インターネットで販売されている、海外からの製品で重大な事故が相次いでいることから、政府は、対策を強化する方針を打ち出しました。今井解説委員。
【どのような事故が起きているのですか?】
例えば、
▼ スマホなどを充電できる、モバイルバッテリーを充電中に火がでたという事故。国の安全基準を満たしていない製品で多く起きているといいます。また、
▼ 室内でのあぶり料理などで人気のある「ガストーチ」を使っていたら、ガスが漏れて炎に包まれたという事故。海外製の粗悪品で事故が多いため、国内で規制の検討が始まっています。
こうした事故。特に、海外の事業者から直接ネットで買った製品で多く起きているというのです。
【なぜ、海外からの製品が問題なのですか?】
主に3点指摘したいと思います。
まず、日本の安全基準を満たしていない製品が売られているという点です。この安全基準、電気製品や身近な製品493品目が対象になっていて、
▼ 製造メーカー。そして、輸入品については、輸入事業者に対して、基準を守り、守っていることを示す「PSマーク」(製品によって、PSの下の文字が違いますが、このマーク)を製品に表示することが法律で義務付けられています。
▼ そして、販売事業者は、マークがない製品を売ることが禁止されています。海外の事業者も、規制の対象ですが、海外にいるので、強制力がない・・。ということで、日本の消費者が、基準を満たしていない製品を買うことができるようになっているのです。
そして2点目は、法律で義務付けられている事故の報告がないという点です。
【事故の報告がない?】
日本では、安全基準があるなしに関わらず、幅広く生活に身近な製品で、死亡、全治1か月以上のけが、火災などを伴う「重大な事故」が起きた場合、メーカーと輸入事業者に対し、国に報告するよう義務付けています。国はそれを公表して注意喚起をする。そして、リコールや規制の強化につなげる。再発防止のための大事な仕組みです。ところが、消防が出動したけれど、事業者から国への報告がなかった事故が火災だけでも、昨年度、100件以上あり、多くが海外からネットで購入した製品とみられるというのです。国内にメーカーも輸入事業者もいなくて、消費者が海外から直接、製品を買うということは、法律ができた時に想定していなかった事態で、隙間に落ちているからです。防げたはずの事故が起きてしまった可能性もあります。
【それは問題ですね】
そして3点目。事故でケガをしたり、周囲が焼けたりして、消費者が事業者に損害の賠償を求めようと思っても、海外と直接、外国語でやりとりしなければならなかったり、連絡先がわからず、泣き寝入りせざるをないケースも多くあるという点です。
【消費者は、ネット上のショッピングモールで買うケースが多いですよね。モールを運営している事業者には、何らかの義務はないのですか?】
モール事業者は、法的には、販売事業者に場所を提供しているだけという位置づけで、規制の対象になっていないのです。
【海外の製品を直接買えるのはありがたい面がありますが、これだと心配になりますね】
そこで、経済産業省の検討会が先月、報告書をまとめ、政府も今後、法律を改正し、対策を強化する方針を打ち出しました。ポイントは「海外事業者への規制の強化」。そして「モール事業者の責任の強化」です。
【どのような内容でしょうか】
まず、「海外事業者への規制の強化」ですが、海外の事業者がネットで、国内向けにPSマーク対象の製品を売る場合、
▼ 国内に代理人など責任者を置くことを義務付け、経済産業省が名前をホームページで公表します。
▼ そして、重大事故が起きた場合、国に報告することを義務付けるとともに、リコールを消費者に周知したり回収したりする協力も求める方針です。
【国内に窓口があると、消費者も連絡をとりやすいですね】
損害賠償などの交渉もしやすくなることが期待できます。
そして「モール事業者の責任の強化」。安全基準を満たしていない違法な製品が出品されていた場合、国がモール事業者に出品の削除を命令、あるいは要請できる仕組みを導入する方針です。
【安全基準がない他の製品については、どうなるのですか?】
重大な事故が起きても、引き続き、海外の販売事業者から報告がないケースが想定されますので、消費者から情報が入った場合などは
▼ モール事業者から国への報告を求め、国が事故の原因を調べる。
▼ そして、リコールが必要と判断した場合、同じ製品の出品を削除すること。
▼ さらに、過去に対象の製品を買った消費者に、個別にメールなどで、使用の中止・廃棄を求める連絡をすることを、命令・要請できるようにする。
こうした内容を、法改正で定める方針です。
【モール事業者にも一定の役割を求めるのですね】
はい。モール事業者は、販売事業者と契約をして、消費者との間をつなぐことで、利益を得ています。一定の責任を果たす義務はあるという考えに、一歩踏み込んだ形です。
一方のモール事業者も、それぞれ自主的な取り組みを進めてきています。先月には、国内の大手7社が、4つの省庁と連携して「製品安全誓約」に署名しました。
どのような内容かというと・・
安全基準を満たしていない、あるいは、リコール対象の製品について、
▼ 政府から要請があった場合、2営業日以内に出品を削除し、結果を通知する。
▼ また、消費者から情報を受ける窓口をつくり、通知があれば5営業日以内に、出品削除など適切な対応をとる。
▼ その上で、購入した消費者に、メールやホームページ上などで注意喚起をする。
こうした内容で、こちらは法規制が難しい、フリーマーケットやオークションサイトなど、個人と個人が中古品を売買するモールも参加しています。
【様々な取り組みが始まろとしているのですね】
自主的な宣言ではありますが、消費者も、署名しているモールを利用すると、より安心かもしれませんね。ただ、それでも、次々、新しい製品がでてきて監視の目や規制が追い付かないことも考えられますので、さらに注意が必要な点があると言います。
【どのような注意でしょうか】
例えば
▼ PSマークや任意のマークなど安全基準を満たしているか確認する。
▼ また、他と比べてあまり安い製品の場合、安い理由を考えること。安全対策が十分にとられていない可能性もあるからで、特に発火する恐れのある電気やガス関連の製品の場合、注意が必要です。
▼ コードレス掃除機や工具などで、本体とは別のメーカーがつくっている、いわゆる「純正品でないバッテリー」を、安いという理由で買う方もいますが、それで発火する事故も起きています。とりつける掃除機など本体のホームページに注意喚起の情報がないか、確認することが大事だと言います。
▼ さらに、いざという時のことを考え、販売事業者の連絡先がネット上に明記されているか。国内にあるかの確認も大事です。
▼ そして事故が起きた場合、身近な消費生活センターに相談をしていただきたいと思います。全国共通で188の番号から身近なセンターにつながる仕組みになっています。
【消費者も、気を付けることが大事ですね】
はい。注意は必要です。その上で、今後、法制化や事業者の取り組みが進むことで、誰もが安心してネットで買い物ができる環境を整えてほしいと思います。
この委員の記事一覧はこちら