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子どもの交通事故~6月は特に注意を

木村 祥子  解説委員

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学校が始まって2か月あまりがたち、子どもたちも学校に慣れ、落ち着いてきたころだと思います。
そんな中、この時期、特に注意してほしいのが「交通事故」だということです。
交通事故への注意喚起というと、新入学とか新学期というイメージがありますが、なぜ、この時期なのでしょうか。
木村祥子解説委員です。

【子どもの交通事故 傾向と対策】

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小学生の事故で最も多いのが、歩行中の事故なのですが、時期でいうと、4月は多い傾向にあります。ただ、5月、6月と徐々に増え、6月は1年で最も多くなっています。
また事故にあう年代は小学1,2年生が全体の半数近くを占め、時間帯でみると下校中が最も多くなっています。
朝は集団登校するケースが多いため、上級生が下級生に安全に目配りをしたり、周囲の大人たちも気をつけたりしているのですが、帰りの時間帯は学年によって授業の終わる時間が違い、バラバラに分かれて帰るため、事故に巻き込まれやすいとみられています。

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なぜ6月が多いのかについて、子どもの事故防止教育に詳しい東洋大学健康スポーツ科学部の内山有子教授によりますと「特に1年生は、4月は保護者と一緒に登校するなど、安全に気を配っていたが、5月の連休明けからは1人で行動することが増えてくる。友達もできて行動範囲も広がったり、新学期直後の緊張感が薄れたりすることで、事故が増えるのではないか」と話しています。
また、6月は梅雨に入り、雨の時期というのも関係しているようです。
雨の音や傘によって、車が近づく音や気配、危険に気づきにくくなるので注意が必要です。
ドライバーも雨の日は歩行者が見えにくくなるので、交通事故のリスクが高まるといいます。
ではどんな対策が必要なのか見てみましょう。

【傘のサイズ・雨の日の安全グッズ】
保護者の中には雨に濡れないようにと大き目の傘を渡したくなってしまいますが、大きな傘は子どもにとってはとても扱いづらいものです。
大手警備会社がまとめた安全対策によりますと最も大事なのは体のサイズにあった傘を選ぶことだそうです。

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目安は身長の半分ぐらいの大きさを選んで下さい。
色は黄色や白色、蛍光色がよく、長靴やレインコートなどを身につければ傘に気をとられる心配もありませんし、事故抑止効果にもなります。
腕に巻き付けたり、靴やランドセルに貼ったりするなど、様々な反射材もあるので、活用してみて下さい。
雨の日に見通しが悪い中、車のドライバーに気がついてもらうということが重要なのです。

【雨の日の安全な歩き方】 

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また、傘の持ち方ですが、傘の前を少しあげるだけで視界が広がります。
足元の水たまりなどを気にして、つい下を見がちですが、顔が下を向くと、傘も下がってしまうので、しっかりと顔をあげて歩くことが大事です。
また、傘をさしている時に友達と並んで歩くと、道に広がって危ないので「並んで歩かない」というルールを作ることも有効です。
雨のシーズンが本格化する前に「歩き方」について、ぜひ、お子さんと練習をしてほしいと思います。

【安全確保の取り組み】
ただ、子どもたちの側だけに注意しろというも限界があります。
6月は雨の影響などで子どもたちの注意力も散漫になっています。

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▽ドライバーは横断歩道の手前で一時停止する
▽スマートフォンを操作ながら運転しないなど
当たり前のことを改めて心にとどめてほしいと思います。

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また、子どもは集中すると周りが見えなくなりがちです。
よくある例としては
▽横断歩道の向こうにいる友達を見つけたり、
▽転がったボールを追いかけたりすることです。
通学路や公園など、子どもが頻繁に行き交いそうな場所では運転には特に注意して下さい。
また、速度規制をすることで生活道路の安全を確保しようという取り組みも進められています。
歩行者が多く、道幅の狭い住宅地などを中心に一定のエリアの中を時速30キロまでに規制するという取り組みです。
「ゾーン30」と呼ばれ、警察と自治体などが2011年から全国で整備を進め、ことしの3月末までに4200か所あまりで設置されています。
警察庁によりますと、2019年度末までに設置されたゾーン30での死亡・重傷事故の件数を調べたところ、設置前と比べて3割ほど減っているということです。

さらにおととしからは「ゾーン30」の速度規制に加え、路上にオレンジ色のポールを設置して、道幅を狭くすることで速度を抑制させる「ゾーン30プラス」という取り組みも行われています。
ことし3月に都内で初めて、東京・墨田区の小学校近くに設置された「ゾーン30プラス」を見てきたのですが、道行く車も自然と徐行運転になっていました。
警察と自治体は今後も地域の要望を踏まえながらゾーンを設定していきたいとしています。

【交通安全ソングで命を守る】

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「ててて!とまって!」という歌をご存じでしょうか?
NHKが作った子どもを交通事故から守る歌で、わかりやすい言葉で歌詞を作り、楽しく歌いながら子どもたち自身に命を守る術を身につけてもらおうというものです。
この歌では横断歩道の渡り方を教える工夫が随所に凝らされています。
まず「手を上げる」がポイントです。
みなさんはどんな風にやっていますか?
天高く、頭の上までまっすぐ上げるという方が多いのではないでしょうか。
イラストのようにちょっと前に突き出すようにして、ドライバーに手のひらを見せるのがポイントなのです。
意外にドライバーからは子どもの姿は見えにくいものです。
ドライバーにはっきりと「止まって下さい」と意思表示することが大切だといいます。
子どもの腕は短いので、頭の上よりも、手前に出した方がドライバーに気づいてもらいやすいと思います。
また歌には、手をあげても止まってくれないドライバーもいるので、反対車線にも注意をする大切さも、しっかりと伝えています。
実際に道を渡る時に思わず口ずさんでしまう、そんな子どもたちの「お守りソング」になってくれればと思います。

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「ててて!とまって!」はこちらのQRコードやNHKのホームページでも見ることができます。ぜひ、ご活用下さい。
特に小学校低学年の子どもは危険に応じて臨機応変に判断することが難しい年齢です。
子どもたちの安全を守ってあげられるように、私たち、周囲の大人たちも気を配ってあげてほしいと思います。


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