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キャッチ!インサイト 「被災地と外国人実習生」

広瀬 公巳  解説委員

(被災地)
東日本大震災から5年。
復興への取り組みが続く被災地では今、
人口流出による労働者不足が深刻な問題になっています。
(実習生)
こうした中、産業の担い手として注目されているのが外国人の技能実習生です。
特区の認定を受け実習生の受け入れを積極的に拡大する自治体も出始めています。

(実習生)
「食品加工の仕事を通して/日本の調理法を勉強したいです」

(加工会社常務)
「現在は研修生、中国、ベトナム、
 それが主力になるぐらいにね非常に助かっているわけなんです」

労働力不足に悩む被災地の現状と、外国人実習生受け入れの課題を考えます。

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香月Q1)
震災から5年たちますが、労働者不足が復興の大きな足かせになっているようですね。

広瀬委員A1)
人口減少が大きな問題になっています。

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岩手・宮城・福島の3県は、震災前の前回の国勢調査と比べると、
▽岩手は5万人▽宮城は1万4000人▽福島は11万5000人、
それぞれ人口が減りました。
被災した沿岸部の自治体の中には人口が
大きく落ち込んだまま回復していないところが少なくありません。

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女川町で37%減るなど人口が落ち込んでいます。
基幹産業である水産加工業などで人手不足が深刻になっています。

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一方で、こちらは2年半前と比べた数字ですが、
▽岩手8パーセント▽宮城16パーセント▽福島15パーセント
それぞれ外国人の数が増えています。

香月Q2)
労働者不足を補う産業の担い手として、外国人が注目されているということですね。

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広瀬委員A2)
現実の問題として特に焦点があたっているのが技能実習生です。
震災当時、岩手、宮城、福島の3県に滞在していた
技能実習生は4000人あまりでその3分の2近くが震災直後に帰国しました。
しかし、その後、また再び、今度は急速に増えているのです。
▽岩手1173人→1594人
▽宮城604人→1592人
▽福島753人→1570人全体で、3年前と比べると、二倍近い増え方です。

【VTR:特区のベトナム人】
岩手県と宮城県では沿岸部で技能実習生の受け入れ枠を
増やす特区の認定を申請し、
塩釜市と釜石市が対象地域として認められました。
受け入れられる外国人の数が増え、
水産加工場では先月からベトナム人が実習を始めています。
水産加工の現場は長く地元の女性が支えてきましたが楽な仕事ではありません。
人手不足の背景には震災後は
海の近くに住む人が少なくなったことも影響しているということです。

【VTR:映画「牡蠣工場」】
こちらは「牡蛎工場」というドキュメンタリー映画です。
舞台は岡山県の牡蠣のからむき工場です。
宮城県で牡蠣の養殖をしていた方が震災で
ここに引っ越しをし牡蠣の養殖を続けることにしました。
しかし働き手が見つからず外国人の力が必要な状況でした。
【「中国人です」】
養殖された牡蠣の殻を取り除く仕事は地元の人々が担ってきましたが、
過疎化による労働力不足がここでも深刻になっているということなんです。

香月Q3)
労働者不足は被災地だけの問題ではないということですね。

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広瀬委員A3)
「人口減少」と「外国人労働力」というのは日本全体が直面する大きな課題です。
日本の人口は初めて減少に転じました。

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最新の国勢調査によりますと、日本の人口は1億2711万47人です。
国勢調査で人口が減少したのは調査開始以来初めてです。
総務省は「日本は人口減少の局面に入った」としています。

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一方で外国人労働者はおよそ90万人となりました。
資格別にみますと、技能実習生は増えてきており17万人になっています。
新規入国者数は前の年と比べ率にして20パーセントあまり増えています。

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技能実習生の新規入国を国別に見ると、
▽中国が4万4000人と全体の半分を占め
▽ベトナムおよそ2万人、ベトナムは倍増、
フィリピンやインドネシアも、40パーセント以上の増え方です。
外国人実習生は数も増え国籍も多様になっています。

香月Q4)
ただ一方で外国人研修生の受け入れには難しい問題もありますね。

広瀬委員A4)
もともと文化も背景も異なる外国人を受け入れることの
難しさがあるのに加えて、
研修生として受け入れているのに実際には労働者として
扱われているという制度自身がかかえる問題があります。
そして忘れてならない視点は、
「外国人は災害弱者だ」ということです。
災害時には情報がいのちを守るといいますが、
日本語のできない外国人は津波の警戒情報も理解できず逃げ道もわかりません。

【VTR:帰国する中国実習生】
宮城県女川町の水産加工会社では5年前、
働いていた中国人の実習生全員を、
津波が到達するまでのわずかな時間で避難させることができました。
国籍を超えて人の命を救ったとして中国政府からも感謝されましたが、
避難の誘導にあたった日本人が犠牲になっています。

外国人に働いてもらう以上、
安全を守るという大きな責任も伴いますがそれは簡単なことではありません。
女川にも実習生が戻っていますが、
安全を守るために高台の住居を設けているということです。

香月Q5)
外国人が安心して働ける環境を整備することが重要だということですね。

広瀬委員A5)
そうですね。
いろいろと難しい問題はありますが、歴史的にみても
大きな災害は社会全体のあり方を変える機会になると言われます。
これまで解決策が見つからなかった問題についての
議論を始める契機になるかもしれません。
被災から5年が経過した今、日本がどう変わっていいくのか、
被災地と外国人との関係はそれを占う上で
注意してみていかなければならない重要なテーマだと思います。

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