電動車椅子や介護用ベッドなど、最新の福祉機器を集めた「国際福祉機器展」が、9月に東京で開かれます。
国内外の370社以上が出展する、国内で最大規模の展示会です。
障害者や高齢者の生活を支える機器は、いま飛躍的に進化を遂げています。
その最新のテクノロジーをご紹介します。
【電動車椅子の進化】
福祉機器とは、障害者や高齢者が日常生活で使うもの、あるいは介護やリハビリの現場で使われる、機械やシステムなどを指します。
その代表的な機器が車椅子です。
特にレバーの操作で自動的に動く、電動車椅子は技術が進歩しています。
40年以上、電動車椅子を製造している岐阜県各務原市のメーカー(今仙技術研究所)では、従来よりも、細かく方向転換できるなど、操作性の高い製品を開発しました。
車輪の数を4つから6つに増やし、図のように、回転の軸となる車輪を、後部から真ん中に移したことで、体を中心に回転することが可能になりました。
また、重さにも特徴があります。
1つ前のモデルは105キロありましたが、最新は52キロと半分に減りました。
バッテリーなどを軽くすることで実現しました。
電動車椅子でも段差のある場所などは、人の手で動かさなければなりません。
介助する人の負担を減らすために、軽量化を目指しました。
ただ、軽くしたことで、パワーは低下し、主に室内や、外でも平坦な場所での走行が想定されています。
力を落とさずに軽量化できないないかは、今後の研究課題だそうです。
今の軽量化のように、介助や介護をする側の負担を減らすというのも福祉機器の大きなテーマとなっています。
次は介護施設の職員が使う最新のシステムをご紹介します。
いま、介護施設では、夜間に勤務する職員の負担を減らすため、見守り支援システムが導入されています。
それぞれの部屋にいる高齢者が、寝ているのか、起きているのかなどを、図のように、スタッフの部屋にあるパソコン画面で、一元的に把握できるシステムです。
部屋を見回る頻度を減らすといった、職員の負担軽減に繋がります。
このうち、都内のベッドメーカー(パラマウントベッド)が開発した、最新のシステムをご紹介します。
寝ているのか、起きているのか、または眠る寸前でうとうとしているのか、部屋にいる入居者の状態をアイコンで表示します。
なぜ状態が分かるかというと、マットレスの下に敷かれた厚さの薄い装置が、ベッドにいる人の呼吸などのわずかな動きを、振動でキャッチし、分析しているからです。
眠りについて何分経過したか、もしくはベッドから離れて何分たったのかも分かります。
そして、個人ごとにデータを集計して、詳しく分析することもできます。
図は、1人の睡眠状況を表したものです。青い部分が眠っている時間です。
これを見て、「時々、目が覚めてしまう」といった変化に気づくことも出来ます。
介護現場では今、こうしたデータを活用し、症状の悪化を早めに食い止めたり、最適な介護サービスを提供していくことが重要になっていて、システムの開発が進んでいるのです。
このシステム、現時点では介護施設での利用となっていますが、メーカでは、今後例えば、地域にある訪問看護ステーションに導入して、自宅で暮らす高齢者の状況も把握できないか、検証を進めたいとしています。
ここまで比較的大きな機器についてお伝えしましたが、ここからは、もっと小型で、人の体に身に着けるものをご紹介します。(出展:トリプル・ダブリュー・ジャパン)
図でご紹介している、手に持てるサイズで、お腹の下に装着する機器は、超音波で膀胱のふくらみを調べるものです。
これによって尿の溜まり具合が分かります。
その情報を、スマホなどを通じて本人や家族に知らせ、いつトイレに行けば良いのか、そのタイミングを教えてくれます。
もう1つは、聴覚障害者向けに開発された機器をご紹介します。
図でご紹介している、メガネの形をしたデバイスは、目の前の相手が話している言葉を、文字化してレンズに表示する機能があります。(出展:Spacial)
相手が話してから、1秒以内に文字が出てきます。
スマホに声を吹き込んで、画面に文字が出る機能がありますが、それと同じ仕組みです。
このように福祉機器は、本人の活動を支えたり、コミュニケーションをサポートしたり、介助する人の負担を減らしたりと、実に様々な角度から開発が進んでいます。
ただ、こうした機器の中には、どうしても高額になるものもあります。
例えば、最初にご紹介した電動車椅子は、オーダーメイドで作るので、1台100万円以上します。
そこでお伝えしたいのは、そうした経済的な負担を大幅に軽減する、国などの支援制度です。
例えば、高齢者が利用する介護保険制度では、福祉用具の貸与を受けられる場合があります。また体に障害のある人は、日常生活で使う用具の給付や貸与、それに、車椅子や歩行器など補装具の費用の支給が、受けられる場合があります。
ご紹介した電動車椅子も、行政機関から必要と判断されれば、この支援制度を利用して、自己負担を大きく抑えて購入できます。
ただ、対象となる機器は決まっていますし、介護保険では利用できる限度額もありますので、ケアマネージャーや自治体の相談窓口にお問い合わせください。
福祉機器の進化だけでなく、こうした国や自治体の経済的な支援も、さらに充実させてもらいたいと思います。
福祉機器は年々、進化しています。
ひと昔前は想像もできなかったという機能も次々に生まれています。
その最新技術が分かる国際福祉機器展は、9月27日から3日間、東京で開かれます。
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