●経営委員会後の記者ブリーフィングおよび森下経営委員長就任記者会見要旨 |
2019年12月24日(火) (第1344回)森下委員長、村田代行、高橋委員
【経営委員会報告】
(森下委員長)
礒山 誠二 | (いそやま せいじ) | 委員 |
水尾 衣里 | (みずお えり) | 委員 |
長谷川 三千子 | (はせがわ みちこ) | 委員 |
【記者会見】
(森下委員長 就任の挨拶)
あらためて、このたび委員長職を拝命した森下です。重責ではありますが誠意を持って他の委員の皆様と協力して務めさせていただきたいと思います。
現在のNHKは、公共メディアの実現に向けて、大変重要な時期にあると考えています。
NHKには、ネットの同時配信のスムーズな実現、三位一体改革の推進、新たな受信料制度の研究、次期経営計画の策定など、大変重要な課題があります。
来年度は中期経営計画の策定もあります。そのような意味で非常に重要な課題を抱えています。
(村田代行 就任の挨拶)
代行に指名された村田です。委員長同様、自らの重い責任をしっかりと受け止め、精一杯臨んでいきたいと思います。
代行としての役割はまず、なんと申しても委員長のサポート役に徹することだと考えています。これまでの私の限られたものではありますが、知識と経験を生かしながら、最善を尽くして行きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【以下、質疑応答】(注記がない場合、回答は森下委員長)
<放送と通信の融合について>
Q.通信と放送の融合の時代を迎え、通信業界での長い経歴を生かした抱負を聞きたい。
A.放送と通信の融合は十何年前からの課題である。なかなか変わっているということはなかったが、ここにきて、非常に動画配信の時代になっている。世界的にも動画配信が進んでいる。日本の放送業界、NHKはもちろんそうだが、民放も含めて、ネットの配信というものを真剣に考えなければならない。特に、2025年には間違いなく5Gが相当普及すると思う。その2025年頃に高速の端末をどんどん使い、ローカル5Gも含めてかなり普及する段階であり、相当、ネット配信の方にいろいろなものが動いていくと思う。そういった意味で放送業界として、ここ数年の間にきちんとやっていくべきだろう。NHKだけでなく、日本の場合は民放との二元体制なので、放送業界全体として、しっかり取り組んでいく必要があるだろう、というのが個人的な意見だ。同時配信をやるにあたっては、民放ときちんと歩調を整えて民放と一緒にこの分野を育てていかないといけない。協力すべきところはどんどん協力すべきだろう。特に、地方関係、地方民放とNHKの地方放送局が協力できることがあればどんどん協力していくべきだ。そのようなことで、お互いにこの分野を広げていくことが、これから2025年までにやるべきことだと強く思っている。通信をやっていた立場から見て、放送業界にぜひやってもらいたいと思っている。
<森下委員長の互選について>
Q.通信業界での経歴を評価されて今回選出されたと思うか。
A.(高橋委員)選定については、選定される候補者はいったん全員外に出るルールになっているので、その間、私が議事進行をした。非常に多くの意見が出たが、その中の主たる意見の一つとして、いまご指摘になった点は明確な話として言われている。
Q.委員長の選任の過程について詳しく聞きたい。候補者は何人いたのか、どのような点を重視したのか、といった点を聞きたい。
A.(高橋委員)委員長の選出の手順は、10年間決められたとおりに進められている。当然、委員長として特に有するべき要件、これは5項目ある。それを踏まえて、各委員が自薦、他薦を問わずペーパーで投票して、それを集める。最終的にはそこで出た方々が委員長候補者としてお引き受けいただけるかどうかの意思確認をする。その意思確認ができた段階でその候補者から所信表明を受け、他の委員との間で質疑応答を行う。最後、候補者がそこにいるとなかなか言いにくいこともあろうかと思うので、いったん外に出て、残りの委員で合議をして決める。今回、人数は別として、自薦、他薦は分からないが、複数の方がいたが、他の方々はいまの状況で、時間的に引き受けることが難しいということで辞退された。したがって、森下委員が残った。これまでも経営委員会において、オピニオンリーダーであり、いまご指摘いただいたとおり、特にインターネット関係について非常に高い見識を持ち、また、監査委員として厳しく、NHKのガバナンス強化に力を尽くされた。さらに、代行として委員長が不在のときに、非常にスムーズな議事進行であるとか、全員の意見を聞きながらまとめていく力というのは、各委員みんなが了知している。全員一致で、森下委員長の就任について賛成だったということだ。
Q.念のため確認だが、複数人いて、森下委員長以外は辞退されるということで自然と残られ、皆さんで議論した上で決定したということか。
A.(高橋委員)そうだ。
Q.きょうは委員12人全員出席か?
A.(細田事務局長)委員は1人欠席だった。
Q.互選の結果、全会一致で選出ということで表現としてはよいか。
A.(細田事務局長)それで結構だ。
<村田委員長職務代行者の就任について>
Q.委員長職務代行者に村田委員を選ぶ過程についても教えてほしい。
A.村田さんを代行に指名したのは私だ。非常に見識の高い、経験のある方なので、それと今まで経営委員会での発言等を含め、代行としてやっていただくのに最適な人だということでお願いした。
Q.村田委員の専門は国際政治だったり国際関係論だったりだと思うのだが、そういった経験も踏まえて、現在のNHKの経営課題や、どういった点が一番重要と考えているか、伺いたい。
A.(村田代行)国際政治と関係しているかどうか分からないが、グローバル化の波が急速に進んでいる中で、三位一体と言われるさまざまな改革の課題を抱えているということと、大きな組織であるということで、ガバナンス上のさまざまな課題を抱えているだろうと思う。しかし同時に、豊富な人材がいて、豊かなリソースがあって、非常に大きな可能性をもった公共メディアであろうと思っている。
<三位一体改革について>
Q.インターネット活用業務実施基準案の差し戻しがあって、経営状況のチェックを強く求められていくと思うのだが、抱負は。
A.三位一体改革というのは、まさに三位一体でやらないと問題解決にならない。業務改革も受信料制度もそうだが、やはり根本的には受信料制度のところを合わせていかなければいけない。私が思うには、やはり従来もずっといろいろなことを、効率化等取り組んでいる訳だが、やはり今回特に同時配信も含めて、いろいろな新しい時代になるので、そういったことも含めて、そういったことを見越した上で改革していかないと、本当の抜本的な改革にならないのだろうと思う。どうしても現状の中で改革をするというのは、現状の改善はできても、なかなか大きくは変えられない。現在でも、いまの執行部が改善したり、コスト削減をしたりしていることは間違いないのだが、それは現状のいろいろな対策の中でやらざるを得ない。限界もあると思う。だから今度中期経営計画をつくるということもあるし、環境状況が非常に変わってくるので、その中で将来を見据えた形で、あるべき姿、受信料制度も含めて、そういったことを総合的にやっていかないと、本当の抜本的な改革にならないのではないかというのが私の考えだ。今度、会長も代わるので、新しい目で会長がいろいろ見られると思うので、そういった意味では、私は次の三位一体改革を、将来の体制に向けて変えていくという感覚で取り組むのが可能ではないかなと期待しているところだ。
Q.受信料の抜本的な改革というと、例えばさらなる値下げというのもあるのかと思うし、あとネット時代の受信料の、繰り返し指摘されているとは思うのだが、そういうところにも、大きく踏み出すべきではないかというようなお考えかどうかお聞きしたい。
A.そういうことを含めて、とにかく2025年頃を考えれば、さっき言ったように5Gが一般的に使われて、高速大容量の通信ができる時代で、世の中が変わっていくわけだし、動画配信もどんどん一般化すると思う。そういう中で、やはりいまのやり方でいいのかというのは、いろいろ問題が出てくると思う。そういうものを含めて、やはり基本的なところを考え直さなくてはいけない。どういう形がいいのかというのは、勉強してみないとわからないので、これからちょっと研究してもらわなければいけない。いずれにしても、従来の延長線でやっていたのでは、なかなか大きな改革にならないのではないかと思う。
<会長への注意について>
Q.NHKの自主・自律を先頭に立って守る立場になるが、かんぽ生命を巡る問題を振り返ってどう思うか。
A.経営委員会は一切放送の編集権等に関与したことはないし、そのようなことをやるつもりは全くない。あくまで私どもは役員、会長、理事の職務執行を監督するという立場であり、ガバナンス上指摘されることがあれば、きちんと指摘しなければならない。そのような意味で私どもは経営委員会としての職務をきちんと果たしていくつもりである。
Q.かんぽ問題で何度か森下委員長も国会に呼ばれて、野党合同ヒアリングの当初の説明をした時には、非公表の議事録の有無などの説明をめぐって、二転三転された経緯があったと思う。かんぽの問題では統括チーフ・プロデューサーの説明のしかたが不十分だったということで、会長を厳重注意するほどの重大な問題だったという判断をしているが、自分たちの説明やことばについては、自分たちではどう評価、判断されているのか。
A.非公表のほうは、私どもの認識が不足しており、みなさんにご迷惑をかけ、申し訳なかったと思っている。しかし、その話とチーフ・プロデューサーの話とは全く性質が違う。チーフ・プロデューサーの話は単に不適切だったということではなくて、間違った説明をしている。「経営と制作は分離している」と現場の責任者が言ったということは重大な話であって、単なる不適切な発言では済まないというのが、その時の認識である。現場がそのように認識しているとしたらガバナンス上の大変な問題であるということであって、経営委員会としては見逃せないということで指摘した。
Q.議事録の問題も含めて経営委員会自身の改革すべきところ、直すべきところというのはどういうところにあると思うか。
A.さきほど言ったように議事録等については、今回非公表の案件でも必要な部分については何らか議事録に記載していくようなことも含めて考えなくてはいけないということがあるが、これはまだ委員会では議論していない。できるだけ透明性を高めていくということは大事だと思っている。
<新会長について>
Q.例えば前田会長が金融界のみずほ銀行出身であるとか、同じ昭和20年の生まれであるとか、前田会長とどのように相対していくのか。
A.基本的にはNHKの次の課題だと思う。現在の上田会長が全体最適も含めていろいろな改革をした訳だが、その次の改革は三位一体改革も含め、新しい次の時代に向けて変えないといけない。次の前田会長は大きな組織改革をしてきた方だから、NHKの次の時代に向けてどう改革するか、その中で三位一体改革を実現できるかということでは私は非常に期待をしている。
以上