私たちの暮らしを支えるごみ処理の関連施設で、リチウムイオン電池による火災が相次ぎ
市民生活に影響が出るケースもあるとして、正しい分別処理や、リサイクルが呼びかけられている。
水野倫之解説委員による解説。
ごみ処理施設の火災や発煙などはほぼ毎日のようにどこかで起きているとみられ、施設が止まることで市民生活に影響が出たケースも。
愛知県豊田市では、先週まで3か月にわたって「ごみ非常事態宣言」が出され、市民にごみの削減の徹底が呼びかけられた。
その原因は、市内のごみの8割を処理するごみ処理施設で起きた火災。
今年2月、一般ごみを焼却炉に運ぶコンベアから火が出て、3つの焼却炉のうち一つが使えなくなり、処理能力が3割低下。
このままではごみの処理が追いつかなくなるおそれがあるとして、4月に非常事態宣言が出された。
施設によると市民は、生ごみの水分を切ってからゴミ出ししたり、紙を資源回収に回すなどの行動をとったとみられ、ごみ削減がすすみ、焼却炉も復旧したことから、市は先週ようやく非常事態宣言を解除。
ごみ収集ができないという最悪の事態は回避された。
施設では燃え方から、一般ごみにリチウムイオン電池が混入し火災になったとみている。
このリチウムイオン電池、大容量で小型、しかも軽いことから、パソコンやスマホ、モバイルバッテリーなどへの利用が急増しているが、こうした製品を処分する時に、正しく分別されていないとごみ処理の過程で、火災や爆発につながる。
製品評価機構が行った再現実験の様子をみる。
デジタルカメラからリチウムイオン電池を取り出し、燃えにくそうだからとほかの燃えないゴミといっしょに出す。その後ごみ収集車で回収され、処理施設に集められた不燃ごみは、シュレッダーのような機械で細かく粉砕されるが、ここにリチウムイオン電池が混じっているとあっという間に火災となってしまう。
別の角度から見ると炎がかなり高く上がり、非常に危険であることがわかる。
そして火災は何も処理施設だけでなく、ごみ収集車でも発生。
その再現映像をみると、モバイルバッテリーをほかの燃えないごみと一緒に捨ててしまう。
それをごみ収集車が回収して奥の方に押し込もうと圧縮すると破壊され、しばらくすると煙が噴き出しやがて発火、もしくは破裂することもあり、作業員のけがにもつながりかねず危険なことがわかる。
リチウムイオン電池に火災が多いのは電池の構造が関係する。
特殊な液体に浸された電極の間をイオン状態のリチウムが移動、そして電線を電子が移動することで、ほかの電池よりも高い電圧の電流が流れる。
ただこの特殊な液体が灯油と同じくらい燃えやすい成分でできていることから、衝撃が加わると電極どうしがショートして異常発熱し、火災につながりやすい。
環境省の調査で、充電式電池による火災や発煙などは2019年度が9700件余り、20年度はさらに増えて1万2000件あまり起きている。
全部がリチウムイオンというわけではなくごみの種類で違いがあるが、この4割から8割がリチウムイオン電池が原因とみられ、毎日どこかで発生しているとみられる。
機構では、処分する場合に正しく分別されていないケースが多いことが最大の原因と見ている。
豊田市のように一般ごみとして出されたり、再現実験のようにほかの不燃物と一緒に出してしまうと、破砕処理などの過程で火災となってしまう。
ごみ処理施設の方でも監視カメラを増やしたり、粉砕する前に手作業で分別する、さらに人の目で見分けることには限界があることから最近はAIで電池を検知して担当者に知らせるといった試みも行われているが、追いついていないのが現状。
やはり私たちも注意しないと。
まずは処分する場合は、自治体の分別方法を確認。
分別方法は様々だが、多いのは「電池」と書いた袋に入れて、ほかのごみと分けて出す方法。
ほかにも「危険ごみ」や「有害ごみ」あるいは「特定品目」として出すことを定めている自治体も。こうすることでリチウムイオン電池を、圧縮装置の付いたごみ収集車とは別のトラックで圧縮せずに回収でき、火災防止につながる。
分別方法は住んでいる自治体のホームページなどで確認できる。
2つ目として、処分しようとする製品にリチウムイオン電池が内蔵されていないか確認することも重要。
というのも、見た目でリチウムイオン電池が使われているかどうかわからない製品も増えてきている。
スマホやモバイルバッテリーに使われていることを知っている人は多いが、ほかにもコードレス掃除機や携帯用扇風機、加熱式たばこやワイヤレスイヤホンなどにも使われている。
こうした製品のリチウムイオン電池の中には、普通の乾電池のように交換することが想定されておらず、取り外せない製品もあって入っていることに気づかず、一般ごみとして出してしまうケースも多い。
製品本体に「リチウムイオン」や「リチウムポリマー」あるいは「Li-ion」「Li-Po」といった英語表記があれば使われているので、取り外すか、その製品ごと電池として処分。
ただ製品によってはきちんと表示されていないものもある。
そうした場合は販売店などに確認するとともに、メーカーもわかりやすい表示を検討してもらいたい。
3点目としてリサイクル。
というのも使い終わったリチウムイオン電池の中にはコバルトやニッケルなどの貴重な資源も含まれていて、メーカーなどにはリサイクルが義務付けられ、対象製品にはリサイクルマークがついている。
例えば業界団体が、所属企業が製造販売した電池を回収するため、家電量販店に回収ボックスを設置していたり、メーカーが独自に回収しているケースもあるので、ホームページなどで回収方法を確認してリサイクルを。
この委員の記事一覧はこちら