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今回のテーマ
処理水放出 私たちはどう考える?
- 総合
- 【放 送】9月18日(月・祝)午後1:05~2:03
- 出演
- 羽田美智子さん、 宇治原史規さん、山崎怜奈さん
解説委員:水野倫之、佐藤庸介
司会:片山千恵子アナウンサー

8/24に始まった福島第一原発の処理水放出。廃炉の過程で必要である一方、地元の水産業など風評への不安は大きい。
福島の現場や消費地は今、どうなっているのか?
そもそもトリチウムとはどんな物質なのか?
「安全」と言われても、それが「安心」につながっていかないのはなぜなのか?
廃炉の見通しが不透明な中、問題の本質、そして私たちにどう関わるのかを、
ゲストを交えたクロストークで議論する。


なぜ今処理水放出?トリチウムとは?
水野 倫之 解説委員


福島第一原発では建屋が破損していていまだに雨水や地下水が浸入してきています。それが溶け落ちた燃料デブリに触れて汚染水がどんどん増えています。汚染水は非常に放射線が強いためALPSという浄化設備を使って浄化していますが、ほとんどの放射性物質は基準以下にできますけれども、トリチウムは基準以下にはできないため、処理水という形でずっとタンクにため続けていました。その量134万t、タンクも1,000基あまりで、政府・東電は今後の廃炉作業にスペースが必要なことを考えればタンクはこれ以上作れず、減らさなければならないと説明し、国の基準の40分の1未満に薄めた上で、処理水を海洋放出することになりました。

トリチウムは原発を運転すると必ず冷却水の中にできます。
また自然界にもあって、われわれの体の中にもごく微量ですが含まれています。
ただ放射線のエネルギーはどうかというと、非常に弱くて、ほとんどが水の状態で存在しているので、仮に体の中に入ってきても比較的早く排出されるとされています。専門家は濃度が薄ければ影響は考えられないと話しています。
この写真、東電の分析室でビーカーに入った実際に基準を超えるトリチウムが入った処理水を取材したときの様子です。水の状態なので放射線はほとんど飛びませんので、顔を近づけても影響はありません。
また処理水には大元は汚染水ですので、トリチウム以外にも放射性物質が含まれています。第1回目に放出された処理水にはヨウ素やストロンチウム、セシウムなどが検出されていますがすべて基準以下です。さらにこれらも海水で数百倍に薄めて放出されていて、トリチウムもヨウ素もストロンチウムもセシウムなども全部合わせて東電が影響をシミュレーションしたところ影響は考えられないとしています。
佐藤 庸介 解説委員

気になるのは、海水の中のトリチウムは濃度が薄くても、魚がトリチウムを取り込んで体の中にたまってしまったら、もっと濃くなるのではないかということだと思います。
この点について、政府は「これまでの研究では、水の状態のトリチウムが体の中にたまることは確認されていない」と説明しています。トリチウムは、取り込んでも水と同じようにほとんどが体の外へ排出されるから、ということです。魚を分析しても、体の中の濃度と外の海水の濃度がほとんど変わらないことが、その裏付けとなっています。
水産物の輸出に影響
佐藤 庸介 解説委員

中国が日本産水産物の輸入を全面停止したことで、国内の水産業には大きな影響が懸念されています。それは、水産物の中国への輸出割合が高かったからです。
去年1年間に、日本が水産物を輸出した国と地域の割合を見ると、最大は中国で全体の22.5%に上ります。このうち、もっともウエイトが大きいのはホタテで、中国向け水産物のうち、半分以上となる53.6%を占めています。
影響が心配されている要因の1つには、このホタテにダメージが及ぶことがあります。
ホタテの産地は、北海道と青森が大半を占めています。これらの地域を含む北日本の水産業は、このところサンマやサケ、それにスルメイカといった魚介類の不漁に苦しんでいます。その中にあって、ホタテは生産量や価格が安定しているため、今や地域を支える重要な水産物になっています。
中国への輸出が止まった結果、価格が大きく下がるようなことになれば、北海道や青森を中心とする関連業界や地域経済への影響は避けられません。
処理水放出後の福島は
水野 倫之 解説委員

処理水放出の1週間後、私は福島に行ってきました。
「ここから7キロ先に見えます福島第一原発で廃炉の懸案だった処理水の海への放出がはじまりました。作業は24時間体制で行われ今日も460t分の処理水が大量の海水で希釈され沖合一キロから放出されます。」
先月24日。東京電力は、処理水の放出を始めました。トリチウムの濃度が国の基準の40分の1未満になるように海水で数百倍に薄めた上で、沖合1キロから放出しています。
地元福島の人たちは、どう受け止めているのでしょうか。
男性「仕方ないとは思ってます。やらないと廃炉が進まないのは理解していますので。ただ、その都度処理水を輩出した結果を知りたい。それが一番我々市民がもとめているところではないか。」
男性「やっぱり反対ですね。難しいでしょうけど何か(別の方法)があればと思ってます。」
女性「ここの漁師のことを考えると変わらず(魚を)買って食べたりして問題ないっていうのを知らせたい気持ちとでもやっぱりなんで福島なの?っていう思いもあるし一番いい答えなんてない。」

福島県相馬市の松川浦漁港です。
取材したこの日は福島の漁業の主力、底引き網漁の解禁日で、ヒラメなど常磐モノが次々と水揚げされ漁港は活気づいていました。
加えて小型の漁船によるシラス漁も行われ、荷捌き施設に次々と並べられ、セリにかけられていきました。
女性「今までより高い。1080円。でもその時によって品物にもよるからね。」
放処理水放出後1週間あまりたったこの日、中国の輸入停止の影響もあってナマコがやや値を下げたほかは、去年の解禁日と比べて大きな差はありませんでした。
漁業者は今回の放出をどう受け止めているのか。

相馬の海で26年漁師をしている石橋(いしばし)正裕(まさひろ)(44)さんです。
石橋「当初から反対はしていたんですけどももうなんか放出ありきのような状況で、もう放出がもう最優先っていう形でなされたことによって、漁業者の理解醸成っていうのがまだ深くはなってなかった」
石橋さんは、原発事故の後、検査をして安全性が確認されたシラスの試食会を東京で行ったときの光景が、今でも忘れられないと言います。
石橋「目の前でね、子供さんがね、わーって走ってきて食べるってきたのにかかわらず、その親御さんが、福島の魚食べさせないでくださいなんていうことで目の前で捨てられたことも。相当、これどうしたらいいんだろうか、自分たちの漁業ってこれからどうなるんだろうっていう不安はありました。」
処理水放出は1回目が終わり、これまでに検出された海水のトリチウム濃度は最大で1リットルあたり10ベクレルと、放出停止を判断するレベルを大幅に下回っています。
福島の沿岸漁業は、およそ10年続いた試験操業から、本格操業に向けて歩み始めた段階ですが、水揚げ量は震災前の2割程。
処理水の放出は30年続くと見込まれるだけに、その影響がどう出るのか、漁業者の懸念はさらに続くことになります。
石橋「市況による変化の値段の上がり下がりなのか、その風評による値段の下 がり方だとか、そこがまだはっきりも、まあ、わからない、何かをきっかけに、お客さんのその気持ちとか、福島の魚を受け入れてもらえない、ていう形になったら、やっぱ値段は当然下がると思いますし、 その、消費者の気持ちとか、不安とか、そういう部分がものすごく影響する状況ではあるなとは思ってますけど。」
海洋放出以外も検討された
水野 倫之 解説委員

処理水の処分方法について政府は専門家を集め、技術的にどんな方法があるのか検討しました。その結果、海への放出や熱して水蒸気に大気にして放出する、また地下の地層に埋めたり固めたりするなど5つの方法が提示され、その後社会学者も入ってさらに検討を進めた結果、海への放出か大気へ放出する2種類の方法が現実的だとしました。でも、放出したあと、監視しなければならず、その実績があるのは、海への放出しかないとなり、技術的に海洋放出が決まりました。
福島の魚については、これまでもセシウムについて福島県がまず検査し、加えて福島県漁連が国の基準の半分の厳しい基準を自主的に設けて、陸揚げごとに魚種ごとに毎回検査をした上で安全なモノだけが出荷されています。

政府は風評被害対策について基金など総額1,000億円余りの支援策をもうけていて、すでに何件も相談も来ているということです。実際に風評で被害が出た場合は、東京電力が過去の市場の価格などのデータを元に基準を作っていて、それに基づいて賠償することになっています。
復興後押しする新たな動きも
佐藤 庸介 解説委員

今、改めて消費者や生産者の間で、福島の水産業の復興を後押ししようという動きが生まれています。そのうちの1つが「日本の台所」、豊洲市場の特設店舗です。
この店舗、福島、宮城、岩手の3県の水産物を一般に販売する目的で、豊洲市場の仲卸業者でつくる東京魚市場卸協同組合が設けました。来年2月まで月に2回、毎月第1、第3土曜日に開いています。

9月最初の開設日となった2日に訪れると、朝8時の開業まもなく、多くの買い物客が詰めかけていました。
訪れた客の1人に何を買ったか聞いてみると、福島産のヒラメの刺身でした。あわせて処理水の放出をどう受け止めているか尋ねたところ、「中国からの批判みたいなこともありますが、私個人的には気にしていないという感じですね」と淡々と話していました。
また、夫婦で訪れていた別の買い物客にも聞いたところ、「きょうは福島産をメインに探しに決ました。妻は福島産のものを気にして、なるべく買っているような感じがします」と話し、福島を「食べて応援」しようという人たちの思いが伝わってきました。
この場で、みずからも鮮魚を取り扱う仲卸会社を経営する、組合の亀谷直秀副理事長に放出による影響を聞いてみると「何かあれば、ものが売れないという話がすぐ出てくると思いますが、皆さん冷静に受け止めていらっしゃるのではないか」と話し、大きな変化は感じていないということでした。
一方で、積極的に情報を発信することで安心感を高め、福島産の水産物の消費を促進しようという流通業者もいます。
宮城・福島県内に60を超える店舗を構える「みやぎ生協・コープふくしま」では、地元産の水産物を優先して仕入れ、販売しています。
取材のため、訪問した9月1日。この日、開かれた会合では、正確な情報を共有するため、本部から各地域の代表へ説明が行われていました。

河野雪子副理事長はまず、「処理水の海洋放出後も、魚介類や海藻を食べても、健康への影響を心配する必要はないと考えています」と生協の基本的な立場を明らかにしました。そのうえで、処理水についての想定問答集も配って、正確な説明をするよう呼びかけました。
みやぎ生協・コープふくしまでは、今後、自主的にトリチウムの検査を行い、政府や東京電力が行っている検査の結果が正しいかどうか、検証したい考えです。
河野副理事長は、検査のねらいについて「政府と東電も検査をしてホームページに情報はアップしていますが、その数字の意味が分かりにくい」と話しました。
そして「私たちから一方的なことは言えないので、消費者が一人一人選ぶということになると思います。自分の目で見て耳で判断して購入してほしい」と訴えていました。
水野 倫之 解説委員

創業40年の割烹料理店。お店の一押しは、フグです。
実は福島では、温暖化の影響もあってかこの3年でトラフグの水揚げ量が10倍以上に急増。
新たな特産品として注目を集めています。
お客さん「コリコリおいしい。はじめて、うふふ」
お客さん「お友達にもお伝えして一緒にきたい」

店主の鈴木光二さん。このチャンスを活かし、福島の漁業を後押しし、地元を盛り上げていきたいと考えています。
鈴木「フグを食べるっていう文化が全然今までなかったので、やはりそのスタートっていうの、とても可能性があると思うんですよね。ちょっとそれに賭けてみようと。」
市の観光協会も全国にPRしようと、福島で水揚げされるトラフグを「福とら」と名付け、ブランド化を目指して協議会を立ち上げました。
鈴木さんは、全国に出荷するための加工技術を習得しようと、山口など全国各地の専門業者を回って指導を受けています。
県内で取り扱う店を増やすため、フグ調理の免許取得へ向けた講習会も開催する予定です。
鈴木「たくさんの人に来ていただいて皆様と一緒に相馬市をフクの街としても盛り上げられればなっていうのを思っております。」
風評被害が起こるメカニズム
佐藤 庸介 解説委員
それでは、なぜ、風評被害が起こってしまうのでしょうか。
埼玉大学の有賀健高教授は「風評被害」が起こる原因について、次の3つに整理しています。

①代わりのものがある(「代替材」がある)
②情報がハッキリしない(「情報の不確実性」がある)
③情報格差がある(「情報の非対称性」がある)
まず、①については、たとえばヒラメは福島県だけでなく、ほかの産地でも漁獲されます。なので、福島県産になにか不安な点が生まれれば、「だったら、ほかの産地のヒラメを買う」という行動につながってしまいます。農産物や水産物は多くの場合、産地が複数あるので、代わりのものに移りやすい面があります。
次に②については、情報がハッキリしないと、消費者はどのくらいの確率で問題が起こるか知ることができません。特に「放射線の影響」というのは、多くの人にとって専門的すぎて情報の正しさや重要性を判断できないので、結果的に「念のためにその食べ物を避けよう」ということになりかねません。
そして、③については、たとえば魚であれば、漁業者や流通業者の側はどこで漁獲され、どのような状況で流通したなどという情報を持っていても、消費者の側は一般に見た目や大まかな産地など限られた情報しか分かりません。そこでその魚に疑いを持つと、ほかのものを買おうとすることになります。
たとえば先ほど紹介した、みやぎ生協・コープふくしまは、自分たちで検査を行うことで、③の情報格差を解消しようとしているとみることも可能です。風評被害を抑えるには、こうした原因を1つ1つ丁寧に取り除くことが重要になります。
放出決定のプロセスは?
水野 倫之 解説委員
処理水放出については、2015年、国と東京電力が福島県漁連に対し、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と約束しています。
しかし、有識者や専門家を交えて処分方法を検討する国の小委員会に、漁業者が参加することはありませんでした。そしておととし、政府は、処理水を海洋に放出する方針を決定。
その後、漁業者を中心に、1500回以上、説明会を行ったといいます。
ただ今回、最初に技術者で5つの方法を決めて、そのあと社会学者も入って海洋放出のほうが実績もあるから現実的だとして決めました。その段階でほぼそれしかないっていう感じになって、もう漁業者としては選択の余地はない状態になったとも言えます。
佐藤 庸介 解説委員
専門家は、たとえ科学的には安全だとしてもそれを押し付けてはならず、不公平だと思ったり、説明する人たちを信頼できないと感じたりする場合などには、リスクを受け入れがたくなると指摘しています。
まだ十分に水揚げが回復していないにもかかわらず、ふたたび福島に心配事がもたらされること、そして、政府・東京電力への信頼が損なわれたままで放出が行われることは、いずれもそうしたケースに該当する可能性があります。
それだけに「処理水の放出について、まだ理解したわけではない」と考える漁業者には、「政府は先に結論を決め、安全だと一方的に説明して、受け入れなければならないという雰囲気を作った」と映ったのは当然ではないでしょうか。

処理水放出は廃炉の入り口
水野 倫之 解説委員

今回の処理水問題、事故の発生から最長40年で完了させるという福島第一原発の廃炉全体の工程の中でどういう位置付けかというと、入り口段階、準備段階のものです。
格納容器には、核燃料が溶け落ちて構造物と混じり合った大量の「燃料デブリ」が、残されたままです。極めて放射線が強いため人は近づくことが出来ず、その取り出しは最難関とされ、いまだ本格的な取り出し方法のめどは立っていません。

それでも、国と東京電力は、廃炉は、事故から最長40年で完了させる計画を変えていません。
デブリはメルトダウンした3基あわせて880トンあるとみられています。
東電はまずは2号機からの取り出しを検討していて、長さ20メートルぐらいのロボットアームをイギリスのメーカーに頼んで開発し、今、その取り出しの訓練をしているところです。今年度中には取り出したいとしていますが、最初に取り出すのは耳かき1杯ぐらい、数グラムだけです。その数グラムのために、何年も準備にかかり、操作訓練も必死になって進めています。専門家の中にはこの先本当に全部取り出せるのかという人もいます。
しかも燃料デブリの取り出しはすでに2年遅れとなっていますが、廃炉のゴールの最長40年という目標だけは、政府、東電はあくまで変えていません。
しかし海外で燃料が溶け落ちたり、爆発した事故をみると、チェルノブイリ原発(チョルノービリ)などはまだ廃炉完了していません。建屋全体を石棺で閉じ込めましたが劣化してきたため、さらにその上をドームで囲って100年単位で考えることになっていて、廃炉のめどは立っていません。
そして福島第一の廃炉も何をもって廃炉とするのかは決まっていません。事故直後は政府の廃炉工程表には、建屋の解体も明記してありましたが今、その言葉は入っていないんです。廃炉の最終形によって工法なども変わってきます。事故から12年半たっていますので、そろそろ政府は地元も交えて、どういう形で廃炉をしていきますかということについて議論を始める時期に来ている思います。
これまでの課題と教訓をどう生かすか?
水野 倫之 解説委員

この福島第一に限らず、日本で廃炉が決まった原発は24基ありますがまだ1基も廃炉が完了していません。茨城県の東海原発が一番早く、2001年から廃炉作業を始めましたが、遅れていて、当初は2020年頃終わるはずでしたが、今、完了は2030年に延期されています。
私たちが忘れてはならないのは、福島第一原発で発電した電気は首都圏で使われていたということです。その意味では処理水問題も原発も首都圏の人も関わってくる話です。また関西はどうかというと、日本全国で一番原発が多いのは福井県で、そこでできた電気は福井県ではなく、関西の人が使っているんです。そういう意味ではやっぱり、これは全ての国民が関心を持ち続けて、考えてもらいたい問題だなと思います。
事故以降、実際に高濃度汚染水は海に流出しました。そのあともタンクからの漏洩などのトラブルが相次ぎ、政府、東電に対する信頼感があまりない状態が続いてきました。そうした状況の中で、科学的に安全だから薄めて海に放出しますよといわれても、東電などの信頼がまだ完全に回復しているわけではありませんので、そこに一般の人の疑問が出てきても、当然だなと思います。
政府や東電は今回の処理水放出にあたって放出の結果を示すことが重要だとして、海水や魚のトリチウム濃度について、直近、ほぼ毎日、測定してホームページに載せています。でもどれだけの人がホームページを見るのか?
また見たとしても、どうやって検査をしているのか、またベクレルなどの単位に詳しくないと、なかなか理解できません。私もホームページの内容について各省庁の担当に問い合わせてようやく理解できたくらいです。
多くの人に情報が届くようにするためにも測定結果をわかりやすく簡潔に表現し、SNSなどを通じて発信していってもらいたいと思います。
佐藤 庸介 解説委員

NHKのニュースでも、処理水の安全性に関する情報は出していました。
それでも、風評被害はそもそも報道が引き金になって広げる側面があるのは事実です。報道する私たちは、常にその意識を持たなくてはならないと肝に銘じたいと思います。
今回の処理水の放出では、中国が強く反発して輸入規制の強化に踏み切りました。これに対して「中国の措置は、科学的根拠に全然基づいてないじゃないか」と思った人もいるのではないでしょうか。その結果、とても皮肉なことですが、「科学的根拠をもって安全性を判断しなきゃダメなんだ」という考えが広がったのではないかと感じます。
水野 倫之 解説委員
今回のこの処理水の教訓を今後にいかに生かしていくのかが大切になってきます。今後、デブリの取り出しなど難しい問題がいくつも出てきますので、それに備えて先手、先手で、地元の人も、一般の人も交えて議論をしていくような仕組みを作ってほしいとおもいます。もうこれで決まったんだからこれで納得してほしいというような決め方ではなく、政府と一般の国民とちゃんとコミュニケーションができるような体制を作っていかなければならないと思います。
佐藤 庸介 解説委員
今回の取材では、東京と仙台で多くの消費者にインタビューをしました。
話を聞いてみると、「福島を応援したい」と話す人がとても多い印象を受けました。しかも、あまり肩肘を張らず、「もともと福島は大好きなんです!」という人が目立ちました。
一方で、たしかに「少し不安だ」という声もありました。そうした人が無理をするのではなく、まずは自然体で応援したいと思う人たちが福島の水産物を評価して買って、それで産業として支える流れができること。その結果、今まだ震災前の2割にとどまっている沿岸漁業の水揚げを回復させていくこと。そのうえで普段からスーパーで「福島産、よく見るようになったね」と感じて、心理的距離が縮まってさらに水揚げが増えるという循環につながることが大切ではないでしょうか。

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