高齢化が進み、いま認知症の人が増加しています。
誰もが成りうる病気ですが、発症する前の予防が大変重要だとされています。
でも「何をしたらよいのか分からない」という人も多いと思います。
今回は認知症予防の大切なポイントについて、牛田解説委員がお伝えします。
【高齢者の約5人に1人が認知症に】
6月14日は、アルツハイマー病を最初に報告したアルツハイマー博士の誕生日でして、それにちなんで、「認知症予防の日」とも言われています。
今、高齢化で認知症の人は増え続けています。
2年後の2025年には、国内で約730万人と、65歳以上の実に5人に1人の割合まで増加すると推計されています。誰もが成りうる病気と言えます。
「予防」に取り組み、例えば脳卒中などによる認知症の発症を出来るだけ防ぐ・リスクを抑える、もしくは、アルツハイマー型などの発症や進行を遅らせることが、ますます重要になってきます。
【まず認知症の兆候をチェック】
予防の取り組みをご紹介する前に、1つ重要なポイントをお伝えします。
それは「まず、認知症の兆候があるかチェックする」という点です。
自分の状態を知ることが、認知症を予防する最初の一歩と言えます。
兆候を掴む方法はいくつもありますが、今回は日本認知症予防学会が示している「もの忘れ簡易スクリーニング検査」をご紹介します。
2人1組で行う場合の方法です。
まず、チェックを受ける人と質問する人に分かれます。
質問する側は、最初に、「桜」「猫」「電車」など、3つの単語を言葉で伝えます。
これを同じように繰り返して言えるかを、チェックします。
3つの単語は、後でまた聞きますので、覚えてもらってください。
次に、きょうは何年の何月何日か、曜日は何かを聞きます。
そして、立方体を書いてもらいます。正しい図を見ながら書いてもらってください。
ラストに、最初に覚えた3つの単語を、もう一度、思い出して言えるか聞きます。
時間が経った後の記憶力を調べます。
それぞれ点数が割り振られていて、最初の質問であれば、3つの単語でそれぞれ1点ずつ。年月日と曜日も1点ずつ。図形は正しく書ければ2点、一部間違っていたら1点。
最後の単語は難しいので2点ずつ。ヒントありで答えられれば1点です。
合計すると15点満点ですが、12点以下だと、認知症が疑われるということです。
このテストは「記憶力」や「空間の認知能力」を調べています。
これは認知症と密接な関係があるんです。
また、1人でも出来るチェックもあります。
例えば東京都が開設している「とうきょう認知症ナビ」というサイトがありますが、そこで「チェックリスト」が公開されています。
「財布や鍵など、物を置いた場所が分からなくなることがあるか」。
「5分前に聞いた話を思い出せないことがあるか」。
「きょうが何月何日か分からない時があるか」など、10の質問があります。
「いつもそうだ」であれば4点、「まったく無い」は1点というように計算します。
合計が20点以上の場合は、認知機能や社会生活に支障が出ている可能性があり、医療機関などに相談するよう勧めています。
ただ、今ご紹介したテストやチェック項目は、あくまでも、おおよその目安です。
自分でチェックしただけで、認知症が確定するわけではありません。
認知症の診断は、医療機関を受診する必要があります。
【認知症予防のポイント】
兆候が見られなかった人も、早い段階から、認知症の予防を行っていくことが大切です。
ここからは、その具体的な対策をご紹介していきます。
この予防も色々ありますが、日本認知症予防学会の浦上克哉代表理事にポイントを3つ挙げてもらいました。
それが「運動」、「知的活動」、それに「会話」です。
認知症の予防は、進行を遅らせるという意味もありますので、すでに兆候が見られたり、認知症の診断を受けた人にも、十分に関わってくるポイントです。
まず「運動」です。
ストレッチなどの「準備運動」。
散歩や椅子に座って足踏みするなどの「有酸素運動」。
そして「筋力運動」を組み合わせて、行うと良いそうです。
運動をすると、脳の神経細胞に良い影響を与えると考えられています。
筋力運動は、ジムなどの激しいトレーニングでなくても、例えば椅子に座って膝を伸ばす、あるいは椅子に座りながらスクワットを行うといった、筋力を維持する運動も有効です。
体に無理の無い範囲で行ってください。
そして「知的活動」です。ゲームなどをして脳を働かせるものです。
1人で行う場合は、「クロスワード」や「パズル」など代表的なゲーム以外にも、空間を把握する能力を養う「塗り絵」や、物事を計画立てたり順序立てたりする能力を養う「折り紙」や「年間のカレンダー作り」なども良いそうです。
大勢で行う場合は、1つの文字から想像できる単語を言い合う「連想ゲーム」や「しりとり」があります。これは思考力を養います。
また、いろんな音を聞いて、それが何の音なのかを考える「音当てゲーム」は、注意力を養うことに繋がります。
輪投げや文字当てゲームなども良いそうです。
最後に「会話」です。
会話も脳の神経細胞を使います。
これは身近な人との会話でも、もちろん良いのですが、浦上医師は「普段、あまり話さない人、もしくは初めて会う人との会話がなお良い」と話しています。
いつも会う人は、相手の話が予測できてしまう、あるいは会話がパターン化する場合もありますが、めったに会わない人や初めて会う人は、どんな答えが返ってくるか分からないので、脳をそれだけ多く使えるというわけです。
【症状が悪化する前に早めの対処を】
ほかにも認知症の予防には、バランスの良い食事や十分な睡眠、それに禁煙なども関わってくるという指摘があります。
いろいろな情報を参考にして、自分に出来ることを進めてもらいたいと思います。
認知症は、根本的な治療がまだ難しいとされているだけに、症状が悪化する前の対処が重要です。
まず自分の状態をチェックして、出来る限りの予防に取り組んでもらいたいと思います。
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