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熱中症警戒アラート 運用開始 暑さへの備えを始めよう!

牛田 正史  解説委員

熱中症の危険性が極めて高いと予測された時に出る「熱中症警戒アラート」。
4月26日から、今シーズンの運用が始まりました。
いまから、どんな備えが必要なのか、牛田解説委員がお伝えします。

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気象庁によりますと、5月から7月までは、全国的に気温が平年並みか、平年より高くなる見通しです。
ことしも熱中症には最大限の注意が必要です。

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そんな中で、26日から「熱中症警戒アラート」の運用が始まりました。
熱中症の危険性が極めて高いと予測された場合に発表されます。
環境省と気象庁が、おととしから全国で運用を始めました。
基本的に都道府県ごとに出ますが、北海道と鹿児島と沖縄は、より細かく発表区分が分かれています。
去年の夏は記録的な猛暑となり、全国で、実に889回のアラートが出ました。
前の年と比べて、およそ1.5倍に増えました。
ことしも、全国的に高温傾向ということなので警戒が必要です。

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では「熱中症の危険性が極めて高い場合」とはどういう時なのか。
それには明確な基準があります。
基になるのは「暑さ指数」です。
これは気温や湿度などの影響を基に、熱中症になるリスクを示した数値です。
この指数が28以上になると、「厳重警戒レベル」となります。
熱中症で搬送される人が急激に増えます。
そして31以上で「危険」レベルとされ、運動は原則中止となります。
ところが、今回の「熱中症警戒アラート」は、さらにその上、指数が33以上の時に出ます。
極めて危険なレベルです
不要不急の外出を避け、昼夜を問わずにエアコンを使用する。
さらにエアコンの無い室内や、外での運動を中止するといった、最大限の対策が必要です。

でも、そこまで危険な暑さになるのは、7月や8月など、まだ先ではないか?と考える人もいると思います。
でも、そうとは言い切れません。

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去年の月別の発表回数を見ると、7月や8月が多かったものの、5月には2回、6月にも85回アラートが出ています。
実は、熱中症は気温だけでなく、湿度も非常に大きく関わってきます。
例えば屋外の暑さ指数を算定する時、気温の割合は1割、建物などから出る輻射熱は2割ですが、湿度の影響は7割もあります。
なので、例えば梅雨の晴れ間や梅雨明けなど、例年、気温がそこまで高くない時期でも、湿度が大きく上がると注意が必要です。

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熱中症警戒アラートは、環境省や気象庁のホームページで公表されますし、日々のニュースや気象情報でも確認してもらいたいと思います。
また、メールなどの配信サービスもあります。
環境省のホームページに行き、メールアドレスや地域を登録すれば受けられます。
LINEですと、環境省の公式アカウントに登録すれば、通知を受けられます。

そして、この熱中症警戒アラートは、発表される時間が決まっています。
前日の午後5時と、当日の午前5時の2回です。
この前日の午後5時というのは、翌日の警戒を呼び掛けるアラートが出ます。

熱中症は命にも関わります。
早い時期から警戒が必要です。
ここからは、今のうちから出来る準備についてお伝えしていきます。

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まず知っておいてほしいキーワードが「暑熱順化」です。
簡単に言いますと、「体が暑さに慣れること」です。
人は体温が上がった時、汗をかくなどして、熱を外に逃がしていきます。
ところが、暑さに慣れていないと、体温を調節する機能が十分に働かない場合があります。
ですので、今のうちから、ある程度、暑さに慣れておく「暑熱順化」が大切になります

そのための取り組みとして、日本気象協会が推奨しているのが、次の4つです。
① 「ウオーキングやジョギング」
② 「サイクリング」
③ 「適度な運動」
④ 「入浴」です。
つまり、運動などをして、汗をかきやすい体にしておくということです。

それぞれ目安となる時間があります。
ウオーキングなら30分。
例えば帰宅する時に1駅分だけ歩くというのも良いそうです。
そして、ジョギングは15分。
頻度の目安は週に5回です。
次のサイクリングは30分を週に3回。
さらに筋トレやストレッチなどの適度な運動は、30分を週に5回以上。
そして入浴はシャワーで済ますのではなく、2日に1回は湯船に入る。

これは、全てやらないとダメということではありません。
生活や体調にあわせて、出来ることを行ってください。
この暑熱順化には、個人差はありますが、数日から2週間程度かかるそうです。
なので、暑くなる前の今のうちから、早めに慣れておくことが重要になります。

ここで、1つ知っておいてもらいたいのは、一度体が暑さになれても、例えば梅雨の時期に気温が下がる日が続くと、体が元に戻ってしまうこともあります。
しばらく雨や曇りが続いて、急に暑くなった時は特に注意してください。

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そして、熱中症への備えとして、もう1つ大切なのは、「エアコンの準備」です。
早めに試運転を行って、故障や不具合が無いかチェックしてください。
大手空調メーカーに話を聞いたところ、試運転は、次の手順で行うと良いそうです。
まず冷房の設定温度を最も低くして、10分間、運転させます。
そこで、冷たい風がきちんと出ているのか、異常が出ているランプが点滅していないかを確認してください。
さらに30分ほど冷房運転し、室内にあるエアコンから水漏れがないか、異臭や聞きなれない音がしないかチェックしてください。
この試運転を行う時期なのですが、外の気温が23度から25度ぐらいの時がお勧めだそうです。
あまりに気温が低いと、エアコンが冷房運転をすぐに止めてしまうからです。
また、試運転以外では、フィルターにたまったほこりを水洗いや掃除機で吸い取る。
そして室外機の周りに、空気の通りを悪くするものを置いていないかも確認してください。

日本ではここ数年、年間の平均で1000人以上の人が熱中症で亡くなっています。
猛暑が来てから慌てるのではなく、早めの備えを是非、進めてもらいたいと思います。


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