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第1262回
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平成28年7月1日(金)公表

日本放送協会第1262回経営委員会議事録
(平成28年6月14日開催分)

第1262回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1262回経営委員会

 

<会 議 日 時>

平成28年6月14日(火)午後1時30分から午後3時55分まで

 

<出 席 者>

〔委  員〕

  浜 田 健一郎 本 田 勝 彦 井 伊 雅 子
    石 原  進   上 田 良 一 佐 藤 友美子
    中 島 尚 正   長谷川 三千子 美 馬 のゆり
    室 伏 きみ子   森 下 俊 三  
  ◎は委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔役  員〕

  籾 井 会 長 堂 元 副会長 木 田 専務理事
  森 永 技師長 今 井 専務理事 坂 本 理 事
  安 齋 理 事 根 本 理 事 松 原 理 事
  荒 木 理 事 黄 木 理 事 大 橋 理 事

 

 

<場   所>
放送センター  22階経営委員会室  21階役員会議室

 

<議   題>

 

付議事項

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(松山)開催報告(資料)

 

1 議決事項

 (1) 4K・8K試験放送送出設備を賃貸する業務等の認可申請について(資料1)(資料2)(資料3)

 

2 報告事項

 (1) 平成27年度業務報告書の構成および今後のスケジュールについて(資料)

 (2) 新奈良放送会館の整備方針・概要について(資料)

 (3) 平成27年度年金基金の状況

 (4) 平成27年度関連団体の事業運営状況等について(資料)

 

○ その他事項

 (1) 平成27年度国際放送の取り組みについて(資料)

 

 

議事経過

 

 浜田委員長が開会を宣言し、経営委員会を開催。

 

<会長、副会長、専務理事、技師長、理事入室>

 

 本日の付議事項および日程について説明。第1261回(平成28年5月24日開催)の議事録を承認し、所要の手続きを経て、平成28年6月17日に公表することを決定した。

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(松山)開催報告(資料)

 (歌川経営委員会事務局長)
 平成28年度、1回目の開催となる「語る会」を、4月9日(土)、松山放送局で開催しました。時間は午後2時から4時までの2時間です。登壇は、経営委員会から、浜田委員長、井伊委員、森下委員の3名。執行部から坂本理事、安齋理事、松山放送局の泉谷局長の3名を加えた合計6名で、司会は、徳田 章アナウンサーでした。公募の結果、はがき、ホームページなどを通じて46名から参加の申込みがあり、当日は、33名が「語る会」に参加されました。「語る会」終了後には、「『あさが来た』ドラマ制作の舞台裏」と題して、佐野元彦エグゼクティブ・プロデューサーによる講演会を開催しました。
 概要や反響等については、報告書の1〜2ページに記載しています。冒頭、協会の基本方針や重要事項の説明として、井伊委員から経営委員会の役割、平成27年〜29年度NHK経営計画、28年度の収支予算、事業計画について説明しました。その内容は3〜5ページに記載しています。
 意見聴取は「経営全般」と「放送」の2つのテーマで実施し、「経営計画で掲げた重点方針の実現に向けた取り組み」「会長の適格性と経営委員会の責任」「受信料の公平負担の徹底」「地域放送の拡充」「新年度の取り組み」など、多岐にわたる意見や提言が寄せられました。これらは6ページ以降に掲載しています。
 終了後の参加者当日アンケートの結果とアンケートに記された具体的内容は24ページ以降に記載しています。
 報告書案については、ご指摘がなければ、これを確定して公表させていただきたいと思います。

 

 (美馬委員)
 私は今日で経営委員会は最後でございますので、5月14日土曜日に函館局で開催しました「視聴者のみなさまと語る会」について、一言、ご報告をさせていただきます。
 函館では、いつもの「語る会」とは少し形式を変えて、皆さまのご協力で、3つのグループに分けて皆さまと語るということを行いました。1グループに10人から12人、そこに我々経営委員と、執行部の方に入っていただきました。参加者全員が1人二、三回発言することができました。詳しい報告は後であると思いますが、その中で、分科会方式は非常に効果的であった、NHK出席者の対応が真剣で好感が持てた、NHKの良識を再認した、揺らぎかけていたNHKへの信頼感を取り戻すことができた、公共放送ということについてあまり知らなかったことをこういった会で知ることができた等、ご意見をいただきました。
 3つのグループに分かれて10人から12人で会を進行するということはいろいろ大変かもしれませんが、今後こういった形で皆さまのご意見をできるだけ多く聞くことができるようになればと思い報告させていただきました。どうもありがとうございました。

 

 

1 議決事項

 (1) 4K・8K試験放送送出設備を賃貸する業務等の認可申請について(資料1)(資料2)(資料3)

 (大橋理事)

 本日は、「4K・8K試験放送送出設備を賃貸する業務等の認可申請について」ご審議いただきます。
 今年、BSで放送を開始いたします4K・8K試験放送は、NHKと一般社団法人の「放送サービス高度化推進協会」(略してA−PAB)この2者が実施することになっております。A−PABが試験放送を実施するにあたり、A−PABから送出設備の借用などの要請がございました。NHKがこの要請に応じるためには、総務大臣の認可が必要になりますので、本日は、その認可申請についてのご審議をお願いしたいと考えております。BSによる4K・8K試験放送は、昨年4月に施行された「基幹放送普及計画」において、NHKとNHK以外の放送事業者の2者が実施することになっています。
 これに基づき、昨年の秋に試験放送を実施する放送事業者の公募が行われ、今年2月の電波監理審議会で、NHKと、次世代放送推進フォーラムの2者が認定されました。
 その後、次世代放送推進フォーラムは、今年4月、これまで地上デジタルなどの推進をしていました「デジタル放送推進協会(Dpa)」と統合し、新たに「放送サービス高度化推進協会(A−PAB)」として、試験放送を実施する業務を継承することになり、現在に至っております。
 実施の放送は、現在、空いていますBS17チャンネルを「時分割」し、NHKとA−PABが時間帯を分けて放送することになります。
 NHKは、8月1日から試験放送を開始しますが、A−PABは、12月から放送を開始するとしています。
 A−PABが試験放送を実施するにあたり、A−PABは、自前の送出設備を持っておりませんので、NHKの送出設備を借り、番組の送出業務をNHKに委託したい、という要請がありました。
 要請に応じるためには、総務大臣の認可が必要になります。本日、ご審議をいただく点ですが、NHKとしては、一括して放送番組の送出を行うことが効果的、かつ効率的だと判断して、要請に応えることとしたいと考えております。
 実際にA−PABに貸し出す設備は、「SHV−TOC」と呼んでいる4K・8K送出設備になります。A−PABは、各社で制作したコンテンツをハードディスクやメモリなどに収録したうえ、これをNHKに持ち込み、受託したNHKがこのSHV−TOCから送出することになります。
 この件につきましては、放送法20条3項の「協会の業務の円滑な遂行に支障のない範囲内において行うことができる業務」、および放送法85条の「放送設備の譲渡・賃貸等の制限」に該当するため、放送法の規定により、総務大臣の認可が必要になります。
 この賃貸、および業務の内容などを認可申請書に記載し、議案書の、別添①、②に示しています。本日、議決をいただければ、すみやかに総務大臣に認可申請を行います。その後、電波監理審議会の諮問・答申を経て、総務大臣の認可が行われる見込みです。
 説明は以上になります。ご審議のほど、よろしくお願いいたします。

 (長谷川委員)

 この貸し出しを行うに当たっての、背景となるNHKとしての戦略についてお伺いしたいと思います。これだけを見ると、ある意味で、民放がNHKにおんぶしているようにも見えるのですが、民放にこのような貸し出しをすることは、4K・8Kの普及に向けて非常に効果がある、そういう全体的な戦略があってこういう計画をなさっているかと推測するのですが、いかがでしょうか。

 (大橋理事)

 設備の賃貸に当たりましては、それなりの対価をいただくことになっています。NHKが保有しております4K・8K試験放送のための設備を有効活用するという意味では、しかるべき料金を払っていただいてお貸しするということは妥当だと思います。

それから、A−PAB自身が設備を持っていないので、そこをNHKの設備を借りて出すということで、試験放送が全体として、円滑に実施できるようになれば、4K・8Kの国民への普及に資するものだということで、お貸しするという判断になります。

 (長谷川委員)

 分かりました。ありがとうございます。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

2 報告事項

 (1) 平成27年度業務報告書の構成および今後のスケジュールについて(資料)

 (今井専務理事)

 それでは、27年度の業務報告書の構成と今後のスケジュールについて報告をいたします。業務報告書は、放送法72条に基づき、毎年度の事業の実施結果についてとりまとめるものです。NHKの業務の概要を対外的に明らかにする唯一の法律に基づく公式の文書であり、放送法29条で、経営委員会の議決事項の一つとされています。事業年度経過後3か月以内、つまり6月末までに、監査委員会の意見書を添付して、総務大臣に提出しなければならないことになっています。総務大臣への提出後は、大臣が意見を付し、内閣を経由して国会に報告されることになっています。従って、この業務報告書は、総務大臣に提出はしますが、国会提出資料としての性質を持っております。業務報告書は、放送法で規定された業務について、当年度内に発生したその執行に関する事実を、NHK自身の主観的な評価を加えることなく、正確に書き留めるべきものとして、その趣旨で現在編集作業を行っています。編集にあたっては、記載事項に過不足のないよう留意しつつ、簡潔な記述に努めています。
 業務報告書に記載する事項は、放送法施行規則第30条に定められています。別紙の1枚目、2枚目に、今回の構成案の概略をお示ししておりますのでご覧ください。第1章は、事業の概況を記すもので、NHKの基本的役割や3か年経営計画を踏まえて事業計画を着実に実施したことを記載し、以下の各章の要約を記載することとしています。以下、第2章は放送番組についての概況、第3章は放送番組に関する調査研究、第4章は営業活動の諸施策や受信契約等に関する事項、第5章は視聴者からのご意見への対応、広報・イベントなど視聴者関係の業務について、第6章は中継局の開設など放送設備の整備・運用、第7章は放送技術の研究について、それぞれ記述します。第8章には、経営委員会、監査委員会、執行部の構成や活動状況、組織・職員の状況について記述します。このほか、第9章で財政の状況、第10章で子会社等の概要、第11章にはその他の事項を記述します。本編の記述以外に、年間の放送時間数、受信契約件数、子会社の状況等、49点の資料を添付する予定です。
 今後のスケジュールですが、引き続き編集作業を進めたのち、業務報告書の案について、来週21日の理事会での審議を経て、28日の経営委員会にご提案する予定です。経営委員会で議決をいただけましたら、すみやかに財務諸表とともに総務大臣に提出し、公表します。

 

 (2) 新奈良放送会館の整備方針・概要について(資料)

 (大橋理事)

 新奈良放送会館の整備方針と概要についてご説明します。
 現在の奈良放送会館は、昭和45年度に建設され、45年が経過しております。
 議案資料をご覧ください。新奈良放送会館の用地取得につきましては、今年3月に経営決定をいただき、奈良局と本部で会館の機能や規模について具体的な検討を重ねてまいりました。この度、整備方針・概要がまとまりました。
 2ページ目の「基本コンセプト」をご覧ください。
 新奈良放送会館の整備にあたっては4つの項目を柱にしています。
 1点目は「歴史・文化の発信拠点」としての役割を果たし、番組を通して国内外に発信していくこと。
 2点目は「地域に開かれた放送局」として、県が再開発を進めている敷地のなかで、より地域に密着したサービスを提供していくこと。
 3点目は、いかなる災害時にも対応し、県民の生命と財産を守る緊急報道の拠点となる「災害に強い放送局」とすること。
 4点目は、さまざまな省エネ施策を講じるとともに、将来の放送サービスに対応できるようフレキシビリティのある放送局とすること。としています。
 次に、「新会館の概要」です。3ページの表をご覧ください。
 新会館の敷地面積は、3,417平方メートルで、延床面積は4,480平方メートルです。階数は、地上3階程度とし、平成32年度の完成を目指します。
 建設費は、建物が25億円程度、放送設備は13億円程度を見込んでいます。用地は、約4億円をかけて今年7から8月の間に取得予定であり、建設方式は単独建設といたします。
 4ページをご覧ください。「会館の主要機能」を記載しています。
 建物は免震構造を採用します。万が一の浸水被害を回避するため、電源設備等は上階に設置するほか、2系統受電、100時間運転可能な自家発オイルタンクを整備します。また、1,000リットル程度の中継車両用軽油を備蓄できる設備も整備し、雑用水は4日分を貯水できるようにします。
 放送センター機能とともに、局長室や放送管理事務室などの管理機能についても同じフロアに一元的に配置し、スムーズな意思伝達を可能とします。
 ニューススタジオは、125平方メートル1層を確保して、18時台などのローカル番組に対応するとともに、隣接配置する汎用スペースを活用し、ここで開票速報番組や特別番組の制作時に、一体となった運用ができるようにします。
 視聴者交流の場であるハートプラザは200平方メートルとし、8Kの大型モニターや番組公開ライブラリーなどを設置します。また、公開番組や番組コーナーの収録もできるオープンスタジオスペース100平方メートルを隣接させ、NHKに親しみを感じてもらう場として活用します。
 鉄塔については、放送会館と各放送所をつなぐ無線回線や非常用放送設備を整備するため、地上57メートル程度の高さとします。
 その他の事項としまして、用地取得の際にご説明いたしましたが、新しい放送会館は、県が進める再開発事業地域の一画に整備させることから、周辺に整備される各種施設と調和のとれた設計とします。また、自然エネルギーの活用や電力消費の少ないシステムを導入して、環境にやさしい放送局を目指すことにしています。
 5ページ目の「主な機能と面積」をご覧ください。新会館と現会館の機能別の面積を記載しています。全体の面積は、新会館が4,480平方メートルとなっており、この面積は、広域局の標準面積の考え方に基づき、算出しています。
 下段の「スケジュール」をご覧ください。28年度に、設計者を選定したのち、基本設計に着手し、各室のレイアウトやデザインなどを決め、29年度にさらに詳細な実施設計を行います。
 その後、30年度に建築工事を着工し、31年度に建物を完成させたあと、放送設備を整備して、32年度に運用開始を予定しています。
 最終ページに、移転用地の位置図を添付しました。この地図にもありますように、奈良市役所そばの点線で示したところが県の再開発事業エリアです。このエリア内の南東部に新放送会館が建設されることになります。

 (浜田委員長)

 街全体の再開発の中の一画という特徴を生かした設計上のメリットはなにかありますか。

 (大橋理事)

 点線で示したところに、奈良県は「ホテルを核としたにぎわい交流の拠点」として、ホテル、コンベンション施設・多目的広場などを設けて集客することとしています。NHKとしても、人が集まっていただけるよう、それらを意識した整備をすることになります。

 

 (3) 平成27年度年金基金の状況

 (根本理事)

 27年度の年金基金の状況について説明いたします。
 基金規模については、26年度末の時価総額3,494.5億円から、27年度の基金繰入が17.6億円のプラスということで、27年度末は3,512.2億円となりました。
 この17.6億円の内訳は、総合収益のマイナス5.8億円と、拠出と給付の差23.5億円によるものです。
 以上、ご報告します。

 

 (4) 平成27年度関連団体の事業運営状況等について(資料)

 (黄木理事)

 平成27年度の関連団体の事業運営状況等についてご報告いたします。NHKは関連団体運営基準で、監査法人による業務運営状況調査と事業活動審査委員会について、経営委員会に報告することが定められています。さらに、今日はこの場で、子会社の決算概要についてもご説明をさせていただきます。
 2ページをご覧ください。業務運営状況調査の結果について、ご報告いたします。業務運営状況調査は、関連団体23団体を対象に、外部の監査法人に委嘱して実施をいたしました。
 調査項目は3点です。1点目は、関連団体の事業活動が、関連団体運営基準に照らして適正に行われているか否か、調査を行いました。その結果、検出事項が1点ありました。NHKメディアテクノロジーが実施した第三共同ビルのレイアウト変更工事がメディアテクノロジーの総資産の1%を超える2.4億円の建設設備工事であったため、事前に協議すべきものであったのが漏れていたという指摘でした。これについてメディアテクノロジーは、今回の案件は、改修費、費用と判断していたため事前協議をしなかったということでしたが、今後こうした漏れがないように指導しました。
 2点目は、NHK取引とその他の取引の区分経理の基本方針に関する調査です。区分経理が、NHKの示した基本方針に沿って作成されているかどうか各社から提出された報告内容を調査しました。その結果、全て基本方針に沿って作成されていました。これは、後ほどご説明しますNHK取引の営業利益率などの算定のもとになるものでございます。
 3点目は、実績原価報告のサンプリング調査です。サンプルとして抜き出した11団体・27件の業務委託契約について、支出された経費の実態を調査し、その内容と利益状況を分析しました。結果は委託元部局に伝え、業務委託契約見直しの材料として活用しています。
 次に3ページです。関連団体事業活動審査委員会の活動結果についてご報告します。この委員会は、NHKの関連団体の事業活動について、外部から意見・苦情を受け付け、その適正性を審査するために設置しているものです。昨年度は27年12月17日と28年4月20日に開催し、意見、苦情等の受け付け状況を確認しました。昨年度については、関連団体の事業活動に関する意見、苦情等の受け付けはございませんでした。
 次に、4ページからは、子会社の決算概要等です。各社の決算は、まだ株主総会の承認前の段階ですが、数値がまとまりましたのでご説明します。表の一番下に、13社の単純合計の数字を記載しております。全体状況としては、13社の売上高は、表の一番左、2,471億円です。13社の前期の決算は2,499億円となっていますので、27億円の減収です。当期純利益は、表の一番右54億円です。13社の前期の決算は61億円となっていますので、7億円の減益です。
 下の5ページに、子会社決算のポイントを記しました。4ページの表とあわせてご覧ください。まず、この2,471億円のうちNHK取引は1,591億円、前期に比べて17億円の増収になっております。VOD事業やスポーツ放送権事業の一部を関連団体からNHKに移行したことや、アニメ番組を改定したことによる影響等によって、およそ22億円の減収がありましたが、一方で昨年度は放送90年、それから戦後70年に関連するコンテンツの開発、制作、さらに国際放送の発信強化等に取り組んだ結果、全体としては17億円の増収となりました。
 次に、グループ外取引については691億円で、前期に対して38億円の減収です。多彩な展覧会や美術展等の企画・開発に取り組みましたけれども、DVD事業、出版事業、カルチャー事業が落ち込んだこと、さらに、アイテックで地デジ関連業務が終了したことなどによって38億円の減収という結果になりました。
 個別各社の状況ですが、増収増益はNHKエデュケーショナル、日本国際放送、NHKアートの3社でした。 一方、減収減益は、薄い網かけをしたNHK出版、NHKアイテック、そしてNHK文化センターの3社でした。増収減益はNHKエンタープライズ、NHKプラネット、NHKメディアテクノロジーの3社、残りの4社は減収増益でした。13社全体の売上高が減収となる中、各社は業務の効率化、コストの削減に取り組みましたが、最終的に当期純利益は、7億円の減益となりました。この一因としては、各社が将来の事業基盤の確立に向けて先行投資を行ったこと、主に8K、4Kの設備投資や開発費といったものです。さらにはガバナンス、監査体制の充実強化に取り組んだこと、新事務系システムと連動した自社システムを改修したこと、マイナンバーに対応する等を行ったこともあります。
 次に、6ページです。子会社の売上高と利益の推移です。上の棒グラフ一番右側のところ、子会社13社2,471億円の売り上げのうち、NHK取引が1,591億円ということで、前期決算に比べて17億円増えております。NHK取引の比率は64.4%となりました。前期が63.0%でしたので、微増となっています。
 次に、7ページです。NHK取引の営業利益です。子会社合計の営業利益率は、この表の右の上のところです。3.0%で、前期3.7%を0.7%下回りました。このうちNHK取引による営業利益率は、3.2%で、前期4.2%から1.0ポイント下回っております。その営業利益の額は50億円で、前期に比べて15億円の減益でした。主な理由は、委託業務の一部がNHKへ移行したこと、委託単価の見直しを行ったこと、さらに競争契約を推進したこと等によります。
 次に、8ページをご覧ください。NHKの受取配当金です。表の上から2段目の枠で囲ってあるところですが、子会社13社の配当総額は72.1億円でこのうち特別配当が51億円あります。これによってNHKの受取額は51.4億円となっております。それに放送衛星システムからの配当5.1億円を加えると、配当総額は合わせて77.2億円となり、NHK受取額は54.0億円となります。
 特別配当を実施した会社は網かけをした4社です。NHKエンタープライズが20億円、NHKエデュケーショナルが10億円、NHKグローバルメディアサービスが18億円、そしてNHKアートが3億円でございました。
 次に、9ページです。副次収入です。昨年度、関連団体から収納した副次収入は56.9億円、前期比4.5億円の減収でした。このうち番組関係の副次収入は45.8億円で、同じく4.0億円の前期比減収となっています。一方、グループ外から収納する施設利用料などを足した副次収入の総額は80.4億円となりまして、前期比1.3億円の増収となりました。
 最後に、10ページです。関連団体の事前協議等の概要です。関連団体運営基準に基づきまして、平成27年4月からことし3月末日までの間に関連団体から事前協議の申請を受けて回答を返した件数は、上の表、46件、同じく事前説明の申請を受けて説明を受けた件数は、下の87件でございました。主な内訳は、ここに記載しているとおりでございます。

 (中島委員)

 5ページの一番上、17億円の増収をもたらしたものの一つとして、国際放送の発信強化とありますが、これはどういうことで増収に結びつくのでしょうか。

 (黄木理事)

 NHKから、NHK国際放送の番組制作および受信環境整備の業務を関連団体に委託しました。したがって、関連団体としては、その分仕事が増えることで増収した、という意味です。

 (石原委員)

 7ページで、NHKグローバルメディアサービスの利益が目立ちますが、これはなぜですか。この数字を見ていると、NHKとの取引の割合が高いので、そのせいではないかと思うのですが。

 (黄木理事)

 これにつきましては、業務委託の利益率が若干高い部分があると分析しております。2ページでご報告いたしました業務運営状況調査の「3.実績原価報告のサンプリング調査」でも、グローバルメディアサービスに、ニュースなどでリアルタイムに字幕をつける業務を委託しておりますが、この分の利益率が高いことがわかりましたので、ことし3月末までに単価の見直しの交渉を行い、今年度から新しい単価で実施しています。こういった形で、委託業務の経費の実態について適宜見直して、適切な利益率になるよう、効率的な運用ができるように努めてまいりたいと考えております。

 (石原委員)

 単価の見直しだったらグローバルメディアだけではなく、他の会社に対しても全てあるわけですから、そちらも合わせて見直していただきたい。

 (黄木理事)

 例えば番組の制作の経費、トータルコストで行っておりますが、これについてもグローバルメディアサービスだけではなく見える化を進め、ほかの制作関連の団体についても、昨年度の後半、主に1月から3月にかけて一部単価の見直しを行いました。今年度は、より範囲を広げて業務委託、番組委託の単価について見直すべきものは見直すという形で進めてまいりたいと考えています。

 (石原委員)

 配当金はNHKエンタープライズ等の子会社の合計が72億円、放送衛星システムの関連会社計が5億円、合計77億円ということですね。

 (黄木理事)

 そのとおりです。

 (石原委員)

 NHKエンタープライズ等の子会社の合計が72億円、放送衛星システムの関連会社計が5億円ということですね。

 (黄木理事)

 そのとおりです。

 (石原委員)

 NHKエンタープライズの配当性向が473%ということは、今までやっていなかったことをやったという評価でよろしいでしょうか。

 (黄木理事)

 先ほどご説明いたしましたように、このうち20億円は特別配当という形で行うことにいたしました。

 (石原委員)

 そうすると、エンタープライズは内部留保が残っていないということですか。

 (黄木理事)

 全体では、この配当後の利益剰余金は、平成27年度末ということで876億円となると考えております。

 (石原委員)

 それは全部の合計ですね。エンタープライズはどうですか。

 (黄木理事)

 必ずしも、全く残っていないということではございません。

 (石原委員)

 それぞれの会社の内部留保の金額や財務内容を見て、今回は思い切ってこれだけ取ったということですか。

 (黄木理事)

 そのとおりです。

 (関連事業局)

 配当可能と思われる部分の半分程度を今回特別配当することとしました。

 (黄木理事)

 特別配当については、各社の資金繰りを勘案し、子会社ごとに個別に交渉して、エンタープライズが20億円、エデュケーショナルが10億円、グローバルメディアサービスが18億円、NHKアートが3億円としました。

 (石原委員)

 9ページの副次収入とはどういったものでしょうか。

 (黄木理事)

 NHKで放送した、制作した番組について、二次販売をいたします。例えば、CS放送でそれを流す、あるいはNHKのキャラクターを販売するとか。グループ会社がそういう形で収益を上げたものについて、NHKに副次収入という形で入ってきます。

 (石原委員)

 副次収入で、その権利はどのぐらいですか。例えば折半など何かルールがあるのですか。

 (黄木理事)

 それぞれの事業に応じて決めております。

 (石原委員)

 大体毎年このぐらいの金額になるのですか。

 (黄木理事)

 今年度は若干下がっております。一時期は70億円程度となっていたころがありました。

 (石原委員)

 27年度は80億円を超えていますよ。

 (関連事業局)

 補足させていただきます。今、黄木理事からお話しした数字は番組関連の副次収入、つまりNHKの番組をいろいろ展開して、その権利をNHKが持っておりますので、それに応じて売上高から何%というお金をいただいております。その番組の副次収入が一時期70億円近くとなっていたということです。一方、副次収入というのは、番組関連の副次収入だけではなくて、ほかにもNHKの施設の利用料が副次収入になっているものもございます。27年度の副次収入総額は、そういう意味で80億ということでございます。

 (石原委員)

 これは、関連団体から56億9,000万円。それ以外の部分、純民間からの部分が20億以上あるということですか。

 (関連事業局)

 例えばNHKオンデマンドの副次収入は、関連団体は経由しておりません。

 (石原委員)

 「等」の中にオンデマンドの二十数億が入っているということですか。

 (関連事業局)

 オンデマンドの収入は別掲ですが、オンデマンドに番組を提供することによる提供収入です。

 (黄木理事)

 例えば、先ほど最初に4K・8Kの施設をA−PABに貸すということがございました。貸すことによって利用料が入ってくる。利用料がNHK外からの副次収入に計上されるということです。

 (浜田委員長)

 先ほど、全体での利益剰余金が876億円とのことですが、これは何億から何億になったのですか。

 (黄木理事)

 前年度の894億円から、18億円程度減りました。894億円から876億円になるということです。

 (浜田委員長)

 剰余金が減ったということですか。

 (黄木理事)

 18億円減ったという状況です。

 (浜田委員長)

 では、また利益が出たということですね。

 (黄木理事)

 はい。

 (森下委員)

 3ページ目に、意見、苦情等の受け付けがなかったとなっています。受け付け体制のところは、受け付けは書面によることとしているが、相談を受け付ける専用電話を設けている、とのことですが、この電話はどれぐらいかかってきたのですか。

 (関連事業局)

 基本的には、電話はかかってきませんでした。質問、ご意見程度はありましたが、審査委員会に宛てたという内容ではなく、いわゆる一般の問い合わせ的なことで、そういった形での電話は特に件数としてはありません。

 (森下委員)

 NHKにいろいろと意見、苦情が入ってくる中で、こういう関連団体に関係するものはここでは扱わず、あくまでも、この窓口に来るものしか扱わないということですか。

 (関連事業局)

 いわゆる一般的なNHKの窓口に入っていった関連団体に関するお問い合わせ等々は、それはそれとして回ってまいります。

 (森下委員)

 ここには入っていないということですね。

 (関連事業局)

 そうです。ここにかかってきたもののみを記載しています。

 (森下委員)

 それは、どのぐらいあるのですか。関連団体全体に対するいろいろな苦情、意見はほかにあるということですね。

 (黄木理事)

 調べてご報告します。

 (森下委員)

 私が知りたいことは、苦情・ご意見がいろいろな窓口に入ってくる可能性があるので、それらがきちんとこうした受け付けに情報として来て、適切な対応ができているかどうか、ということです。

 (黄木理事)

 ふれあいセンターにそういった情報、お問い合わせ等が入った場合に、関連事業に関係するものがあれば、NHKの内部で関連事業局にふれあいセンターから報告を受けております。

 (堂元副会長)

 基本的に、このスキームにおける意見・苦情等は、民間の放送会社など、利害関係者が連絡してくる場合です。一般的な視聴者といいますか、利害関係者ではない人から意見などがある場合は、一般的な窓口に電話がかかってくるので、利害関係者はほとんどありません。

 (森下委員)

 ただ、利害関係者と直接取引があるなどの問題があるものは当然扱わなければいけませんが、やはり関連団体への活動について何らかの意見があれば、それはうまく生かしていただかないといけません。そういったものがきちんと処理されていればよいのですが、そこがよく見えませんでした。そういう意味では利害関係で、契約上など何かの問題があるものだけはということなのですね。

 (黄木理事)

 この審査委員会の範囲はそういうことになります。

 (浜田委員長)

 アイテックは新体制がスタートしましたが、その状況について特にご報告されるようなことはありませんか。

 (黄木理事)

 今まとめているところです。まず出金管理などについては3月までに済ませましたが、経営改革のプロジェクトを立ち上げて、アイテックでは週2回、新体制のもとでそういったことについての検討を進めております。例えば、人事本部という組織をつくって、社内人事の運用をきちんと管理していくことなど、さまざまな内容を今検討しております。間もなくそれについてまとめて、ご報告できればと思っております。

 (美馬委員)

 事業運営状況の報告ということで、今アイテックの話が出ました。今日はとりあえず決算の状態を報告していただきましたが、子会社・関連会社を、経営方針の中で、今後、どのようにしていくのか、だからこういう報告になっている、この利益をこれで内部留保していくのか、また、NHKとの取引を減らして自立させていく方向にあって、今こういう状況でこうだということなどがあると思いますが、今回はどういう位置づけのご報告なのでしょうか。

 (黄木理事)

 これは、昨年度の結果のご報告です。昨年度までは子会社の経営目標について、基本的には売上や利益率の増加を指標としておりました。しかし、今期からは、その経営目標を見直して、協会の業務を補完支援するという基本的な関連団体の役割を重視することにいたしました。そして、それに向けての取り組みのひとつとして、昨年度の後半から、NHK取引の中身を精査する、「見える化」を順次進めております。業務の単価の見直しというようなことも一部とりかかっており、今年度はこうしたことをさらに進めていって、より効率的にNHKグループとして業務を行えるようにしていきたいと考えております。その結果として、子会社等のNHK取引についての営業利益は適切に抑制されることになっていくと考えております。もう一つは、子会社のガバナンス、監査体制、内部統制を充実強化するために、経営改革を進めることによって、子会社の純利益を若干押し下げるという影響が出てくると考えております。それに加えて、利益剰余金の件については、今年度、大型配当を実施いたしますが、さらには、今後4K・8Kなどグループ全体の将来に向けた投資を具体的に検討し、子会社の利益の積み重ねを適切にコントロールしていく必要があると考えて、今後も進めてまいりたいと思っています。

 

 

○ その他事項

 (1) 平成27年度国際放送の取り組みについて(資料)

 (浜田委員長)

 平成27年度国際放送局の取り組みについて、荒木理事から報告をお願いいたします。なお、この報告は、今年1月12日開催の第1252回経営委員会で、私から執行部に対し報告を依頼したものであります。
 (荒木理事)
 現3か年経営計画において重点項目の一つとして取り組んでいる国際発信の強化について説明させていただきます。
 経営委員会の「外国人向けテレビ国際放送」の強化に関する諮問委員会からは、国際発信の強化に関するご提言をいただいております。こうしたご意見も参考にさせていただきながら、取り組みを実施しております。
 お手元の資料に沿ってご説明いたします。
 1ページには経営計画の国際発信の強化についての部分を確認として載せてあります。「見たくなる国際放送」を目指して、多岐にわたる充実強化策を実施しています。とりわけこの3か年では、世界の政治・経済の中心で日本と重要な関係にある北米と、地理的・文化的に親和性の高いアジアを重点地域と位置付けまして取り組みを進めています。
 2ページをご覧ください。ニュース・報道番組の充実についてご説明します。
 2015年度は2つの大型番組を新たに立ち上げて、大幅なてこ入れを図りました。ひとつは「NEWSROOM TOKYO」、そして「GLOBAL AGENDA」です。
 まず、「NEWSROOM TOKYO」は、これまでにない45分サイズのニュース番組です。これまで毎正時30分の基幹ニュース番組で時々刻々と変わる最新情報を伝えてきましたが、それを一度せき止めて、日本やアジアでその日に起こった出来事をまとめて伝えています。45分という長さを生かし、ときにはキャスターが自ら現地取材をするなどし、正確できめ細かい情報を伝えています。 
 次に「GLOBAL AGENDA」です。「NHKワールドTV」が初めて挑む大型討論番組です。毎回、日本や地域を取り巻く世界的な課題について、国内外の著名なオピニオン・リーダーを招いて議論し、さまざまな提言をしております。スタート当初は、100分サイズの番組でしたが、「放送時間がやや長い」という視聴者からの意見もありましたため、今はテーマに応じて番組の長さを柔軟に設定しております。
 3ページをご覧ください。今年度、ニュース・報道番組を更に強化しました。
 まず、看板ニュース番組「NEWSLINE」の刷新です。アジアを代表する放送機関としての矜持から、タイトルに「NHK」の名前を冠し、他局と比べて優位性のあるアジアでの取材力を結集して伝えております。アジアのニュースを集中的に伝える新コーナー「Eye on Asia」については、「自国のニュースチャンネルでは得られないものだ」と好評で、日本・アジアの情報発信というコンセプトが評価されているものと考えております。
 4月の熊本地震、そしてオバマ大統領の広島訪問など、大きなニュースが続きましたが特設枠を設けるなどして柔軟にきめ細かく発信いたしました。
 今年度はまた、夜8時からの「NEWSROOM TOKYO」の後の15分間に、インタビュー番組「Direct Talk」を新設しました。日本への期待や日本が果たすべき役割などについて、日本や世界各地で活躍するキーパーソンの「今」のメッセージを発信しております。時事性の高い番組を繋げることで、ニュースから違和感なく1時間続けて見てもらうのが狙いです。ゲストの人選によって、評価が大きく異なる特性がありますが、視聴者からの反響はおおむね好意的です。今後は、人選やテーマ立てなど、いかに視聴者の関心が高い番組を安定的に出していけるかが課題です。
 4ページをご覧ください。編成面でも新たな取り組みを始めました。
 重点地域である北米とアジアの好適時間帯に、それぞれの地域で関心の高い番組を重点的に放送する編成に着手いたしました。
 北米につきましては、ニュースに加え、ドキュメンタリーや最先端の科学技術、産業などのジャンル、日本への観光客が多いアジア向けには、旅、食、トレンドなどのジャンルを強化しました。個々の番組についても、海外の視聴者等からの意見を参考にしながら、必要に応じて随時改善をしています。特に、海外で人気の高い日本のアニメーションについては、毎週火曜日に放送している「imagine−nation」という番組で、日本のアニメ、番組、ゲームなどの最新情報を紹介しております。これは、特にアジア地域で非常に人気があり、最新の、日本ではやりのゲームなどを紹介しています。例えば、ことし1月から3月の調査では、アジアからオンラインの番組サイトへのアクセスが最も高い番組となっており、アジアでのこうした日本のアニメ・漫画などの情報発信のニーズの高さを示しているということです。
 5ページをご覧ください。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを意識し、日本各地の情報を世界に発信することにも積極的に取り組んでおります。
 昨年10月に、日本各地の暮らしや文化、産業などをテーマにNHKの地域放送局が制作した国内放送番組の中から秀作を選んで英語で放送する番組枠、「Hometown Stories」を新たに設けました。地方ならではの話題を掘り起こし、国際放送でダイレクトに伝えています。
 また、ニュースでは、地域放送局からの英語リポートを増強しています。報道局と国際放送局との連携を強化した結果、全国の放送局が地域発の情報をより積極的に国際放送で発信するようになりました。各地の記者やカメラマン、ディレクターなどが地域の話題を自ら伝えることで、番組内容も一層豊かになっています。
 さらに、地域を集中的に紹介する取り組みを強化しています。右の欄をご覧ください。東日本大震災から4年半となる昨年9月を「東北月間」として、仙台放送局と連携しながら、東北関連の番組を60本以上集中編成しました。続いて11月には、本格的な冬の観光シーズンを前に、およそ70の番組を通して北海道をアピールしました。G7伊勢志摩サミットにおきましても、ニュースで多角的に伝えるとともに、伊勢志摩地域を取り上げたさまざまな番組を放送するなどし、積極的に紹介してまいりました。
 下の欄、2016年度には、観光客を意識した初の情報番組「J−Trip Plan」を放送開始しました。東京や京都にとどまらない日本全国の知られざる魅力を、実用的な情報を交えて紹介しています。視聴者からは、「こんな番組が欲しかった」「とても役に立つ」などと好意的な反響をいただいております。海外からの観光客の中にはリピーターも増えていて、ガイドブックに載っていないような、より深い情報に対するニーズが高まっています。そうした情報を取り上げ、地方の魅力を更に発信していきたいと思います。
 6ページをご覧ください。続きまして、海外におけるプロモーションについてご説明いたします。まずはアメリカです。
 昨年5月中旬から7月上旬にかけて、ニューヨークとワシントンDCで、オピニオン・リーダーやビジネス層向けに、大規模な広告プロモーションを展開しました。タイムズ・スクエアの大型モニターでPR動画を上映するとともに、CNNのウェブサイトでも広告を配信し、スマホのダウンロード・ページ等への誘導を図りました。
 また、11月には、アトランタで開催された全米のPBSという公共放送局の編成幹部が集まる会議に参加し、料理番組「Dining with the Chef」の司会者、行正 り香シェフによるトークショーを実施しました。折からの和食ブームもあり、各局の編成担当者からは大変好評で、配信局が増えた結果、全米の80%以上の世帯で、この料理番組が視聴できるまで広がりました。
 東日本大震災から5年を迎えた今年3月には、ニューヨークで最大規模の日本関連イベント「Japan Week」に出展し、3月に開業した北海道新幹線を含め東北・北海道の魅力を伝えました。
 このようなプロモーションを積み重ねながら、アメリカにおける受信環境の整備が着実に進んでいます。右下の地図をご覧ください。今年に入り、赤で記したシアトルとシャーロットで新たに整備され、ようやく全米25の主要都市のうち8都市で24時間放送が実現しました。一部番組の配信と合わせると、視聴可能世帯は1億世帯に迫りつつあります。
 7ページをご覧ください。次に、もう一つの重点地域であるアジアにおける取り組みです。
 アジアでは、日本や日本文化に関するイベントが数多くあります。そのような機会を捉え、海外でも人気のある「どーもくん」をマスコットにして、プロモーションを精力的に実施しております。
 例えば、タイでは、今年1月から2月にかけて、これまでにない規模のキャンペーンを実施しました。旅行博など3つの大型イベントに連続で出展するとともに、期間中、バンコク市内の駅や電車で全面広告を展開し、インターネットを使ったデジタル広告も活用してNHKワールドのホームページへの誘導を積極的に図りました。その結果、タイからのNHKワールドのホームページへの訪問者数が実施中はもちろん、プロモーションが終了した後も増えており、利用者の底上げにつながったものと考えています。
 今後も、こうして得た知見を活かして更に効率的なプロモーションのあり方を研究し、重点地域で継続的に底上げを図っていきたいと考えています。
 8ページをご覧ください。海外での取り組みに加えて、日本国内における直近のさまざまな活動をまとめました。
 ケーブルテレビやIPTVで「NHKワールドTV」を配信している国内の事業者の数は、全国29事業者となりました。ホテルにつきましても、首都圏や関西の大手ホテルを中心に、客室への配信やパンフレットの設置を働きかけています。
 また、放送やイベントを通して国内の視聴者への周知広報に力を入れています。昨年4月には、国内の総合テレビで初めて、「NHKワールドTV」のPR番組の放送を始めました。広報局などNHK内部の各部局との連携も深め、「のど自慢」などさまざまなイベントの場を利用して国際放送を積極的にPRしています。こうした活動を通じ、国内でも「NHKワールドTV」のファンが更に増えることを期待しています。
 次に9ページをご覧ください。ここからは、インターネットに関する取り組みをご紹介します。
 2014年までは、ウェブサイトでのライブストリーミングを中心に、情報性や速報性に注力してサービスの強化を図っていました。しかし、昨今、時間と場所に縛られず、好きな時に好きな場所でメディアを視聴する傾向が世界的に強まっています。2015年6月には、見逃した番組を見たいという海外からの高い要望に応え、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを開始しました。VOD向けに権利処理を終えた番組を、放送後2週間程度、公式サイトから視聴できます。当初、13番組でスタートしましたが、今年4月には27番組と一気に倍増させました。また、VODの拡充と合わせて、17言語全てのウェブサイトで、テキストと音声によるニュース提供を実現しました。
 10ページをご覧ください。NHKワールドでは、テレビ・ラジオの両方で、いつでもどこでも放送を視聴できるよう、携帯端末向けに無料のアプリを提供し、利用促進を図っています。累計ダウンロード数は360万強と着実に増加しています。アプリの機能も改善を図っており、今年度からは、アプリからビデオ・オン・デマンドが見られるようになっています。
 さらに、ネットを使ってメディアを視聴するデバイスは、携帯端末にとどまらず多様化しています。昨年の秋以降、「NHKワールドTV」は、「アップルTV」や「アマゾン・ファイヤーTV」でも視聴できるようになりました。ネット環境が整っていれば、大型のテレビモニターの端子に小さな機器を差し込むだけで簡便に視聴できます。
 また、SNSを活用した情報発信を始めました。フェイスブックの公式ページでニュース企画やおすすめ番組、イベント情報等を発信しています。熊本地震の際も、関連するニュース記事をきめ細かく発信しました。また、この4月からは英語ニュースのツイッター配信も始めました。
 次に11ページをご覧ください。実施体制の強化です。ここでは直近の取り組みについて幾つか事例をご紹介します。
 まず、経験豊富な海外特派員を積極的に配置して制作・取材体制を強化しています。冒頭でも触れた通り、ニュース番組のキャスターにも起用し、世界各地の現場から中継させるなど、本格的な国際ニュースを目指した取り組みを強化しています。また、経験豊かなシニア世代を原稿作成やデスク業務などに当たらせるとともに、欧米のジャーナリストを招いて定期的にトレーニングを施し、英語力のさらなるレベルアップを図っています。
 NHK内の連携強化も進めています。報道局や広報局との連携は先ほどご説明した通りですが、受信環境整備の面では、重点地域であるアメリカで体制を増強するとともに、アジアで専門の代理店と初めて契約するなどし、配信事業者との交渉やプロモーションを更に効率的に推進するために体制を強化しています。
 12ページをご覧ください。こうした現場で取り組む施策を経営視点で評価し、改善に生かしていくため、27年度から、新たに「国際戦略調査」を実施しています。今の3か年経営計画に対する経営委員長見解にある「戦略の構築から放送・サービスに至るまで一貫して評価・管理できる体制」を構築し、達成状況を客観的に把握するため、評価手法の開発に取り組んできました。
 今の経営計画の3か年では、国際発信の強化により、「国際社会の日本への理解を促進」することを目指しています。国際戦略調査では、この目的に沿って、国際放送に接してもらうことで日本についてどの程度理解していただけたか、「日本の理解度」を測定しています。加えて、量的な指標として、「NHKワールドTV」を知っているかどうかを測る「認知率」、3か月に1度以上視聴したかどうかを測る「リーチ率」を設定しています。
 重点地域と位置付けた北米とアジアを中心に、四半期ごとに、各国で一定規模のウェブ調査を実施することで、プロモーションや番組改善の取り組みの手応えを測り、改善策を考える指標として活用しています。
 13ページに、27年度の国際戦略調査の分析結果をまとめました。
 第1四半期と第4四半期を比較しますと、年間を通じて、NHKの国際放送に接していただいている方の「日本の理解度」は、いずれの地域でも高水準で、「認知率」は、ワシントンDC、タイ、インドネシアにおいて増加傾向となりました。
 「認知率」の改善については、先にご紹介しました北米・アジアでの大規模キャンペーンの効果と見ておりまして、引き続き、プロモーション施策の改善につなげていく考えです。
 日本への理解については、ニュース・報道番組の充実、重点地域を意識したさまざまな番組や、現地でご覧になりやすい時間帯に編成するなどの工夫が効果を上げつつあると考えています。今の経営計画における国際放送強化の一定の成果であろうと考えております。
 国際戦略調査は、初めての取り組みです。今後も、戦略から現場の取り組みまでの一貫した方針管理を徹底し、調査の結果を参考に、経験を蓄積し、地域ごとの特性を踏まえて、番組や編成の改善、プロモーションの取り組みを進め、経営計画で目指す「国際社会の日本への理解を促進」につなげていきたいと考えています。

 (室伏委員)

 簡単に幾つか質問させていただきます。国際放送にご努力いただきまして、随分成果が挙がってきたと思います。視聴者の方々の反応がとてもよいというお話でしたが、いろいろな年代・性別、その方の背景によって反応の仕方はかなり違うでしょうか。これが1つ目です。
 もう一つは、先ほど全米で約1億世帯に配信が可能になったとご説明いただきましたが、配信可能な世帯のうちのどのくらいが実際に受信していらっしゃるのかということです。
 最後ですが、シニア世代を原稿制作やデスク業務に配置なさって、実施体制を強化しているというお話でした。シニア世代が十分活躍されるのは非常によいことだと思いますが、それと同時に忘れてはいけないのは、若手の教育・育成であり、世代交代に合わせて、いかにつなげていくかということだと思います。
 その3点について簡単にご説明いただきたいと思います。

 (荒木理事)

 まず、一つ目ですが、先ほど申し上げました国際戦略調査は、それぞれの世代、それからいわば教育の程度、例えばアメリカですとどの政党の支持者といったような、世代の属性別の調査もしております。各国によってさまざまです。例えば、アメリカでは、いわゆる知的には高い水準にある、インテリ層によく見られているなど、いろいろな特性がありますので、そういう特性を見ながら戦略調査の評価を生かして、その地域その地域に合った番組を出していくことを考えております。
 二つ目の、視聴可能となった1億人のうち、どのくらいの方が見ているかについては、これはなかなかつかみにくい部分であり、例えば、インターネットにどのくらいのアクセスをしていただいているか。1週間に30万人ぐらいの人たちがNHKのホームページにアクセスをしてくれます。それから、アプリのダウンロード数が360万で本当に増えているというようなところで測っております。さらに、どのくらいの方が見ているかは、具体的にはわかりませんが、国際戦略調査で、NHKを知っている人、見たことのある人を調べていくことによって、増え方のようなものは基本として集めています。
 3つめのシニア世代の配置の件です。私は、報道局も担当しており、教育の部分については、国際放送局と報道局、それから海外総支局を通じて、さらに人材交流を強化していきたいと考えています。そういう中で、やはり若手が国際ニュースの視野を持っていくことは非常に重要なことですので、若い世代を、組織の垣根を越えて育成するような方針を取っていきたいと思っております。

 (室伏委員)

 ありがとうございました。ますます頑張っていただきたいと思います。

 (井伊委員)

 室伏委員からご指摘のあった若い人向けというところと関連する意見です。報道番組の充実や、さまざまな発信の努力を工夫されていらっしゃると思います。私は、仕事でアジアに行くことが多く、最近もベトナムやミャンマーに行きましたが、とにかく韓国ドラマの影響が強く、人気のある時間帯に始終放映されています。例えば、ベトナムと韓国は歴史的に、政治的にいろいろ難しいことがありましたが、若い人たちの間では韓国が非常に人気があり、旅行先としてだけではなく大学の交流などでも、日本は韓国の大学にかなり遅れをとっているなという印象を受けております。ドラマからの影響が大きいというのをさまざまなところで聞きます。ドラマに関しては、知的財産権などの関係で、法律的に日本で作成したものを海外で放映することは難しいという話をよく伺います。韓国は新たに中国向けなど、その国向けに作成しているようですが、そうではなく日本でつくっているものであれば、それほど費用もかからずに放送できるのではないかと思います。その辺について、具体的に障害になっていること、改良点を試みていることなど説明をお願いします。

 (荒木理事)

 さまざまな番組の権利処理があり、それぞれの権利処理を乗り越えていくことに時間がかかるという部分はあります。それから、NHKの番組をどのように出していくかということについては、やはり関心の高いものを出していくということです。先ほど言いました「imagine−nation」など、日本に興味のある方が特に見てもらえるようなアニメやゲームを紹介する番組といったものをつくっていくということでありますが、なかなかドラマを国際放送で発信していくというところまではいっておりません。できるだけニーズに応えたものを出していくことによって認知度を上げること。さらに、今かなり重点を置いているのは、やはりニュースの発信ということです。アジア地域にアジアのニュース、日本のニュース、それから世界のニュースも含めて発信していくことによって、NHKワールドの認知度と信頼性を高めていきたいと考えております。そういう意味では、NHKの総支局の3分の2がアジアにありますので、アジア地域の情報発信をさらに強化していき、アジアの人たちのニーズに応えていきたいと思っております。

 (井伊委員)

 ニーズに応えること、さらには、ニーズを作り出す工夫が必要だと思います。若い人は、報道番組は関心がないとなかなか見ませんので、どうやって日本に関心を持ってもらうかと考えると、かなりプレゼンスが低いと思います。とても残念に思っています。

 (中島委員)

 国際戦略調査は、客観的に取り組みを強化する点で非常に有効だと思います。調査項目が5項目ありますが、先端技術や、それから先端技術に支えられた産業、あるいは科学技術といった項目も必要なのではないでしょうか。全体的な説明の発信の重点項目にはそういったキーワードが入っていますが、この国際戦略調査の分析結果を見る限りでは足りないような気がします。

 (荒木理事)

 これはインターネットで調査をしておりますので、そうした項目が指標としてつけ加えられないかどうか検討してみたいと思います。確かに、少し質問が漠然としたものでありますので、より先端技術や音楽、アニメなどに絞っても項目が広げられないか考えていきます。

 (美馬委員)

 NHKらしさや、NHKの強みは何であるのかを考えることが必要であると思います。つまり、今回の調査の目的は、日本の理解度を増すためとか、ニーズに応えるように、見たくなる国際放送を目指すということで、そのために英語が上達するようにトレーニングしたり、プロモーションにお金をかけたり、コンサルタントを増やして増強したりというご報告がありました。私は、世界の中でNHKらしいコンテンツや切り口・視点・番組制作手法などを生かしていくことが必要であって、単に、日本の理解を増すためのプロモーション番組を作ることだけがNHKの役割ではないと思います。毎日のニュースを増やすことによって理解度が増すということですが、例えば、NHKの強みである報道番組、ドキュメンタリーなどで、NHKの切り口とか視点のオリジナリティーを出していく必要があると思いますが、そのあたりはどうお考えですか。

 (荒木理事)

 おっしゃるとおりだと思います。例えば、「NHKスペシャル」の中でも、海外ロケに出して、海外の人たちに理解してもらえるようなものについては、その英語版をつくるなどします。今試みているのが、例えば、最初から海外発信を視野に置いて番組をつくっていこう、そういうテーマで番組をつくっていくことを始めております。国内は国内で、海外は海外で番組をつくるのではなく、国内の番組をつくるときに、企画の段階から共同でつくる番組も流せるように検討し、それを最大課題の一つとして取り組んでいきたいと思っております。

 (美馬委員)

 ぜひNHKらしいものをつくっていただくようにお願いします。

 (上田委員)

 国際放送に関しては、総務省からの要請で多言語化という課題があったと思いますが、何か取り組んでいらっしゃいますか。

 (荒木理事)

 例えば、南米においてはスペイン語字幕をつけるということを試験的に始めております。それから、いわゆる映像ではなく、ホームページ、ラジオでは17言語で発信しております。そういう試みをやっており、できるだけ英語だけではないものをつくりたいと思っています。また、使用する人が多い中国語とポルトガル語、スペイン語については、一部英語ニュース等の動画も吹き替えてホームページに掲載するという試みもしております。それから、多言語化については、例えばニュースのように、非常に機微に触れるようなものは、専門性がないと、その言語をなかなか正確に伝えられない、訳せないというところもあります。そういった障害や、やはり人員的・予算的な理由でなかなか難しい面はあります。ただ、全体的な方向性としては、多言語化を目指していくというのはやはり必要なことだと思いますので、努力を続けていきたいと思っております。

 (石原委員)

 4ページの「重点地域の好適時間帯に合わせた番組編成」のところに、北米系とアジア系と分けて重点事案が書いてあります。これは何かのマーケティングに基づいて選んだと思いますが、アジアを意識した重点ジャンルには「旅・食・トレンド」と書いてあります。北米系にとっても、旅はたいへん重要な部分です。北米系の重点ジャンルには入っていませんが、北米の人は、特に歴史・文化が大好きです。北米を意識した番組に「Japan Railway Journal」という鉄道の番組が書いてあります。日本に近いこともあり、アジアの人もすごく鉄道が好きです。しかも、最近特に、鉄道の利用者数が急増しています。アジアについてもう少し放送内容を見直したらどうかと思います。

 (荒木理事)

 これは特徴的なものを上げているので、アメリカでも日本の関心が非常に高く、例えば「J−Trip Plan」のような実用的な旅情報、それから「Journeys in Japan」という外国人のリポーターが日本のいろいろな場所を旅する番組。それから「TOKYO EYE 2020」といったような東京の見どころを示すような番組は確かに結構人気があります。こうした番組を流しており、北米で旅番組が非常に伸びているという認識を私たちは持っていますので、充実させていきたいと思います。おっしゃるとおり、アジアでも鉄道系も、車も人気が高いので引き続き取り組んでいきたいと思います。

 (井伊委員)

 先ほどの続きです。権利のことがいろいろ難しいとのことですが、例えば民放と協力して何かアクションを起こすなどの対応をしていらっしゃるのでしょうか。日本に関心を持てばNHKが得意とする報道番組も見てもらえると思うので、民放と協力をして権利処理などを進めているのかどうか、もしそうでないならば、やはりこれは考えるべきではないかと思います。

 (森永技師長)

 この前まで権利関係の担当でしたのでご説明します。海外に日本の番組を展開する場合、特に欧米では、同時配信と見逃しサービスができないと、なかなか展開は国際放送といえども難しいところがあります。アジアでもデジタル化が進んでいくと、今後はそれが条件になるとみられます。政府の知財戦略本部とか文科省の著作権のところで議論をしまして、民放とも足並みをかなりそろえることができて、同時配信とか見逃しサービスの知財処理が、前向きになってきましたので、それほど時間がかからないうちに、その処理が前向きに進むのではないかと期待しているところです。それから、個別の番組著作権については、それぞれの制作部局で国際放送にするような番組は前もって著作権を取るなど、いろいろ努力を重ねているところです。

 (石原委員)

 今年度中ぐらいにできるようになりますか。

 (森永技師長)

 2016年の政府の知的財産推進計画の内容には、一部ですが主張が盛り込まれました。それから、議事録にはNHKの主張としてほぼ全文が載っていますし、民放の代表の方の、それを支持していただく発言も議事録には載っております。ただ、法制化をするには、早くてもやはり1年余りの時間がかかると思います。

 (森下委員)

 5ページに「地域発の情報を世界発信」とあります。今、九州地域は地震の風評被害で観光客がなかなかいらっしゃらずに苦労されています。ぜひ、北海道特集のように、九州地域のすばらしさをNHKで流していただくと、海外諸国に向けて九州に行こうということになると思います。ぜひ、取り組んでいただきたいと思います。

 (荒木理事)

 今年度は九州特集を計画中です。九州の見どころを紹介するような特集を去年の北海道と同じようにやってみたいと思っております。

 (浜田委員長)
 かなり活発な議論ができました。国際放送への取り組みについては、これまで経営委員会として諮問委員会を立ち上げ、その答申を受けて執行部に対し充実強化に向けた意見表明を行うとともに、現経営計画議決の際に提示した経営委員長見解の中でも積極的な取り組みを求めてまいりました。本日、平成27年度の報告をいただきましたが、NHKの取り組みも番組内容も様変わりしてきたという実感を持ちました。特に実施体制の強化や精緻な調査・分析が実施されていると感じました。また、日本各地の魅力を世界に発信する取り組みも着実に進められており、地方創生の観点からも大いに評価すべきであると思います。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、取り組みをさらに推進されることを期待しております。

 

 

 以上で付議事項を終了した。

 

 

 (浜田委員長)
 それでは、本日の経営委員会が最後の出席となります、美馬委員、室伏委員、そして私から、経営委員退任のごあいさつをさせていただきたいと思います。

 (美馬委員)

 退任に当たって、経験と任命理由について。
 経営委員になる20年ほど前よりNHKでは学校放送の番組・教材制作、「サイエンスZERO」のコメンテーター、日本賞の審査員、アーカイブスの学術利用の仕組みの構築にかかわってきました。
 2013年6月の国会同意人事での任命理由は3点です。第1に情報通信技術、メディアの学術利用についての見識と経験。第2に公立はこだて未来大学および日本科学未来館の設立計画策定、副館長としての組織マネジメントの経験。第3に北海道に居住していることです。この任命理由を意識し、委員として務めてきました。
 課題の理解について。
 委員就任に当たり、NHKの課題を理解することから始めました。特に経営委員会の役割、放送と通信の融合、受信料制度について資料を収集し、海外の事例などと比較しながら考えや質問事項をまとめていきました。担当部局にはレクチャーや議論の場を設けていただきました。これまで公共性の高い組織の運営に携わり、事業評価、人事評価制度などをつくってきたこと、また情報技術、メディアと人間の思考過程の研究はNHKの経営だけでなく、技術や社会・文化的側面にも関係していました。
 委員会外の活動について。
 就任半年後の2014年になってからは、NHKに関する話題がメディアや国会で大きく取り上げられるようになりました。関係する記事や国会でのやりとりは、全て見るようにしました。また、そこで起こってきた問題について公共性の意味、ジャーナリズム、組織のガバナンス、また技術動向や放送制度などについて、国内外の情報を収集し、考えをまとめていきました。
 放送法の制定について。
 放送法の制定に携わった荘 宏が1963年、「放送制度論のために」を出版しました。放送に国家権力が関与することについて、放送における表現の自由と公共の福祉、公共放送とした理由、受信料制度についても書かれており、そのために放送法の各条項があることがわかります。戦後、民主主義のあり方に放送が大きく影響するからこそ政治的公平、報道の真実、多角的な論点の解明として、国民に対して積極的に情報提供していく必要があるとしています。多様な意見があることを知り、自分たちで判断し、参加していくことが民主主義国家をつくっていくことにつながるという熱い思いがあらわれています。
 NHKへの提案について。
 経営委員の3年間の任期を終えるに当たり、2点提案したいと思います。
 第1に研究所の役割です。NHKには放送文化研究所と放送技術研究所があります。このような研究所を有している放送機関は世界に類を見ません。先端の研究を行っているだけでなく、世界の動向調査も行っています。これらの成果を定期的に政策提言としてまとめ、経営に積極的に生かしていくことができると考えます。また、番組制作などの事業評価を独立機関として行うこともできます。
 第2に、全国に存在する地域局の機能強化と全国を見渡す本部部局の必要性です。公共放送であるNHKは地域のことを地域に、全国や世界のことを地域に、地域のことを全国や世界に知らせることが可能です。沖縄や北海道など、地域で起こっている課題を見つけ、日本の問題として考える機会を提供する。現在、地域局の番組はその地域でしか見られませんが、全国の地域番組を見渡し、もっと多くの番組を全国で、そして世界で見られるようにしていくことです。
 公共メディアの役割について。
 最後にエピソードを紹介して終わりたいと思います。創設50年を迎えた2015年、日本賞でNHK会長賞を受賞したミルトン・チェン氏との話です。彼は私のハーバード時代のアドバイザーです。30年前、彼の授業の課題でステレオタイプについてテレビ番組の分析を行いました。ドラマやコマーシャルで男女や人種が特定の型で描かれていないか、というものでした。昨年来日した際彼に、「あなたの授業のおかげで日本に帰国してからテレビの見方が変わり、いろいろなことに気づくようになりました」と感謝の気持ちを伝えたところ、"Noyuri, that is education."、「のゆり、それが教育なんだ」という言葉が笑顔とともに返ってきました。
 NHKの主たる使命に報道と教育があります。いずれも放送を通して多様な見方を提供することで、私たち一人一人が考え、判断し、行動できるようにすることです。NHKはよりよい社会をつくっていく構成員を育てることに大きな影響を与えるメディアです。今後も公共メディアとしての役割を果たしていかれることを願っています。

 (室伏委員)

 私は、3年4か月、経営委員を務めさせていただきました。なぜ、「4か月」余分なのかといいますと、途中でお辞めになった方の残任期間ということで選出され、それから2期目の3年間、合計3年4か月務めさせていただきました。
 NHKという組織に入ってみまして、ほかの組織とかなり違うということを感じました。10年ほど前までは、私はほとんどアカデミアの世界に浸り切っておりましたので、外の世界といっても省庁の審議会ですとか、学会や学術会議のような学者ばかりの組織でしか活動してきませんでしたので、経営というものがよくわからなかったということがあります。それが6年前、ブリヂストンという会社の社外取締役に就任しまして、そこで組織を経営していくということがどういうことかということを大分勉強させていただきました。その後、NHKの経営委員会に参画させていただいて、全く違ったタイプの組織の中で、経営というものはどういうものなのかということを学ばせていただいた次第です。
 経営委員会はこの3年4か月、結構大変でした。いろいろ課題がありましたね。一時は毎日のように新聞で取り上げられていましたし、監査委員を務めさせていただいていたときには、浜田委員長や監査委員の上田さんが始終国会に呼ばれましたので、答弁内容を吟味をするなどで、かなり大変な思いもいたしました。今、思い起こしてみますと、こういうことも人生の中で貴重な経験なのかなと思ったりしております。ですから、ちょっとやそっとのことがあってもびっくりしなくなりました。そんな意味でも、私にとってよい経験だったというふうに思っています。
 NHKの皆さんはとても誠実にいろいろなことに向かい合ってくださっていますし、公共放送とは何かということをそれぞれの方々がそれぞれの立場から考えてくださっていると思います。
 私は、やはりNHKは世界に冠たる放送局だと思います。先ほど美馬委員がおっしゃったように、すばらしい研究所も持っていらっしゃいますし、それから放送番組の内容の程度が非常にレベルの高いものと思っていますので、ぜひこれからも公共放送として、高いレベルの番組を、特にこれからの世代の人たちの幸せにつながるような、そういうものをつくっていっていただきたいなと心から思っています。私もいろいろと勉強させていただいたので、それらのことを大学の経営に生かして、小さな大学が潰れてしまわないように頑張ろうと思っております。これからもいろいろな面で皆さまからお助けいただくことも出てくると思いますし、もしかすると、私に何かお手伝いできることがあるかもしれませんので、今後ともよろしくお願いいたします。3年4か月、本当にありがとうございました。

 (浜田委員長)

 私はこの6年間、経営委員として職務に当たってまいりました。平成24年9月からは経営委員長として、委員間のコミュニケーションを大切にしながら国際放送の充実強化や放送と通信の融合等さまざまな課題に向き合ってまいりました。
 しかしながら、この3年間、予算について国会で全会一致の承認をいただけなかったことは、やはり残念なことであると思っています。
 NHKの各現場はよい放送を行うため、日々一生懸命取り組んでいらっしゃいます。質の高い放送が実現できているのは、現場のご尽力のたまものであると認識をしております。一方で、その現場を支えるべき執行部、経営委員会は放送法において求められる公共放送としての使命を確実に遂行し、国民・視聴者の負託に応えられる経営が実践できているのかどうか、謙虚に自問自答する必要があると思っています。
 放送をめぐる環境は大きく変化しており、従来の考え方を踏襲するだけでは世界の潮流から取り残されてしまいます。本質的な議論から目をそむけることなく、放送業界のさらなる発展に向けてNHKの役職員の方々は矜持を持って指導的な役割を発揮されることを強く願いまして、私の退任のご挨拶とさせていただきます。

ありがとうございました。

 

 

 上記のとおり確認する。

 

 平成28年6月28日    

石 原  進

 

上 田 良 一