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児童手当は?マスク着用は?同性婚は?世論調査から解説

曽我 英弘  解説委員

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2月のNHK世論調査がまとまった。岸田内閣の支持率は?防衛増税や子ども予算倍増、同性婚の賛否は?マスクの着用はどうする?山積する課題を国民はどう見ているのか解説する。

●内閣支持率 

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岸田内閣を「支持する」と答えた人は1月より3ポイント増えて36%。「支持しない」は4ポイント減って41%だった。「支持する」は過去最低だった1月から幾分回復したが、「不支持」が「支持」を上回るのは5か月連続だ。

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支持の低迷、何が原因だと考えられるのだろうか。防衛増税への反対が多数を占め、一連の強盗事件で地域の治安に半数近くの人が不安を感じているなど、政権の政策への不満、そして安心安全が脅かされていると感じる人が少なくないことに加え、ここ最近の首相秘書官の一連の言動が支持率に与えた影響も無視できない。

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中でも同性婚をめぐる差別的な発言だ。秘書官は翌日更迭されたが、発言は社会の多様性を真っ向から否定するもので決して許されない。また岸田首相自身も同性婚の制度を導入した場合「社会が変わってしまう」と国会で答弁し、その後「ネガティブな意味ではない」と説明したことも、内閣を支持しない理由として「人柄が信頼できない」がほかの項目より上昇したことに影響した可能性がある。

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今回、同性婚を法律で認めることに「賛成」という人は過半数となった。ことしは5月にG7広島サミットも控え、今後LGBTなどの人たちへの理解を増進するための議員立法も含め、政治としての具体的な意思を示すべきだという声が強まることが予想される。

●子ども予算

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岸田内閣が支持率を回復軌道に乗せることができるか、そのカギを握る一つとみられるのが、現在最重点に取り組んでいる子ども・子育て政策だ。去年生まれた子どもの数は統計開始以来最も少ない80万人を下回る見通しで、岸田首相も「社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際」と危機感を強めている。
「次元の異なる少子化対策」の柱の一つが子育て世代への経済的支援の拡充で、岸田首相が掲げる、子ども予算を将来的に倍増する方針に「賛成」という人は69%に上り、「反対」は17%だった。また子ども予算を増やすために国民の負担が増えるのは「やむを得ない」という人は55%と過半数を占め、「負担を増やすべきではない」は35%にとどまった。

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一方で、現在国会で議論となっている児童手当の所得制限の撤廃については慎重な意見が半数近くを占め、「賛成」は34%、「反対」は48%だった。ただ年代別では違いもうかがえ、18歳から39歳では所得制限撤廃に「賛成」43%・「反対」41%と拮抗したのに対し、40代・50代は「賛成」40%・「反対」54%、60歳以上は「賛成」33%・「反対」51%と、年代が上がるにつれて「賛成」する人が減る傾向にあった。これから子どもを持ちたい、また子育ての真っ最中という人と、子育てを終えた人では考え方に違いがあるとはいえ、対策の効果を上げるには子育てを社会全体でどう支えるのか、世代を超えた理解と協力が不可欠だ。

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今後未婚率をいかに下げるか。また男女間や正規雇用かどうかによる格差の解消、さらに家計の負担感が特に強い教育費の扱いなど、政府と国会はこれまでの政策を幅広く検証し、財源を含め国民的な議論を急ぐ必要がある。

●新型コロナ

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もうひとつ、政府がこれまでの対策を大きく見直そうとしているのが、新型コロナ対策だ。この春の卒業式で合唱のときなどを除き、児童・生徒や教職員は、マスクを着用しないことを基本とする考えだ。これはマスクの着用を3月13日から、屋内・屋外を問わず、個人の判断に委ねる方針に変更するためだが、マスクを「引き続きつける」という人は50%、「外すことが増える」は38%、「常に外す」は6%と今後の対応は分かれた。またここでも年代別では違いもあり60歳以上の6割近くが「引き続きつける」とする一方、18歳から59歳までの過半数が「外すことが増える」「常に外す」と答えた。
さらに子どものマスクも保護者の考えは様々みられる。それだけに今後、学校や店舗、各種施設でトラブルを心配する声も出ている。
また「脱マスク」とともに政府は新型コロナの感染症法上の位置づけを、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」扱いに、5月8日から移行する方針だ。移行により、感染者や濃厚接触者に対する外出自粛はなくなり、飲食店などへの営業時間の短縮の要請もなくなる。

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一方でワクチンや入院検査にかかる費用は、当面は公費負担が続き無料となるが、今後段階的に一部自己負担へと見直されることになる。こうした法律上インフルエンザなどと同じ扱いになることに「賛成」という人は58%、「反対」は25%で、賛成が反対を大きく上回った。ただこうした見直しも若い人ほど好意的に受け止めているのに対し、高齢者は慎重だ。ようやく日常へ一歩戻るということで嬉しい反面、不安も感じるという人も少なくない。今回の見直しで政府は、今後コロナの疑いがある発熱患者はすべて一般の機関でも受診できるよう段階的に対象を広げる方針だが、病院側の協力も得てきちんと進めることができるかどうか。

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またこの冬、12月以降の第8波による死者の9割は70歳以上の高齢者で、感染拡大は今後も繰り返す可能性がある。それだけに基本的な対策は欠かせず、病院や高齢者施設、さらに混雑した電車やバスでのマスクの着用を政府が推奨していることは忘れないようにしたい。

●今後の政治は

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2月も自民党の支持率が野党各党に大きく差をつける状況が続いている。国会は、新年度予算案の審議が比較的早いペースで進む一方、各党とも2か月後に控えた統一地方選挙、そして同じタイミングで行われる衆議院の4つの補欠選挙の準備は大詰めを迎えている。他党の動向が気になるのは致し方ない面もあるが、大事なことは国会審議の充実だ。
選挙の前であっても、国民がそれをしっかり見ていることを忘れないでもらいたい。


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