6400人を超える人が犠牲になった阪神・淡路大震災からきょうで28年になりました。
震災をきっかけに「地域の防災力」の大切が認識され強化が進められてきましたが、いま消防団員の減少や避難所の担い手確保などの課題に直面しています。
阪神・淡路大震災では25万棟の建物が全半壊し数万人が生き埋めになりました。
助け出された人の8割が家族や近所の住民などによって救出されたことから、地域の防災力が注目されるようになりました。
【地域防災の担い手は】
「地域の防災力」というのは「地域住民が災害時の救助や災害後の助け合いのために日頃から協力して蓄えておく力」です。
その担い手、牽引役は
▼まず住民による自主防災組織。震災以降設置が進み、自治会が兼ねているところも多いが、全国に17万あります。
▼次に防災士。震災をきっかけに作られた民間の資格で、防災について知識や技能を持っていて全国に24万3000人。
▼そしてボランティア。阪神・淡路大震災はボランティア元年と呼ばれたが、その後、地域にも多くのボランティア団体が作られ、活動している。
▼そして法律で「地域防災の中核」とされるのが消防団。それぞれ仕事を持つ住民で組織され、非常勤の公務員だが、報酬は年数万円程度。ボランティア的な性格が強い。
【地域防災力の中核、消防団の課題】
消防団が中心になって防災力を高めようという取り組みは全国で行われているが、積極的に取り組んでいるひとつが滋賀県大津市です。
大津市は阪神・淡路大震災をきっかけに36ある小学校区ごとに自主防災組織を設立。
さらに細かい693の自治会ごとに防災組織の設置を進めてきた。
また市民に呼びかけて757人の防災士を養成し、自主防災組織に配置している。
そのうえで消防団員の中に「地域防災指導員」という独自の資格を創設した。
防災について特別なカリキュラムを学び専門知識と経験を有する消防団員で、団員の半数が取得。住民を指導し防災を担える人材の育成に努めている。
地域の防災訓練には企画段階から参画。自主防や防災士と協力して救命・救助や避難所の設営など、工夫をして密度の濃い訓練を実施しています。
さらに防災士の資格を取っても生かされていないケースも多いことから大津市はフォローアップ研修にも力を入れています。
【消防団の課題】
こうした努力が各地の消防団で続けられる一方で、全国的に消防団員の減少に歯止めがかからず、去年は初めて80万人を割り込んで防災関係者は危機感を強めています。
背景には会社勤めの人の割合が増えたこと、厳しい訓練や休日を活動にあてなければならないこと、報酬の安さ、上下関係の厳しさなどがあると考えられています。
これに対して国は活動のあり方を見直して負担を軽減したり、報酬の引き上げ、消防団活動への理解を深めるPRなどにも力を入れています。
さらに▼すべての活動には参加せず防災指導や広報など特定の活動だけ行う団員や▼大規模災害のときだけ活動する団員の制度も設けられました。
こうした位置づけの学生消防団員や女性消防団員は増加しています。
去年8月の豪雨で大きな被害が出た新潟県関川村ではこうした団員たちが炊き出しなど被災者支援にあたり、大きな力を発揮しました。
消防団への理解を広げ、さらに参加しやすくする工夫を重ねる必要があります。
【避難所運営を担う人材育成を】
消防団のほか地域ではどのような連携が進められているのでしょうか。
自主防災組織や広がる防災士、ボランティアの連携がさまざまな形で試みられているが、そのひとつが避難所の運営。
南海トラフ地震が起こると避難所に最大430万人が行くと考えられている。
膨大な避難所が開設されるが行政やNPOなどだけで運営するのは不可能。
自主防災組織など地域の人たちで運営をしてもらう必要がある。
内閣府は「避難所運営支援リーダー」などの運営者としての資格を新たにつくることにした。避難所運営の経験が豊富なボランティア団体が中心になってテキストと研修カリキュラムの作成を進めていて、いまモデル自治体での研修が始まっている。
先週の土曜日に岡山県の矢掛町で行われた研修を取材した。
体育館で行われた研修には町の呼びかけに応じた自治会や自主防災組織の役員、防災士など40人ほどが参加しました。
講師は避難所運営の経験が豊富なNPOの職員で、避難所の基本について講義を受けたあと演習が行われました。
会場には、受付や、情報の掲示場所、寝起きするスペースやトイレ、洗濯・物干しスペースなど模擬の避難所が設けられ、避難者役の人も配置されています。
参加者たちはそれぞれのスペースの状況を見たうえで避難者から話を聞き、どのような問題があるのかを考えます。
そしてグループごとに討議をして実際に改善していきます。
例えば高齢の女性が寝ていた段ボールベッドはずれないよう固定したうえで、寝起きがしやすいよう壁際に移動。足元の段差もなくしました。
講師は身体の負担を減らす敷物の工夫や、数が限られる場合に優先順位を見極める大切さをアドバイスします。
さらに衛生用品の配布や洗濯物を干す場所でのプライバシーへの配慮、飲酒によるトラブル防止策に至るまで、参加者のアイデアに講師が助言をする形で議論を深めていきました。
【まとめ】
災害から住民の命と財産を守るため国と自治体は重い責任を負っています。
同時に、災害が起きたとき、まず頼りになったのは近所の人や消防団だったというケースがとても多い。
きょうは阪神・淡路大震災の日ですが、自分の住む町ではどういう防災の取り組みがあって、何が必要なのか、考えることも大切だと思います。
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