熱中症に注意が必要な時期になっています。今回は、高齢者と子どもの熱中症対策を中心に解説します。
6月に入って暑い日、それも湿度が高くて、暑い日が続くので熱中症に注意が必要です。毎年、6・7・8月は熱中症で救急搬送される人が急増しています。
今回の解説では、
▽熱中症で死亡した人の80%以上を占めている65歳以上の「高齢者」と、
▽日ざしや気温の影響を受けやすい「子ども」
に焦点を絞って、熱中症対策を考えたいと思います。
◇高齢者の熱中症対策 ①水分のとり方
高齢者の熱中症対策で注意してほしい点のひとつに、水分のとり方があります。
上の図は、年齢別の体の水分量の割合です。年齢層によって、違うことがわかります。高齢者は、もともと体の水分量が少ないのです。これに、水分を十分にとらないといったことが加わって、熱中症になりやすいと考えられています。
水分を十分とらないのは、なぜなのか。
高齢者は、
▽のどの渇きを感じにくいこと、
▽夜中、トイレに何度も行かないようにと、水分をひかえる傾向があること、
さらに
▽水分の半分くらいは、食事からとっていますが、食事を3食きちんととらないことがあると、水分量が減ってしまいます。
◇水分を上手にとるために、どうするか
1日、食事以外に1.2リットルくらいの水分が必要と言われています。
適切な量の水分をとる方法として、のどの渇きを感じなくても、決まった時間に水分をとるようにスケジュールを決めるといいとされています。
1日の水分のとり方の目安を示したのが、上の図です。地域の人たちの相談や支援などの活動をしている団体「暮らしの保健室」の取材をもとに作成しました。
1日8回以上は、コップ1杯の水分をとってほしいとしています。
①朝起きた時、②朝食の時、③午前10時ころ、④昼食の時、⑤午後3時ころ間食の時、⑥夕食、⑦入浴の前後、⑧寝る前です。
夜中のトイレのことを考えて、午後になると水分をひかえる人が多いということですが、これくらい水分補給してください。
水分のとり方には注意が必要です。
例えば、「経口補水液」を飲むという方法があります。経口補水液は、水分だけでなく、体から失われた塩分なども補給できます。水だけですと、体の成分が薄まって、結局、水分の多くが尿として出てしまいます。
ただ、市販の経口補水液を飲むとなると、出費が気になるかもしれません。手作りすることもできます。水1リットルに、砂糖40グラム、塩3グラムを混ぜて、作ることができます。
また、麦茶とおせんべいなどで水分と適度な塩分を一緒にとるという方法もあります。
ただし、特に高齢者は注意が必要です。糖尿病、あるいは心臓や腎臓の病気の人などは、砂糖や塩分のとり方を制限していることがあると思います。1日の生活で、いつ、何を飲むのか、かかりつけ医と相談して決めてください。
スポーツ飲料を飲むようにしている人もいるかもしれませんが、比較的糖分が多いので、医師に相談してください。
スケジュールを組んで飲むと習慣がついてよいですが、毎日繰り返し飲むことになるので、自分の体への影響を考えて判断してほしいと思います。そして、スケジュールを家族、あるいは訪問してくるヘルパーなど周囲の人たちも共有して、お年寄りが水分をきちんととっているかどうか、確認してほしいと思います。
◇高齢者の熱中症対策 ②適切なエアコンの使用
もう一つ、高齢者の対策で大切なことがあります。それは、適切にエアコンを使ってほしいということです。
上図の左の円グラフは、2021年の夏に東京23区の屋内で熱中症で亡くなった人のエアコンの使用状況です。
エアコン「設置なし」や「設置ありでも使っていないケース」が多いことがわかります。亡くなった人の80%以上が、部屋にエアコンがないか、あってもエアコンを使っていませんでした。
では、なぜ使わないのか。
上図の右の棒グラフは、エアコンのメーカーが親と同居している人に、「親がなぜエアコンを使わないのか」を聞いた調査の結果です。
「節電・電気代がもったいないから」といった理由が、多くなっています。2番目の「エアコン使うほど暑くない」というのは、暑さを感じにくい高齢者の特徴から来ているといえそうです。
エアコンを使わずに亡くなる人が多いことを考えると、まずは適切にエアコンを使ってほしいと思います。特に、2023年の夏、心配されているのが、電気代の値上がりの影響です。エアコンをひかえがちな高齢者が、従来以上にエアコンを使わなくなるのではないかという指摘が聞かれます。
家族など周囲の人たちは、お年寄りがエアコンを使っているかどうか、設定温度が28度くらいになっているか確認することが、特に大切になっていると思います。
◇暑さと子どもの特徴
子どもの熱中症対策で大切なことは、大人とは違う、子どもの特徴を考えてあげることです。小さい子どもは、暑さに対応する能力が十分発達していないと言われています。
具体的には、
▽体温調節や汗をかく能力が未発達であること、
▽暑さに体が反応するまでに時間がかかる=反応が遅れると言われています。
特に小さい子は、
▽暑さに自ら気づかない、あるいは暑さを訴えられないこともあります。
◇子どもの熱中症対策
子どもの対策は、どうしたらいいでしょうか。子どもは、運動していて熱中症になるケースが多くみられます。水分のとらせ方に注意が必要です。
上の図は、高温で運動をしているときの水分補給の目安です。9~12歳=小学校の高学年くらいだと、20分ごとに100ミリリットルから250ミリリットルの水分が必要といいます。思春期=中学生・高校生くらいですと、1時間に1リットルから1.5リットルになります。
「結構、量が多い」という印象があるかもしれませんが、専門家によるとこれくらい必要だということです。
ここで注意したいのは、中学生・高校生は1時間ごとですが、9~12歳は、20分ごととなっている点です。小学生くらいまでは、体がうまく対応できなかったり、対応が遅れたりするので、頻繁に水分補給をすることが大切なのだということです。
子どもは遊びや運動に夢中で、自分の体の異変に気づかないことがあります。親やスポーツの指導者など周囲の人が、20分や1時間といったように時間を区切って、子どもに水分補給の機会をつくることが必要だということです。
子どもの体は、体積に対して、表面積が大きいという特徴があります。このため、気温の影響を受けやすくなっています。気温が高いときは、体の熱がうまく外に逃げてくれません。
さらに大人に比べて地面に近いので、照り返しの熱にさらされやすいということもあります。大人が、32度くらいと感じていても、子どもの身長では、35度くらいあるということです。大人が感じている以上に、子どもは暑い環境にいるのです。
日陰や屋内での休憩を、心がけることが大切です。これも周囲の大人たちが注意してほしいと思います。大人の感覚で判断するのではなく、子どもの特徴を考えてあげないといけません。
今回は、熱中症対策についてみてきました。お年寄りや子どもは、暑い夏に対応するのが難しいという側面がいろいろあります。本人の心がけも大切ですが、あわせて家族や周囲の人たちが、対策ができているか確認したり、手助けしてあげたりして、熱中症を防いでほしいと思います。
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