梅雨入り早々、先週末に続いて東海地方や関東甲信などで強い雨が降っています。
こらから警戒を怠ることのできない季節が続きます。大雨への備えについて解説します。
【梅雨入り早々相次ぐ大雨】
先週、木曜から土曜にかけての大雨は停滞した前線によるもので5人が死亡、静岡、愛知、和歌山を中心に9000棟近くが水に浸かるなど大きな被害が出ました。
この雨は6月として記録的なものでした。黒い棒が伸びているポイントは24時間の雨量が6月として過去最大になったところで167か所にのぼりました。梅雨末期の大雨に相当する大量の水蒸気が流れ込んだことが気象庁の解析でわかっていて、注目されるのか高温と高水温です。
この春、3月から5月の
▼日本の平均気温は統計を取り始めた1898年以降で最も高くなり、
▼日本近海の平均海面水温も統計開始以降3番目の高さでした。
気象庁は「地球温暖化の進行に伴い記録的な高温が発生しやすくなっている」と説明している。海水温が高いと水蒸気がたくさん発生して台風や前線による大雨が起こりやすくなる。こうした状態が続くようであれば例年にも増して大雨への警戒が必要です。
【雨が降り始めたら】
では、どう備えたらよいのか?
「雨が降り始めたとき」と「事前の備え」を見て行きます。
まず「降り始めたとき」は、リアルタイムで水害や土砂災害の危険性がわかるサイトがあります。気象庁の「キキクル」=危険度分布です。
パソコンなどで「キキクル」と検索するとすぐ見つかります。
キキクルが優れているのは、リアルタイムの川の洪水の危険性や土砂災害発生の危険性と、ハザードマップの危険エリアを重ね合わせて表示し、ピンポイントで避難の必要性を判断できることです。
これは大雨になった先週、金曜日の近畿地方の洪水の危険性を示した画面です。
色がついているのが川で、氾濫のリスクが水色から黒の5段階で示されます。
▼赤は高齢者などの避難が必要なレベル3に相当、
▼紫は浸水が想定される地域の人全員の避難が必要なレベル4相当です。
この右上のマークをクリックするとハザードマップの浸水想定区域がピンクや黄色で表示されますので、紫になっている川の周辺で浸水想定区域に住む人は、すぐに避難が必要です。
大きな川についてはこの雨期からエリアを細かく分けて表示されるようになり、危険な場所をより絞り込んで把握できるようになりました。
一方、土砂災害は地図にメッシュがかかって危険性が示されます。
これも先週、土曜日の画面です。
こちらも危険エリア=土砂災害警戒区域を重ねて表示できます。
点々と茶色に見えている領域が土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域です。
これらの警戒区域に住んでいて紫色がかかったら非常に危険な状態ですので、全員避難が必要です。
【事前の備え】
次に事前の備えを考えていきます。
大雨が降る前からいざというときの対応を決めておくことが大切です。
その助けになるのが「マイ・タイムライン」です。「時間順の防災行動計画」のことで、予測される風雨のピークからさかのぼってやることを決めておくものです。
多くの市町村が普及に取り組んでいますが、市民全員に「マイ・タイムライン」を作ってもらうことをめざしている愛媛県松山市の取り組みを見てみいきます。
松山市のタイムラインのひな型です。
まずハザードマップで自宅に洪水や土砂災害のリスクがどのくらいあるかを調べて、該当するところにチェックを入れます。
次に、避難場所を決めて、書き込みます。
そして警戒レベルに応じて、どんな行動を取るかを決めます。
▼警戒レベル2で避難場所の確認や携帯電話などの充電
▼レベル3で避難に支援が必要な人がいる場合は避難開始。
▼それ以外の人はレベル4の「避難指示」で避難するなど、
自分がどのレベルで何をするか、記入しておきます。
さらに松山市ではマイ・タイムラインをもっと使いやすくしようと、独自の防災アプリを開発して4月から運用を始めました。無料でダウンロードすることができて、スマートフォンでタイムラインを手軽に作成することができます。
実際に雨が降って、警報が出たり避難所が開設されたりすると、通知で知らせてくれます。
リアルタイムの情報と、タイムラインを照らし合わせることで、その時とるべき行動を判断しやすくなります。
松山市は、この防災アプリを一人でも多くの市民に使ってもらおうと、すべての市立中学校でマイ・タイムラインづくりの授業を行っています。
防災アプリのタイムラインは、他の人とスマホで共有できるため、生徒が作成したものを
家族で共有して、みんなで行動計画を考えることができます。
授業を受けた生徒のひとりは「紙で書くよりタイピングが得意なので作りやすかったです」と話していました。また別の生徒は「タイムラインを共有できるのは安心だし、便利だなと思いました。おばあちゃんとかおじいちゃんにも知らせたいなと思います」と話していました。
タイムラインを作ることのできるアプリは、ほかにも東京都や広島県なども提供しています。
【視覚障害者のハザードマップは】
タイムラインを共有できたり危険が高まると通知が来たりするのはデジタルならではの機能ですが。デジタルの機能で防災情報のバリアフリー化も少しずつではありますが進んでいます。先週、全国のハザードマップを見られる国のサイトがリニューアルされて、視覚障害のある人が情報を得やすくなりました。
「重ねるハザードマップ」というサイトです。
トップページで住所や建物名などを入力すると浸水などのリスクと取るべき行動が文章で詳しく表示されるようになりました。
視覚障害のある人も音声で読み上げるソフトを使えば、リスクと対策をより具体的に知ることができます。
一方、大阪府堺市は今年4月、点字のハザードマップを作成し、ハザードマップの内容を音声で説明するサイトも開設しました。ハザードマップの音声サイトで地区名をクリックすると、例えば「大和川から南で、南海高野線の境東駅付近までの概ね西側の地域に洪水による浸水が想定されています。」などと音声で浸水想定区域の説明を聞くことができます。
さらに自宅の危険性や避難場所などについて詳しい説明が必要な場合は、電話で個別に説明をすることにして、視覚障害のある人に利用を呼びかけています。
日本視覚障害者団体連合の三宅隆理事は「ハザードマップの音声化は視覚障害者に好評だが、さらに自治体はきめ細かい情報を届けるよう努めてほしい」と話しています。
大雨の時期を迎えて、私たちひとりひとりが、自分にあった防災ツールを使えるよう、確認しておくことが大切だと思います。
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