NHK 解説委員室

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待ったなし!どうする 少子高齢化

総合
令和4年9月19日(月・祝)午後1時05分~2時05分 総合テレビ
出演
柴田理恵さん、宇治原史規さん、高橋みなみさん、竹田忠解説委員、山本恵子解説委員、牛田正史解説委員
司会:杉浦友紀アナウンサー

「人口減少」と「少子高齢化」で何が起きるのか?

竹田 忠  解説委員

たとえば有識者による日本創成会議の報告書は、2040年までに 全国の地方自治体の半数が消滅の危機に瀕する恐れがあると指摘しました。 住民も減るし、税金を払う人も減って、もう市町村役場が維持できなくなるだろうと。 同じような理由で様々な専門家から指摘されているのが▽鉄道やバス路線では今後、廃線や減便が相次ぎ、空き家や買い物難民が増え、学校や企業の数が減ったりして、地域の活力や経済の規模が細ってしまうだろうと。また警察官や消防士や自衛官が不足して 地域や国を守る力が減っていくことも懸念される。

▶︎「家族の姿 “もはや昭和ではない”」

昭和時代は、国民的アニメのような夫婦に子どもふたり、あるいは3世代同居の世帯が昭和55年(1980年)時点で全体の6割を占めていた。しかし、令和の今、2020年には、一人暮らしの単独世帯が4割と最多となるなど、家族の形が変わってきている。それにもかかわらず、政策や制度は昭和なままなので、ことし公表された「男女共同参画白書」では「もはや昭和ではない」と、今の時代に合わせた制度設計や政策が必要と指摘している。

高齢者を誰が支えるのか?「介護」を考える

牛田 正史  解説委員

これから介護が必要な高齢者が増加していくのに伴って、必要な介護職員の数もどんどん大きくなっていきます。
もし介護職員が2019年度の時点から増えないと仮定すると、3年後の2025年度には32万人、2040年度には69万人足りなくなると予測されています。
これは非常に大きな数字です。


しかし、これを打開するのは容易ではありません。 介護の求人倍率は、施設で働く職員で4倍近く、訪問介護は約15倍です。 つまり15の事業所が1人を取り合っている状況です。
なので、介護の仕事を希望する人をもっと増やしていかなければなりません。
特に若い人材です。
介護職の平均年齢は50歳。
高齢化が進み、訪問介護は4人に1人は65歳以上が担っています。

これらのデータを見ると「厳しいんじゃないか」と思うかもしれませんが、実は現場を取材すると希望の光も見えてきます。 若い介護職員が「現場を変えていこう」あるいは「仲間を増やしていこう」と声を挙げ、行動を起こし始めているんです。

東京の介護施設では、若いリーダーが中心となって介護の在り方を変えていこうという取り組みが進んでいます。
おむつの着用を減らそうと、トイレへ誘導したり、食事の工夫をして、出来るだけ自然な排せつを促します。
お風呂では、機械の入浴を出来るだけ止めて、本人の力も生かして入浴ケアを行っています。
改革を進めている施設長の坂野悠己さん(42歳)は、「おむつ」「拘束」「誤嚥性肺炎」「下剤」「脱水」「機械浴」「寝かせきり」、これらを出来るだけ減らす、“7つのゼロ”の目標を打ち立てています。
これらの取り組みは、職場で働いている介護職員にとっても、やりがいや気持ちの良い介護に繋がっていて、退職者は減ったといいます。
また、孤立しがちな若い介護職員を支える活動も広がっています。
「KAIGO LEADERS」(カイゴリーダーズ)というコミュニティーは、若い介護職員がどうしが繋がって、お互いに日々感じている悩みや疑問を話し合ったり、みんなで解決の方法を探ったりしています。
普段、利用者とスタッフの間だけで完結してしまうことがある介護の世界で、横のつながりを作っていこうという取り組みです。


離職率の推移

こうした「若い介護人材を支えよう」「魅力ある職場づくりを進めよう」という取り組みは介護業界全体でも、広がってきています。
1年間にどれくらいの人が職を離れたのかを示す「離職率」。
介護はもともと非常に高く、一時は20%を超えていましたが、最近はどんどん低下していって、直近では14点3%。(2021年度介護労働実態調査)
集計の仕方は異なりますが、全産業の平均とほぼ変わらない水準となっています。


平均賃金の比較

ただ、若い人材の確保を進めるには、絶対に避けて通れないことがあります。
それは賃金の引き上げです。
介護職員の平均賃金は、徐々に上がってきていますが、まだ全産業と比べて月額で6万円近い開きがあります。(2020年度時点)
介護事業所の収入の大半は「介護報酬」です。
これは介護保険制度の中で支払われるお金で国などが決めています。
介護職員の賃上げには、国などの報酬引き上げ、あるいは賃金助成などの対策が、どうしても必要になってきます。
それも一過性の対策ではなく、継続的な引き上げが求められます。
国がリーダーシップを取って、もっともっと賃金を上げていくことが大切なんです。

子育てに優しくない社会~止まらない少子化~

山本 恵子  解説委員

保育園に預けたくても預けられない待機児童問題では、2016年、「保育園落ちた 日本死ねというブログが話題となりました。 その後も、日本社会の子育てのしづらさは、あらゆる形で表面化しています。

先日、子育て中の女性がバスの中で怒鳴られ、ベビーカーを蹴られたという SNSの投稿もありました。
子どもの泣き声が迷惑がられたり、満員電車に乗ると怒られたり…
小さい子を連れた親子に辛く当たる「子連れヘイト」の現象が、あとを絶ちません。


日本はなぜ子ども、子育てしている人に冷たいの?

理由の一つとして、少子化が進み、周りに子どもがいない環境が続いたので、 子どもに対する「耐性」がなくなってきていることが考えられます。昔は、近くに子どもがたくさんいたので、泣き声や遊ぶ声がするのが当たり前だったので、気にならなかったということです。
私自身も出産後、子育てすることの辛さ、厳しさを実感してきました。電車の中などでは、泣かないように、迷惑かけないように気を遣う。少子化といいながら、待機児童問題は解消せず、保育園は狭き門で、入れなかったら職場に復帰できないという不安。保育園が決まり、育休から仕事に復帰したら、職場では出産前のように残業や泊まり勤務ができないので肩身は狭いし、昇進は遅れるし、「子育て罰」という言葉がありますが、こんなに子どもや子育てしている人に厳しい環境では、少子化になるのは当然との思いがあります。

出生数と合計特殊出生率の年次推移

こちらは、年間の出生数と一人の女性が一生の間に産む子どもの数、出生率のグラフです。 少子化が、問題として初めて認識されたのはおよそ30年前の1989年。干支が丙午だった1966年の1.58を下回った「1.57ショック」をきっかけに、ようやく国が少子化を問題として認識し、対策を取り始めました。
初めての対策「エンゼルプラン」が打ち出されたのはその5年後で、その後も予算もほとんど増えず、有効な対策が打ち出せないまま、出生率は減り続け、バブル崩壊もあり、2005年には過去最低の1.26となりました。
日本の少子化対策は「Too little Too late」と言われていて、去年の出生率は1.30。生まれる赤ちゃんの数も、第2次ベビーブームのときは200万人を超えていましたが、年々減り続け、去年は過去最低の81万1604人。ことし前半期の出生数は約38万人4000人あまりで、このままのペースでいくと、ことしは初めて80万人を下回る可能性があります。予想より早く、少子化が進んでます。


少子化の原因は?

少子化の原因の一つは、結婚する人が減っていることが挙げられます。去年の婚姻数は50万件あまりと戦後最低になりました。その要因として、今年度の「男女共同参画白書」で、
「積極的に結婚したいと思わない理由」について聞いたところ、男女で差があるもののうち
女性が高いのは「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」、
男性が高いのは「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」でした。
それを裏付けるようなデータもあります。

男性の年収別有配偶者率のグラフ

こちらは、正規、非正規、パート・アルバイトの男性の、配偶者がいる割合、結婚している割合のグラフです。正規の職員・従業員と非正規の間では、配偶者がいる割合が大きく差があることがわかります。30-34歳では、非正規雇用のパート・アルバイトの人は15.7%と正規雇用の人の4分の1となっています。
特に、年収が低いと配偶者のいる割合も低くなっていて、若い人たちの雇用の安定、賃金アップなどの経済的な問題にメスを入れないと抜本的な少子化対策にはならないと言えます。 合わせて、女性側の理由「仕事、家事、育児、介護を背負うことになる」から考えても、 「男は仕事、女は家事、育児」という昭和型の制度、意識を変えていくことが鍵と言えそうです。


少子化対策のヒントとなる兵庫県明石市の取り組みとは

少子化について20年以上取材してきたなかで、どうしたらいいのか、その解決のヒントとなる自治体が出てきました。兵庫県明石市です。

明石市5つの無料化

明石市では「こどもを核にしたまちづくり」を掲げ、独自に5つの無償化を行っています。 遊び場や公共施設の入場料、満1歳までおむつやミルク、第2子以降の保育料、中学生の給食費、18歳までの医療費、これら、すべてが無料、しかも、所得制限はありません。
所得制限を設けないことで「すべての子どもを支援する」というメッセージが伝わり、また現金を配るのではなく、おむつやミルクといった必需品や保育料、医療費、給食費など、サービスが継続して無料で提供されるので、若い世代が「明石市では安心して子育てできる」と実感できるというのが大きいと感じました。また、おむつやミルクも、経済的に助かるというのもありますが、取材させてもらった家庭では、コロナ禍で外出もできず孤立しがちな時期に、子育て経験のある人が毎月おむつを届けるために自宅まで来てくれ、相談にも乗ってくれたのがうれしかった、と話していました。子育て世代のニーズにあった、きめ細かな支援が行われていると感じました。

では、どうして、明石市はこうした支援ができるのか。財源についても市に聞いてみました。 お金があるからできた、というのではなく、子育て支援をする、と決めて、必要な施策のための費用は、不要な公共工事を見直すなどして、やりくりして捻出したそうです。

好循環

こうした結果、明石市では、好循環が生まれています。まず、子育て支援の施策をしたことで、市民が「安心して子育てができる」と実感し、明石市に転入してくる人たちも増えて人口が増え、出生率は2018年には1.70になりました。 人口が増えると、街ににぎわいが生まれ、地域の経済が活性化し、税収が増え、財源が生まれます。そして、その財源で、子どもだけではなく、高齢者などへの施策が可能になっているということです。「お金がないから」と子育て支援を後回しにするのではなく、まず、「子育て支援施策をする」という順番が重要だと思いました。


海外の少子化対策は?

各国の家族関係社会支出のGDP比の比較

こちらは、国が、家族を支援するために支出される現金給付やサービスにどれぐらい支出しているかのグラフです。児童手当や育休手当、就学援助など。出生率が高い国は、支出が多いことがわかります。日本は、というと、1.73%と少ないことがわかります。

家事育児時間、国際比較

また、重要なのは、子育て支援に支出を増やすことだけではありません。 こちらは、6歳未満の子どもを持つ夫婦の、家事・育児関連時間を表したグラフです。どの国も女性の方が長いですが、最も差があるのが日本で、夫は1時間23分に対して妻が7時間34分となっています。ドイツは夫3時間、妻6時間11分、フランスは夫2時間30分、妻5時間49分、イギリス夫2時間46分、妻6時間9分、スウェーデン夫3時間21分、妻5時間29分と出生率の高い国は、夫の家事・育児時間が長いことがわかります。

夫が休日に家事・育児をする時間が長くなるほど、第二子以降の生まれる割合が高くなる傾向があることもわかっています。性別を問わず「仕事も家庭も」両立できる仕組みや制度が 重要です。

OECDの分析で、先進国では、男女の格差、ジェンダーギャップが少ないほど、出生率が高まる傾向がある、という結果も出ています。2022年のジェンダーギャップ指数は、日本は146カ国中116位、ドイツ19位、フランス15位、イギリス22位、スウェーデン5位でした。こうしたことからも、少子化対策は、少子化にだけ焦点を当てて取り組むのではなく、男女の格差、ジェンダー格差の解消が不可欠です。

「もはや昭和」ではありません。制度も意識も対策も、現状に合わせて「令和」モデルに、アップデートしていく必要があると思います。

竹田 忠  解説委員

そもそも、日本は少子化対策に力を入れようにも、そのための独自の財源を持っていないことが問題です。かつて、このことが大きな議論になったことがあります。それが、こども保険構想です。「こども保険」というと、こどもを持っている人だけが関係する小さな仕組みのように感じるかもしれませんが、全く違います。例えば提案されている方法の一つは、年金、医療保険、介護保険など、様々な公的保険の財源から少しずつ、拠出金としてお金を出してもらい、いわば、基金として財源を確保するというものです。
なぜ、そのようなことが許されるのか?それは、年金も医療も介護も、およそ社会保障というものは、個人が積み立てたお金ではなく、その時、その時の、若い人が払う保険料や税金が中心となって出来ているためです(これを賦課方式と言います)。つまり、社会保障を維持するためには、こどもが多く生まれ、育ち、働いてもらうことが必要で、そのためのお金を、各制度が今後も維持・存続するために、少しずつ負担してもいいのではないか、と言う考え方です。消費税の引き上げで対応すべきという考えもありますが、今の10%から更に引き上げるのには大変なエネルギーと時間がかかります。まず一刻も早く、財源を確保する方法として検討する価値があると思います。

▶︎「子育てしづらい国の こども家庭庁」

人生100年時代に備えて、国は二つの大きな制度改正を行いました。
一つは「できるだけ長く働けるようにする」。それがいわゆる「70歳就業法」です。今はすべての企業に対し、希望する人を65歳まで雇用することを義務づけていますが、更にこれに加えて、希望する人が70歳まで働けるようにすることを努力義務として定めました。
そして、もう一つは、年金制度改正。年金は本人が希望すれば、60歳から 70歳までの間で、いつからもらい始めてもいい、という仕組みでしたが、今年4月からは、この幅を更に広げて、もらいはじめを最大75歳まで遅らせることができるようになりました。 これを“繰り下げ”と言います。
最大70歳まで繰り下げると年金の毎月の額が142%増える。そして最大75歳まで遅らせると184%に増えるという仕組みに変わりました。
できるだけ長く働いて、社会を支えてもらい、
年金を後に取っておけば、額も増える、という仕組みにしたわけです。

このように制度改正はある程度、行われたわけですが、
問題は1人1人が、どうすれば活き活きと、
自分らしく、長く働けるのか?という問題です。

リポートの中で、定年退職された方が「何が自分の本当の仕事なのかがわからない」という発言をされていましたが、これは日本の多くのサラリーマンにとって共通の悩みです。つまり日本では、社員が通常、何の仕事をするかが決まっていないのです。
これは「メンバーシップ型雇用」と言われますが、
組織の一員であることだけが決まっていて、具体的に何の仕事をするかは、
定期異動で営業とか経理とか企画とか転勤とか、会社の都合でその都度、決められる。いろんな仕事を経験することで磨かれる、ということもあれば、いろんな仕事をたらい回しにされて、何でも屋さんとして卒業するおそれもある。人生 100年。会社人生が終わっても、仕事人生は続きます。長く働くためには、 会社の外でも通じる、自分の得意な仕事、やりたい仕事を持っている方が有利です。
欧米など、日本以外の国では、ジョブ型と言われる、仕事の内容やポストを契約でハッキリ決めておく働き方が普通で、定期異動や転勤は基本的にありえない。 最近、日本の企業でも、ジョブ型的な人事を模索する動きが出てきています。
生涯現役の中で、働き方も変化が求められています。

▶︎「70歳雇用で働き方はどう変わる?」
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/370091.html

▶︎「生涯現役のススメ」
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/417742.html

▶︎「ジョブ型雇用とは?」
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/434228.html

▶︎「70歳就業法とは?」
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/439769.html

▶︎「来月から70歳就業法」
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/445264.html

▶︎「人生100年時代の年金改正」
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/466841.html

▶︎「知って得する 年金特集」
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/467856.html

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