過去の議事録(過去の議事録を閲覧できます)
第1146回
一覧へ
平成23年7月15日(金)公表

日本放送協会第1146回経営委員会議事録
(平成23年6月28日開催分)

第1146回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1146回経営委員会

 

<会 議 日 時>

平成23年6月28日(火)午後1時35分から午後4時40分まで

 

<出 席 者>

〔委  員〕

  數 土 文 夫 安 田 喜 憲 石 島 辰太郎
    石 原   進   井 原 理 代 大 滝 精 一
    北 原 健 児   倉 田 真由美 幸 田 真 音
    竹 中 ナ ミ   浜 田 健一郎
  ◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔役  員〕

  松 本 会 長 小 野 副会長 永 井 技師長
  金 田 専務理事 大 西 理 事 今 井 理 事
  塚 田 理 事 吉 国 理 事 冷 水 理 事
  新 山 理 事 石 田 理 事 木 田 理 事

 

 

<場   所>
放送センター  22階経営委員会室、21階役員会議室

 

<議   事>

 議事に先立ち、経営委員による経営委員会を実施。その後、數土委員長が開会を宣言し、本日の付議事項および日程について説明。第1145回経営委員会(平成23年6月14日開催)の議事録を承認し、所要の手続きを経て、平成23年7月1日に公表することを決定した。

 

 

付議事項

1 会長報告(資料)

 

2 日本放送協会平成22年度業務に関する監査委員会の活動結果報告(資料)

 

3 議決事項

 (1) 日本放送協会平成22年度業務報告書について
(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)

 

4 その他

 (1) 日本放送協会平成22年度業務報告書に添える監査委員会の意見について(資料)

 

5 議決事項

 (2) 日本放送協会平成22年度財務諸表について
(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)(資料5)(資料6)

 

6 その他

 (2) 日本放送協会平成22年度財務諸表に添える監査委員会の意見について(資料)

 

7 議決事項

 (3) 土地・建物の売却について(資料)

 (4) 例規の改正について(資料1)(資料2)

 (5) 内部統制関係議決等について(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)

 (6) 中央放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について(資料)

 (7) 国際放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 

8 報告事項

 (1) 「視聴者視点によるNHK評価委員会」の平成22年度評価報告書を受けて(資料)

 (2) 平成22年度NHK連結決算について(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)(資料5)

 (3) 契約・収納活動の状況(平成23年5月末)(資料)

 (4) 予算の執行状況(平成23年5月末)(資料)

 (5) 平成22年度年金基金の状況

 (6) 視聴者対応報告(平成23年4・5月)について(資料)

 (7) 地方放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 

 

議事経過

 

<経営委員による経営委員会>

 

1 経営委員会規程等の変更について

 平成22年11月に成立した放送法の改正に伴い、経営委員会規程における法律条文番号を変更し、23年6月30日から施行することを決定した。また、前回の経営委員会における会長選任の手順についての議論を踏まえ、以下の3点を柱とする内規を確定した。
 (1) 会長任期切れの6か月前に指名委員会を立ち上げ、時間をかけて候補者を議論する。
 (2) 放送法で定められた、選任に必要な経営委員9人以上の同意を確保したうえで、委員長が就任の要請をする。
 (3) 経営委員の情報管理は、議事録公表以前は、委員長の責任において一元的に対応する。また、監査委員会で実施している経営委員に対する「経営委員会委員の服務に関する準則」の順守の確認を行う。

 

 

2 「視聴者視点によるNHK評価 平成22年度報告書」概要説明(資料)

 

<視聴者視点によるNHK評価委員会委員入室>

 

 (數土委員長)

 「視聴者視点によるNHK評価 平成22年度報告書」につきまして、同評価委員会の谷藤悦史委員長、江上節子委員、山内弘驤マ員からご報告をお願いします。
 (谷藤評価委員会委員長)
 平成22年度の「視聴者視点によるNHK評価」がまとまりましたので、ご報告いたします。資料の「視聴者視点によるNHK評価 平成22年度報告書−概要版−」に基づきご説明いたします。「視聴者視点によるNHK評価」は、前身の「NHK“約束”評価委員会」を引き継ぎ、NHKの放送をはじめとする事業活動をずっと評価してきました。評価の基本的なしくみは、前回から続いており、大きく変わっていません。
 まず、報告書の6〜7ページをご覧ください。私どもは、評価指標として「2つの信頼・8つの指標」と表現しています。2つの信頼とは、「放送の信頼性」「経営の信頼性」に分けて評価の柱としています。「放送の信頼性」については5つの指標、「独立性・公正さ」「質の高さ」「役に立つ」「親しまれる」「社会への貢献」という5つの指標。「経営の信頼性」については、「誠実さ・透明性」「経済性・効率性・効果性」「変化への対応力・柔軟性」という3つの指標で、これらを合わせて8つの指標としています。これらの指標をさらに項目で分け、合計36項目で評価をしています。評価の方法としては、基本的には全国を対象とした視聴者調査を前提に、そのほかにさまざまな調査として、ウェブ調査やグループインタビューなどを加え、評価を実施しています。そのほかに、NHKのさまざまな資料などを評価委員会で検証し、評点を加減しています。
 このような形で評価を行っていますが、昨年と大きく異なるところがあります。今年度は東日本大震災の影響があり、評価の状況が大きく異なりました。全国調査を行うのにおおよそ3週間程度要しますが、調査を開始した1週間後に東日本大震災に直面しました。私どもは、そこで、調査を継続するかどうかということの判断を迫られましたが、むしろ調査を止めるということが大変難しい状況でしたので、一気に調査を実施しました。ある意味では、震災前と震災後の評価という、2つの状況を勘案できるというメリットもあったわけです。私どもは、震災によって、どのようにNHKの評価が変わったかということを詳細に検証しました。しかし、震災の前と後では、大きく評価の内容に変わりはありませんでした。したがって、ここで報告する評価は、震災後の評価、あるいは震災に対するNHKの評価ではなく、1年間のNHKの活動に対する評価だとお受け止めてください。
 12ページをご覧ください。評価結果の総括です。「放送の信頼性」は3.8点、「経営の信頼性」は2.7点、昨年より、放送の信頼性は0.2ポイント、経営の信頼性は同様に0.2ポイント上昇しました。私どもは、3点をNHKが達成すべき水準と考えており、4点を十分水準という形で評価しています。したがって、「放送の信頼性」はこの水準に到達し、十分水準に近いところまで評価が高まっています。一方、残念ながら、「経営の信頼性」はこの水準には到達することができませんでした。一層の経営努力をしてもらいたいということを、評価委員会からのメッセージとして13ページに提起しています。
 25ページをご覧ください。評点の一覧を示しています。「放送の信頼性」は、5つの指標に分解して評価しています。この中で「質の高さ」「役に立つ」「社会への貢献」という指標は、4.0点という十分水準に到達しています。また、「独立性・公正さ」「役に立つ」「親しまれる」あるいは「社会への貢献」という指標は昨年より大きく伸び、0.3ポイントの上昇となっています。生活・情報系番組などを通じて、かなり「役に立つ」の評価が上昇したと私どもは判断しています。若年層に対する番組での新しい感動の提供や話題性の提供、あるいは大型番組、連続ドラマといった番組や、ドキュメンタリー等は、視聴者からの高い評価を受けているという結果になっています。評価項目にあるように、「感動の提供」で0.3ポイント、「話題性の提供」では0.5ポイントも上昇しています。従来、非常に評価が低かった「娯楽性の提供」についても、3.1点から0.2ポイント上昇するという結果になっています。従来、NHKは地域社会にさまざまな貢献といわれることを実施してきました。あるいは「放送局のちから」といわれる取り組みを展開していましたが、残念ながら、地域から高い評価を得る結果にはなっていませんでした。それが前回までの状況です。それが今回は、3.7点から4.0点へ上昇しています。ここでは、例えば地域の話題や課題を取り上げるといったことについて、高い評価を得ています。同時に、地域の問題を全国あるいは世界に発信するということについても高い評価が得られています。このようなところが大きく評価されたと考えています。
 次に「経営の信頼性」です。評点は2.7ポイントという評価結果になっています。残念ながら、「誠実さ・透明性」だけが昨年よりも評価結果が低下しました。これについては、さまざまな原因が考えられると思いますが、この点を少し詳細に説明したいと思います。「誠実さ・透明性」を分解すると、「説明責任」が2.5ポイントと、昨年と同様の結果になっていますが、「視聴者意向の反映のしくみ」や「コンプライアンスの徹底」は下がっています。経営上の重要な事項に対する説明責任ということについては、視聴者調査の結果によると、「この1年間、NHKの経営や組織に関する情報を見聞きしましたか」という質問については、おおよそ40%の人が経営等の情報を見聞きしているということになっています。しかし、このように総体的に高い関心があるにもかかわらず、視聴者調査で「この1年間、NHKに対するあなたの印象に影響を与えた事柄は何ですか」と尋ねたところ、悪い影響を与えた事柄として、NHKの会長人事を挙げた人が大変多くいました。「会長選については、選考の基準や経過が明確でなく、透明性に欠ける」という意見です。会長人事における経営委員会の対応が視聴者からの評価に悪い影響を与えた可能性があるために、0.1点減点いたしました。経営の透明性に対する視聴者からの評価ですが、「経営についての情報を積極的に公開し、視聴者に適切に説明している」ということに対する視聴者の期待の充足率は47%にとどまりました。なるべく情報を公開してもらいたいという期待度は62%あるのですが、残念ながら、それを実現していると考えている人は30%程度にとどまったということです。そういう点を勘案し、0.1点の減点としています。この内容については、やや懸念する状況があります。例えば、「国民のための公共放送だからみんなでその経費を負担する必要がある」という意見が61.6%で、最近やや微減の傾向にあります。それからもう1点、「受信料を支払わないことで、NHKに反省を促したいと思う」という考えの人は一貫して、ここ数年減っていました。しかし、前回から今回にかけて、残念ながら26.4%から28.4%へ上昇しました。さまざまな不祥事などが影響したのではないかと考えています。「経済性・効率性・効果性」については、私たちはVFM(Value for Money:コストに見合う評価)という指標で、NHKにどのぐらいのお金を払う価値があるかということを調査しています。その結果は、前回の1.71が1.73と上昇しています。CVM(Contingent Valuation Method:仮想市場価値法)という手法を用いて調査しましたが、現在の受信料よりも高く支払ってもいいという結果になっています。こういうことから、「経済性・効率性・効果性」は相対的に高い評価となりました。最後の「変化への対応力・柔軟性」ですが、東日本大震災に対するNHKの対応は大変大きな評価を受けています。これらのことから、2.3点が2.6点に上昇した結果になっています。
 総体的に、経営の信頼性、放送の信頼性も高まっているわけですが、NHKが目標としている経営2目標のうちの1つはなぜ到達されないのかということがあります。これだけ信頼性が高まっているにもかかわらず、NHKは、経営目標としている接触者率が、残念ながら目標に達成しておりません。これについて、いったいどういう理由なのかということを、私ども委員会で考察しました。その結果を26ページ以降に示しています。NHKの放送については確かに高い満足を得ており、高い信頼も得ています。しかし、このような状況を継続的に維持したとしても、接触者率をこれ以上高めることはできるのだろうかということを私どもは考えました。その理由の1つとして、私どもは、放送・通信融合時代のNHKの役割というものを新しく考えていく必要があるのではないかと考えました。各世代において、放送ばかりでなく、いわゆるメディアの利用が多元化しています。その視点で、「NHKがこういうサービスをしたら、あなたはどのように利用しますか」という利用意向の調査結果を28ページに示しています。「放送の信頼性」の各指標・項目に対応した放送・通信融合領域のサービスです。例えば「緊急災害時に携帯電話へNHKの情報が届けられるサービス」については、7割近い人が利用したいという意向を示しています。あるいは「放送だけでは伝えられない豊富な国内外の社会情報を見ることができるサービス」も、5割を超える人が利用意向を持っているわけです。恐らく、NHKが放送以外の通信融合といわれる領域にサービスを拡張したなら、リーチあるいは放送に対する評価は、さらに拡大するのではないかと考えます。放送のデジタル化がまもなく完了します。それに伴い、新しい放送と通信が融合したサービスの開発にも、ぜひ目を向けていただきたいということが私どものメッセージです。そうすると、新たな接触者率の上昇にもつながるのではないかと考えています。東日本大震災と公共放送という考察を31ページに示しています。東日本大震災の発生後、どのようにメディアの利用が変わったのかということです。ここでは、NHKに対する信頼は極めて高いということが明らかになりました。放送で得られた信頼を新しいサービス開発の信頼にもつなげてもらいたい。あるいはまた、ラジオ、中でもNHKラジオの利用度や信頼度は非常に高かったということも明らかになっています。その意味でも、メディア利用の多元化ということを積極的に図ってもらいたい。とりわけNHKがこれまで築いてきた信頼は、多メディア利用を進展させるために非常に重要な、コアとなるものであると、私どもは考えている次第です。36ページをご覧ください。20〜40代と公共放送について考察しています。20代はNHKのメディアに対する接触が低い世代、30、40代は、NHKやNHKの放送に対する評価が大変厳しい世代です。この点を取り出して私どもは調査しました。その結果として、37ページをご覧ください。公共放送としてのNHKの役割は、全年代が大切だと考えています。最も重要なNHKの役割は何かということについては、「安全・安心に関わる情報提供である」という認識が全年代で共通していました。とりわけ、「あなたにとって、あるいは社会にとってNHKは大切ですか」という質問に対し、NHKは「社会にとっても自分にとっても大切ではない」という人はわずか5%ぐらいしかいません。「自分にとって大切ではないけれども社会にとっては大切だ」、あるいは「自分にとっても社会にとっても大切だ」と考える人は90%以上に及んでいます。NHKの社会的意義、公共放送としての意義といわれるものは、広く共通の認識になっていると思います。同時に、若い世代が「自分にとって大切」と感じる役割について特に注目していく必要がある、ということも記しています。20〜40代は、利用しやすいメディアで情報や番組を見られることが自分にとって大切と感じています。つまり、テレビばかりではなくパソコンなど、利用しやすいメディアで情報や番組を視聴できることが大切であると、私どもは認識しています。したがって、将来的には、NHKのサービスを考えるうえで、テレビやパソコンという、利用しやすいメディアの積極的な利用を図るべきだと思います。
 以上が全体的な内容です。どうもありがとうございました。

 (數土委員長)

 この報告につきましては、経営委員会全体として、このあと、委員の皆さまからの報告をベースにして、あらためて執行部の総括と併せて伺い、それに対してわれわれもディスカッションを十分に行いたいと思います。本当にいい報告をいただきました。参考にしていきたいと思っています。

 (大滝委員)

 貴重なご報告をありがとうございました。21ページに、「視聴者意向の反映のしくみ」というところで、ここにもコールセンターの体制の強化や、ふれあいミーティングをかなり多く実施しているという形で、NHKとしてはかなり、視聴者の皆さんと接点をたくさん作って、いろいろなことを引き出そうという努力をしていると思います。それにもかかわらず、このように、なかなかそれが意図どおり達成できていないということの背景や理由は、どのようにお考えになられているか、お聞きしたいと思います。

 (谷藤委員長)

 この「誠実さ・透明性」について、どう評価するかということですけれども、私どもも大変議論しました。例えばコンプライアンスをきちんとしていく体制は、NHKは十分できています。それがなかなか視聴者のところには受け入れられないという問題。経営についても、例えばトータル管理というシステムを導入し始めているということについても、私どもは高く評価しています。しかし、それがなかなか実質的な評価につながらないということです。その理由は、1つは、視聴者は、ある見える部分で判断しているということがあります。例えば不祥事などは非常に目につくわけで、そういったところを判断の材料にするということがあり、例えばこういうコンプライアンスの取り組みを行っていることを示したとしても、なかなかそれが評価につながらないというギャップがあるかと思います。ですから、経営評価については、すべて視聴者の判断にゆだねるということはしなくて、体制はきちんと整えているということについては、私どもとしてはきちんと評価をしています。

 (江上評価委員会委員)

 

 今の説明に少し補足いたします。視聴者意向の反映のしくみに関して、私はいろいろな民間企業のコールセンターも調べてきています。NHKは格段に卓越したしくみを持っていると思います。年間約450万件を超える、いろいろな要望や問い合わせが来ていますけれども、視聴者からの要望は多様です。例えば自分の好きなタレントを出してほしい、再放送してほしいというようなたくさんの要望があるわけです。自分の個別の要望が反映されるとグッドという評価をするわけです。しかし、視聴者の意向というのは、あまねく一から百まであります。それらの全部に応えるということはできないということが1つです。それから、この調査に答えていただいている方は、イメージ・心象で答えていますから、何らかの体験をした人は正確に答えられるかもしれないですが、接触したことがない人は、そういったしくみがあるということすら知らないのだと思います。そういう意味では、このコールセンターなどのしくみについて、広報を強化していくということは必要かと思います。
 それから、説明責任やコンプライアンスについては、この何年もの間、教育や制度の面で強化してきました。22年度に起きたものは、個人に起因する不祥事が多かったと思います。しかし、そうした不祥事でも、その伝播力は非常に大きいということです。NHKの不祥事については、マスコミが競って取り上げるという特徴があるかと思います。

 (安田代行)

 22ページに、NHKの会長人事について、意思決定の手続に不備があったため混乱が生じたことが、「経済性・効率性・効果性」というものに影響を与えたということなのですが、31ページには、今回の東日本大震災で、NHKのテレビに対しては、普段と比べて信頼度が著しく上がっていることが分かります。会長選の混乱は震災の前のことで、それで低下しているのではなく、民放は低下していてもNHKのほうは上昇しているわけですよね。ですから、会長選の混乱がNHKの信頼性に影響を与えたとは思えないと思うのですがいかがでしょうか。今回の混乱は混乱だけれども、その結果、すばらしい会長を選んだことについては、評価されているということではないでしょうか。

 (谷藤委員長)

 その部分は、私どもは視聴者の声をかなり慎重に検討いたしました。NHKの経営に関する意見の中で、非常に多かったのが、この会長人事に関するものでした。会長はすばらしい人物であるということは私どもも評価していますが、会長の選考に至る過程が不透明であったという意見が非常に多かったわけです。

 (安田代行)

 それがNHKの経営の信頼性を揺るがしたということに対する数字は、どこにあるのですか。

 (江上委員)

 視聴者調査で、今回、NHKの経営に関してどういう情報に触れたかという質問をしたところ、この件をあげた視聴者が多く、この一件が報道でかなり視聴者に浸透していることが伺えました。

 (安田代行)

 それだけのことであって、それがNHKの経営の信頼性の根幹を揺るがしたということではないと思います。

 (數土委員長)

 2点質問したいと思います。この調査は、「放送の信頼性」と「経営の信頼性」で、5つと3つの指標に二分化している。これは非常にすばらしい手法だと思います。この「経営の信頼性」の3つの評価の中で、非常に重要な、今のNHKにとって喫緊の問題は、総務大臣からも提示されているのですが、営業経費が莫大な金額になっているという話と、10%の還元を行うということを、3か年の中で検討する形で進めているにもかかわらず、10%還元の原資の確保と創出という点は非常に淡泊というか、ほとんど考えられていない。この報告にも全く触れられてないと思います。経営の根幹にタッチしていないところがあるのではないかという意見に対しては、いかがお考えでしょうか。

 (山内評価委員会委員)

 

 管理会計の手法を導入して、番組のトータルコスト管理ということを進めていると聞いています。

 (數土委員長)

 トータルコスト管理とはどのようなものですか。会計法でそういう言葉はあるのでしょうか。

 (山内委員)

 法律の用語ではありません。財務をもとにした経営の管理を、通常、管理会計といっていますが、その管理会計の手法を導入しようとしていると聞いています。この件については今回の報告でも触れており、幾つかの段階を経ていく中で、今、最初のステップについていると聞いています。そのことについてわれわれも評価し、それを進めていっていただきたいということを申し上げています。

 (數土委員長)

 繰り返しますと、目下の足元であるここ2、3年のところで、NHKの問題で一番大きなことだと思うのですが、6,600億円ぐらいしか収入がないところで700~800億円という営業経費を使っています。これをもう少し安くできないものかということです。これは総務大臣からも意見がありました。それから、10%還元については「行います」と言っていて、評価委員の皆さまから見て、その原資の確保、あるいは新しい原資の創出について、何も努力していないのではないかと、そう思われなかったでしょうか。この「経営の信頼性」について非常に重要なのは、この2つだろうと思います。それに対して言及されてないように見えますけども、これはいかがなものかという質問であります。

 (山内委員)

 おっしゃる意味では、これは視聴者の視点ですので、そこまで視聴者の方が理解されているかどうかという問題があって、われわれがそこを補完しなければいけない立場だと思います。われわれもコストの管理などで、ご指摘のような営業経費の問題は見ていないわけではありませんので、その点について表現が足りなかったのかもしれません。

 (數土委員長)

 ですから、視聴者の視点で、そういうものが知りたいというところにまで配慮いただければありがたいと思います。

 (山内委員)

 その点については、情報の公開をすべきであるという議論もしています。

 (數土委員長)

 分かりました。

 (谷藤委員長)

 それから、報告書本編の128ページでは、先ほど述べた管理会計の整備、運用状況について、費用対効果の管理の視点での取り組みや課題について述べています。経営委員長の意図にどの程度応えているかは分かりませんが、管理会計の運用定着や、効率的・効果的な業務運営に関連する目標達成状況などが、どうあるべきかということも少し述べています。

 (江上委員)

 営業経費の問題については、私は、前の“約束”評価委員会も含めて過去6年間現場を回ってきました。この間、経費削減の業務のしくみはかなり進みました。ところが、各地域に行きますと、何でも民間に業務委託すればできるのではないかというと、民間は採算に合わないので業務委託を受けてくれないという実態もありました。これは「あまねく」という公共性の持つ宿命との戦いで、計画が滞っている部分もあろうかと思います。それは今後の新しい創意工夫で努力すべきところだと思います。

 (數土委員長)

 どうも本当に誠実なお答えをありがとうございました。参考にさせていただきます。

 

<会長、副会長、技師長、専務理事、理事入室>

 

1 会長報告(資料)

 (松本会長)
 2点ご報告します。1点目は、23年度管理職異動についてです。今回の管理職異動の柱は、東日本大震災の対応ということで、現地の取材・制作体制を強化したことです。経験豊富な能力の高い人材を重点的に配置したり、その他の事についても強化しています。同時に、放送センターに東日本大震災プロジェクト事務局を設置いたしました。これで検証、あるいは将来への指針というものがこの中で蓄積できればと思っています。また、接触者率の向上という観点で、編成戦略会議やコンテンツ委員会も立ち上げています。デジタルサービスを担当する主幹も配置しています。それから、NHKの組織は縦割りがかなり強いものですから、人事異動でも部門や慣習にとらわれない部局長人事を行っています。また、地域放送局の営業部長に多くの若手を配置しました。それから、全国4局のアナウンス副部長に女性を起用したこともポイントです。こういうことで、当面のデジタル化、それから経営計画の策定、災害対策としての放送機能の維持等に取り組んでいきたいと思います。
 2点目は、職員の懲戒処分についてです。厳しい対処をするということで懲戒免職とした案件です。内容は吉国理事と今井理事から説明します。
 (吉国理事)
 昨年7月に大阪放送局企画総務部から技術局総務部に異動した41歳の一般職員が、異動にあたり大阪放送局の備品の災害用携帯電話2台と通信専用端末1台を持ち出し、その後も私的に使用していたほか、ノートパソコン、デジタルカメラ、ハードディスク各1台も無断で持ち出していたという案件です。この職員は、大阪放送局で備品の購入と管理を担当していましたが、その立場を悪用して持ち出したもので、電話代金を少しでも節約したかったなどと言っているそうです。この職員は、さらに横浜放送局に以前勤務していた平成18年に、健康保険組合が法人契約をしているスポーツ施設に、被扶養者でない親族を入会させようと健康保険証を改ざんして、その際に停職4か月の懲戒処分を受けています。こうしたことから今月15日に責任審査委員会を開き、懲戒免職処分とすることを決定し、23日に発令しました。持ち出した6台はいずれも返却され、携帯電話などの使用料16万円余りは弁済されています。こういった物品管理の問題につきましては、名古屋放送局職員による窃盗事件も発覚したばかりですが、この事案と同様、今回も大阪放送局の物品管理体制に甘さがあったことは否定できません。このため当時の大阪放送局の上司2人を譴責の処分に、また前任の上司2人を厳重注意とし、管理監督体制の改善強化を行うこととしました。
 (今井理事)
 物品紛失の再発防止策としては、今年2月に発覚しました名古屋放送局の技術部職員の機材窃盗事件を受けて、今月の9日に、今回報告した案件での教訓も盛り込んだうえで、総合リスク管理室と経理局を通じて固定資産・物品の管理の徹底について全国的に指示をしました。まず、これまで物品の管理というのは管理主任が1人で対応していましたが、今後は管理主任の下に管理担当者を1名以上指名して、複数体制で管理にあたります。今回の案件は、管理を担当する管理主任みずからが引き起こした事案であり、みずからが無断持ち出しをしていたことや、備品登録をしていなかったこと、また保管場所を本人のみが把握しているという事実が明らかになりました。このため、複数で物品管理にあたるよう体制を見直すとともに、物品確認の際もダブルチェックを徹底することとしました。また、固定資産と同様、備品の台帳にも製造番号、シリアル番号を記入することとしました。このような形で管理を徹底していきたいと考えています。

 (數土委員長)

 管理職の異動についての趣旨はよく理解できました。2点目の職員の懲戒処分について、経営委員からご意見はございませんか。

 (井原委員)

 今回の事案は極めて残念だと思っています。もちろん本人の行状に起因するところは大きいのでしょうが、組織の人と物の両方の管理があまりにも不備だと思います。昨年7月の大阪局からの異動後に、物品が無くなっているということに気づいたのだが、管理状況が不十分なので特定できないまま時間がたったという状況は、明らかに不備です。また、人の管理という面からでは、前歴をいつまでも問うのは問題かもしれませんが、備品の調達・管理という業務を担当させることの当否についての検討は当然あってしかるべきだと思いますので、人と物、両面の管理の不備を十分に検証して、改めていただくようにお願いします。

 (安田代行)

 今回、東日本大震災が起こって、会長を中心としてNHKの対応は誠にすばらしかったと思っています。どの方面の方からもすばらしいというご意見をいただいています。ただし、今回の原子力発電所の報道に対しては、本当に真実をNHKは伝えることができたのかという疑問があります。こういったことは、恐らく情報がなかったのかもしれませんが、原子力発電に対する報道はやはり課題があったのではないかという認識が非常に強いということをお伝えしておきたいと思います。

 (北原委員)

 安田代行のご発言を若干補足しますと、原発事故では、分からない部分が非常にたくさんあります。電力会社も全容を完全に把握していない、原子力安全委員会、政府すらよく分からない。それを報道するわけです。視聴者の視点から見ると隔靴掻痒(かっかそうよう)の感はあるのですが、NHKだけがそうかというと、決してそんなことはありません。新聞各紙も民放も、真実を一刻も早く視聴者に届けるべく努力をしています。あとで振り返ってみると、あれもあったではないか、これもあったではないかという議論がたくさん出てくることがあります。安田代行も、その観点から非常に厳しいご意見をお持ちなのだと思います。ただし、客観的・公平に見て、NHKの報道だけが真実を伝えていないということは断じてないと思います。

 (數土委員長)

 2人の委員の意見は非常に重要なことを含んでいると思います。しばらくの期間、例えば3〜4か月たってさまざまな情報が明らかになった後、経営委員会と執行部のそれぞれの見解を述べ合い、相互に理解を深める場を持ちたいと思います。

 (竹中委員)

 会長からも説明があったユーストリームとの連携についてですが、震災発生後にNHKの震災報道を見ることができない方々が多数おられたときに、最初は広島の中学生が、NHKのニュースをユーストリームに配信したのです。そのことは、ユーストリームとしてもNHKとしても、規則には当然違反するのですが、ユーストリームの社長が、担当者にすぐにNHKにこのような状況だということを伝えに行きなさいと指示し、担当者がNHKに行ったところ、NHKの担当者が15分でNHKのニュースをユーストリームで配信することを決断したということです。この危機的な状況の中、ユーストリームでNHKのニュースを配信するのは結構ですよという判断を、わずか15分で下されたのです。どちらかというとネットユーザーの人たちはNHKに批判的な感じの人が多いのですが、先週開催されたユーストリームの関係者の会では多くの人が、今回のNHKの素早い対応はすばらしかったと言っていました。大変高い評価をいただいています。先ほど、職員の不祥事の話も出ましたが、こういう英断をされた職員もいますので、そういう部分をぜひ全員で共有できればいいなと思いました。

 

 

2 日本放送協会平成22年度業務に関する監査委員会の活動結果報告(資料)

 (井原委員)

 日本放送協会平成22年度業務に関する監査委員会の活動結果をご報告します。1点目は、放送法第38条第1項ならびに第40条第1項に基づき、平成22年度業務報告書ならびに財務諸表に沿える監査委員会の意見書を作成しました。
 2点目は平成22年度の監査委員会活動です。放送法第22条の2の第5項に基づきすでに経営委員会に報告したこと、ならびに監査委員会の開催状況についてです。併せて、平成23年度に入り4月以降6月27日までの間に、22年度業務報告書ならびに財務諸表に添える監査委員会の意見書をまとめるために、7回の監査委員会を開催したことを申し添えます。

 

 

3 議決事項

 (1) 日本放送協会平成22年度業務報告書について
(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)

 (石田理事)
 平成22年度業務報告書の案を取りまとめましたので、その内容についてご説明します。5月の経営委員会でご説明したとおり、業務報告書は、放送法に基づいて作成するもので、省令で定められている記載事項に沿った章立てで、22年度の協会業務全般について記述しています。放送法で、6月末までに総務大臣に提出しなければならないことになっており、本日議決をいただけましたら、監査委員会の意見書を添付して、財務諸表とともに、本日18時半、会長から総務大臣に提出いたします。決算の報道発表は、19時半から行う予定にしています。その際、業務報告書も配付します。お手元の冊子は、先週事務局からお送りしたものと同じ内容です。第1章から11章までの本文と、資料で構成されています。合わせて用意した、本文の記述に添った概要に沿って、22年度の特徴点を中心に、かいつまんでご説明いたします。
 まず「1.事業の概況」は、事業活動全体についての総論部分です。NHKの基本的役割や、3か年経営計画を踏まえて事業計画を着実に実施した旨記述したうえで、22年度の特記事項として、東日本大震災への対応をまとめています。ニュース・番組、安否情報、地域放送、国際放送、インターネット、受信料の免除など、年度内の震災対応の全容を概括しました。
 2ページの「2.放送番組の概況」は、第2章の概要です。国内放送、国際放送の編集方針や番組改定の概要、海外への番組提供などについて記述しています。国内放送についての22年度の特記事項としては、3ページにありますが、大相撲の中継を実施しなかったこと、それから、大臣認可を得てラジオのインターネット提供に向けた準備を開始したことを記述しています。国際放送についての特記事項としては、新たに大臣認可を得て、NHKワールドTVを国内の有線テレビ事業者に提供する業務を3月に開始したことを記述しています。概要での記述はこの程度にとどめていますが、本編では、放送時間数や個別の番組名、重要ニュース項目などを挙げて、放送の実施状況について詳しく記述し、併せて制作委託や番組の受賞等についても記述しています。
 続いて「3.調査研究」です。放送番組に関する世論調査や研究については第3章で、放送技術の研究については第7章で、それぞれ具体的な内容を記述しています。例えば、接触者率調査や、5年ごとに実施している国民生活時間調査、先月の技研公開でもご覧いただいたスーパーハイビジョンの研究などについて記述しています。
 4ページの「4.営業及び受信関係業務」は、営業と受信関係業務に関する項目です。営業活動については、法人委託を推進したことや、支払督促、未契約訴訟、契約件数などについて記述しています。22年度の新たな事項として、4ページの中ほどの部分ですが、衛星放送の契約案内メッセージの表示を開始したこと、また、地デジ難視対策衛星放送、いわゆるセーフティネットの受信契約を地上契約として取り扱うこととした、ということを記載しています。受信関係の業務としては、デジタル化に向けたさまざまな取り組みなどを書いています。ここでの新たな事項としては、4ページ下の部分ですが、受信障害対策共聴のデジタル化整備に必要な経費助成業務、また、地デジ難視対策衛星放送の受信に必要な設備貸与や経費助成業務を、大臣認可を得て新たに開始したことを記述しています。
 5ページの「5.視聴者関係活動」では、広報活動や情報公開、ふれあいミーティングやイベントの実施などについて記述しています。
 「6.放送設備の建設及び運用」は、放送設備の建設や運用に関する概要です。地デジ中継局の開設、設備の更新、会館の建設等について記述しています。
 「7.業務組織・職員」は、業務組織の概要を記述している第8章のサマリーです。経営委員会、理事会、内部統制の推進や要員効率化などについて記述しています。経営委員会、監査委員会については、委員の構成や活動状況全般を記述しています。5ページの下からですが、數土委員長の就任について触れています。これは、23年度になってからのことではありますが、重要な後発事象として記載しているものです。
 6ページには、会長任命の経緯について、監査委員会が調査して経営委員会に報告したこと、この報告を受けて、経営委員会として検証と総括をとりまとめて公表したことを記載しています。それから、コンプライアンス関係で、大相撲取材における不祥事を受けて、各職場での緊急討議等を実施したことを記述しています。
 「8.財政の状況」では、一般勘定の事業収支差金が37億円となったこと、財政安定のための繰越金が年度末において1,262億円となったことなどを記述しています。
 「9.子会社等の概要」では、子会社等の再編成のほか、子会社等からの配当や副次収入について記述しています。
 以上が本文の概要です。本文の後には、関連する資料を添付しています。5月の経営委員会で、資料点数が多いことについてご指摘をいただいたことを踏まえ、改めて検討いたしまして、本文との重複などを整理し、新規追加分も含め59点であったところ、50点としています。22年度は東日本大震災に関する記述を書き加えましたが、今申し上げたような資料構成の見直しや、全体に簡潔な記述に努めるなど工夫した結果、最終的に、前年度に比べて15ページ圧縮しています。参考までに、前々年度からは、45ページ少なくなっています。よろしくご審議のほど、お願いいたします。

 (浜田委員)

 次期の経営計画の中で議論していただきたいので確認しますが、外部委託の考え方について私自身は、品質管理とコスト削減が両立させることができれば、何ら問題ないと思っています。そうは言っても、外注管理能力の維持という意味では、ある程度の外部委託の目安を持つという考え方もあるのかと思いますが、何かお考えがあればお聞かせください。また以前、経営委員会の場で外部委託の結果、どれぐらいのコスト削減ができたのかという質問をしたときのお答えは、「日本のコンテンツ作成能力の向上のために外部委託をしているわけだから、コスト削減という考え方はない」という内容だったと記憶していますが、現執行部でもそういうお考えをお持ちになっているのでしょうか。

 (石田理事)

 次の経営計画の中で外部委託の在り方をどうするかというのは、放送の面でも技術の面でも、現在検討しているところです。品質管理という問題がありますので、外部に委託をしたはいいけれども、NHKブランドを傷つけるようなことになってはいけないということも考えながら、外部委託の在り方をどう考えたらよいかを検討しています。コストの問題について、外部委託によってコストを減らすことを考えていないというような説明が以前ありましたが、外部委託するということは、もちろんそれによってコストを下げるということを目指しています。NHKとしての品質を保たなければいけないという問題はありますが、コスト削減についてもきっちり経営計画の中で検討していく課題だと思っています。これまで積み重なってきたいろいろな経緯もありますので、一刀両断に物事が進んでいくということはなかなか難しいところもありますが、浜田委員のご趣旨は受け止めたうえで、しっかり検討していきたいと思います。

 (金田専務理事)

 これは非常に重要な判断だと思っています。外部制作比率は、おおむね目標を達成しているのですが、企画競争という目標がなかなかうまくいかないというのが今の状況です。正職員の制約がある中で制作していきますので、NHKの中に入って外部の方が制作するという形でコストを落としていっているという状況が常態としてあります。したがって、必ずしも外部に委託したときに品質管理や手続きなども含めると、今の段階で本当に目に見えて安くなるという状況ではないことも、一方の事実です。ただ、一番大切なことは、NHKブランドといいますか、NHKとしてあるべき姿を崩さずに、外部委託をどれだけやっていくかということです。日本のコンテンツ産業を振興することも1つの大切な大義ですので、ある意味で難しい矛盾したものを、今回の経営計画の中にどうやって落とし込んでいくのかがポイントだと思っています。企画競争も数字だけで追いかけるのではなく、そのやり方について、プロセスもきっちり見ていくという作業になるかと思っています。

 (松本会長)

 外部委託によってコストを削減するという考えはないという説明は、すごく不思議な答えだという感じを受けると思います。どうしてそのような答えになってしまうかといいますと、民間にはNHKの番組品質で作る力がないケースがあり、そのため、それを育てるという目的だということもあるからなのだと思います。また、外部委託を数字で何%外へ出すというより、主体的に考えて、コスト削減、効率化で外部委託を検討していくということだと思います。

 (數土委員長)

 私もこの外部委託については非常に重要なことだと思います。また改めて、外部委託について経営委員会で意見交換させていただきたいと思っています。1点お願いとして、この業務報告書は、もう1、2週間早く概要を届けてもらいたいと思います。また、大相撲の中継の話や、私が4月に経営委員になったということを書くのであれば、10%還元の原資についてどれだけ検討したか、その原資を新たに作るために、どういうことに着手したのかを書いてもらいたいと思います。それから、総務大臣も指摘しているように、営業経費をもっと削減してもらいたいということに対して、どのような施策を取ったのかということは、22年度の非常に重要な任務だったのではないかと思います。その2つが書かれていないのはどうしてなのでしょうか。

 (石田理事)

 10%還元の問題については昨年の4月、当時の小丸委員長のときに、この時期から議論したほうがいいのではないかというご意見がありました。そして、当時、福地会長は、まだ地上デジタル化など先行きの見えない中、10%還元の原資も作らなければいけないということで、いかに受信料収入を上げるかとか、いかに副次収入を上げるべきかということをまず議論すべきだとして、何回か勉強会を重ねて、いくつか追加の施策も行って収入を上げました。したがって、営業および受信関係業務の概況のところで、そのような努力でこのような結果だったということを記述しています。10%還元をどうすべきかについては、収入の見通しがたった段階で議論すべきだと考えて、今回の記述になっています。業務報告書の項目として書くことは法律や規則で決まっていますが、内容の書き方は私どもで判断できますので、今回、委員長の意見を受けて、23年度分についてはどういう形でまとめるということについては事前の段階でいろいろとご意見も伺いたいと思います。今までは、5月に章立をご説明して、その後、一冊になった段階でご説明していますが、その途中でもう少し詳しいサマリーをご説明することは、途中経過なので変わるということがあり得ますが、今後ご相談させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 (石島委員)

 NHKは今、放送の事業と、一部インターネット関係の事業としてVODを主体にして行っておられるのですが、例えば収益を上げる事業として、NHKニュース&スポーツという携帯端末向けサイトがあります。ところが、このNHKニュース&スポーツの内容はほとんどNHKオンラインと同じなのです。これは有料サイトなので、さらに掘り下げているとおっしゃるのかとは思うのですが、今朝ある記事をNHKオンラインと比較すると全く同じでした。ビジネスの組み立て方として、インターネット関係の部分の未整理の状況がかなりあるのではないかと思っています。外部からNHKの印象が構成されるときに、そういうものは非常に悪い影響を与えるような気がします。放送は、NHKがずっと何十年もかけて蓄えてきた資産ですから、かなり整理されているとは思いますが、インターネット部分は放送に比べて未整理の部分があるのではないかと思いますので、将来に向けて、できるだけ早い機会に通信関係のビジネスの部分を整理する必要があるのではないかと思います。私が、インターネット関係でNHKに払っている料金は、本放送の受信料より高いのですが、同じ内容が他のインターネット環境では無料で視聴できるというような現象が発生しないように、次期経営計画の課題の1つとして考えていただければと思います。

 (石田理事)

 ご指摘の点はすごく重要なポイントだと思っています。放送と通信の関係とか、本体と関連会社がそれぞれどうであるかとか、どこまでを無料で、どこから有料にするかというのは、経営にとって極めて大事なことで、受信料という特殊な制度の中でどう位置づけていくかということは大切です。今ご指摘があったように、うまく整理されてないといいますか、整理するそばから世の中自体が動いていってしまうようなところがあり、そこをどうするかというのは、関連事業局と放送総局とでしっかり考えて制度も含めて整理をしなければいけないテーマだと十分認識して、今検討をしているところです。関連会社としては、収益を上げたいということはあるのですが、今、関連事業局でその問題を議論しています。

 (數土委員長)

 石田理事から業務報告書のご説明をいただきまして、われわれから思いを少し申し上げましたが、執行部側と経営委員側でそれぞれの思いはあっても、まだまだコンセンサスを取らないとだめなところは当然あると思います。今後に向けて、スムーズな意見交換をしていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

 

 

4 その他

 (1) 日本放送協会平成22年度業務報告書に添える監査委員会の意見について(資料)

 (井原委員)
 「日本放送協会平成22年度業務報告書に添える監査委員会の意見」についてご説明します。当意見は、放送法第38条第1項に基づくもので、ポイントを3点のみご説明させていただきます。
 1点目は、意見書の構成です。このような意見書は、平成20年4月の放送法改正に基づき作成されるようになり今回で3回目になりますが、これまでと同じくいわゆる短文式ではなく、説明責任を果たせるようにということで長文の様式を取っています。構成としては、序文に続き監査の方法と内容、それに基づく監査の結果、そして監査の結果に影響するものではありませんが、健全な事業運営の徹底のために示し付記事項と大きく3つの項目となっています。
 監査の方法と内容は2ページ以下ですが、方法としては内部統制の整備と運用状況の監視および検証に基づき、重点監査項目を含む監査実施方針に従い諸手続によって監査を行いました。その具体的な内容は3ページ以下にあります。
 それに基づく監査の結果が27ページです。監査委員会は監査の方法およびその内容に基づき、次のとおり意見を示します。
 1. 事業の実施報告を記した業務報告書は、協会の状況との間に重大な齟齬(そご)は認められない。
 2. 役員の職務の執行に関する不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実は認められない。
 3. 放送法第14条第1項第1号ハに基づく経営委員会の内部統制に関する議決の内容ならびに当該議決に基づき整備されている体制は、相当であると認める。
 以上が結果です。
 付記事項として、2点付しています。1点目は、最適なグループ経営の推進についてです。これは、20年度、21年度の意見書の付記事項に続くものになります。22年度になり、分野別の課題や分野をまたがる共通課題を協会と子会社等で検討する会議を設けるなど組織的な推進体制が動き出しており、また23年度早々にはグループ全体の事務システム統合の基本構想が策定されるなど、最適なグループ経営に向けた基盤整備の取り組みも動き出しているということは認識をしています。しかし、監査委員会としては、目指すべきグループ経営の理念については必ずしも明確ではないと考えており、今後、これらの動き出している取り組みの一層の推進とともに、公共放送NHKの果たすべき役割のもと、グループ経営の理念を明確化し具体化を進めていくことが必要であることを付記しました。
 2点目は、放送・通信融合時代の“3-Screens”展開についてです。先ほどから、話にも出ていますが、放送と通信が融合する時代において、多様なメディアを使った新しいサービスが求められています。その中で、東日本大震災ではインターネットを活用し、きめ細かな安否情報や生活情報等の提供を積極的に行うなど、NHKは“3-Screens”展開に積極的に取り組んでいます。しかし、監査委員会としては、こうした展開のための組織・要員体制は必ずしも十分ではないと認識し、通常時はもとより、非常時にはなおさら求められる展開のために、人材の育成施策や組織のあり方等を戦略的に検討し、整備することが必要であるということを付記しました。

 (數土委員長)

 一般的な企業や財団では、このような量の監査の意見書はあり得ません。あったとしても2ページです。この業務報告書の巻頭か末尾に監査役の3名の連名で添付するくらいで私はいいのではないかと思いますので、もう少し考えていただければと思います。

 (井原委員)

 放送法では別途意見書にとなっているので、このように作成しています。

 (數土委員長)

 添付したとしても書類としては監査の意見書ですので、別途ということになりますので検討していただければと思います。これはやはり膨大過ぎないかと思います。

 (北原委員)

 すべての文書が長過ぎます。発言も長い。執行部もそうだし、われわれの発言も長過ぎます。

 (數土委員長)

 皆さんがこれはこれでいいと言うのであればよいのですが、少し異常ではないかとは思います。

 (井原委員)

 今後検討しますが、ここに至ったのは、法令の趣旨等を確認し、検討してこのような形になっています。

 (數土委員長)

 私の意見も少し考慮に入れていただけたらと思いますのでよろしくお願いします。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

5 議決事項

 (2) 日本放送協会平成22年度財務諸表について
(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)(資料5)(資料6)

 (石田理事)
 それでは、NHKの平成22年度財務諸表についてご説明いたします。
本日ご審議いただく財務諸表と説明資料について、全部で5点配付させていただいています。
 本日、ご審議・議決いただく「日本放送協会平成22年度財産目録、貸借対照表、損益計算書、資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書並びにこれらに関する説明書」をご覧下さい。この財務諸表につきましては、経営委員会で議決いただいたのち、放送法第40条の規定に基づき、監査委員会および会計監査人の意見書を添えて総務大臣に提出いたします。その後、内閣を経由し、さらに会計検査院の検査を経て国会に提出されます。
 表紙を開いていただき、「目次」をご覧ください。放送法および放送法施行規則に基づき、企業会計原則に従って、「財産目録」「貸借対照表」「損益計算書」「資本等変動計算書」「キャッシュ・フロー計算書」につきまして、定められた書式で作成しています。「これらに関する説明書」は、これらの書類の内容を説明するものです。決算にあたっての「重要な会計方針」ですが、30ページにまとめて記載しています。22年度決算で特に重要なポイントは、「2.4引当金の計上基準」の(2)災害修繕費用引当金および(3)固定資産撤去費用引当金で、それぞれ、15億円、181億円を計上しています。また、これらの内容について、監査法人から「独立監査人の監査報告書」を受領しています。監査の結果「すべての重要な点において適正に表示しているものと認める」との監査意見が表明されています。
 次に、決算を説明する資料ですが、まず、「平成22年度決算の要約」をご覧ください。これは、決算内容のポイントをまとめたもので、本日は、この資料で説明いたします。「平成22年度決算概要」は、収支決算、損益および資産、負債・純資産の状況をまとめたものです。「平成22年度決算説明資料」は、収支予算・決算並びに事業運営計画の実施状況について説明した資料です。それでは、「平成22年度決算の要約」に沿って、決算の内容をご説明いたします。まず、収支決算について、前年度の決算との比較でご説明します。事業収支決算表(前年度決算との比較)をご覧下さい。事業収入は6,839億円で、前年度比140億円の増収となりました。そのうち受信料収入は、受信契約件数の増加等により、155億円の増収となりました。一方、事業支出は6,801億円で、前年度比226億円の増となりました。これは、完全デジタル化に向けてデジタル追加経費を増額したことや、アナログ送受信設備について固定資産撤去費用引当金繰入を計上したことなどによるものです。この結果、事業収支差金は37億円の黒字となり、財政安定のための財源として繰り越します。なお、財政安定のための繰越金の年度末残高は、建設費および債務償還の財源として36億円使用した一方、先ほど述べた事業収支差金37億円が新たに発生したため、前年度末とほぼ同額の1,262億円となりました。次に、収支決算について、予算との比較でご説明します。事業収支決算表(予算との比較)をご覧下さい。事業収入は、受信料の増加等により、予算を52億円上回りました。また、事業支出は、アナログ送受信設備について固定資産撤去費用引当金繰入を計上したものの、効率的な業務運営を徹底し、46億円の予算残となりました。この結果、事業収支差金は、61億円赤字の予算に対し99億円改善して37億円の黒字となりました。続いて、「資産・負債及び純資産の状況」をご覧下さい。資産は、固定資産の増加等により、前年度比220億円増の8,722億円となりました。負債は、3,108億円となっており、このうち外部資金の残高は100億円です。これについては23年度中に全額償還する見込みです。純資産は5,613億円となり、自己資本比率は64.4%で、前年度末65.8%と比べ、1.4ポイントの減となっていますが、引き続き健全性を保っています。次に損益の状況ですが、受信料が増加した一方で、事業支出を抑制したことから、経常収支差金は223億円となりましたが、特別支出に固定資産撤去費用引当金繰入を計上したため、当期事業収支差金は前年度比82億円減の19億円となりました。次に、キャッシュ・フロー計算書をご覧下さい。事業活動によるキャッシュ・フローの増加が、投資活動と財務活動のキャッシュ・フローの減少を上回り、22年度末における資金残高は、前年度末から434億円増の1,357億円となりました。ご審議のほど、よろしくお願いいたします。

 (幸田委員)

 以前の経営委員会で、資産運用としては、リスクの少ない金融債や事業債などの債券で運用されているという説明があったと思います。価格が下落しても売らず、満期まで持つというスタンスだから安全だという説明でしたし、そういうところは、今、日本の中にたくさんあるのも事実ですが、電力債など、いわゆる安全と言われてきた社債も、現在は非常に不透明な状況だということはご存じだと思います。不可抗力の面もありますが、もしものとき、これだけ保有している金融資産がどのようになるかということについては、適切な危機感を持つ必要がありますが、その点はどのようにお考えなのかというのをお伺いしたいと思います。特に現在は、資産運用のリスクについては常に認識していないといけないと思いますので。

 (石田理事)

 実際に保有している債券がどういう状況かということは注視しているのですが、今の段階では、NHKとしてのこれまでの方針を変更して、債券を売るとかいうことではなくて、やはり満期保有という形で引き続き状況を見ているということです。

 (數土委員長)

 この問題は、繰越金がだいぶん増えてきていることと関連すると思いますが、債券をどのように持つか、どこまで持つか、何のために持つか、そして、どういう対応をしながら持つかということを、執行部側で、きちんと議論しないといけないと思います。そのベースがないとなかなかこういう質問には答えられないと思います。

 (松本会長)

 繰越金は、建設費やインフレ、大規模な災害、事故への対応などに使うということです。今、保有している債券が非常に不透明な状況にある場合には、情報を取りつつぎりぎりまで運用し、しかし、全体が動いたときには遅れないようにということが重要だと思います。

 (石原委員)

 国際放送についてですが、21年度の決算と22年度の決算を比べて、119億円から127億円となり、8億円の増ですよね。平成22年度決算概要1ページの下のところに、視聴可能世帯が1億3,655万世帯になったという記載があります。これは大変結構だと思うのですが、果たしてどの程度の訴求効果があるのでしょうか。例えば国内放送であれば、接触者率を75%から80%にするなどの目標があるわけです。国際放送の訴求効果はどのように計るのですか。そういった検討会のようなものはあるのでしょうか。どのように、これから国際放送に力を入れていくのかということです。外国の放送というのは、例えばアルジャジーラのように、アラブに非常に関心がある人が今多いという中で特殊な現地の状況などを放送してくれるから視聴するわけです。日本の大震災のニュースは視聴するかもしれませんが、その関連の放送が終わってしまったら、日本の情報に関する番組などはほとんど視聴しなくなるということも考えられます。費用対効果を、これからはきちんと考えていく必要があると思います。

 (今井理事)

 ご指摘のとおりです。受信環境整備で、すでに一部の時間帯のみ視聴可能なところも含め、世界で約2億世帯がNHKの国際放送を視聴可能になっているのですが、実際どの程度視聴されているかというのをなかなか計ることができていません。一部、香港やワシントンDCでは世論調査のような形で調査を実施しています。さらに、どの程度NHKの放送に接触されているかということを調査するにはどういう方法があるかについて、今検討を始めているところです。アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど、何か所かを抽出して、放送にどの程度接触しているかを定期的に計るような方法を今検討しており、23年度中にそのような調査を実施したいと考えています。また、受信環境については、受信可能世帯は増えてはいるのですが、例えばアメリカやヨーロッパのホテル等でどの程度視聴されているかというところも、もう一度調査して、さらに環境整備を進めていきたいと考えています。

 (數土委員長)

 一般的な企業であれば、事業分野、部門ごとに収支状況を把握しています。株主総会ではそこまでは出さないのですが、そういう情報を持っていないと話にならないのです。例えば、NHKは、国際放送も含めて、チャンネルごとのコストや視聴率のデータがあったほうが、より進んだ経営手法になっていくのではないかと思います。実際は、そういうことを行っているテレビ放送もあるということも聞いています。そういう方向を目指して、何年かの計画の中で、原価管理体制の構築を含めて取り組んでいただきたいという気持ちがあります。

 (石田理事)

 今、委員長がご指摘になった、経費をチャンネル別に把握するということは重要ですので、今、経理局で検討しています。そのときの一番の問題は、衛星放送に係る経費をどう配賦するかということです。決算概要の11ページに「事業収支のうち衛星放送に係る収入と経費」がありますが、衛星放送に係る経費には、直接衛星放送に係る経費と、報道番組など衛星放送と地上波の両方に係る経費もありますので、その配賦をどうするかという問題です。衛星放送を始めたときは、直接衛星放送に係る経費だけでしたが、平成10年度までに、衛星放送と地上波の両方に係る経費の配賦を見直してきましたが、その後衛星放送の役割が変わって、今でもその配賦の方法がいいのかどうなのかという課題はあると思います。例えば、大河ドラマ、朝の連続ドラマ小説、NHK紅白歌合戦などは、地上波でも衛星放送でも放送しているのですが、その経費は全部が地上波で持っている形になっています。また、報道関係の番組については、以前は、外国のニュースを買うだけだったのですが、実際にはNHKで制作している番組がだんだん増えてきています。その状況を見ると、衛星放送に係っている人員数、すなわち人件費が増えているのですが、この状況で今の配賦基準でいいのかどうなのかということは、前任の金田専務からも問題提起がなされています。この部分をきちんと整理しないと、チャンネル別などへの対応もできないので、そこを詰めてチャンネル別の管理ができるのかどうか検討しているところです。

 (數土委員長)

 それがもうすでに遅くなってしまっているのです。例えば、JALなどもそうであって、路線ごとのコスト管理はしていなかったというので皆が驚きました。それはNHKワールドならワールドの分をどうやって割り振るかとか、その割り振り方がすなわち原価管理というものですから、それは何としても行ってもらうようにお願いします。営業経費をどうやって割り振るかも同様で、合理的だと思われる方法を自分たちで作り出していくしかないと思います。ぜひチャンネルごとの経営管理というものを目指していただきたいと思います。可及的速やかに行っていただくよう期待しています。

 (石田理事)

 予算に関わることでは、慎重に検討していきたいと思います。

 (井原委員)

 今の委員長からの要望は、私からも一昨年も昨年も同様にお伝えしたことです。その時も同様に検討するとおっしゃいましたが、これまでの間は検討されていなかったということですか。配賦の問題等課題として残っているので、それを検討しますとおっしゃいました。議事録にも残っているのではないかと思います。

 (金田専務理事)

 私が担当していたときのご指摘だと思いますので、お答えします。基本的には費用の精度の問題があります。概算レベルのものは3、4年前に一度作っており、徐々に精度を上げてきて、今は最終段階まで来ていますので、早い段階で、多分ご説明できると思います。経営計画のご説明までの途中として、現時点でのベストのものをお見せできるところまで来ているということです。

 (松本会長)

 これは、もともと衛星放送に係る収入と経費を把握するというところから始まっています。その経費の把握のために、計算方式の基準を決めて実施したわけです。ところが、衛星放送の役割の変化に伴って、今になるとその計算方式は、実態に合っていないようなことになっています。以前に決まったものを変更することになれば、対外的にも説明しなければなりません。その精度を高めていっているところということです。時間をかけているという状況があります。しかし、それはやるべきだと思っています。

 (石田理事)

 今の方向というのは、現状に則した配賦基準に見直して、衛星放送に係る経費を一層適正に把握するということです。われわれは総務省に予算を提出して、大臣意見をいただき、国会で承認を得ないといけないということですので、よほど配賦基準の合理性をきちんと説明しないとなかなか通らないというところがあります。今、経理制度検討委員会やいろいろな会計の先生方のご意見も聞きながら、なるべく早く行うつもりで作業を進めています。

 (數土委員長)

 公式の説明ではなくて、自分たちの手元のペーパーとして、整合性をどう図っていくかというチャレンジングの期間としての調整の期間を3か年持つなどの方法もあるのではないでしょうか。今のような話をしていたのでは、永久に行えないのではないですか。

 (石田理事)

 いや、そんなことはないですが、これまでこういう形でということで、すべて外部へ出していることですので、配賦を変えるとなると、それは外部への説明が必要だと思います。

 (數土委員長)

 これにつきましてもまた早急に議論をしていきたいと思います。原価管理体制と原価管理会計というものを前面に出していかないと、合理的な経営はなかなかできていかないと思いますね。

 (石田理事)

 委員長がおっしゃるように、BBCなどもそういうことを行っていますので、どういうやり方をしているかということも含めて勉強して、いい形でチャンネル別に経費を出すように前向きに準備を進めていきたいと思います。

 

 

6 その他

 (2) 日本放送協会平成22年度財務諸表に添える監査委員会の意見について(資料)

 (井原委員)

 それでは、「日本放送協会平成22年度財務諸表に添える監査委員会の意見書」について、お手元の資料に沿ってご説明します。意見書の構成は、先ほどの業務報告書に添える監査委員会の報告書と同様に、基本的には、序文、監査の方法と内容、そして監査の結果です。当意見は放送法第40条第1項に基づくもので、任意による監査になりますが、会計監査人の監査が併せて法定されています。その意味で、本監査はいわゆる相当性監査になっています。その結果が2ページの「監査の結果」として記載していますが、結論を申し上げますと、会計監査人の監査の方法および結果は相当と認めるということです。
 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

7 議決事項(資料)

 (3) 土地・建物の売却について

 (石田理事)

 土地・建物の売却について、ご説明します。非現用不動産について、入札の結果、売却先が決定しましたので、審議をお願いします。売却物件は2件です。
 1件目は、旧横浜放送会館で、横浜市中区本町一丁目の建物付き土地でございます。神奈川県庁の隣接区域に位置する好立地ですが、建物は築50年近くを経過しています。売却額は 12億7,000万円、売却先は 積水ハウス株式会社でございます。5月18日に一般競争入札を実施し、応札がありました。
 2件目は、旧鹿児島放送会館の跡地で、鹿児島市天保山町の土地です。平成18年の会館移転後、建物は撤去し、更地にしています。売却額は 5億5,511万1千円、売却先は あなぶき興産九州株式会社です。5月25日に一般競争入札を実施し、応札がありました。
 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (4) 例規の改正について(資料1)(資料2)

 (石田理事)
 昨年11月に放送法の改正が成立し、同法の用語や条文番号などが大きく変更されました。議案に記載している「業務委託基準」など9件の例規については、放送法の用語をそのまま引用したり、「放送法第○条の規程に基づく…」などと記述した箇所がありますので、新放送法の用語や条文番号に合わせて改正したいと思います。改正するためには、いずれも定款第13条第1項第1号の規定により、経営委員会の議決が必要となりますので、審議をお願いします。それぞれの修正個所は別添の「新旧対照表」に記載していますが、いずれも該当する放送法の条文に合わせて字句を修正するもので、規定する内容は従来と全く変わりません。修正箇所の個別の説明は、割愛させていただきます。放送法改正の施行日が6月30日と決定しましたので、改正の期日は、それと同日にしたいと思います。なお、1の「業務委託基準」、2の「外国人向け委託協会国際放送業務の委託に関する基準」、4の「外国人向け委託協会国際放送業務を行うにあたり一般放送事業者の協力を求める基準および方法」の3件については、議決をいただいた後、法律の定めに従い、総務省に届け出ます。
 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (5) 内部統制関係議決等について(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)

 (板野経営委員会事務局長)

 内部統制関係議決について資料に基づきご説明します。資料をご覧ください。本件は、平成20年の放送法改正に伴う内部統制関係の議決事項で、NHKとして経営委員会で議決したものです。今回は、平成22年11月に成立しました放送法の改正に伴うもので、法律の条文番号の変更のみで、内容の変更はございません。新旧対照表を付けましたので、ご覧ください。
 続いて、経営委員会委員の服務に関する準則について資料に基づいてご説明します。ただいま石田理事から説明がありました会長、副会長、理事および職員に関する準則と同様、今回の修正は平成22年11月に成立しました放送法の改正に伴うもので、法律の条文番号の変更のみで、内容の変更はございません。こちらも新旧対照表を付けましたので、ご覧ください。いずれも本日議決をいただきましたら、放送法等の一部を改正する法律の施行日である6月30日から施行することとします。
 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (6) 中央放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について(資料)

 (木田理事)
 中央放送番組審議会委員として、平成23年7月1日付で、小田尚氏(読売新聞東京本社取締役論説委員長)に新規委嘱をしたいと思います。また、中央放送番組審議会委員の白石興二郎氏(読売新聞東京本社代表取締役社長)が、ご本人の申し出により退任されるため、任期の途中ですが、平成23年6月30日付で委嘱を解くことにしたいと思います。よろしくご審議をお願いします。
 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (7) 国際放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 (今井理事)

 国際放送番組審議会委員として、平成23年7月1日付で2名の方に再委嘱、1名の方に新規委嘱をしたいと思います。まず再委嘱は、長谷川祐子氏(東京都現代美術館チーフキュレーター・多摩美術大学芸術学科特任教授)、中山俊宏氏(青山学院大学国際政治経済学部教授)の2名です。新規委嘱は、内海善雄氏(前国際電気通信連合(ITU)事務総局長・現JTEC 財団法人通信・放送コンサルティング協力理事長)です。略歴については別紙のとおりです。よろしくご審議をお願いします。

 (數土委員長)

 全体では委員は何人いらっしゃるのでしょうか。

 (今井理事)

 国際放送番組審議会委員は放送法で10人以上となっていて、現在10人です。この春までは11人でしたが、委員長をされていた平田氏が任期満了で退任された後10人になり、6月30日に3人の方の任期が満了するということで7人になり2人は再委嘱で今回新規に1人委嘱されて10人ということで一応定数に達しています。

 (數土委員長)

 もう1人か2人増やしてもよいのではないでしょうか。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

8 報告事項

 (1) 「視聴者視点によるNHK評価委員会」の平成22年度評価報告書を受けて(資料)

 (石田理事)
 本日「視聴者視点によるNHK評価委員会」から松本会長に平成22年度評価報告書の提出がありました。これを受けまして、NHKとしての見解を取りまとめましたので、ご報告します。「視聴者視点によるNHK評価委員会」は、外部の有識者で構成するNHK会長の諮問機関です。視聴者調査などをもとに、公共放送に対して視聴者の皆さまが何を期待しているか、また、その期待にNHKがどの程度応えているかを客観的に評価することをねらいとしています。本日、2年目となる平成22年度の評価結果が松本会長に答申されました。その報告書によると、評価の柱である「放送の信頼性」の評点は5段階評価で3.8点、「経営の信頼性」の評点は2.7点で、いずれも21年度に比べて0.2点向上しています。評価の柱を構成する8つの指標のうち7つで評点が向上しています。また、NHKの放送サービスについて、視聴者に支払い意思額(WTP:Willingness to Pay)を尋ねた結果、21年度と同様に、地上波・衛星波ともに現行の受信料額を上回っています。さらに、評価委員会からは、「放送・通信融合時代の新しいサービスについても、視聴者の期待は高いので、これに応えていく必要がある」などの貴重な提言もいただきました。NHKとしては、高い評価をいただいた指標について、なお一層の向上を目指して努力していくとともに、21年度に比べやや厳しい評価をいただいた「誠実さ・透明性」の指標については、これを真摯に受け止め、重点的に取り組んでいきます。また、評価委員会からいただいたさまざまな提言についても、今後の経営に生かしていきたいと考えています。評価報告書および概要版は、NHKのホームページに掲載し公表します。このNHKとしての見解を、本報告終了後、公表させていただきます。

 (大滝委員)

 先ほど3人の評価委員の方々から直接お話を伺いましたが、これは平成22年度の評価ですが、調査が細部にわたっていて、非常に参考になることが多いと感じました。次期経営計画の中に生かせるものがたくさんあるのではないかと思います。私が感じたことの1つは、やはり「経営の信頼性」というのが大きな課題になっているということで、ここのところはもう少しいろいろな意味で深掘りする必要があると思います。もちろん、視聴者に直接聞いているということですので、なにかしらのバイアスがかかっているというのは委員の方からも伺っているのですが、そこを割り引いたとしても、いろいろな意味で今NHKの持っている課題のようなものがかなり浮き彫りになっていると感じました。そのほかに、放送・通信の融合についての話であるとか、20代から40代のこれまでNHKに対して厳しい評価をしている人たちに対しても相当踏み込んだ調査をしているということがあって、それも大いに参考になると思います。これがすべてではないと思いますが、ぜひ前向きにこの調査を活用していただいて、客観的な評価に堪えうるような次期経営計画に結びつけていただきたいと思っています。

 (北原委員)

 会長に質問があります。この視聴者視点によるNHK評価はNHKの「放送の信頼性」と「経営の信頼性」という2つの柱から成り立っています。NHKの放送に対する信頼性についての評価は、報道に対する評価も含めて必要水準の点数を超えていますよね。ところが、会長をはじめとする執行部だけではなく、経営委員会も関係があるのかもしれませんが、「経営の信頼性」に対する評価はすべて3点以下となっています。必要水準に到達していないという厳しい指摘が出ているわけです。こういう指摘を受けて、会長としてはどういうお考えでこれから経営にあたっていこうと考えていらっしゃいますか。

 (松本会長)

 大滝委員がおっしゃったとおり、22年度の報告だけでなく、21年度の報告書を読んでも、なるほどと思い当たることが記載されています。これは大変参考になると思います。それから、北原委員のお話ですが、やはりガバナンスの中身は、外からは見えにくいのです。NHKの中がどういう経営でどういう形になっているということが分かりにくいのです。経営は、財務諸表を見ることで理解できるところもあると思いますが、例えば、悪いところは是正し、そして、よいところを悪いところ以上に伸ばして、それが見えるようにきちんとすることが大切だと思います。経営の中身をきちんとするのは当然ですが、メッセージをどのように送るかという、その方法も重要だと思います。

 (數土委員長)

 これは非常に重要なことなのですが、視聴者から見た観点というものは、番組などに対しては非常に効果的で、パワーを持っていると思います。しかし、経営というものに対して見たときに、本当にそういうことを諮問する相手なのかどうなのかということが非常に重要だと思います。例えばBBCやアメリカやその他の国の民放や公共放送等で、彼らが経営に対してどういう判断をするのか、またある種の判断を取り入れるときに、自分たちの判断なのか、だれの判断なのかということは、大変な問題です。20代、30代の人に経営をどう思うかということを、番組と同じように調査してしまう姿勢についてはもう一度考えてみてください。私は4月からこの経営委員会に出席していますが、NHKはいろいろなことに対して評価委員会や審議委員会など、外部の判断に頼り過ぎるところがあると思います。これこそまさしく自信のなさ、すなわち、経営がいかに甘いかという裏返しではないかと私は思います。例えば普通の企業で、開発の方向性が当たっているかどうかということをお客様に聞くかというと、そんなことはあり得ないわけです。われわれが作ったものに対して、ほかの商品と比べていいかどうかということは聞きますが、経営の質がいいかどうかをお客様に聞くのかということです。これは本当に考えないといけない問題だと思います。何かを放擲(ほうてき)してしまって、忘れているのではないのかという思いもしないではないので、よくよく考えてみてください。これは本当に非常に重要なことです。先ほど言いましたように、3人の評価委員の方は、われわれにとって重要な経営課題である、10%還元の原資をどうするか、繰越金をどうやって使うのか、営業経費をどうやって削減するかなどについてほとんどタッチしてないのではないですか。本当に経営の根幹が分かる人に聞くということだと思いますが、それを聞いても、われわれ以上に分からないのだと思います。そういうことを含めてもう一度、調査の在り方について本当に考えてもらいたいと思います。

 (安田代行)

 今、委員長がおっしゃったように、一般の人には本当の意味では経営はなかなか理解しにくい部分があるのではないかと思います。経営の内容についての評価が、3点以下だというのは、残念です。

 (北原委員)

 率直に言って経営委員がけしからん部分もあります。

 (塚田理事)

 NHKは受信料で成り立っていますので、受信料をお支払いいただく視聴者の皆さまがNHKをどう見ているかという点を定期的に外部の方々に見ていただいて、そこを踏まえたうえで、経営としてわれわれはどうするのかということを執行部と経営委員会で話をして、方向を定めていくということなのだと思います。そういう意味で、このような評価を生かすところはどんどん生かしていくと言うことだと思います。受信料で支えていただいている視聴者の皆さまからの声だということで受け止めていただければと思いますし、私はそう受け止めています。

 (北原委員)

 参考にすればいいのだと思います。個々の評価に一喜一憂する必要はないということだと思います。

 (幸田委員)

 蛇足かもしれませんが、NHKは、いわば視聴者がお客さまであると同時に株主でもあるという特殊な企業体ですので、今、塚田理事が説明されたこともそうですし、われわれとしては委員長や代行が言った思いも理解できるのですが、要はプレゼンテーションの問題ではないかと思います。マスコミに言われっ放しにしているのではなく、われわれはこういうことをしていますとか、経営のためにこのように工夫や努力をしていますということを、いかにお客さまであり株主である、受信料を払っている方たちにアピールできるかということだと思います。それがきっと1つの解決策ではないかと思います。

 (數土委員長)

 塚田理事は重要なことを言われていて、それはおっしゃるとおりのように聞こえます。ただし、調査を委嘱するのであれば、そのときは会長と経営委員長の連名の委嘱にするべきだと思います。この調査は会長の委嘱によるものですよね。会長の委嘱がどうして経営委員の評判を集めるのかと思います。放送法で決まっている趣旨からは、経営委員として「われわれは会長の諮問機関の方に対しては基本的には質問しない。経営委員会の場で、質問し、意見交換をする」と言ったわけです。NHKの在り方について聞くのに、評価委員会などを持つとすれば、それはだれの権限で委嘱するのか、だれがどういう人に委嘱するのかということについて、経営委員会を含めて相談してもらいたいと思います。今は、私は関与していませんが、今度からはそうしていただきたいと思います。そのときに、どういう質問の内容や意見の聴取のしかたをどうするかということは、非常に重要な問題だと思い、先ほど言ったわけです。無視するとか、そういうことは意味がないということを言っているわけではありません。先ほど大滝委員が言われたように、私も非常に示唆に富んだ内容が多くあると思います。また私は、北原委員と同じように、やはり経営委員が反省すべきところはあると思います。ただし、調査方法については工夫することがあるのではと申し上げているわけで、誤解のなきようにお願いします。

 (大滝委員)

 もう1点お伝えしたいことがあります。これは私の理解なのですが、今実施しているこの調査については、“約束”評価委員会が設置されているときからずっと実施しているということで、かなりロングランで定点観測するという意味合いが強かったと思います。もし、委員長がおっしゃられたように、10%の還元の話など、次期経営計画の根幹に触れるようなことについて、視聴者の皆さんからのいろいろな見方や見解を聞きたいということであれば、この調査の意図や役割を考えるということも必要だと思います。私自身はこの調査では、長い視点でどのように視聴者の皆さんの考え方が変わっているかということを理解し、受け止めてきているのです。ただし、こういうことについては経営委員会でも全く議論してこなかったので、その点についても、委員長からご提案があったような形で、中身について少し考えてみるということであれば、そういう議論もしていいのではないかと思います。ただし、あくまでも定点観測の部分は残しておいてほしいと思います。

 (數土委員長)

 もし会長と経営委員長が共同で評価委員を委嘱するのであれば、経営委員会の姿勢はどう思うのかということについて質問してくださいと言えます。それとは別に「10%還元についてもこういう観点で調べてください」とか、「営業経費に対する使い方についてもどう思いますか」ということもしっかり入れてくださいと言ったと思います。そういうことを申し上げているわけです。そういう意味では、非常に中途半端だと思いますので、改善する余地があるのではないかということを申し上げたいわけです。

 (塚田理事)

 大滝委員からお話がありましたように、この委員会は平成16年に不祥事が発覚して以降、平成17年度から視聴者の皆さまへの“約束”をどう評価していただくかというところから始まっています。そういう意味では、視聴者の皆さまから見た放送、視聴者の皆さまから見た経営、それは当時の状況を踏まえた流れの中で定点観測しているという調査です。われわれがこれから経営計画に向かって議論すべき課題は、こういう評価委員会の報告を踏まえて、経営として議論すべきだと思いますので、そういう形で整理をしていったらどうかと思っています。

 (數土委員長)

 これから、在り方について相談して進めていきましょう。

 (井原委員)

 1点だけ申し上げたいのですが、今後の調査の在り方はそれとして、少なくともこういう結果は、貴重な一つの見方、一つの結果であることは間違いなく、「今回出た結果を組織の中で解釈して動いていく」、「議論して生かしていく」と昨年おっしゃいましたが、今回もそれに近いような意味合いのことを見解としてお述べになりました。せっかく出た結果を、いかに経営としてあるいは執行として活用していくのかということについては、単に参考にするという言葉ではなく、具体的にこのように生かしたのだということをぜひ今後ご説明いただきたいと思います。昨年、私は、NHKのVFM(Value for money:コストに見合う評価)について、経営計画で言えば方針7における目標数値になっているので、ぜひこれを内部化して、どういうふうに活用したのかという議論をしていただきたいと申し上げたのですが、今回結果が出ているのみです。有効な数値目標だとすれば、今回のVFMが1.71から1.73になったということがどれほどの意味があるのかということや、これを上げることについては、何らかの検討ができるのか、できないものなのか。これも含めて、出された評価結果を執行の中で具体的に生かしていただきたいということをお願いしたいと思います。

 (數土委員長)

 今、非常に重要なことをおっしゃったのですが、経営委員会で評価報告を受ける時は、執行部としては、こういう答申を受けて、この提言とこの提言を具体的に次期経営計画にこのように盛り込みたいということを箇条書きにして説明してもらうのがいいと思いました。こういうことが非常に必要なことだと思いますが、それがなくてただ報告を受けるのであれば、経営としては不十分ではないかと思います。

 (松本会長)

 いずれにしろ、経営のことは自分たちで考えるしかないのです。こういう形での評価は、この中のどれをどのように参考にするかということについて、われわれがいろいろ施策を進めるうえにおいて、考えていくべきです。この中で特に新しい時代のサービスについて提言されていますが、こういうものはまさに行っていこうと思っています。全体的にこの評価を上げる努力をしていくのですが、まず、われわれが行うことはきちんと柱を立てて考えていくことだと思います。そしてその実施結果として評価が出てくるものと考えます。ただ、私が若干疑問に思っているのは、最後に評価委員の方がプラスマイナスをされますが、むしろ、そのままアンケートを取ったままのものを挙げてもらったほうがいいのかなということを考えながら、きょうは聞いていました。

 (數土委員長)

 私も、統計学の専門家なものですから、必ずしも納得いくところばかりではなくて少しおかしいとは思います。

 (井原委員)

 モデル構築の問題は昨年、いろいろと議論したところです。私は出された結果を主体的に判断して活用するところは活用してくださいと言う意味で申し上げました。

 (倉田委員)

 1点だけ簡単な質問をよろしいでしょうか。「視聴者視点によるNHK評価 平成22年度報告書」の107ページを見ますと、「あなたはこの1年間にNHKの経営や組織に関する情報について見聞きしましたか」という質問に対して、「いいえ」の人が60.8%もいるのですよね。この経営に関するアンケートに関しては、この約60%を除いた方々を対象にしたアンケートなのでしょうか、それともこういう人たちも含めて経営についてのアンケートを取っているのでしょうか。

 (益田経営企画局専任局長)

 

 視聴者調査は、全国無作為抽出のサンプルを基に行っています。母数はその方たちですから、見聞きしていない人たちも含まれています。

 (倉田委員)

 全く見聞きしていないのに、経営に関してだめだとかいいとかということを答えているわけですね。

 (益田専任局長)

 先ほど会長からありましたように、これはあくまで視聴者の意向をそのまま伝えるものと割り切って、委員会は加減点を行わないという考え方もあると思います。しかし委員会としては、先ほどからご意見が出ていますように、視聴者の皆さまはNHKの経営について十分な知識を持ち合わせていませんので、視聴者がご存じない部分について、委員会がNHKの活動を見て、それを補足するという意味で評点を加減しています。どちらに割り切るかということはあるのですが、現在のところ視聴者からよく見えない部分を評価委員会が加減点という形で補っているということはご理解いただければと思います。

 (幸田委員)

 見聞きしていない約60%の方は、受信料を支払っている人なのですか。それともそれは分からないのでしょうか。

 (益田専任局長)

 無作為抽出ですので支払っていない人も含まれています。調査では、受信料を支払っているかどうかについても質問していますが、自己申告ですので実際の内訳は定かではありません。

 (數土委員長)

 最後にまとめさせていただきますが、やはり経営の根幹に影響するような意見をわれわれがピックアップしようというものですから、こういうものについての評価委員会やその在り方については、執行部の会長以下と経営委員会で多少は協議させてもらいたいということが私たちの意見ですので、よろしくお願いいたします。

 

 (2) 平成22年度NHK連結決算について(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)(資料5)

 (石田理事)
 それでは、22年度連結決算についてご報告いたします。連結決算は、経営の透明性の向上、視聴者に対する一層の説明責任を果たすことを目的に、放送法に規定はありませんが、自主的な取り組みとして内規に従い作成しているものです。お配りしている資料は、連結財務諸表、監査報告書、および説明資料2点です。連結財務諸表は、企業会計原則をベースに作成しており、監査法人から、適正意見をいただいています。
 それでは、連結決算の内容につきまして、ご説明します。資料の「平成22年度連結決算の要約」をご覧ください。連結決算のポイントを、緑の枠内にまとめています。まず「連結の範囲」ですが、連結子会社13社、および、持分法適用会社2社により連結決算を行っています。子会社等の名称についてはページ下段に記載しています。
 続いて、「連結経営成績」についてご説明します。次のページに「比較連結損益計算書」を掲載しています。受信料の増加等により経常事業収入が増加したこと等から、一般企業の経常利益にあたる経常収支差金は前年度比145億円増の293億円となりました。経常的な活動におきましては、増収増益といえる状況です。ただし、22年度は、単体決算においてご説明したように、アナログ送受信設備に係る固定資産撤去費用引当金繰入を特別支出に計上しています。こうしたことから、最終的な、当期事業収支差金でみますと、前年度比70億円減の38億円の黒字にとどまりました。なお、欄外に(注)として記載していますが、連結決算においては、一般的な企業会計に従い、消費税につきまして、税抜き方式を採用しています。このため、受信料の決算額につきましても、先ほどのNHK単体決算の金額とは異なっていますが、実質は同じものです。下のほうに、過去5か年の当期事業収支差金の推移について記載しています。22年度の、連単倍率は、2.01で、例年に比べ大きくなっていますが、これは、先ほど説明しました、固定資産撤去費用引当金の計上により、NHKの当期事業収支差金が19億円にとどまったことによるものです。
 続きまして、右側の「比較連結貸借対照表」をご覧ください。資産合計は前年度末比247億円増の9,887億円となりました。また、固定資産撤去費用引当金の計上に伴う「その他の固定負債」の増加等により、負債合計は前年度末比206億円増の3,481億円となりました。純資産合計は前年度末比40億円増の6,406億円となり、自己資本比率は63.1%となりました。財政状態は、引き続き、健全であると言えます。表の下に、ご参考までに、過去5か年の資産および資本の推移を記載しています。資産の連単倍率は、1.1倍規模、自己資本比率は65%前後で、安定しています。
 最後に、「連結キャッシュ・フローの状況」についてご説明します。最後のページをご覧ください。事業活動による収入が投資活動による支出を上回ったこと等により、現金および現金同等物の期末残高は、前年度末から444億円増加した。1,722億円となり、健全なキャッシュ・フローを維持しています。

 (數土委員長)

 要望ですが、カラー刷りの単独決算のサマリーのような分かりやすい資料を連結決算でもお願いしたいと思います。それを作ることはたいした労力ではないと思いますし、分かりやすいと思いますので、次回からお願いできればと思います。それから、NHKの経営は、放送法では単独決算ということが主体になっていますが、経営委員会では連結決算というものをより前面に出した話にすべきではないかと私は思います。できたらそのようにしていただきたいと思っています。

 (大滝委員)

 グループ全体の人員自体は実は10何年、そんなに変わっているわけではないのです。だから、本体は順次減ってきているというのはそのとおりなのですが、グループ全体のベースで見ると、ある程度水平状態になっているという議論などもグループワイドでいろいろな物事を考えるようにしたほうがいいと思っています。特に次期の経営計画では放送と通信の融合の問題とか人材の育成の問題とか、全部含めた議論をしていくほうがいいと思うので、基本的には連結ベースで議論することをできるだけ経営委員会の中でやってほしいと思います。

 (數土委員長)

 例えば人件費は、単独だけで人件費だと言っています。ところが、連結では関連会社の部分は物件費になってしまっています。それでは、やはりわれわれの意識も誤らせることになってしまうのではないかと思います。連結で、人件費は1人あたり何百万円というような表示にしていかないと、合理的なものにならないのではないかと思います。ぜひそういうことで、前に進めていくことをお願いしたいと思います。

 (井原委員)

 確認ですが、これは任意監査とはいえ、会計監査人の報告をいただいているのですね。

 (石田理事)

 独立監査人の報告書を添付していますが、適正に表示しているという報告をいただいています。

 (數土委員長)

 単独決算に対する内部監査あるいは監査委員会と同じような思いで接していってもらいたいと思いますので、松本会長にお願いしておきたいと思います。

 

 (3) 契約・収納活動の状況(平成23年5月末)(資料)

 (大西理事)
 まず1ページをご覧ください。放送受信契約総数の増加状況です。第1期は、被災地を中心に東日本大震災を事由とした放送受信契約の解約などが先行して発生していますが、全国が移動世帯の早期契約化など、契約総数の確保に取り組み、前年度同期を2.4万件上回る13.2万件(進捗率33.1%)の増加数を確保しました。なお、障害者免除や公的扶助受給世帯などの増加による有料契約から全額免除への変更は、前年度同期と同水準の2.7万件となりました。
 2ページをご覧ください。衛星契約増加は、14.0万件の増加となりました。東日本大震災やセーフティネットの申し込みに伴う衛星契約から地上契約への変更などの影響があったものの、前年度同期と同水準の業績になっています。なお、衛星契約取次数は、前年度同期と比較すると委託契約収納員による取次は113%となり、法人等・自主申出他を含めた全体でも114%になりました。
 3ページをご覧ください。当年度の収納額は1,060億円で、増収水準は前年度同期を下回っていますが、19.7億円の増収が確保できています。前年度受信料の回収額実績は、30.3億円となり、前年度同期と比較して1.6億円上回りました。また、前々年度以前受信料の回収額実績は、6.4億円となり前年度同期を0.7億円下回りました。こちらは、全額が雑収入として計上されます。
 4ページをご覧ください。口座・クレジット増加は、前年度を3.2万件上回る16.3万件(進捗率40.8%)となりました。未収数は、4.0万件を削減して第1期末現在数は200.3万件となりました。東日本大震災に伴う災害免除適用については、原発事故に伴う免除適用は災害対策基本法に基づく避難勧告等を1か月以上にわたり受けた方を対象として実施していますが、今回、「警戒区域」に加えて「計画的避難区域」「緊急時避難準備区域」「特定避難勧奨地点」についても、免除対象とすることについて、6月24日、総務大臣の承認を受けました。本件についても免除適用の手続きを進めていきます。
 次に、災害免除適用の全体状況です。災害救助法適用の対象自治体は194で、155の自治体がNHKの災害免除に該当する対象となります。そのうち被災者一覧などの情報を提供いただける自治体は122で、106の自治体から5月末までに被災情報の提供をいただいています。自治体からの被災情報の提供やNHKの現地調査などにより、すでに済んでいる免除の確定数は9.4万件となり、今後は、残りの自治体からの被災情報の提供や個別の申請および冒頭の原発事故に伴う追加分を加えて、数値が確定していくことになりますので、もう少し時間をいただければと思います。

 (石原委員)

 1ページの右下に、全額免除の変更数と書いてありますが、まだ震災による免除の数字はほとんど入っていないということでしょうか。

 (大西理事)

 これは、障害者免除や公的扶助受給世帯などの全額免除数ですので災害免除数は入っていません。

 (石原委員)

 その数はまだきちんと把握されていないということですか。

 (大西理事)

 概数は把握していますが、原発事故に関連してさらに適用を広げたりしています。ただし、当初約50万件と申し上げましたが、それよりは対象世帯は少なくなるのではないかと考えています。

 (石原委員)

 前の経営委員会で、大西理事は6億円の減収と言っていましたが、あの数字はどこから出てきたのですか。

 (大西理事)

 それは減収ではなく、第1期の請求額について、6億円分請求を止めているということです。通常であれば、4月にご請求をして免除申請いただいたら、ご返金するということになるのですが、甚大な被害を受けているところについては、市単位、町単位で4月のご請求を保留しているということです。

 (石原委員)

 全容はいつごろ分かるのですか。

 (大西理事)

 全体状況は6月末ぐらいには分かります。ただし先ほど申し上げましたように、原子力発電所の事故による免除については、まだ続いていきますので、増えることがあるかもしれません。

 (石原委員)

 思ったより経営への影響が大きくないような感じがしますがそんなことはないのでしょうか。

 (大西理事)

 首都圏、大阪、名古屋などほかの地域での契約総数が前年度より伸びています。

 (石原委員)

 その地域で伸びているということは、東北の分を補っているということですね。

 (大西理事)

 そういうことです。

 (松本会長)

 東北地方で減る分をほかの地域で補うということで今営業活動を行っています。

 (數土委員長)

 これまでの経営委員会でもお伝えしていますが、地域ごとの活動状況について、全体が論理的かつ定量的に把握できるような報告が必要ではないかと思います。よろしくお願いします。

 (井原委員)

 契約・収納活動を厳しい経済社会環境の中で努力されているというのは伺いましたが、先ほどからの委員長などのご発言にもありますが、経営委員会としてはやはり高い営業経費について強い問題意識があります。ただ、その営業経費について判断する、考えるうえでは、的確なデータや情報が望まれます。今まで例えば契約増加や収納促進のために契約収納対策経費がたくさん必要になったとか、口座振替等の手数料が増加した等のお話を承ってきています。この契約・収納活動の報告に合わせて、いわば入りに合わせて、それに係る経費について総括して、内訳を含めた状況を開示いただくことはお願いできますか。

 (數土委員長)

 ここは経営委員会ですので、いくら使ったのかということも出してもらわないとだめだと思います。契約数がいくら上がったとか何%になったのかという報告だけでは経営会議の報告ではないと思います。営業経費をいくら使ったのかということも併せて示してもらわなければいけないと思います。そして前年度はいくら使っているかという比較も必要です。例えば営業経費との対比を見て、全然契約数が伸びていないにもかかわらず、多額の経費を使っているのであれば考えないといけないと思います。また、衛星契約と地上契約に対してどれだけ金を使っているのか、どちらがどういう方法で使っているのかということも示してください。

 (松本会長)

 実際にどうしてそういう経費がかかるのかというと、集金できないところほど何回も訪問するからなのです。何回も何回も行って、それでも払ってくれないというところを人海戦術で対応しているのです。行かなければもらえませんので、何回も繰り返して行っていると、訪問数に対して数%は契約に結びつくのです。だから何回も行くということになっているのです。ですから、この人海戦術をやめる以外、このコスト削減はできません。

 (數土委員長)

 その人海戦術がどういう経費がかかって、どういう状況になっているのかということを経営委員会に示してください。私が経営委員に就任するときも、総務大臣から営業経費についてはよくよく考えてくださいと言われています。

 (松本会長)

 経費減の方法としては、多分行く回数を減らすことですが、一方で収納が上がらなくなるということになります。むしろ手法を変えるしかないのではないかと思います。今、営業改革推進委員会というものを作り、今のようなことについて抜本的にシステムでやるような方法はないのかと検討しています。一定の人が訪問して「お支払いいただかないと困るのです」というような話を繰り返しして、その積み重ねで、収納額が上がっているところがありますが、そのままで今後ずっといくのかということになると、なかなか難しい。今、小野副会長を委員長に大西理事を副委員長にして、そういうものの近代化をやろうと検討しています。それぞれのエリアでどれぐらいかかっているかを分析することも必要ですが、それ以上に今の方法を変えた方が早いのではないかと思っています。

 (數土委員長)

 今のおっしゃったことを最初の1ページ程度にサマライズして、それから現在の状況を表示して、問題点にはどう対処しているかということを説明していただければありがたいと思います。

 (石原委員)

 何回も訪ねて集金するには外注化が一番いい方法だろうと思います。確実に増収にもなると思います。ただ、その外注先に支払っている金額が妥当かどうかということはもう1回きちんと検証してもらわないといけないと思います。これが600億円もの大きな営業経費になっています。600億円の中には別の経費も入っているのかもしれませんが、集金にものすごいお金を使っていることは間違いありません。金額が妥当か否かについて説明してもらえないかと前から申し上げているのです。

 (小野副会長)

 今、会長からもありましたように、支払率を数%上げるのにものすごくコストをかけています。口座引落とし等の契約者は3,200万ほどですが、そこは少ない経費で収納ができるという状態ですので、非常に効率がいいのですが、数%を上げるのに、何度も訪問することで収納しているということもあります。しかし、支払率を上げるということにある種大きな意味を持たせてコストをかけているという状態です。その辺の説明はなかなか難しいところがありますが、数字をきちんとご説明できるようにするにはどうしたらいいかということを、検討の枠組みを作ってこれから考えていこうと思います。ご指摘いただいている地域別のデータなどについても、説明性が高まるように、営業を中心に全局的に検討していこうと思います。会長から出されたもう1つの宿題は、全協会挙げて収入に対する意識をきちんと持って、営業を支える方策として、全局的にどういう方法があるのかということです。今後はご指摘いただいた数字も積極的にご説明できるように努力していきますので、今しばらくお待ちいただければと思います。

 (數土委員長)

 ですから、次回にはこの報告と併せて営業経費、営業活動の在り方というものをできるだけ報告していただきたいと思います。

 (倉田委員)

 営業改革推進委員会はとても期待が持てると思います。いい試みだと思うのですが、人海戦術以外に営業改革推進委員会の中で具体的にどのようなアイデアが出ているのかということをお伺いします。

 (大西理事)

 今でもオールNHKという取り組みは行っていますが、これから全協会を挙げて取り組んでいきます。会長からは近代化と言われていますし、高度化を含め、公的情報であるとか外部情報を活用して訪問活動をより効率的にするためにはどういう方法があるのかを検討していきます。そこに住んでいらっしゃるのか、住んでいないのか、だれが住んでいるのかということが把握できればと思っています。どういう形で、どのようなものが入手できるかということとか、NHKは公共放送であるということから、受信料を支払わなくてはいけないということをご理解いただくような取り組みとして、放送でPRするだけではなく、今以上にさまざまな展開ができないかを検討するなど、3つ程度のワーキング・グループにそれぞれの部局のメンバーが参加して、次期経営計画を含めてさらに進化させていこうということです。この3年間、経営計画の中で営業局は第2ステージと言って、訪問集金を廃止したり、地域スタッフのパワーシフトを行ったり、あるいは民事手続きによる支払督促を全国展開してきました。皆さんが全員受信料を払いたいというような制度になれば一番いいのですが、転居してもなかなかお届けいただけない、受信機を設置しても契約していただけないというところをお訪ねして、説得して、契約していただき、受信料を集めるという仕事をどのように効率的にしていくのかということをさらに研究していきたいと思います。すべていい結果になるかどうかは分かりませんが、全局的にトライしていきたいと思っています。

 (松本会長)

 細かいことまではまだ分かりませんが、全体では年間で億の単位の回数を訪問しています。その訪問回数のすべてはなくせません。やはり訪問しないと集められないのが受信料制度のシステムですが、1つの視点としてあるのは、訪問回数をどれくらいまで縮められるかということです。それから、契約というものの拘束力、それに対する裁判の拘束力がありますから、そういうものを活用してどれくらいまでなら、対抗要件が得られるのかということもあります。これは丁寧に行わないといけませんが、受信料の支払いというものに対する倫理観は上げていく必要があり、よく考えながら行っていく必要があるのだと思います。

 

 (4) 予算の執行状況(平成23年5月末)(資料)

 (石田理事)
 今年度より、月次の財務報告資料につきましては、予算の執行状況を中心にポイントを絞ってご報告いたします。主な変更点としましては、予算の執行状況を「予算と実績の比較」および「前年度同月実績との比較」とし、重要な項目について詳しくご説明いたします。これまで記載していた損益計算書は予算の執行状況と重複しているため省略し、また貸借対照表は月次単位での大きな変動要素がないことから四半期ごとにご報告いたします。では、5月末の予算の執行状況につきまして、ご説明いたします。
 一般勘定の状況です。事業収入につきましては、予算6,926億円に対し1,145億円の収入がありました。進捗率は16.5%となっています。一方、事業支出は、予算6,886億円に対し1,089億円の支出がありました。進捗率は15.8%となっています。この結果、事業収支差金が55億円の黒字となっています。事業収入は、受信料収入を中心にほぼ順調に推移しています。一方、事業支出は、契約収納費、退職手当・厚生費が若干標準進捗率を上回っているものの、全体としては堅調に推移しています。
 続きまして、事業収入のポイントについてご説明いたします。5月末の受信料の実績額は1,117億円となりました。地域スタッフや法人委託等による契約・支払再開活動への一層のパワーシフトに取り組んだことや、移動世帯の早期契約化などに取り組んだことなどにより、東日本大震災による免除の影響を取り戻し、予算に対する進捗は標準進捗率と同じ16.7%となっています。のちほど「受信料の状況」において、受信料収入の内訳をご説明いたします。
 副次収入の5月末実績額は7億円であり、予算に対する進捗率は8.0%となっています。映像商品の売上減や出版不況等の影響に加え、震災の影響による計画見直しから番組テキスト関連の展開が遅れ、やや低い進捗率となっています。
 雑収入は、前々年度以前受信料の回収額が増加しています。
 続きまして、事業支出についてご説明いたします。国内放送費の5月末実績額は469億円、予算に対する進捗率は16.5%となっています。東日本大震災に伴う取材経費が増加していますが、大相撲夏場所が技量審査場所となり中継放送を見送ったこと等もあり、堅調に推移しています。
 国際放送費の5月末実績額は20億円、予算に対する進捗率は14.4%となっています。今年度よりスタートした番組の制作費や、英国でのハイビジョン化開始による整備費等の支出がありましたが、全体としては堅調に推移しています。
 契約収納費の5月末実績額は101億円、予算に対する進捗率は17.0%となっています。契約・収納体制の強化や移動期における取次数の増加により、地域スタッフ等の手数料が増加し、やや高い進捗率となっています。
 受信対策費の5月末実績額は15億円、予算に対する進捗率は5.2%となっています。デジタル化で電波が受信できなくなる新たな難視聴地域やビル陰共聴等のデジタル化対策に係る経費助成の決定に一定の期間を要することなどにより、支出額が少なくなっています。
 退職手当・厚生費の5月末実績額は96億円、予算に対する進捗率は17.1%となっています。22年度における年金資産運用結果の悪化により退職給付費が増加し、やや高い進捗率となっています。
 続きまして、2ページをご覧ください。参考としまして、「予算の進捗率」と、「デジタル化対応経費の執行状況」を記載しています。「予算の進捗率」では、事業収支の各項目の進捗状況を、進捗率のグラフにより分かりやすく示しています。デジタル化対応経費につきましては、建設費と事業費に分けてそれぞれの実績額および進捗率を記載しています。「デジタル化対応経費の執行状況」でありますが、建設費が予算192億円に対して5月末実績額が3億円、進捗率は1.6%、事業費が予算349億円に対して5月末実績額が20億円、進捗率は5.8%となっています。建設費については、新たな難視対策計画に基づく中継局の整備を引き続き進めており、今年度は約20局を開局する予定です。5月末までに9つの中継局の建設が完了し、開局しました。事業費については、デジタル難視聴対策など受信環境整備の支援や、アナログ放送終了に向けた周知広報活動の推進による支出があります。今後は、7月のアナログ放送終了に伴う問い合わせに対応するため、NHKふれあいセンターの体制強化などによる支出が増加する見込みです。
 続きまして、3ページをご覧ください。前年同月との比較についてご説明します。受信料収入は、契約総数・衛星契約の増加および未収の削減により、前年同月の1,089億円に対し28億円増加しています。
 副次収入は、震災の影響による計画の見直しから、番組テキスト関連の展開が遅れ、前年同月の13億円から6億円減少しています。
 雑収入は、前々年度以前受信料の回収が、前年度と同様に高い水準で順調に推移しています。事業支出について、国内放送費は、大相撲夏場所が技量審査場所となり中継放送を見送ったことなどにより支出が減少した一方で、東日本大震災の取材に伴い報道取材費が増加し、全体としては前年同月の467億円に対し1億円増加しています。
 国際放送費は、今年度スタートした番組の制作費や、東日本大震災に伴う取材・制作経費などが増加し、前年同月より0.9億円増加しています。
 契約収納費は、公開競争入札の実施地域拡大など、外部委託の強化により、前年同月の97億円に対し4億円増加しています。
 受信対策費は、受信環境インフラのデジタル化支援やアナログ放送終了に向けた周知広報を推進していることにより、前年同月より3億円増加しています。
 退職手当・厚生費は、22年度における年金資産運用結果の悪化により、退職給付費が増加しており、前年同月の94億円に対し2億円増加しています。
 続きまして、4ページをご覧ください。参考としまして、「主要事業支出項目の前年同月比較」を記載しています。国内放送費、国際放送費、契約収納費につきまして、それぞれの実績額と増加理由を記載しています。
 続きまして、5ページをご覧ください。受信料収入は、5月末時点で1,117億円と対前年同月で28億円増加しています。5月末までに収納に至った受信料収納額は、対前年同月で19億円増加して1,060億円となっています。今後6月以降24年度末までに回収していく金額は、前年同月を8億円上回る57億円を見込んでいます。
 なお、5ページの右下に、参考としまして「前年度・前々年度以前受信料の回収額」をグラフにより記載しています。前年度受信料につきましては、今年度回収予定額66.6億円に対して、5月末で30.3億円を回収しています。また、前々年度以前受信料についても、5月末実績額は6.4億円となっており、いずれも順調に回収が進んでいます。
 7ページをご覧ください。最後に、番組アーカイブ業務勘定の状況についてご説明いたします。番組アーカイブ業務勘定の5月末実績は、事業収入が1.3億円、事業支出が3.1億円となっています。5月は見逃し見放題契約・特選見放題契約ともに増加基調を維持したことなどから、売上は4月を上回る過去最高となりましたが、事業収入の進捗率は11.1%にとどまり、事業収支差金はマイナス1.7億円となりました。

 

 (5) 平成22年度年金基金の状況

 (吉国理事)
 年金の基金規模については,21年度末の時価総額2480.6億円から、22年度の運用による損益が76.3億円のマイナスとなり、22年度末は2404.3億円となりました。これにつきましては、22年度の年金制度改正に伴い、より安定的な運用を図るため、基金運用における資産配分について見直しを行っています。

 

 (6) 視聴者対応報告(平成23年4・5月)について(資料)

 (塚田理事)
 平成23年4・5月の視聴者対応報告です。資料をご覧ください。ポイントをしぼって3点、報告します。
 1点目は2ページ、「東日本大震災」関連の放送についての反響です。3か月間に寄せられた視聴者の声は11万4,365件にのぼっています。3ページでは、4月以降放送した震災に関連する番組のなかで反響が多かった上位10番組を紹介しています。最も反響が多かったのはETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」でETV特集としては異例の1,500件を超えています。避難生活の中で健康を維持するための裏ワザを紹介した「ためしてガッテン」や「ハーバード白熱教室」のマイケル・サンデル教授の「大震災特別講義」などにも多くの反響が寄せられています。4ページからは、今ご紹介した「ネットワークでつくる放射能汚染地図」の反響について詳しく分析しています。番組は、科学者たちのネットワークで放射線汚染地図を作成していくプロセスを追った番組ですが、主な意見は、「丁寧な検証と非常に具体的な説明で、これまでの情報ではわかりづらかった現状が非常によくわかった」などの好評意見と、「インターネットでとても話題になっており、ぜひ視聴したい」など再放送希望が多く寄せられました。5ページ、6ページでは、インターネット上の主なブログと掲示板での反響やNHKふれあいセンターへの反響を基に分析したものです。このように「放射能汚染地図」については、インターネット上で話題が広がり、子育て世代の女性を中心に多くの反響が寄せられたものと考えられます。
 2点目は、新番組、連続テレビ小説「おひさま」の反響です。5月末までの寄せられた反響は3,671件となっています。主な意見は「番組を見ているとこれまでの生活はぜいたくすぎたのではないかと感じる。震災後の今、生活を見直すきっかけの番組になるような気がする」など好評意見が多く寄せられています。それとともに、当時の服装や小道具などの時代考証にかかわる指摘が多く寄せられています。事例を1つ紹介していますが、5月27日の放送を見た視聴者から「茂樹の着ている“予科練の制服”が5つボタンになっているが、7つボタンが正しいのではないか」という指摘がありました。番組担当者によると、須藤家の次男、茂樹は予科練を卒業して実戦部隊に配属され、この時点で上等飛行兵曹に進級していて、着ているのは予科練の制服ではなく、海軍下士官の第一種軍装だということです。このほか帽子や帽章など当時の衣装について複数の指摘がありましたが、対応資料を用意して、いずれも当時の事実を取材して考証した衣装であることを説明しました。
 3点目は、11ページ、視聴者の声の総数と内訳です。4月は転居シーズンにあたることや受信料の年間振替予定通知が最も多く送付されることなどから受信料関係が前の月より5万件あまり増えました。また、7月の完全デジタル化が迫る中、技術・受信相談が4月、5月と増加しています。

 

 (7) 地方放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 (木田理事)
 地方番組審議会委員として、平成23年7月1日付で、4名に委嘱します。北海道地方の坂本昌彦氏(株式会社北海道ネイチャーセンター代表取締役社長)、北海道地方の櫻井健治氏(函館山ロープウエイ株式会社代表取締役専務)の2名の方は新規委嘱です。九州地方の南慧昭氏(南陽山勝光寺住職)、北海道地方の木下正明氏(鳥取神社宮司)の2名の方は再委嘱です。また、23年9月1日付で、関東甲信越地方の秋田紀子氏(千葉大学大学院園芸学科研究科准教授)に新規委嘱します。四国地方の中村有無氏(四国電力株式会社常務取締役)が任期の途中ですが、本人からの申し出により退任されることになりましたので、委嘱を解くこととしました。

 

 (數土委員長)
 全体を通して、何かご意見はありますか。

 (安田代行)

 先ほどの塚田理事からのご紹介がありましたように、放射能汚染に対する問題が国民の最も大きな関心の1つですので、やはりNHKの役割として、今後もぜひこの問題に焦点を当ててほしいと思います。それを掘り起こすような、えぐるような、言いにくいことにも焦点を当てて、例えば放射能汚染された汚泥処理の問題などは大変重要な問題で、これらを番組で取り上げていただいて、政治を変えていくというぐらいのインパクトを持つ番組を作っていただけるように、切にお願いしたいと思います。

 (石原委員)

 今の話とも関連があるのですが、原子力発電所は、定期検査が終わったにもかかわらず稼働していません。このまま稼働しない場合、来年の3月か4月には日本の原発54基は全部止まってしまうことになります。もしそうなると日本はエネルギーの大危機が来るわけですね。エネルギーの需給は国家の基本ですから、これについてはどういう番組を作っておられるのか、どうしようとしているのかということです。また、外資を中心に産業は日本からどんどん出ていっています。九州へ移転の話でだめになったものもあります。こういう問題については、扱い方が難しいのですが、ぜひ何か考えていただければと思います。

 (數土委員長)

 私も、今の安田代行と石原委員の意見に関連して、特に今井理事にお願いしたいのは国際放送についてです。国際放送では、今、例えば、日本は来年の3、4月になって、今稼働している17基が全部止まってしまうとしたら、それに対して日本はどう考えているのかというようなことを、国際的なスタンダードで世論をリードできるような、例えば3人とか4人の政治家や科学者にも入ってもらい、座談会のような番組を作ってもらえればと思います。香港や中国でもよく放送しているディベートのような番組です。原発に限らず、日本の財政や税制の問題など、根幹に関わるようなことを国際放送で放送すると、いい番組になるではないかと思うのです。NHKにとって、底力や期待感を発揮できるチャンスが巡ってきているのではないかと思います。しかも、それを国際的に行うということです。国際的に発信する以上は、国際的に通用する見識を持った意見を言わないとだめだと思います。聞いてもらえるかどうか分かりませんがよろしくお願いします。

 (今井理事)

 個別の番組、放送の内容については、経営委員の方々から注文を受けるというのはちょっといかがと思いますので、それは別として、放送として、どのようなものが出せるかということをさまざま検討したいと思います。

 (冷水理事)

 先ほど安田代行、それから石原委員からご意見があった点については、私どもも全く同じ問題意識を持っています。少し番組の宣伝をさせていただきますと、今週の日曜日にも「NHKスペシャル」で、特に放射能汚染の問題について取材して放送します。また、各地の原発の稼働状況、それによるさまざまな問題についても、いろいろな自治体のアンケートやその他もろもろも含めて、ニュース番組でも大きなテーマとしてこれまでも取り扱ってきています。このあと、それを取りまとめた形で世界の動向も併せて伝えていくということを考えています。そうした原発に関するニュースや報道番組には、継続して精力的に取り組んでいきたいと思っています。

 (幸田委員)

 それに関連してですが、もう少し大きな視点で言えば、原子力発電に対して、人類がきちんとコントロールできるかどうかということだと思うのです。それと同じことが財政の問題でも言えて、アメリカやヨーロッパの財政問題も、インフレも含めてですが、結局、そういうことを人間がコントロールできるのかどうかという問題にも共通すると思うのです。日本は課題先進国だと言われていますが、ちょうど日向前専務理事が、ジャパンシンドロームという形で取り上げて番組を制作するとおっしゃっていたので、とても期待していたものの、結局、震災が起きて、それが放送できなくなりましたが、その流れの延長線での話です。先ほど委員長がおっしゃったように、高齢化、人口減少、財政の問題や日本のエネルギーの自給の問題も含めてですが、人類がコントロールできると思ったことが本当はできてなかったという、大きな根幹のところに今、地球中が直面しているので、海外においても、特に先進国などは、非常に共感を持ってくれると思います。それぞれの問題の背景も含めて、大きな視点で、ぜひ取り上げてほしいと思います。

 (數土委員長)

 どうもありがとうございます。最後に誤解のないようにお伝えしますが、われわれは個別の番組に干渉しようとは一切思っていません。

 (安田代行)

NHK経営委員会|過去の議事録|第1145回

 

 

 上記のとおり確認する。

 

 平成23年7月12日    

數 土 文 夫

 

井 原 理 代