本格的な夏を前に、そろそろエアコンを使い始めようという方も多いのでは。ただこの先、肝心な時にエアコンが使えないということがないよう早めにしっかり試運転するなど、快適にそして安全に使うための注意喚起が行われている。水野倫之解説委員が解説。
まわりでエアコンを使い始めたという声をよくきくように。問題なく動いたので試運転は必要なのかという質問も受ける。
でも少し動かしただけでは安心できない。これからの季節に急増する熱中症の予防に向けて、経済産業省や製品評価機構が真夏前の今、しっかりと試運転するよう呼びかけている。
まず熱中症。記録的な暑さとなった去年は6月から9月までに前の年の1.5倍の6万8000人あまりが救急搬送。中でも7月8月が多くそれぞれ2万人超。
また熱中症の発生場所をみると、住居が41%と最も多い。
ということはエアコンを適切に使えばかなりの割合で熱中症は予防できるわけで、エアコンが重要になってくるが、肝心な時にエアコンが故障して長期間使えないケースもあるという。
修理依頼すればよいと思うかもしれないが機構やメーカーによると、例年7月8月の真夏はエアコンの工事が集中して、修理や買い換えに数週間かかるケースが多いという。となると熱中症のリスクが高まるので、真夏前に早めにしっかり試運転して不具合がないか確認してほしいということ。
その試運転、単に動かすだけでは試運転にならない。
というのも例えば東京では最高気温もまだ30度程度で、奨励されている室温28度にするには3度から4度ほど下げる程度で、これはエアコンにとって大きな負荷とならない。
この先の真夏、最近は35度越えも珍しくないので、試運転ではフル稼働させて様子を見る必要あり。
試運転、まずは準備。
電源プラグを抜いて、プラグにたまったホコリを拭き取る。
そして電源コードに傷がないか、室内の水分を逃すホースにねじれなどがないか、さらに熱気を逃がす室外機の前に空気の流れをさえぎるモノが置いていないか確認。
次にフィルターを外してホコリを掃除機で吸い取れば準備完了。
冷房のスイッチ入れるが、ここで重要なのはエアコンに最大限の負荷をかけること。
まず設定温度を普段は使うことが滅多にない「最低」にします。
ちなみに私の自宅のエアコンは16度。
そのまま10分間運転して冷たい風が出るかを確認。
このとき冷たい風が出なければ不具合の可能性あり。
そしてさらに30分運転して本体から水漏れや、異音、異臭がしないか、エラー表示が出ないかを確認。
異常が確認されたら、販売店やメーカーに連絡し必要に応じて点検を受け、真夏前にフル稼働できるようにしておくことが大切。
そしてこの試運転、状況を確認しながら行うので事故を防ぐ意味でも重要。
エアコンの事故、この5年で340件余りが報告され、時期的には真夏の7月8月が最も多い。
そして事故の9割以上が火災になっていて、10人が亡くなっている。
まず電源コードの改造による事故。
電源コードどうしをつなげて使うと、接触不良により発熱、壁紙などが燃えて火災につながる。
引っ越しでエアコンを設置しなおした時に、近くに専用のコンセントがなく、離れた所のコンセントに差し込もうとコードを改造するケースがある。しかしエアコンはほかの家電と比べても消費電力が大きく、特に電源を入れた時には定格の数倍の数千Wの電気が流れ、これが繰り返されると接続部分が異常発熱し、出火する。
引っ越して専用のコンセントがない場合は、業者に頼んで設置してもらうこと。
ほかには内部の洗浄による事故も。十分な知識がないまま洗浄すると危険。
噴霧した洗浄液の一部が電子基盤などの電気部品に付着すると、その水分によって電気の通り道ができて異常発熱が起き、やがて出火するケースあり。
エアコンは機種によって内部構造が違うため、機構では洗浄は原則メーカーや業者に依頼してほしいと。
さらにはムシが原因で火災になることも。
ムシが室外機と本体をつなぐ配管部分から中に入っていったり室外機の排水のホースの中に入るなどして、室外機やエアコン本体の基盤部分まで入り込んでしまうことが。ムシそのものや、ムシが電子基板の上でフンをしたりするとショートして発熱、やがて火災になったという事故も。
ムシの侵入を完全に防ぐことは難しいが、ムシのエサになるような植物などを室外機周りに置かない事や、落ち葉などのゴミを取り除くことである程度は防ぐことができる。
また沖縄県ではヤモリが侵入することが多く、基盤まで入り込まないようスポンジのようなものでブロックするヤモリガードがついたエアコンが多く販売されており、こうした製品を購入するのも一つの方法。
ここまでエアコンを見てきたが、今年も東京電力管内で7月から節電要請されることもあり、扇風機も併用して節電を心がけようという方も多いかと。
ただこの扇風機も事故が多く、注意が必要。
5年間で60件あまりの事故が報告され一人が死亡、多いのは経年劣化の事故。機構によれば30年から40年使い続けて事故になるケースもあると言うこと。
扇風機が回転するたびに内部配線に繰り返し力がかかり、やがて内部で配線が断線してしまう。
それでも使い続けると火花が発生し、出火。
扇風機やエアコンなどは事故が相次いだことから、今では各メーカーが何年使い続けることを想定して設計したのか、つまり安全上問題なく使うことができる期間を「標準使用期間」として表示することが義務付け。例えばモーター部分の上に、何年に製造されて何年間安全に使えるかが書いてある。
扇風機エアコンでは7年とか10年に設定されているものが多いが、この期間を過ぎると、故障する確率が高くなり、事故の発生も多くなる。
真夏を前に、自宅の製品の表示を一度確認し、場合よっては買い替えも検討して、事故を防いでもらえれば。
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