオは90平方メートル、1層とし、隣り合う汎用スペースなどを活用し、公開番組や選挙開票速報などで一体となった運用ができるようにします。
 視聴者交流の場であるハートプラザは200平方メートルとし、4K・8K視聴のための空間を設け、大型ディスプレイなどを設置し、情報発信の拠点としての役割を果たしてまいります。
 鉄塔については、放送会館と各放送所をつなぐ無線回線や、非常用放送設備を整備するため、地上60メートル程度の高さとします。
 そのほか、太陽光発電設備を設置するなど、環境に優しい放送局とするとともに、バリアフリーについても高位の基準を目指します。
 5ページの主な機能と面積をご覧ください。新会館と現会館の機能別の面積を記載しています。全体の面積は、新会館が5,200平方メートルとなっており、この面積は、新会館の標準的な面積となっています。

 (長谷川委員)

 現会館を見学させていただいたことがあるのですが、すてきな場所なのに、4K・8Kのディスプレイがとても小さくて、もったいないなという感じがしました。今回、それについては配慮されるようですので、どうぞけちらずに、大きなサイズの4K・8Kのディスプレイを設置して、みんなが楽しめる空間をつくっていただけたらと思います。

 (松坂理事)

 特に1階の部分は、住民の方々も利用しやすいような汎用スタジオと汎用スペースになりますので、その辺も含めて、スーパーハイビジョンをどのように親しんで楽しんでいただけるかということを考慮して施設を作っていきたいと思います。

 (佐藤委員)

 今の件に関連してですが、面積を見ると、現会館から一番減っているのが実はハートプラザで、ほかのところは全部増えているのですが、視聴者の方とのコミュニケーションを、これからもっと密にしなくてはいけないときに、なぜこの面積だけが減っているのか、説明していただけますでしょうか。

 (松坂理事)

 表の中の「放送機能室」というところに「汎用スタジオ」とあると思うのですが、これが90平米ありまして、これとハートプラザというのは一体として運用できますので、そういう一体運用の中で視聴者に対応するスペースを確保して、より効果的に公開番組などもやりながら、対応していきたいという考えです。決して、狭くなるということではありません。

 (児野技師長)

 メインスタジオというのは公開を原則としないように囲ってあるのですが、汎用スタジオはゲートをあけるとハートプラザと行き来できるようなオープンスペースになっています。そのようにして両方を使うということを考えています。

 

 (3) ラジオ中継放送局の開局について(資料)
 (児野技師長)
 ラジオ中継放送局の開局についてご報告します。
 2018年4月から9月までの間にラジオ放送局2局を開局しました。愛媛県の宇和島ラジオ中継放送局と北海道の広尾ラジオ中継放送局です。いずれもFM波を利用したラジオ中継放送局となっています。
 送信出力、周波数、申請世帯、開局年月日などは、ここに書いてあるとおりです。
 開局した2局は、災害対策を目的としており、それぞれの自治体のハザードマップにおいて、ラジオ中継放送局への津波浸水被害が想定されているために、新たにFM波を利用した中継放送局を設置するものです。
 位置等につきましては、裏面の地図をご参照ください。

 (森下代行)

 津波対策で対応が残っているところは、この他にどのぐらいあるのですか。

 (児野技師長)

 トータルで17局ありまして、これまでに7局が済んでいるということなので、単純に言うと10局です。そのうちの3局はもう計画提案済みです。残り7局のうち、内訳を言いますと、中継局が2局で、親局が5局です。このFM波での補完対策ができるのは中継局なのですが、その2局のほうは、今少し手間取っていますけれども、2019年以降に計画ができます。しかし、親局5局のほうは、中波は中波でしか対策ができないので、親局そのものを移転する、あるいは予備をもう一個つくるなどとなります。しかし、それができるのは5局のうち2局だけで、残り3局はまったく対策案がないということで、非常に難儀をしております。そういうときに津波が来たらどうするのかということですが、放送所あるいは会館の予備放送局で最低限のサービスは確保したいということで、一応備えはしています。抜本的改革というのは、今の制度のもとではなかなか難しい状況です。

 (森下代行)

 基本的には善管注意義務で、そういうことはわかっているということでしょうが、やはり責任を問われることはありますので、きちんと計画をつくって、そういう形でやっていただいたら結構です。

 (児野技師長)

 親局についても、FMでの対策を認めていただくよう、今いろいろかけ合っています。

 

 (4) 放送局再免許交付について(資料)
 (児野技師長)
 放送局などの免許の有効期間は原則5年間とされておりまして、5年ごとに再免許の手続きが必要になります。
 2018年は、その放送局の再免許申請の年にあたりますので、7月に再免許申請を実施し、電波監理審議会への諮問・答申を経て、10月26日に再免許が交付されました。
 全国の再免許局の総数は、テレビ、ラジオ、FM、短波放送、BS地球局、合わせて5,341局です。
 再免許にあたりまして、総務省から要請事項がありました。ここに書かれている5項目を中心に、要請事項がわれわれに伝えられています。こうしたことにこれから留意しつつ、放送サービスの充実に努めていきたいと思っています。

 

 (5) 契約・収納活動の状況(平成30年9月末)(資料)
 (松原理事)
 契約・収納活動の状況(平成30年9月末)について報告します。
 まず、全体の状況ですが、すべての営業目標に対して前年度を大きく上回り、堅調に推移しています。
 資料の1ページをご覧ください。
 当年度分の受信料収納額の状況です。3期の収納額は1,184億円、前年同期を36億円上回っています。3期末累計では、3,481億2千万円となって、前年同時期より105億1千万円増となっております。平成30年度の収入予算を確保するためには、年間で82億円の増収が必要となりますが、この9月末時点で必要な増収額を超える水準が確保できています。
 次に、前年度分受信料回収額は、3期が5億4千万円、前年度同期を6千万円上回っています。累計では48億円となって、前年同期を10億3千万円上回っています。
 また、その下の前々年度以前分の回収額は、3期が6億2千万円、前年同期を9千万円上回っています。3期末累計でも26億7千万円となり、前年同期を10億9千万円上回りました。
 続いて、2ページをご覧ください。
 契約総数の増加状況です。3期の取次数は55万7千件、前年同時期を5千件下回っています。また、減少数も40万7千件と、前年同時期を7千件下回ったため、差し引きの増加数は15万件となり、前年同時期を2千件上回りました。前年同期の実績には、大規模事業所の契約増が3万件含まれています。そのことを考慮すれば、実質的に前年度の水準を上回る活動となっています。3期末累計の増加数は、前年同時期を17万2千件上回る50万9千件となりました。引き続き、訪問要員の取次数が上向いているということと、自主申し出の増加が主な要因と考えています。
 次に、衛星契約数の増加です。3期の取次数は32万件、前年同時期を2万9千件下回っています。また、減少数は19万8千件、前年同時期を5千件上回ったため、差し引きの増加数は12万2千件となり、前年同時期を3万4千件下回りました。増加数が前年同時期を下回っていますが、これは契約総数と同様に、前年度の実績には大規模事業所の3万件、それから、昨年は地上契約に対する衛星勧奨のDMで返送数が1万5千件ぐらい多く含まれているため、実質的には前年の水準を上回る活動ができていると考えています。3期末累計の増加数は、前年同時期を6万5千件上回る41万7千件となり、また、衛星契約割合は年度内で0.4ポイント向上して51.4%になっています。
 3ページをご覧ください。
 口座・クレジット払等の増加状況です。3期の口座・クレジット払等増加は11万1千件となり、前年同時期を2万5千件下回りましたが、3期末累計では、増加数は49万6,千件となり、前年同時期を14万5,千件上回っています。また、口座・クレジット払等の利用率は前年同期との比較で0.5ポイント上がって90.8%になっています。
 次に、未収数削減の状況です。第3期は5千件の増ということです。前年同時期を5千件下回りました。3期末累計では、4万4千件の削減となり、前年同時期を4万3千件上回っています。未収の現在数は79万3千件となっています。
 契約総数増加と未収数削減を合わせた支払数の増加は、3期末累計で前年同時期に対して21万5千件上回っています。

 

 (6) 2018年秋季交渉について(資料)
 (松坂理事)
 労働組合「日放労」との秋季交渉について報告します。
 組合とは、毎年、春と秋に交渉を行っています。春は、職員の処遇や業務・要員体制を中心に、秋はNHKの将来像や労働環境等について幅広く労使で議論を交わします。
 組合は、先週6日の定期中央委員会で、交渉にあたっての組合方針を決定し、協会に通知してきました。大きく分けて3つあります。
 1つ目は、労働法制の変化への対応です。来年4月に施行される改正労働基準法を踏まえ、健康を確保しつつ時間外労働時間の上限規制への対応等をどのように進めていくのか、労使議論を行います。
 2つ目は、安心して長期間働き続けられる環境づくりです。具体的には、職員がいきいきと働くための健康確保施策の充実や、職員の多様性を育むため多様なスキルアップに資する取り組み等について、労使議論を行います。
 3つ目は、モチベーション高く働くための取り組みで、働き方改革を進めつつ、経営課題に取り組んでいくうえで、生産性の向上や多様な働き方の促進に資する対応について検討したいと考えています。
 協会からは、次の4つの提案を提示し議論を行います。最初は、36協定、勤務協定の見直しについてです。より一層の職員等の健康確保と、公共放送としての使命・役割を果たす持続可能な働き方との両立を図るため、「NHKグループ働き方改革宣言」および来春施行されます改正労働基準法を踏まえた見直しを図ります。具体的には、法律で定める時間外労働の上限規制等を踏まえ、法令順守の観点から適切な勤務管理を行っていくための基準を見直します。
 2番目、労働協約の見直しです。組合と締結している労働協約について、今日的な労使関係を反映させた運用等の内容に見直すとともに、現行の就業規則に即した条文の整理や字句修正を行います。
 次は、青年海外協力隊休職の廃止についてです。制度の運用状況を踏まえ、青年海外協力隊休職を廃止し、かわってJICAの民間連携ボランティア制度を運用することとします。青年海外協力隊休職制度の利用者が、平成6年から平成9年までの間で5人しかいないということを踏まえての対応になります。
 最後が、代休の付与方法の見直しについてです。改正労働基準法では1か月あたりの時間外労働の上限が設けられるため、単月での勤務管理が重要となります。これを推進する視点から、休日勤務後のすみやかな代休取得をより促進するよう見直しを図ります。
 スケジュールですが、交渉期間は今月25日から28日までの予定です。交渉では、経営の考え方を丁寧に説明するとともに、組合員の意見に対して真摯に対応し、議論を進めたいと考えています。

 (森下代行)

 今年度、働き方改革をやっていますね。この交渉の中で3点の組合方針があるのですけれども、働き方改革の進捗状況に関連して組合側から特に何か問題提起は出ていないということなのですか。

 (松坂理事)

 交渉ということではないのですが、確かに休暇取得や総労働時間の抑制は進んでおりますし、特に、長時間労働が多い高リスクな職場についてどのように改善していくのかというような対応をずっと話しながらやってきたところです。一方で、組合員に限らないのですが、どうしてももう少し働きたいとか仕事をしたいというような意見もありまして、単に時間などを縛るだけではなくて、本当にやるべきこと、それを効率的にやるにはどうしていけばよいのか。その辺を踏まえて改革を進めていきたいと私どもも思っておりますし、職員のほうからもそういう働き方改革を進めてほしいという意見も出ています。

 (森下代行)

 特に、ドラマ制作などで夜間の時間もだいぶ整理されたと思うのですが、その定着状況といいますか、波及効果も含めて順調にいろいろと改革はできているというように見てよいのでしょうか。

 (菅理事)

 朝ドラ・大河のところが一番厳しいのですが、大河については2019年度の「いだてん」はずっと外のスタジオで撮影していて、11月からNHKのスタジオに帰ってまだ1週という感じですが、きっちり全部21時に終わっているかというと、そういうことはないのですが、以前に比べると少し抑えられているという報告を聞いています。

 (松坂理事)

 あと、ドラマについては、制作担当のチーフ・プロデューサーとは別に、プロモーション担当のプロデューサーをつけて、制作以外のところは分担してやるなどの対応をしてもらっています。

 

 

4 その他事項

 (1) 会計検査院による平成29年度決算検査報告について(資料)
 (松坂理事)
 会計検査院の検査結果についてご報告します。
 会計検査院による平成29年度の決算検査が終了し、11月9日に会計検査院から検査報告書が内閣総理大臣に提出されました。NHKについては、1項目、「処置済事項」として記載があります。「処置済事項」とは、検査院が指摘し、NHKが改善の処置を講じた事項です。
 内容ですが、衛星契約への契約種別変更の勧奨を目的とする郵便物の郵送にあたって、割引制度を適切に活用することにより郵便料金の節減を図るよう改善させたというものです。
 営業では、地上契約を締結している受信契約者に対して、衛星契約への契約種別変更を促すため、衛星契約の申込書と衛星放送の内容を紹介した冊子を同封した郵便物を、年に複数回郵送しております。この郵便物の郵送にあたり、これまで郵便区内特別郵便物等の割引制度の適用を受けていましたが、広告郵便物の割引制度の適用は受けておりませんでした。これは、平成22年7月に、料金割引承認局、渋谷郵便局ですけれども、これに対して衛星契約への契約種別変更の勧奨を目的とする郵便物について、広告郵便物の承認を受けられるか相談をしたところ、当時、承認することは難しい旨の返答を得ていたためです。そして、以降は本件郵便物の発送目的や仕様が大きく異ならないことから、広告郵便物の承認をNHKとして求めておりませんでした。
 ことし7月の検査を踏まえて、協会において料金割引承認局に再び照会を行ったところ、本件郵便物については広告郵便物の承認を受けられる旨の返答が得られましたので、この割引制度の適用を受けていたとすれば、郵便料金4,658万円を節減できたとされたものです。
 NHKの対応としては、ことし9月に関係部署に対して事務連絡を発して、今後、本件郵便物を郵送する際には、より割引率の高い広告郵便物の割引制度の適用を受けるよう、周知するなどの措置を講じました。
 最後に、平成29年度の業務についての検査の概要ですが、書面検査としまして財務諸表および関連書類について検査が行われ、1,676件、4万2,919枚の証拠書類を提出しております。
 実地検査としましては、去年11月からことし7月までの期間、本部2回および放送局13局所において、延べ270.5人日の体制で検査が実施されました。

 (森下代行)

 NHK側の落ち度というよりも、現場の郵便局側の解釈がなかなか合わなかったということなので、これを通知するだけでよいのかという気がします。現場サイドでは郵便局の対応をするのでしょうから、ぜひ本部のほうから、そこのところもしっかりと支援していただきたいと思います。

 (松原理事)

 すでに9月の段階で、各営業センターにおいては、郵便物の発送について、今回会計検査院の検査で指摘を受け、衛星勧奨のDMであれば、広告郵便に当たるとの日本郵便本社の見解がありますのでお願いをしますと、そういう対応を各地の郵便局に統一してやっています。

 (森下代行)

 現場は混乱していないでしょうか。

 (松原理事)

 はい。そうしたことはありません。

 

 

5 審議事項

 (1) 平成31年度予算編成の考え方(資料1)(資料2)(資料3)
 (石原委員長)
 続きまして、審議事項です。31年度予算編成の考え方について、坂本専務理事、松坂理事より説明を受けます。
 前回、平成31年度予算編成についての報告を受けましたが、その後の経営委員間の意見交換で出された意見につきましては、文書で執行部にはお伝えしています。これについて、執行部からは文書で回答をもらい、委員間ですでに共有していますが、そのことも踏まえて、説明をお願いしたいと思います。
 (上田会長)
 私から一言申し上げて、2人に説明してもらいます。本日は、平成31年度予算編成の考え方の一環として、中期の収支見通しと受信料の値下げについてご審議いただきたいと思います。
 まず、私から基本的な考え方を申し上げます。
 前回、10月23日の経営委員会において、公平負担の徹底に取り組んでいることに加え、昨年12月の最高裁判決以降、自主的に受信契約を申し出る方が増えていることなどから、当初の計画を超えて、受信料収入が堅調に推移していることなどについて、中長期の収入見通しをお示ししつつ、受信料の値下げの案をお示ししたいと申し上げました。
 繰り返すまでもなく、受信料で運営されるNHKは、中長期的な事業計画や収支の見通しを踏まえた上で、収支相償の原則にのっとり、必要であれば、視聴者の皆さまに還元すべきだと考えるからです。
 NHKが、公共放送・公共メディアとしての役割を、責任をもって果たしていくために、重点的に取り組んでいかなければならない事業は、間もなく本放送が始まるBS4K・8K放送のコンテンツ強化や、常時同時配信を含むインターネット活用業務の充実、情報セキュリティーの強化、災害に備えた放送機能の強化など、数多くあります。
 その一方で、事業規模、事業支出については、適正な規模に整えていくことが必要です。新規の重点業務にあてる経営資源は、既存業務の見直しを徹底することによって生み出すなど、支出規模を適正な水準に管理し、効率的・効果的で持続可能な業務体制を構築していくことが重要だと考えています。
 委員の皆さまからも、「どのような既存業務の見直しを行い、経費を削減していくのか具体的な説明をしてほしい」とのご意見をいただいています。執行部としての取り組みや今後の方針について、きちんと説明をしたいと思います。
 受信料の値下げを、将来にわたって持続可能なNHKを再構築していくための改革の好機ととらえ、役職員一同が、その目的と危機感を共有して、一丸となって改革にまい進していく決意です。
 それでは、坂本専務理事から、収入の見通し、事業支出の考え方、とりわけ既存業務の見直しの取り組みや今後の方針、そして、値下げの方法と規模、その時期等について、具体的な案を説明させていただきます。
 なにとぞよろしくお願いします。
 (坂本専務理事)
 それでは、収支見通しと受信料の値下げについて、お手元の議案に沿ってご説明いたします。できるだけ丁寧にご説明し、率直な意見交換をさせていただきたいと思います。
 1ページをご覧ください。受信料値下げを実施する理由についてです。まず、先ほども中間決算、あるいは契約収納活動のところでも説明がありましたが、受信料の状況を踏まえての受信料値下げをする理由についてです。
 受信料の公平負担の取り組みを徹底していくことに加え、昨年12月の最高裁の判決以降、自主的に受信契約を申し出る方が増えていることなどから、当初の計画を大幅に超える形で、受信契約や受信料の支払いが堅調に推移しています。こうしたことから、現3か年経営計画の収支計画をかなり上回る収入が確保できる見通しとなっています。
 一方、支出の面ですが、放送センターの建て替え、東京オリンピック・パラリンピック対応、4K・8Kの本放送開始に向けた準備など、大型の支出に関する備えに一定のめどが立ちつつあります。インターネット活用業務の強化や国際放送の充実など、さまざまな課題に取り組みながら、後発事象にも適切に対応する支出となっています。
 この結果、2017年度決算で229億円の事業収支差金が発生し、財政安定のための繰越金は1,000億円、建設積立金が1,700億円を超える規模に達しています。このままの収支の状況で推移した場合、さらに、繰越金が増すうする可能性が高くなっています。
 受信料に支えられている公共放送は、収支のバランスを取って事業を運営することが望ましく、次の経営計画を待つことなく収支を適正化する必要があります。
 このため、現経営計画とその後の3年間を合わせた2019年度から2023年度までのおおむね5年間の収支を見極め、すでに実施を決め、対応を始めている負担軽減策に加えて、できることから早急に取り組んで、平成24年以来となる受信料の値下げを実施したいと考えています。
 3ページは、受信料収入水準の検討にあたって考慮が必要な要因、社会環境や視聴者環境の変化などを記載しました。ポイントをご説明いたします。
 1つは、世帯数の減少です。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2023年の5,419万世帯をピークに減少に転じる見通しです。受信契約は世帯単位が基本となりますので、この動向を注意深く見守る必要があります。
 次に、テレビ保有率の減少傾向です。内閣府の調査によりますと、総世帯では10年前の98.9%から95.1%に減少しています。また、29歳以下の世帯では、この5年は85%から90%の間を上下しながら推移しています。インターネットやスマートフォンなどの急速な普及と、情報取得行動の多様化などにも留意しておく必要があります。これについては、後ほど、改めて説明いたします。
 3つ目は、衛星放送の普及予測です。NHKが行っている調査では、衛星放送の普及世帯数は、2028年度に約3,150万世帯となりますが、増加は鈍化していく傾向がみられます。
 10月23日に経営委員会から、上限値と下限値についても示すようご指摘をいただきました。それを踏まえ、説明します。この違いは、今後のテレビ保有率の減少の幅をどう見るかというところです。インターネットの普及などによる視聴者の情報取得手段の多様化、4K・8Kの本放送開始などがどういう影響を与えていくのか、予想は難しいのが実情です。このため、公平負担の徹底と受信料収入確保の取り組みなどを踏まえつつ、衛星放送の普及予測やテレビ保有率の変化のいくつかの想定パターンをもとに、ある程度の幅を持った受信料収入の推移を試算しました。
 上限値は、これまでの営業業績の傾向線の延長に近いものです。毎年度0.2%ずつ、テレビ保有率が低下していくという想定です。2030年度の保有率は92.4%としています。
 一方、下限値は、保有率が、2021年度から2023年度は毎年度0.3%の減少、2024年度から2026年度は毎年度0.4%の減少、2027年度以降は0.5%ずつ減っていくという想定で、相当厳しい数値としています。2030年度の保有率は90.3%というところまで低下することになります。
 そして、中間値は、われわれ執行部として、これをもとに考えたいとする想定です。毎年度0.3%ずつテレビ保有率が低下し、2030年度の保有率は91.4%となります。この中間値の想定では、受信料収入は2026年度の7,300億円あまりをピークとして減少に転じます。
 4ページからは、事業支出と値下げをしない場合の事業収入との関係です。
 5ページからは、事業支出についてです。まず、重点事項への対応について説明します。公共放送、公共メディアとして、情報の社会的基盤の役割を果たしていくため、今の3か年経営計画の策定以降に生じた課題への対応も含めて、必要な予算を確保してきています。4K・8K対応の強化やインターネット活用業務の充実、情報セキュリティーなど、主な重点項目を挙げております。
 この5年間の推移をご説明します。BS4K・8K放送のコンテンツ強化は、平成25年度予算では7.4億円でしたが、今年度平成30年度は141.2億円となり、5年間で約133億円あまり増えています。同じように、この5年間をみますと、インターネット活用業務の充実が51億円あまり、オリンピック・パラリンピック、FIFAワールドカップなどの国際催事が74億円あまり、国際放送の充実が101億円あまり、地域に寄り添う放送サービスの強化が11億円、情報セキュリティーの強化が46億円あまりの増加となっています。ここまでの事項の支出の増加分を足しますと、およそ420億円あまりとなります。
 また、昨今、急速に対応が迫られている労働基準法の改正などに対応し、働き方改革に資する諸整備に、今年度予算で25億円を計上しています。来年度はさらに上積みする見込みです。
 具体的には、これまで人力でやっていた業務をロボットに置き換えるRPAを試行したり、遠隔編集支援センターを大阪局に設けて放送局の業務支援を行ったり、AI技術を使って放送局のアナウンス業務支援を行ったりするなどの新しい働き方モデルをつくる取り組みや、大河ドラマや朝ドラの制作期間の前倒し確保などの取り組みを進めるための予算を確保しています。
 このほか、東日本大震災を教訓に、大阪局の本部バックアップ機能の強化、情報カメラの増設や非常用通信設備の整備、地域放送局や中継放送所などの自家発電用燃料タンクの増量や電源設備の強化などに、平成26年度までの3か年で集中的に予算を投じています。今後もこうした災害対応にはしっかりと取り組んでまいりたいと考えます。こうした設備などの維持・管理や自然災害が広域化・激甚化する中での新しい事態への対応のための経費は、継続的に見込む必要があります。
 こうした重点事項に対応する経営資源を生み出すため、既存業務の見直しを進めてまいります。
 6ページから7ページ、既存業務の見直しの状況です。これまでの取り組み、来年度の予算編成での取り組み、そして、東京オリンピック・パラリンピックで最高水準の放送サービスを行った次の年度、2021年度以降の取り組み方針の3段階で整理しています。
 まず、これまでの取り組みです。毎年度、100億円を超える規模で既存業務の見直しを進めてきました。例えば、平成30年度予算で前年度に比べてどのように既存業務の見直しを行ったのかをご説明します。既存業務の見直しで、削減額は119億円となっています。その内訳です。マルチユース等の効率的な番組制作手法の導入や、4K番組の制作を効率的に進めるための2K番組との一体化制作の推進、放送権料の見直しなどで35億円を削減しています。営業の地域スタッフを1,400人から1,100人に見直すことなどで13億円の削減。技術設備運用経費の削減で10億円。そのほかに給与の削減なども進めています。
 こうした経費の削減分と受信料の増収などを、4K・8K、インターネット、地域放送・サービスの充実、情報セキュリティーの強化など、先ほど重点事項としてご説明した項目に充てています。
 現在検討中の、来年度2019年度の予算編成です。さらに一歩踏み込んだ改革を実施するということです。まず、予算編成にあたりまして、業務、予算と要員、業務委託を一体で検討し、新規業務とスクラップを経営判断していくという大きな方針を定めています。そうした方針のもとで、ご覧のように項目を例示しておりますが、これまでを上回る規模で既存業務の見直しを進めてまいります。
 来年度予算の策定にあたりまして、現在、検討している既存業務の見直しの主な事例をご説明します。
 働き方改革等を推進する予算を捻出するため、マルチユースの推進による4K番組と2K番組の効率的な一体化制作の推進など番組費の削減、本放送になるスーパーハイビジョンのプロモーションのあり方等の見直しによる削減、補修対象設備や補修時期の見直し等の削減、働き方改革の推進などにより職員給与を削減、既存の広報業務の見直しや営業の地域スタッフ体制の見直しによる削減などを検討しています。こうした取り組みや番組の改編などを通して、これまでを上回る規模で既存業務の見直しを行っていきたいと考えています。
 7ページです。東京オリンピック・パラリンピックが終わった、2021年度以降の対応です。世帯数の減少など厳しい経営環境を見据えて、将来にわたって効率的・効果的で持続可能な業務体制を構築するため、ことし4月に会長のもとに設置した全役員からなる業務改革推進会議を改革のエンジンとして、NHKグループ一体で抜本改革を急いでまいります。
 その柱のひとつとして、2022年度からの次期基幹システムの導入にあわせて、生産性を高める改革を推進していきます。具体的には、トータルコストやグループ管理会計を整備し、効率的・効果的な資源管理を図ります。事務管理業務を見直して削減、より高度な業務へシフトします。既存のルールや基準を見直し、業務フローを改善して効率性の向上を図っていきます。こうした改革を進めてまいります。また、放送・サービスでは、BS4K・8Kの本放送開始から1年後をめどに、衛星波の整理・削減の方針について一定の考え方を示します。4Kと2Kの一体化制作を一層推進し、4Kと2Kで同内容の放送を実施する、いわゆる「サイマル放送」も視野に入れて整備を進め、経費の削減につなげてまいります。このように業務の見直しなどを徹底し、公共放送・公共メディアの役割を果たすために必要な予算を確保しつつ、ピークとなる2020年度からの削減を図り、事業規模・事業支出を一定の適正な水準に収めるよう厳正に管理していきます。これらを踏まえて、値下げを行わない場合の収入と支出との関係を示しますと、受信料を含む事業収入は、増加が続きます。一方の事業支出です。来年度2019年度は、既存業務の見直しによる一段の経費の削減を進めつつ、一方で、広域化・激甚化する災害対応のための機能強化、地域放送の生字幕など総務省の新しい指針への対応、中国語によるライブ配信など国際放送の強化、受信料収納増加に伴う営業関係費用の増加などに備える必要があります。経営計画をおよそ50億円上回る7,277億円を見込んでいます。その後、2020年度7,379億円をピークに減少に転じ、2023年度は7,088億円と見込んでいます。
 この5か年の支出について補足してご説明します。検討中の内容が含まれておりますので、ご承知おきいただければと思います。削減されるものとしては、東京オリンピック・パラリンピックの関係ですが、開催翌年の2021年度から引当金や放送権料などの経費がなくなります。衛星波の整理・削減に向けてBS4Kと2Kの一体化制作をさらに推進して、2022年度に数十億円の削減効果を見込みます。また、放送総局の改革を進め、2025年度までの5年間で、数十億円程度の経費削減を目指します。これは業務改革推進会議での議論と判断を踏まえた抜本改革の一例です。また、2023年度には退職給付金の償却が終了することで削減を見込みます。
 一方、増加を見込む大きな事業としては、インターネット活用業務の常時同時配信があります。2019年度からの実施を要望しています。費用について、現時点では通期で実施した場合、今と比べて年間50億円の運用費、それに権料の増加があります。それから地域制限を全国規模で実施した場合には、さらに増加を見込んでいます。こうした、今後の大きな削減、増加要素については、事業支出に盛り込んでいます。事業収支差金は値下げを実施しない場合、さらに拡大していくことが見込まれます。
 こうした収支の状況を踏まえまして、具体的な値下げについて、ご説明します。9ページ、受信料の値下げについてです。値下げを含む視聴者への還元策です。今の経営計画に盛り込んでいる4つの負担軽減策に加えて、値下げを実施し、通期で実施した場合、年間で422億円、受信料収入の6%にあたる還元を実施します。ちなみに、前回平成24年に実施した値下げは、通期で実施した場合、7%相当、額では460億円規模でした。
 詳しく説明します。すでに実施を決めている負担軽減策は、2019年度は74億円、2020年度以降は94億円を計画しています。
 次に、受信料の値下げです。今回、受信料の値下げとしては、2018年度の受信料収入の4.5%程度にあたる328億円を値下げします。営業システムの改修対応を踏まえて、値下げは2019年度から2段階を想定しています。まず、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの際に、料額を改定せずに据え置く形で、地上契約と衛星契約をともに実質2%、135億円分を値下げします。受信料額を改定しないため、通常であれば1年程度の期間を要するシステムの改修をせずに対応できます。できるだけ速やかに値下げを実施して収入の適正化を図るため、まずこの形で実施したいと思います。そして、翌2020年10月に、地上契約と衛星契約を2.5%、193億円分を値下げします。
 この結果、通期で値下げとなる2021年度からの還元は、4つの負担軽減策が94億円、受信料の値下げが4.5%程度、328億円で、あわせて422億円、受信料収入の6%となります。値下げをすべて実施した場合、世帯あたりの値下げの額は、月額で地上契約の場合およそ57円の値下げ、衛星契約はおよそ100円の値下げとなります。1年間に換算してみますと、地上契約はおよそ680円、衛星契約はおよそ1,200円となります。ただし、具体的な値下げの額は、さまざまなお支払いの形について整理、確定していく必要がありますので、あくまで現時点での目安とご理解ください。今回の値下げは平成24年10月以来で、衛星付加受信料の部分の値下げを行うのは、平成元年に衛星契約を新設して以来、初めてです。
 こうした受信料の値下げを含む還元を実施した場合の収支の見通しです。値下げを実施した場合の受信料収入を含む事業収入は、2019年度で7,247億円、2020年度で7,169億円、2023年度に7,172億円と試算しています。
 受信料を地上と衛星であわせて4.5%値下げを実施する場合の受信料収入の推移の予測ですが、2026年度に7,040億円余りでピークとなり、その後は減少に転じると予測しています。前回の平成24年の値下げとの違いですが、そのときは値下げを行っても、その後さまざまな公平負担の徹底を進め、さまざまな取り組みを行いました。そういう中で値下げ前の水準を超えて、増収を確保してきましたが、今回の値下げでは、値下げ前の収入規模、今年度の収入規模を確保することはなかなか難しいということですので、われわれとしては厳しい覚悟を持って値下げを行うことになります。
 事業支出は、さまざまな改革を進めて、2021年度以降、削減を進めてまいりますが、値下げによって事業収入が減少するため、収支差金は2019年度から2022年度までマイナスが続くことになります。2023年度に黒字に転換する見込みです。繰越金についても減少が続くことになります。この間も、役職員が一体となって不断の改革に取り組み、事業規模・事業支出を一定の適正な水準に収めるよう努めてまいります。
 ここで改めまして総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」について触れたいと思います。NHKが目指す常時同時配信については、国民・視聴者の理解が得られることを前提に、一定の合理性・妥当性があるとして、9月21日に第二次取りまとめを行っていただいたところです。その際、委員の皆さまからは、公共放送から公共メディアへの進化を目指すのであれば、既存業務の見直し、受信料のあり方の見直しが求められており、こうしたことにきちんと答えて前に進んでもらいたいとの強い要望をいただきました。われわれ執行部としては、こうした点もしっかり踏まえて、今回、収支見通しと受信料の値下げについてまとめたものであります。何とぞご審議のほどよろしくお願い申し上げます。

 (井伊委員)

 昨年最高裁の判決が出たというのは非常に大きなことで、フェーズが大きく変わったと思います。その後受信料収入が増えたわけですが、経営委員会でも営業経費が受信料収入の1割は高すぎるのではと指摘されてきました。最高裁の判決により受信料収入がこれだけ増えた中で、もう少し営業経費の削減ということは考えられるのではないでしょうか。一方で、給与費の見直しですが、働き方改革推進等による給与の削減ということですが、働く時間が短くなったから給与が下がってしまうというと、モチベーションが下がってしまうと思います。これから若い優秀な人たちを引きつけるということでは、投資ももちろん必要で、4K・8Kや同時配信への投資ということが項目の中に入っていますが、給与においても優秀な若い人たちを引きつけるということで、削減すればよいというわけではありません。両方をもう少しバランスよく考えていただけたらと、今日お話を聞いていて気になった点です。

 (松原理事)

 営業経費のところにつきまして、まず最高裁の判決以降、自主申し出が増えているというのは事実で、昨年12月以降では自主申し出の数、インターネットと、コールセンターの電話で対応しているのですが、前年比で言うと260%ぐらいの自主申し出の数がありました。今はどうなっているかというと、徐々に落ちてきて、大体1.5倍ぐらい、それでもまだ1.5倍あります。ただ、全体の取次数のシェアからいうと、訪問要員で取っている取次数のほうが圧倒的に多いという現状もあります。その上で、昨年は経営委員会の皆さまとも議論をさせていただいて、今年度、平成30年度予算については、これまでの735億円から、法人委託の委託費の改善により要員確保を図ること等で、26億円プラスを認めていただいたというのが、今の営業経費の現状だと認識しています。これまでも、ことしに限らず前年度を含めた前の3か年計画中は大きく目標を上回る実績を残しています。そうすると自動的に手数料が増えていくということと、契約件数が増えれば、その管理、口座振替の手数料や団体一括の手数料など、そうした必然的に増えてくる分を、できるだけ吸収してきて営業経費を維持してきた経緯があります。来年度以降についても、基本的に訪問によらない施策を改善しながら、できるだけ営業経費を抑制することは引き続き進めていきたいと思っています。

 (松坂理事)

 給与費の関係についてご説明します。ご存じのように2013年度から2017年度までの5年間で、毎年2%ずつ、あわせて10%の給与費を削減してきました。今年度予算でも、給与費のところ、総額は前年度同額ですが、働き方改革推進による給与の削減1億円が組み込まれています。来年度予算で検討している既存業務の見直しの中では、職員給与の減およそ10億円ということで、予算を組みたいと考えています。働き方改革推進によって、確かに時間外などが減っておりまして、そういう面がありますが、メリハリをつけた働き方をしているとか、効率性が高い働き方をしている人には、それを評価するというようなメリハリのついたこともやっております。また育児・介護などに対応する職員の方が増えているので、そういうところに対する手当を増やすなど、そういう点も踏まえてやっています。来年度の予算につきましては、より一層引き締まった収支にする必要があるということで、給与費についておよそ10億円減らすことで考えています。

 (石原委員長)

 ということは、働き方改革の給与の減というのは、主として超勤であって、それ以外に働き方改革で増加する部分があるということですか。

 (松坂理事)

 働き方改革、メリハリをつけたことをやっているのですが、トータルとして給与費自体が、今年度の予算では1,164億円としているのですが、来年度予算では、これから10億円減らしたものを組み込もうと考えています。

 (石原委員長)

 増える部分は何かということですね。減る部分は主として超勤ということですか。

 (松坂理事)

 はい、そうです。

 (石原委員長)

 働き方改革により、要員が増える会社が結構多いと聞いていますが、NHKでは、そういうことはないのですか。

 (松坂理事)

 育児や介護に対応する職員が増えているものですから、今年度も15人ほど予備枠としての人員を増やしまして、今年度の予算人員は1万318人となっています。来年度も、これはこれからなのですが、もう少し増員しようと思っていますが、全体の年齢構成や働き方改革推進という観点から見て、給与費全体である程度締まった収支にしても大丈夫ではないかということで、来年度については減らします。

 (石原委員長)

 何とかプラス・マイナスを増やさないで収めているという理解でよいですか。

 (松坂理事)

 はい。プラス・マイナスを増やさずに収めるということです。

 (槍田委員)

 ちょっとした印象ぐらいでしかないのですが、「値下げ」という打ち出しをするときに、地味だなという感じがします。NHKは広くあまねく、いろいろな人から受信料をいただいて仕事をしているから、皆さんの期待や要望に応えて何でもやらなければいけないというのはよく分かります。いろいろなことをやらなくてはいけないというのもわかるのですが、この種のサービスというのは、「The more the better」で、やればやるほどみんな喜ぶけれども、お金がかかるということです。乱暴な意見なのですが、せっかく値下げをするというのだったら、今国内に展開しているネットワーク、ベースを縮小するというのは難しいのでしょうが、コンテンツで、「この分野はもうやらないぞ」とか、「ここからは手を引く」などということも含めて踏み込んで、根本的に立ち位置を見直していく、事業の見直しをしていくという検討はあり得ないのでしょうか。普通、事業の見直しというと、そこまで入っていかないと、やっていることが多少表面的な感じで、あちこち経費を節減したりはしているとは思うのですが、もっとどうしてもやらなくてはいけないこと以外はやらないぞと。これもやめる、あれもやめる、だからこれ以上は値下げはできないというような感じの議論というのは、あり得ないのでしょうか。乱暴なことを言って申し訳ないですが、普通われわれが受け取る「値下げ」や「事業の見直し」というときは、そういうものですので、パンチがないという感じがしています。

 (坂本専務理事)

 これまでは既存業務の見直しといっても、あるものを畳んで新しいものをつくっていくというやり方でしたが、今回は、2021年度以降、支出を7,300億円から7,000億円台に減らしますので、抜本的な見直しになろうかと思います。先ほども申し上げました業務改革推進会議を、この4月に立ち上げました。あらゆる業務を、縦、横、斜めで見て、グループも含めた見える化を図っております。これからいろいろなところで改革を進めることのできる手掛かりになろうと思います。必ずこの部分まで支出を抑え込むということを、今回打ち出したということです。

 (堰八委員)

 既存業務の見直しのこれまでの取り組みで、「毎年度100億円を超える規模で既存業務の見直しを実施」と書いてあります。この毎年度というのはいつからいつまでのことを指しているのでしょうか。マルチユース等の効率的な番組制作手法の導入や、4K番組と2K番組の一体化制作の推進などによる削減は、結構大きな金額なのですが、2018年度と2019年度の2年でこの関連の削減は終わり、ベースが下がるという考え方なのでしょうか。それと広報業務の見直しについてですが、あまり視聴者周りのところを削らないほうがよいのではないかと思います。

 (松坂理事)

 既存業務の見直しについてです。例えばこちらで100億円規模と考えておりますのは、平成27年度以降です。平成27年度が104億円で平成28年度が182億円、平成29年度が154億円、今年度119億円ということです。あと次の、マルチユース推進というのは、放送総局を中心にできるだけ「ワンソース・マルチ展開」といいますか、そういうことを考えながらやっていることで、これは来年度以降も放送総局を中心にやっていくことだと思いますし、2K番組との一体化の推進というのも、引き続き取り組むことです。

 (堰八委員)

 ということは、2020年度以降もこのぐらいの金額が削減されていくということですか。

 (松坂理事)

 2020年度以降については、まだ具体的なことはわかりません。金額はわかりませんが、この一体化制作などについては進めていく必要があるということです。

 (木田専務理事)

 2Kと4Kのサイマル化というのは、100%かどうか分かりませんが、かなりの部分をサイマル化できると思います。そうすると、数十億円が、今の予定ですと2022、23年ぐらいには削減できるのではないかと思います。これは4Kと2Kを同じものを出すということです。もう一つのマルチユースというのは、今もうやっていますが、例えば「NHKスペシャル」で、放送は1時間弱ですが、取材するともっといろいろな素材もあるわけです。ほかに取材したものも合わせて、今「BS1スペシャル」という形で100分サイズぐらいの番組にして放送しています。あるいはBSの番組やEテレの番組を仕立て直して総合に持ってくるなど、いろいろなやり方があるのですが、1つの番組をつくりながらいろいろな関連番組をつくっていくというのがマルチユースです。このマルチユースは主に現在の2Kでやっているのですが、これを進めるということは、ある意味、新規制作番組の数が減るのです。マルチユースで番組がある程度たくさんできていくと新規制作の量的な部分は減るので、そこはある意味、番組の多様性が失われたのではないかという面で、ややサービス低下と言われるかもしれません。ただ、そういう量的なことだけではなく、一本一本の質を上げ、マルチ展開をしていっても十分満足していただけるような質を確保していけば、ご理解が得られると思います。先ほど槍田委員からありましたが、実は今後お諮りいたします編集の基本計画などをつくっていくと、6つの公共的価値をそれぞれに実現しようと思うと、すぱっと落とすというのはできないので、現在このマルチユースとサイマル化ということで番組づくりの支出の削減を図れないかと思っています。

 (長谷川委員)

 マルチユースというものが、今初めてはっきりわかりましたが、安かろう悪かろうは、視聴者としてはやめてほしいという感じがあります。われわれ見ている側の人間としては、「NHKはこのごろ使い回しが多いね」、「これ『ダーウィンが来た!』でやったのをまた『ワイルドライフ』でやっている。またもう一回編集し直して、これ何回使うんだよ」というのが、うちの中の評判です。よい映像だからよいのですが、しかし、やはり視聴者の目は厳しいので、これをやり過ぎると「NHK、このごろけちっているよね」と、値下げしてほしいと言いつつ、それで番組の質が落ちると文句を言う。今、一視聴者として申し上げているのですが、それはくれぐれも気をつけていただきたいと思います。

 (木田専務理事)

 ありがとうございます。長谷川委員のおっしゃるとおりでして、マルチユースと使い回しは違うというふうに、ちゃんと持っていかないと、たぶん元も子もなくなると思います。

 (長谷川委員)

 「こういう新鮮なつくり方もあったのか」と視聴者が納得するような使い方で、マルチユースをしていただければよいのだろうと思います。

 (木田専務理事)

 今まで再放送というのは、われわれの意識の中では、本放送があり、それを見られなかった人のために再放送があるというような位置づけで、放送開始以来、ずっとやってきたのですが、今は録画もたくさんされますし、これから同時配信もするかもしれません。そういった中で言うと、再放送という考えではなくて、1回目の放送、2回目の放送という考え方をとったほうがよいのではないかと思います。例えば、今大変人気があります「チコちゃんに叱られる!」という番組は、実は金曜日の夜の本放送よりも土曜日の朝の、今は再放送と言っていますが、こちらのほうがはるかにたくさんの人にご覧いただいています。ですから、われわれも今までの固定観念ではなく、マルチユースについてもそうなんですが、もっと魅力的に見せられる、届けられる方法を開発しながら、でも、全体の予算は削減していく方向に持っていきたいと考えています。

 (長谷川委員)

 要するに質のよい番組をつくることが、実は経済的になるんだという考え方もあり得るのではないかと思います。

 (木田専務理事)

 おっしゃるとおりです。

 (坂本専務理事)

 そういう意味では、12月から4K・8Kの本放送が始まります。そこでのサービスはさらにその部分でも質的にも充実すると思いますので、ぜひ期待していただければと思います。

 (渡邊委員)

 私は民間の組織という立場から申し上げるのですが、いろいろな組織においては、増収増益とか増収減益とかありますが、やはり「増収」というのが一つのモチベーションになると思います。その組織を構成している人のモチベーションには、これがものすごく重要だと思います。NHKの本来の収支から言えば収支均衡というのが当たり前であっても、今回値下げという形をとると、一時的にはいろいろあるのでしょうが、将来的に減収減益ということになり、それによって働く人のモチベーションに影響が出るのではないかと思います。私は、一番は番組をつくる人、「紅白歌合戦」や、NHKならではの「NHKスペシャル」など、いろいろな番組をつくる人がいますが、その人たちのモチベーションに影響が出るのではないかと思います。また、「視聴者のみなさまと語る会」のときに視聴者の方からのアンケートを見せてもらうと、公平負担ということはものすごく言われるのですが、値下げしろと言う人はいるかもしれませんが、そんなに目立ってはありません。支払率のばらつきが非常に大きくて、もっとなぜそれを上げる努力をしないのかという、そして値下げが、今回地上放送で月57円ですが、そうすると年配者の方から「番組の質が落ちる」とか、あるいは「NHKだからこその番組が、これでそうではなくなる」みたいな取られ方をすると、いわゆる本末転倒と言うと変ですけれども、期待ときちんと払っている方々の本当の本音と、そこが合っているのかどうかということが、私は大切なことだと思います。ですから、よい番組がこれできちんとつくることができて、あと働く方がやはりNHKで働いてよかったと言える。何年か後には、もちろん私たちは部外の人間ですが、経営幹部の方々も代わるわけです。その代わった人たちが、あのときにこういう判断をしたことをどう評価するのかということが大事なことだと思います。この2か月か3か月の間にこの値下げという話が急に出てきたように私は感じたので、その辺はもちろんいろんな背景はわかるのですが、いろんなことを考えてほしいと思います。

 (坂本専務理事)

 今のご指摘につきましては、最初に説明しました去年の最高裁判決以降の受信料収入の伸びというのがまずありまして、これについては今年度に入ったときからいろいろな指摘を受けています。それから「放送を巡る諸課題に関する検討会」もこの2年ほど議論をしておりますが、その中でわれわれとして常時同時配信をこれから実施したいというときに、既存業務の見直し等々、それから受信料額の考え方についても、いま一度公共放送から公共メディアに歩みを進めるのであれば考える時期だという指摘をいただいていました。その中で、われわれとして視聴者にどういう形で理解を求めていくのかという中から、今回受信料額の見直し、値下げというところを考えたわけであります。番組についてもきちんと質を落とさずに、やっていきたい。4K・8Kが12月から始まりますので、これは本当に期待していただきたい。そのためにも、より効率的な制作体制をつくっていきたいと考えています。

 (松原理事)

 渡邊委員が言われた公平負担の徹底についても、今回値下げはするのですが、アップの率が少しずつ落ちてはいますが、最終的には2030年度には87%ぐらいまで上げていくということです。公平負担の徹底というものには終わりがありませんので、このことについてはしっかりと取り組んでいきたいと思います。

 (石原委員長)

 NHKは受信料で成り立っており、収支均衡が前提です。支払率の上昇に伴い収入が増えた場合、余裕があればお返しするということだと思います。

 (上田会長)

 もう一つ、私のほうで配慮しているとすれば、やはり今の日本の放送業界の二元体制、民放との関係というのは、一つ考慮の必要があるのではないかと思います。そうすると、おのずからNHKの適正水準といいますか、ある程度の水準で収支均衡ということで、収入が増えたからよいサービスをというのも一つのやり方ではあると思うのですが、やはり民放とのバランスの中で最高のものを出していくという努力が必要だと思います。値下げを実施した場合、将来的に世帯数の減少が見込まれることから、今後の収入も減少する見通しです。もちろん公平負担に向けた努力をしますけれども、そうすると大体、坂本専務理事からの説明にありましたように、前回の値下げのときには、公平負担に取り組み、努力することによって、どんどん右肩に上がっていくということが見通せたのですが、今回は、実はこれ、見通せないのですね。この7千億円前後の水準というのが将来どうなるかという問題はありますが、一つの規模感としては、そのぐらいでとにかくやってみろと言っていただけるぐらいの水準かなという気がします。それもありまして、職員数も本体で1万人、グループ入れると1万6千から1万7千人。収入についてはこのぐらいというような、一つの大きな目安みたいなものを持って、その中でどれぐらい視聴者の皆さまにお返しできるかということを検討したということです。

 (佐藤委員)

 今も上田会長から言われたのですが、民放の方とお話する機会があると、NHKはいいなと必ず言われます。そういう意味では、そのままいくというのはやはりよくなくて、バランスの問題は非常にあるなというのは一つ感じていたところです。それと、前回の値下げの案が出たときというのは、今回のような経費節減等は全然説明されなくて、ただ収支差金が出たから還元しようという話だったと思うのです。今回、私は、こういう改革の動きが進んでいるのはとてもよいことだと思います。やはり社会が変わっていく中で、どうやって無駄をなくそうかとみんながやっていらっしゃることというのは、とても力にもなると思いますので、そういう意味でもとてもよいことだと思います。ただ、まだ気になるのは、これからの受信料制度がどうなるかということが、不確定なところですが、収支差金がどんどん上がっていってしまうというのはよくないので、ここで1回値下げをやることはよいのではないかと思います。年間で払っている方も多いと考えると、月額で見るとちょっと低い感じはしますが、年間では1,000円を超える額なので、そこそこの値下げ額になり、納得いただけるのでないかと思います。今後の不安要素はありますが、現時点ではかなりリーズナブルというか、納得できる案なのではないかと、前回の印象と比べてもそのように思っています。

 (上田会長)

 ご参考までですが、2年前に議論したときには、先の見通しが必ずしもはっきりしなかったということで先送りをお願いしました。当時私も経営委員として違う立場にいましたが、平成24年に7%の値下げをした後の残りの3%相当分というのがありまして、これが、大体受信料収入が7,000億円だから200億円ぐらい。ですから、今やろうとしている値下げは、その倍ぐらいになります。中長期的な見通しと、最高裁の判決もそうですし、公平負担の努力が少しずつ着実に実って、そのあたりをベースにして、一番リーズナブルでやれるところというのが、時間的には遅くなりましたが、倍ぐらいはいけるというところまで腹はくくれたということです。

 (小林委員)

 これまでの議論の中で、かなり細かいデータと分析を出していただいたので、だいぶ分かってまいりました。1点質問は、新規で常時同時配信を行った場合、地域制限をかけた場合の負担増について、これは、毎年の費用増になるという理解でよろしいでしょうか。

 (坂本専務理事)

 毎年度の費用増ではなく、毎年使う金額ということです。

 (小林委員)

 そうすると、一方で、2026年度が受信料の収入のピークで、そこから先、落ちていくわけですよね。収入の絶対額が落ちていくということは2023年度まではシミュレーションをされていますが、それ以降がどうなるかシミュレーションはありません。こういう状態、将来像も踏まえてなお、今後も引き続きコストの削減に努めていくという前提で、今回の値下げを議論していくと理解しました。前回の値下げの議論の際の「受信料制度に対する考え方が明確になる前に値下げはできないのではないか」という結論との整合性について前回の経営委員会で質問しましたが、それに対する回答はいただきました。そうだとすると、今回、受信料制度と収支の見通しは切り離して値下げを検討するということですね。それであれば今後、受信料制度が変更される場合は、今の質を維持するのに必要な収入を確保できる制度の議論をしていただく事を前提に、今回値下げをするのだという展開であれば、納得できるかなという点が一つです。もう一点申し上げたいのは、将来、受信料収入がピークを迎える2026年度以降、収支のバランスがどうなっていくか、わからない中で値下げをするということは、執行部としてそれなりの覚悟を持って今後コストの見直しを常時行っていくということだと受け止めました。最初に会長が「覚悟を持って」とおっしゃられましたが、そこを執行部として徹底し続けることが非常に重要ではないかと思います。

 (石原委員長)

 今のご意見に対しては何かありますか。

 (長谷川委員)

 今の小林さんのご意見にフォローして。今、ことに小林さんがおっしゃった、今後受信料制度が変わっていくときに、逆に、われわれはもうこれだけきちんと値下げをしていて、そこでできる限りのことをやって頑張っているのだから、こういう制度にしてほしいという、こちらからポジティブに働きかけていくという視点、姿勢というのは、すごく大事だと思います。気配りはすごく大事だと思うのですが、あまり気配りになり過ぎてもいけないと思います。われわれはこれだけは必要だというところをがっちり押さえるということは大事だと思います。その意味でも、これだけきっちりとデータを出してくださって、これならぎりぎり何とか頑張れるということを出してくださったのはすごくよいと思います。2年前との比較について、佐藤委員もおっしゃいましたけれども、もう本当にまったく議論の様相が違うわけです。前回は中長期的見通し自体を排除して、単年でこれだけ余ったからこれだけ返すみたいな感じでしたが、今回まったく様変わりしていて、その上で、本当にこれから大変だと思います。まったく単純なフォローです。すみません。

 (中島委員)

 重複するかもしれませんが、2年前、前の経営委員会において2つのことが提起されました。1つは事業計画と収支見通し、もう1つが、お二人の委員からご指摘がありましたように、放送と通信の融合時代の放送法と受信料制度に関して、この辺が明らかではない、見通しが十分でないということから、ネガティブな結論、提案を経営委員会でしたと思います。2年たった現在、最初の事業計画と収支見通しについて分析結果を出されて、これは値下げの努力等々も必要でしょうけれども、いけるという感じがしました。それから、もう一つの放送法と受信料制度に関しては、その後、検討委員会ができて、かなり見通しが立ってきたように思います。受信料型か、有料対価型、また、その暫定措置などもあるのでしょうが、当時と比べればかなり明確になっていて、まだどのような範囲に入るかというのはわかりませんが、ある程度スコープが見えてきたような感じがします。そのスコープの範囲内で、この収支というのが、バランスがとれるというように解釈できれば安心できます。

 (坂本専務理事)

 今、いくつかご質問、ご意見をいただきましたけれども、基本的に、これは現行の受信料制度のもとでのわれわれの収支見通し、それぞれの収支相償の中で、支出を考えながらやれるシミュレーションということ、現実的な対応として取り組んでいるわけです。その一方で、ご指摘がありました、いわゆる放送と通信の融合の中で、新しい制度についてどう考えるかというところ、先ほども触れましたテレビを持たない世帯がどうなっていくのかと、われわれとしては非常に重要な課題だというのは認識しております。ただ、現状においては、9割を超える人たちがテレビを家に持っておられて楽しんでおられるという、この大前提は今のところは変わらないだろうということですから、今、何かを大きく変えるということを想定してはいません。引き続きの研究課題だと考えています。

 (上田会長)

 中長期の見通しをある程度立てて、その上で考えましょうということをやってきたわけですが、その中で、放送と通信の融合の部分はありますが、もう一つ、やはり東京オリンピック・パラリンピックというのはもう目の前にあって、どのぐらいの経費を準備しなくてはいけないかという問題がありました。それから、2年前に議論しているときには、私の記憶に間違いなければ、まだ4K・8Kで、どのぐらい費用がかかるとか、どういうタイミングで実際に始めるかとか、必ずしもまだはっきりしてない部分があって、われわれとしても、どの程度4K・8Kに関与していくのか、という問題がありました。したがって、放送と通信の融合は、試験的提供、その他で、費用の面もきちんと着実に検証しながらやってきています。それに一時的なオリンピック対応の終了や、将来の衛星波の整理・削減を見据えた4Kと2Kの一体化制作の拡大による支出の減、退職給付費の減など支出の中から削減できる部分がある程度読めるようになってきたというのも、もちろん環境の変化で何が起こるかわからないところはありますが、少なくとも今の時点で非常に読めるようになりました。それから、デジタルの世界、いわゆるインターネットの世界に入っていきますけれども、ここのところはまだ権利処理の問題とか、いくつかクリアしなくてはいけない問題もあります。したがって、例えば放送だと「あまねく」とか、放送法のもとでのいろいろな義務を果たしながらやっていくわけですが、どの程度常時同時配信して、インターネットの部分でわれわれが公共メディアとしてふさわしいだけのサービスの提供ができるかということを見通せないと、視聴者の皆さまからコストを頂戴するかどうかという判断は難しいです。実はBBCのiPlayerで、インターネットだけで見ている人からもライセンスフィーを取るようになったのは、相当時間を置いて、定着してからです。したがって、放送の補完ということでスタートして、何年か先まで見てみないと、今はちょっとさきざきの予測は難しいと思います。

 (井伊委員)

 最近、外国人労働者を積極的に受け入れるという方針を日本政府は決めたわけですけれども、今後の世帯の減少を補う規模になるかどうかはわかりませんし、あと、社人研の推計を今回も世帯数の推計で使っていて、社人研から新たな推計が出るかもしれませんが、その対策も重要になるのではないかと思っています。外国人労働者は、テレビを持たない人が多いようですが、一方で、日本に住んでいてテレビを持っていたら受信料を払わなければいけないということを知らない人がいて、未収者の中には外国人労働者の割合も多いと思いますし、今後、急激に増えていくと予想されます。このあたりのことはかなりインパクトがあるのではないかと思います。あともう一点は、先ほど小林委員がおっしゃっていた、常時同時配信ですが、これは2.5%以内に収めることに問題ないのでしょうか。

 (松原理事)

 まず、外国人対策につきまして、一つは、パンフレットについてもきちんと説明できるようにしようということで、6か国語の受信料のパンフレットを、新たに刷新して活用しています。それから、今トライアルしているのですが、いろいろな企業が外国人を誘致して、そこに外国人が集団で住んでいるというようなことがあります。先日もある局で、京都の会社が工場をつくって、ブラジル人がいっぱい住んでいるというのですが、訪問要員もポルトガル語を話せる人がいないということがありました。そこで今どういうことをやっているかというと、面接できれば外国人対応専用のダイヤルに架電して、ポルトガル語ができる人がかわって説明をするというトライアルをしています。経費もかかるのですが、そういうこともやりながら充実をさせていきたいというのが今の現状です。

 (坂本専務理事)

 それから、インターネットの2.5%についてですが、今で大体2.2%、150億円ぐらいです。それに、常時同時配信の経費としては、年間、運用費で50億円、このほかに権利処理、それから地域制御を実施していくとどうなるのか。これについては、「放送を巡る諸課題に関する検討会」の中でも、常時同時配信を始めれば一定の経費がかさむことについては一定のご理解をいただいていると思います。インターネットの予算を、何にどれだけ使っているかという区分経理、会計の透明性について今一生懸命議論しています。われわれとしても一定の上限を設けながら適切に運用していきたいと。そういう中で何らかの合意形成を目指したいと思ってやっています。

 (松坂理事)

 補足しますと、常時同時配信やインターネット活用業務をどのように会計上に位置づけるか、総務省などとも検討しておりまして、法改正が実現した場合、どういうふうに運用していくのか。費用の上限についても議論が必要と思います。

 (森下代行)

 今回の値下げの打ち出し方をいろいろ工夫しないといけないだろうと思います。よく見ると、422億円、6%というのですが、負担軽減策が片一方にあるので、値下げというものとちょっと違う部分が入っているのですね。だから要するに、NHKとしては実質6%なのですけれども、視聴者から見ると、必ずしもそこまで割り引かれていないように感じる。この出し方はうまくやらないといけないというのが一つあると思います。もう一つは、やはり10年先まで見て、テレビの所有率が9割になり、収入が減るのだと。そして、NHKとしては徹底的にいろんなことをやって、2023年に費用は7,088億円で、その後も各年、基本的に経費節減ということはあるわけですから。今回の値下げで、一応10年先までは、NHKとしては責任持って経営はできますという言い方です。支出は適正な額まで落として、健全な経営は維持できます、ということです。逆に言えば、もう10年先も、先ほどの受信料の話ではありませんが、いつまでもテレビの補完でいくのかと。テレビ持ってない人に対して不公平ではないかという議論が出てきたときにどうするのかということだと思います。必然的にそういう議論が、NHK側から総務省に補完だと言っているようですけど、やはり先ほどの負担の公平性という話が逆に世論から出てきたときには、NHKとしては、当然その分だけ収入が増えれば、また値下げの余力も出てくるわけですね。だから、ちょうどこの6%、あるいはこの4.5%というのが高いの低いのという議論のときに、やはりそこを気をつけておかなくてはいけないのだろうと思います。NHKとしては、どんなことがあっても、とにかくこの幅だったら10年間は責任を持って経営しますという数字だということだと思います。そうしないと、もう一つは10月に消費税の問題があるので、こういう対応にならざるを得ないのでしょうが、これは下げているというけれど、実質的には消費者から見たら変わらないのです。だから、やはりよほど実感がどのように湧くようにするかというので、工夫しておかないといけません。ということで、やはりそこら辺の前提と打ち出し方をぜひ工夫して、何とかよく理解してもらえるように努力が要るのだと思います。

 (高橋委員)

 今日、どこの企業を見ても、3年ぐらいの経営計画をつくって世に問うているのが一般的だと思うのです。その中で、具体的に長期ビジョンを示したということについて、本当にすばらしい成果だと私は思います。その中で、ちょっとつまらないことを言いますけれども、世の中一般的に、経費削減というと、何を考えるかというと、やはり機械化であったりシステム化だったりなんですね。この資料を見ていくと、あまりそういうことは記載がない。結構システムをやって、人間がやるのは人間がやらねばならないことだけをやる。それ以外、機械に置き換えていく。そうすると、機械への投資があって、それを人件費という形でどんどんわれわれとしては回収していく。これが世の中一般の考え方だと思います。そうすると、その辺の考え方はどうなっているのかということと、それから、児野技師長のところでは、放送技術において、一生懸命いろいろ改革もされて、先ほど、オリンピックの話もあったと思うのですが、どんどん機械によって置き換えていくという時代が必ず来ると思います。そういうものの考え方というのは、どういうふうになっているのでしょうか。これも普通の人が見ると、この点について気になる人が、結構多いのかなと思いましたので、ちょっと考え方だけでもお示しいただければと思います。

 (児野技師長)

 今、機械に置き換えられるものは機械に置き換えていこうという発想で、検討をさまざま進めていますけれども、例えばこの3か年とか次期の3か年のスパンで収まるような、効果のある機械導入というのはなかなか難しいです。というのは、全国のNHKで基盤として使っている設備というのは、大体15年スパンでリプレイスしていくものです。そういった大がかりな設備は、例えば送出装置を今リプレイスしている最中なのですが、これまでの要員体制を前提とした設定になっています。そうすると、次のチャンスは10年か15年先になるというような類いの話が結構多いのです。ただ、ロボティクスを使って、事務的な単純作業の置き換え、そういった類いのものはどんどんやっていくということはできると思います。それから、さらに言うと、今までNHKはすべての設備を自前で持つという哲学でやってきたのですが、これからは、例えばクラウドのサービスとして利用しようとか、外の商用回線で、代替できるものはそちらに移すとか、できるだけ物を持たない経営のほうに移行して行こうというような議論は始めたところです。まだそこに対して具体的にいつから導入するというところまで議論できていません。方向性としては、今、高橋委員がおっしゃった方向で検討しようとしています。

 (高橋委員)

 資産を持つよりはコストカットということですね。

 (児野技師長)

 そうです。

 (高橋委員)

 軽量化というのも言われるのだろうと思うのですが、極めて重要なポイントで、どこかにそういう考え方というか、相当大きな機材を持っているというポイントもあるし、人数的に、必ず言われるのは肥大化ということです。その代表として人数を言われる以上は、そこに対してわれわれはこういう手を打とうとしているのだということを、何らかの形で表現することは極めて大きなインパクトがあるのかなと思います。

 (児野技師長)

 それは、値下げに直接結びつけるというよりは、将来こういう右肩下がりになってくる時代に対して長く効力を維持できる資産として考えていくということです。

 (高橋委員)

 おっしゃるとおりです。

 (石原委員長)

 この資料の7ページに今の話に関連して、2021年度以降と書いてありますが、この数字について、どのぐらいコスト削減になるかというのは、今回の収支の中には入っていないのですか。

 (児野技師長)

 入っていないです。

 (石原委員長)

 それから、業務改革推進会議の成果もまだ入っていない。いつごろそれが見えてくるのですか。

 (黄木理事)

 業務改革推進会議はことしの4月から始めました。最初に設定したのは、事業規模とグループの要員規模です。5月の段階で確認し合ったのですが、事業規模は将来のことを見据えて、7千億円規模でサステーナブルに維持できるような方向性で考えようということで、条件を設定しました。もう一つ、グループの要員規模は、全体で1万7,000人を超えないようにということで決めました。一方で、これは委員の方々から今までずっとお話がありましたが、NHKの強み、コアコンピタンスというのは、第一級のコンテンツを制作する集団であり続けること。それから、ネットワークを維持・強化することです。これらを最初に置いて、6月、7月に、将来の公共メディアというのは具体的にどういうものなんだということについて、放送のあり方や、視聴者コミュニケーションのあり方、管理部門のあり方、あるいは人材育成のあり方等を議論しました。その結果として、今すぐには無理だけれども、そこに向けての1年目として、具体的な取り組みが始まっています。まずは、放送総局改革を進めるということです。今まで放送の波ごとに管理していたコンテンツを、ジャンルで管理することで、より柔軟で効率的な制作体制、番組編成を実現しようとしています。ほかにも広報についても、紙媒体からデジタル媒体に変えていく。あるいは、例えばスタジオパークのようなところに人を集めるという箱型のものから、デジタルを使って全国の放送局で視聴者に直接コミュニケーションできるようなものに変えていこうといったものが、来年度の予算や要員計画、組織改正提案の議論の中で少しずつ出始めているところです。したがって、今すぐいくらという形で数値は出せないのですが、それに向けての議論は、4月、5月の段階から始めています。われわれは将来の世帯数減ということも当然考えなければいけないということから出発しています。ただ、今ご指摘のように、来年度以降の収支計画のところには、まだ入っておりませんので、そこのところを、これからしっかりわれわれとして選択と集中を進めていきたいと思います。適正に整理すべき支出の規模が決まったので、そのなかでどうやってやっていくのかということを、業務改革推進会議の中でやっていこうと考えています。考え方だけで申し訳ないのですが。

 (堰八委員)

 今日の中間決算のご報告等で、今年度の収支差金の見込みが200億円強とのことでした。今までの議論と、少なくとも2018年度から見て2030年度と、12年間のスパンで見て、値下げをしないと7,300億円ぐらいまで収入が伸びるというのは、やはりこれは何らかの還元をすべきだと私は思います。それで、どこまで先の見通しを見ればよいかと。それは20年先まで分かればよいのですが。これだけ日進月歩でAI等も含めて技術が進歩することで、アナウンサーがしゃべる機会が減るということもあると思います。そんなことを見ると、12年間、この7,000億円レベルというのは、2017年度の決算と同じレベルですから、この収支が確認できれば、私はやはり値下げに踏み切るべきだと考えます。

 (上田会長)

 渡邊委員がおっしゃいました売上という話と、一般企業であれば、トータルで自分たちが使えるキャッシュフローというのは、売上のところに入っていると思うのですが、その予測というのは極めて、よほど特殊な企業でない限り困難です。NHKの場合、実は入ってくる収入の予測が人口のすう勢を予測するみたいにして、かなりの確度で正しい数字がつかめるというのが、こういう議論をするときに非常に強みです。ですから、それは、今までの予算もそうですが、収入の部分が大きくずれて、環境変化でというのはあまりなくて、むしろほとんど予算から毎年数十億円程度のぶれです。ぶれても、そのぐらいの確度で予測ができます。それはNHKの経営に携わっているときの一つの安心できる強みだということです。

 (石原委員長)

 鉄道も似たようなところがあります。それでは、本日の予算編成の考え方、審議をここで終了いたします。ただいまの議論を踏まえて、次回の説明をお願いしたいと思います。

 

 

○ 意見交換「平成31年度予算編成の考え方」
 平成31年度予算編成の考え方について、経営委員による意見交換を行った。

 

 

 以上で付議事項を終了した。

 

 

○ NHKのガバナンスについて
 平成30年11月7日付で、改めて日本郵政株式会社取締役兼代表執行役上級副社長より、NHK経営委員会宛に書状が届いたので、情報共有を行った。
 会長に申し入れを行った内容のうち、本件の措置についての報告は求めないことを、経営委員会として確認した。

 

 

情報公開・個人情報保護審議委員会の答申をふまえ、次の内容を追記します。

○ 経営委員会での意見交換、上田前会長への注意の申し入れについて
 11月7日付で、改めて日本郵政株式会社取締役兼代表執行役上級副社長より、経営委員会宛に書状が届きましたので、情報共有を行いました。会長に申し入れを行った内容のうち、本件の措置についての報告は求めないことを、経営委員会として確認しました。

 

 

 上記のとおり確認する。

 

 2020年7月21日    

森 下 俊 三

 

 

高 橋 正 美