影山日出夫 解説委員
新政権の発足から2か月。政権交代で変化を迫られているのは、政治主導に振り回されている霞が関の官僚組織だけではありません。相次ぐ政策転換、自民党政権とは様変わりした政策決定の手法、予算編成プロセスを白日の下にさらした事業仕分け。国民の耳目を引き続ける新政権の動きをどう伝えて行けばいいのか。メディアの側も暗中模索の日々が続いています。
長く政治報道に携わって来た私も、今度ほど政治に対する関心の高まりを感じたことはありません。「変わらないもの」「閉塞感」の代名詞のように言われて来た政治の世界が、自分たちの一票で確実に変わりつつある。そんな手応えがあるからでしょう。テレビを見る視聴者の目線も政治報道にくぎ付けのようです。私が司会をつとめた投票日翌日の「討論スペシャル“政権選択”に政治はどう応えるか」は、18.5%というこの種の番組としては驚異的な視聴率(関東地方)を記録しました。番組に寄せられた反響は1万件。その後集中的に編成された政治関連番組の視聴率も一様に高く、その傾向は今も持続しています。
そうした中で、1つ、私が感じていることがあります。それは、メディアが新政権の現状を冷静に伝えて行くことの難しさです。旧政権の政策を180度転換しようというのですから、新政権にとってはすべてが「未体験ゾーン」の連続です。脱官僚政治を目指すという意気込みはいいのですが、役所に乗り込んだ大臣・副大臣・政務官の政務3役も孤軍奮闘の毎日で最近では少し疲れ気味です。その上、想定をはるかに上回る税収の落ち込みで、「政権公約の完全実行」と「国債は増発しない」という鳩山首相の2つの約束がなかなか両立しにくい情勢も生まれて来ました。民主党が目指す政治と現実の“かい離”に直面して、新政権は大変難しいハンドルさばきを求められています。
それだけに、政権が置かれた現状を正確に伝えて行くことがますます重要になっています。新政権に厳しい話も避けて通る訳には行きません。しかし、それがなかなかこちらの意図通り伝わらないことがあります。「新政権を批判するのは早すぎる」「まだ2か月も経っていないのに、水をかけるようなことを言うべきではない」。視聴者から寄せられるご意見・ご要望には出来る限り目を通していますが、新政権発足後はこういうご指摘やお叱りをいただくことが多くなりました。歴史的な政権交代に期待している視聴者の中には、冷静な「現状分析」ではなく、偏った「政権批判」だと感じる方もいらっしゃるのでしょう。新政権への「追い風」の強さを思い知る一方、解説委員としては、誤解を招かないもっと丁寧な解説を心がけて行かなくてはならないと痛感しています。
ただ、新政権であれ旧政権であれ、政治が抱えている問題点は常に事実に基づいて正確に客観的にお伝えして行かなくてはなりません。そこに「難しさ」があります。年末に向けて予算編成作業がいよいよ佳境を迎えます。財源問題に近いうちに決断を下さなければ、予算が組めません。「県外移設」という約束と「日米同盟」をどう両立させるか。普天間基地の移設問題も結論をいつまでも引き延ばすわけには行きません。国民の期待が高いからこそ、新政権がこうした課題にどう取り組んでいるのかをお伝えするのは公共放送の大きな使命です。解説委員室では、「時論公論」と「おはようコラム」だけでも、衆議院選挙後50本以上の政権交代関連の話題を取り上げて来ました。これからも継続的にお伝えして行きます。
事実を踏まえた的確な分析は時に厳しく響くかも知れません。そうした冷厳な目線と、政治の変化に期待する視聴者の目線を1つの解説の中にどう凝縮して行くか。解説委員室も模索が続きます。これからも皆様のご意見をお寄せ下さい。
2009.11.20.