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「ミレニアル世代は世界を変えるのか」(キャッチ!ワールドアイ)

出石 直  解説委員

(VTR)
アメリカ大統領選挙の候補者選びで本命中の本命とされていたクリントン前国務長官を激しく追い上げる74歳のバーニー・サンダース候補。
(サンダース候補)
「政治の革命を起こそう」
(支持者の若者)「サンダース!サンダース!」
サンダース旋風を支えているのは「ミレニアル世代」と呼ばれている若者層です。
1980年以降に生まれた30代後半までの「ミレニアル世代」は、今やアメリカの全人口の3分の1を占めています。スマートフォンやインターネットを使いこなす一方、学生ローンの返済や就職難にあえぐ若者達。「ミレニアル世代」はアメリカを、そして世界をどう変えようとしているのでしょうか。

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Q1、ここからは出石 直(いでいし・ただし)解説委員とともにお伝えします。
「ミレニアル世代」というのはちょっと聞きなれない言葉ですが。

A1、「ミレニアル」というのは「1000年の」という意味です。決まった定義はありませんが、西暦が1000年代から2000年に変わる時期に社会に出てきた世代、ざっくりと1980年以降に生まれた大体30代半ばくらいまでの人達が「ミレニアル世代」と呼ばれています。

Q2、この世代、他の世代と何が違うのでしょうか。

A2、まずその数です。

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アメリカの戦後生まれは大きく3つの世代に分かれています。
▽第2次世界大戦が終わってからベビーブームが収束する1960年代までの「ベビーブーマー世代」、
▽1960年代からベトナム戦争が終わった1975年までの「X世代」、
▽そして1980年以降に生まれた「ミレニアル世代」、
「ミレニアル世代」は9200万人とアメリカの全人口の3分の1を占め「アメリカでもっとも数の多い世代」なのです。

この世代は、いくつかの際立った特徴が指摘されています。

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キーワードを並べてみますと、
「デジタル・ネイティブ」「就職難」「未婚・晩婚」「多様性」「無党派」。

Q3、何か日本の若者にも当てはまるような気がしますね。

A3、【デジタル・ネイティブ】もちろんひとりひとり個性があって一概には言えませんが、この世代はインターネットが当たり前という時代に育った「デジタル・ネイティブ」です。スマートフォンやタブレット、そしてツイッターやフェースブック、ユーチューブといったソーシャル・メディアを自在に使いこなし、コミュニケーションの輪を広げています。

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フェースブックの生みの親マーク・ザッカーバーグは1984年生まれ、代表的なミレニアル世代です。

Q4、コミュニケーションの取り方が我々の世代と少し違うという印象を受けますね。

A4、8割がベットサイドにスマートフォンを置いて寝ているという調査結果もあります。【就職難】次に就職難。「ミレニアル世代」はサブプライムローン問題やリーマンショックに端を発したアメリカの経済危機の影響をもろに受けた世代です。学歴によって就職の機会や収入に大きな差があるため進学意欲が高く高学歴なのですが、学費高騰のあおりを受けて多くの若者が多額の学生ローンを抱えています。

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学生ローンの額は2万ドル(218万円)を超えてこの10年間でほぼ2倍になっています。

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非正規やパートタイムでしか職を得られない若者も多く「ミレニアル世代」の平均年収は3万4100ドル(372万円)と全米平均より1万5000ドル近く低くなっています。

Q5、グローバル化によって貧富の格差が広がった時期でもありますね。

A5、大学は出たけれど勤め先がない、ローンの支払いに追われて生活が苦しいといった厳しい経済状況を反映して、結婚しない若者が多いのも特徴です。
【未婚・晩婚】

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結婚年齢の平均は、2013年:男性が29歳、女性が26.6歳で1950年と比べますと6年ほど晩婚になっています。
20歳から34歳までで結婚しているのは30%、とりわけ高学歴の女性の晩婚傾向が顕著です。
「結婚したくない」のではなく「結婚したくてもできない」という若者が多いのです。
このため親との同居や、持ち家ではなく借家に住んでいる人が、前の世代に比べ多くなっています。

Q6、これまた日本とよく似ていますね。

A6、【多様性】一方で、この世代は、アメリカの歴史上もっとも多様性に富んだ世代でもあります。

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人種構成(15-34歳)を見てみますと、白人が58%、黒人が14%、ヒスパニックが21%、アジア6%となっていて、ヒスパニックやアジア系の割合が他の世代に比べて多くなっています。「ミレニアム世代」は、この50年ほどの間にアメリカに渡ってきた移民の子供達にあたります。外国生まれが多いのも特徴です。
2040年代には白人が半数を割って非白人が多数派になると推測されていますが、「ミレニアル世代」はこうした“新しいアメリカ人”“多様性に富んだアメリカ人”を代表する世代でもあるのです。

Q6、今回の大統領選挙の候補者選びでもテッド・クルーズやマルコ・ルビオなどヒスパニック系の候補者が注目されましたね。

A6、【無党派】政治傾向にも大きな特徴が見て取れます。

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「ミレニアル世代」の50%は「自分はインディペンデント=無党派だ」と答えています。民主党支持者は27%、共和党支持者は17%でした。「ベビーブーマー世代」と比べると無党派層の割合が際立って多いことがわかります。同性婚や移民政策に対してはリベラルな傾向が伺えます。民主党でも共和党でもない、既存のワシントン政治に不満を抱くこうした無党派の若者達が、サンダース候補の「政治革命」に共鳴しているのです。

Q7、こうした動きはアメリカだけの現象なのでしょうか?

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A7、同じような共通項をもつ世代が世界各地に出現しています。イギリスやオーストラリアでは「Y世代」、中国では「*(「口」偏に「肯」)老族(ケンラオズ)」、韓国では「7放世代」、日本でも「さとり世代」「つくし世代」「ゆとり世代」などと呼ばれています。
香港の雨傘運動や日本のSEALDsの担い手もこうした若い人達でした。

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人口ピラミッドで見ますと、世代別人口ではもっとも多い層です。これからの労働と消費を支えていく世代なのです。ソーシャル・メディアを自在に使いこなし、経済的な困難に直面しながらも、多様性に富んでいて既存の枠にとらわれず変革意識の高い、こうした若い世代の発想と活力が、これからの世界を変えていくかも知れません。

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