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流行中!新型コロナとインフルエンザ 同時検査キットは?市販薬は?

矢島 ゆき子  解説委員

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◆新型コロナの感染状況は?

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新型コロナの感染が第8波に入り、自分の周囲でも感染した人がいるという方も増えたのではないでしょうか?
今、新規感染者の数は、年末年始の時に比べ、減ってきているようにもみえますが、まだまだ流行は続いています。感染が始まってからこれまでに約3200万人が感染しましたが、その大部分は、ここ1年で感染しているのです。
一方、致死率を、例えば60・70代で見てみると、第5波あたりの21年7~10月は1.34%、オミクロン株の第6波がはじまった頃は0.70%、第7波の7、8月は0.18%と低くなっています。これは、オミクロン株は感染力が強いのですが、重症化するリスクは低いということ、またワクチン接種が進んだことなども考えられます。
しかし、第8波では、死者数が多くなっています。例えば累計死者数で去年の10月以降を見てみると約1.9万人と、去年7月~9月の約1.3万人を超えているのです。

◆高齢者の死亡が多い第8波

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では、この8波、どういう人が亡くなっているのでしょうか?
昨年11月末から今月10日までの死者を年代別で見てみると、9割が70歳以上の高齢者でした。
国立国際医療研究センター病院 放生雅章(ほうじょうまさゆき)さんに、第8波で亡くなっている高齢者についてお話を聞きました。放生さんの病院は、この3年間、多くの感染者を治療してきた病院です。放生さんがいうには、以前と比べ、「亡くなり方が変わった」とのこと。具体的には、「以前は新型コロナでの肺炎が悪化して亡くなる例が目立ったが、今は、高齢者が、コロナの感染をきっかけに、持病がひどく悪化し、コロナから回復しても、体力低下が長く続き、全身が衰弱して亡くなる」とのことです。また、「回復しても、以前の自立した生活に戻れず、例えば、介護施設を探す必要があったりと、すぐに退院・転院できない」そうです。そのため、病院はベッドが満床状態で、新規の患者さんをなかなか受け入れられない状況が続いているとのことでした。「行動制限が緩和され、マスク無しで人が多い繁華街を歩く人を見るが、医療現場は疲弊し、コロナに対する認識の違いを感じる」とのことでした。
この第8波、高齢者・重症化リスクの高い人たちはまだ警戒が必要で、持病の治療、ワクチン接種をし、そして周囲も感染対策をする必要がありそうです。

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もう一つ、放生さんのお話しで、気になったことが。
こちらの病院では、「持病のない40~60代の人が、新型コロナの肺炎で入院」しているそうで、実は、ワクチン未接種の人が多いようだということです。「この3年間で、治療法が進歩し、オミクロン株で重症化しにくいということもあり、命は助かるが長期の療養がときに必要になる」そうです。そして「オミクロン株対応のワクチン接種を検討してもらいたい」とのことでした。
オミクロン株対応のワクチン、効果はどのぐらいあるのでしょうか?
国立感染症研究所のデータでは、従来株のワクチン接種2回以上にオミクロン株対応ワクチンを追加接種した人の発症予防効果は71%でした。この数字、思ったより高いという専門家の話もあります。そして海外のデータですが、オミクロン株対応ワクチンの追加接種した65歳以上の高齢者の場合、重症化予防効果、つまり入院するのを防ぐ効果が73%あったとのことです。副反応としては、接種部位の痛み・だるさ・頭痛・筋肉痛・発熱などがありますが、従来のワクチンを上回る頻度ではないようです。

◆この冬、新型コロナとインフルエンザの同時流行は?

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この冬、新型コロナとインフルエンザの同時流行が言われていましたが、今、インフルエンザの状況はどうなのでしょうか?先週末に発表された1医療機関当たりの1週間の患者数をみてみます。1を超えると流行なのですが、結果は4.73人。全国で流行しはじめていることがわかります。
小児感染症がご専門の新潟大学齋藤教授にお話しを伺ったところ、「オミクロン株での、せき・のどの痛み・発熱などの特徴的な症状は、インフルエンザと見分けが難しい。」また「実は、コロナ・インフルエンザ以外にも風邪などの感染症も流行っているが、水分をとる・高熱でぐったりしていたら解熱剤を使い、慌てずに様子をみるのが基本。」心配なことがあればかかりつけ医に相談ですが、「水分がとれない・吐く・けいれん・意識がはっきりしなければ受診」をとのことでした。

◆新型コロナとインフルエンザの同時検査キット

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では、大人で、のどの痛みやせきがある場合は、どうしたらよいのでしょうか?
持病があるなど重症化しやすい人は医療機関の受診が大切ですが、リスクが低く、症状が軽い人は、まず、自分で検査をするということもあるかもしれません。今、新型コロナとインフルエンザを同時に検査できるキットが、薬局などで1つ3000円ぐらいで購入できるようになりました。
この検査キット、使い方の注意・コツがあります。まず付属の綿棒を2cm鼻にいれ、そして5回転。両方の鼻で同じことを繰り返します。奥の方まで入れた方がいいそうですが、例えば2cmぐらいの部分をおさえ、そこまで入れるというやり方もあります。そして、感染を確認するためには、発症12時間以降に採取するほうがよいそうです。これを検査液にしっかり入れ、判定キットにたらします。判定では、コロナ陽性・インフル陽性・そして陰性と線の位置がかわります。メーカーによって違うので、使い始める前に取り扱い説明書などを確認してください。購入の際は、国が承認した「体外診断用医薬品」または「第1類医薬品」か確かめましょう。「研究用」は精度が保証されていないそうです。また、結果が陰性でも、実はコロナあるいはインフルエンザ陽性の可能性もあり、引き続き療養し、感染対策もした方がよいでしょう。

◆今、私たちにできること

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今、私たちができる感染予防としてはどういうことがあるのでしょうか?
新型コロナでもインフルエンザの感染を防ぐ方法は基本的に同じです。ご紹介したコロナ・インフルエンザの同時検査キット、あるいはコロナの検査キットが手元にあると便利かもしれません。また、のどの痛み・発熱したときのために、普段から市販薬の解熱鎮痛剤を常備することもお勧めです。特に子どもはアセトアミノフェンという成分のものを。アセトアミノフェンの解熱鎮痛剤が手に入らない場合は、大人であれば、時に、イブプロフェン・解熱鎮痛効果が強いが胃の調子が悪くなることもあるロキソプロフェンでも構わないそうです。ただ、できれば、風邪薬でアセトアミノフェンが含まれているものを代用する方がいいかもしれません。そして、水分をたくさんとる。のどの乾燥を防ぐためには加湿器を使う・マスク着用。冬、理想の湿度は、40~60%。放生さん曰く、「ぜん息などリスクのある人には、特に寝るときに加湿器で湿度60%にするように勧めている」とのことです。さらに換気、手洗い、密を避ける、ワクチン接種も、感染しないために私たちができることです。
これから、ますます寒くなりそうです。寒くて乾燥した冬は、ウイルスに感染しやすいとも言われています。是非、状況に応じた感染対策を続け、今の第8波を乗り切っていただけたらと思います。


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