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「ハシナ首相に聞く バングラデシュのこれから」(キャッチ!ワールドアイ)

広瀬 公巳  解説委員

先日バングラデシュのハシナ首相が来日しました。
ハシナ首相へのインタビューを通して、不安定な政治情勢が続いてきた「途上国」から生まれ変わろうとしているバングラデシュについて考えます。

(バングラデシュと日本)
ハシナ首相には16年前にも一度お会いしているのですが、淡々とした物腰は変わっていませんでした。

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こちらをご覧いただきたいのですが、バングラデシュの国旗です。
どこかの国と似ていませんか。

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この国旗は、「建国の父」といわれる、ハシナ首相の父親のムジブル・ラフマン初代首相が、日の出ずる国「日本」にならい考えたものだそうです。
今回、ハシナ首相に会って直接、確認することができました。
太陽を囲むのはバングラデシュの緑だということです。そうだとわかると親近感も湧いてきます。
バングラデシュには日本の企業の進出が相次いでいます。ただ、去年の10月には痛ましい事件も起きています。バングラデシュ北部で岩手県出身の男性が銃で撃たれて死亡しました。
これについて、ハシナ首相、こんな風に話していました。

(ハシナ首相)
「日本人が殺害されてしまったことは申し訳ないです。同じようなことが起きないために
バングラデシュにはどこにどれだけの日本人が住んでいるのか詳しいデータが欲しいです。」

(テロとバングラデシュ)
日本人を守る、ということですが、なかなか難しいことです。ただ、ハシナ首相、人一倍、テロ対策については厳しい人です。
1975年にクーデターで「建国の父」と言われた父親が暗殺された際に国外にいて難を逃れました。政治家として父親のあとをついだあとも、何度もテロで命を狙われています。

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ただ、バングラデシュでは、テロ事件が相次ぎ新しいイスラム過激派勢力の台頭が心配されています。今のバングラデシュはテロ対策が十分に手がまわらない状況です。政治的な混乱が続いている背景についてみていきます。
そもそもバングラデシュというのはどういう意味がご存知でしょうか。実は「ベンガル人の国」という意味なんです。

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バングラデシュはイギリスから独立したパキスタンの一部で東パキスタンと西パキスタンという位置づけでした。宗教の上では隣国はヒンズー教が多いインドに取り囲まれ、言葉の上ではパキスタンのウルドゥ語を押し付けられるという中でベンガル人は窮屈な立場に置かれてきました。そうした歴史的な事情がいまも尾を引いています。

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そうした中でベンガル人の国の独立を果たしたのがハシナ首相の父親です。

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その後も混乱は続きました。ハシナ首相が率いる与党アワミ連盟とジア元首相のバングラデシュ民族主義党が交互に政権を担ってきました。互いが野党になると政権与党を攻撃するということを繰り返してきたのです。

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しかし、おととしの総選挙はハシナ首相が圧勝しています。経済成長率も好調で、バングラデシュは問題ばかりの途上国から抜け出せるかの岐路に立っています。

ハシナ首相、バングラデシュをどう変えようとしているのでしょうか。
独立50周年にあたる2021年までに「中進国」になるという目標をかかげています。日本はその上でも非常に重要な国になっています。

(ハシナ首相)
「日本は農業を中心とした経済から工業化を進めていきました。バングラデシュにとって急速な発展を成し遂げるための大変にすばらしいモデルです。バングラデシュは経済の発展を望んでいます。2021年までに中進国になることを目標に掲げています。日本にはバングラデシュで、特に空港の建設に携わってもらいたいです。それをベースに他の分野にも進出していけるでしょう。日本の投資家がバングラデシュへの投資を推し進めてくれることを願っています。」

インフラ支援となりますと、中国の存在も気になりますがハシナ首相はこんな風に話していました。

(ハシナ首相)
「バングラデシュの外交政策ははっきりしています。建国の父、ムジブル・ラーマンはバングラデシュの独立の後、全ての国や組織と友好関係を保つ全方位型の外交政策をとることを発表しました。インドとの間には国境問題やガンジス川の水をめぐる争いがありました。前の任期中に条約を結んで円満に解決しました。そして、そのあともインドやミャンマーとの国境問題を解決しています。私はどの国とでも友好的な対応や話し合いで問題を解決出来るはずだと信じています。」

(これからのバングラデシュ)
これからのバングラデシュとの関係はどうなっていくのでしょうか。
バングラデシュというと、私たちの日常に密接にかかわりのある国に変わってきています。「メイド イン チャイナ」の製品を作ってきた中国の人件費が高くなって、バングラデシュ製のものも増えています。
ただその背景には、時として現地の厳しい労働環境があることを考えさせられる出来事が3年前にありました。首都ダッカの近郊で縫製工場が入った8階建てのビルが崩壊。工場の労働者など1100人以上が下敷きになるなどして死亡する大惨事がありました。工場で働かされていた多くの女性が犠牲になりました。二度とこのような惨事がないように、日本は防災面での協力も大切ですし、ハシナ首相が参加した先日のG7の場でも女性の力を活かしていくことが確認されました。人材、特に女性のエンパワーメントは国の将来を左右する大きなカギになるとハシナ首相も強調していました。

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(ハシナ首相)
「この世界にいる人間の半数は女性です。どんな社会でもどんな国においても、その全体を発展させようと考えるならば、女性の地位の向上、そして女性の能力の向上これらをより深く考えていくことがどうしても必要なのです。女性を教育すれば、その家族全体に教育が行き渡ることになります。」

(南アジアの女性指導者)
ハシナ首相はバングラデシュを上手く率いていくことができるのでしょうか。
南アジアではテロなどで死亡した父親や夫のかわりにあとを継いだ女性の指導者が国の発展のために大きな役割を果たしてきました。
ハシナ首相は、今も厳重な警備がついているという毎日ですが、父親の意思をついで、ベンガル人が苦しむことなく発展を謳歌できる国づくりを成し遂げようと決意しているのだと思います。

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