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大掃除にあわせて住まいのチェック

清永 聡  解説委員

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今年もあとわずか。そこで今回は大掃除にあわせて、住まいを点検し、住宅トラブルを未然に防ごうという話題です。
自宅のどこをチェックすればよいのでしょうか。専門家に注意するポイントを聞きました。

【「大掃除する予定」は7割】

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A:こういう調査があります。大手清掃サービス会社の「ダスキン」が今年10月、2000人余りを対象に大掃除の予定をインターネットで調査しました。それによると、「大掃除をする予定」と答えた人は71.3%でした。

Q:多くの人が大掃除をするつもりと答えているんですね。
A:まだの人もいると思いますが、安心してください。「する」と答えた人にいつ行う予定か聞いたところ、1位は12月29日、2位は12月30日、3位はこの番組の放送日、12月28日です。

年末の時期でまだ忙しい方も多いと思いますが、ふだんの掃除で手を付けていないところや、汚れが目立っているところなど、無理のない範囲できれいにしてください。

【「住宅の点検はこの時期に」】
Q:今回はこの大掃除に合わせて自宅の点検ということですが、きれいにするだけではないのですか。

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A:建築士で住宅診断士(ホームインスペクター)の「さくら事務所」田村啓さんによると、住まいが痛んでいないかどうかを自分でチェックするのは、大掃除と同じ、冬のこの時期が適しているのだそうです。
特に戸建ての場合、この時期は雑草なども比較的少ないため、家の周囲が分かりやすく、基礎なども確認しやすいということです。
そこで田村さんに今回、私たちが自分でも確認できる注意ポイントを教えてもらいました。
田村さんまずは「とにかく水と湿気に注意してほしい」と話しています。

Q:水と湿気ですね。
A:雨漏り、カビ、シロアリなどさまざまな住宅トラブルにつながるからです。今日お伝えするポイントも多くはこの水や湿気に関するものです。

【外からチェックするポイント】
Q:では、どこを見ていけばよいのでしょうか。

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A:戸建ての場合ですが、まずは外から見た注意点です。自宅周りの掃除が終わった後に、建物をぐるりと外から見てください。

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ポイントは窓など開口部の周辺。それから外壁の継ぎ目です。いずれもひび割れがないか確認してください。例えば写真のようにひび割れがあった場合、あちこちに広がっていないかどうかを調べてください。
ひび割れがあると、そこから雨水が侵入している可能性があります。

Q:どのくらいの幅のひび割れでしょうか。
A:田村さんによると目安は0、5ミリでこれを超える幅になると「要注意」だそうです。シャープペンシルの芯の太さの幅くらいだそうです。
これよりも小さい場合はひとまず経過観察だそうですが「ひび割れが大きかったり、窓の四方や継ぎ目のあちこちに広がったりしている場合は、住宅会社や工務店などに相談してください」ということです。

Q:ほかにはどうでしょうか。

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A:基礎の部分に水が溜まっている場所がないか確認してください。コケが生えている所は湿気がある場所です。
そしてシロアリが発生していないかどうか気を付けてください。特に土のような塊がある場合。こちらは家の中の画像ですが、これはシロアリの「蟻道(ぎどう)」といって、シロアリが通る道です。

Q:シロアリ、怖いですね。
A:床下や天井裏などもこうした「蟻道」がないか気を付けてください。繁殖すると住まいが大きな被害を受けることにつながりかねませんから、特によく点検してください。

【中からチェックするポイント】
Q:今度は家の中のチェックポイントを教えてください。

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A:こちらは水回りが中心です。床下を確認する点検口や床下収納がある家は多いと思います。
そういう場合は、開けて中をよく見てください。水が溜まっていないか、湿っていないか、カビが出ていないか、嫌な臭いはしないか、こういった点を確認してください。

Q:これも水が溜まっていたり、カビが生えていたりしたらどうしましょう。

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A:田村さんはまず「動画か写真をとって記録を残してください」と話しています。
そのうえで、少し湿っている程度や少しカビがある場合などひどくない場合は、ふき取って経過観察だそうです。しかし、水たまりができている状態や強烈なカビのにおいがする場合は、業者へ写真や動画を見せて相談をしてくださいということです。
また、経過観察の場合も、写真や動画を取っておけば、後から比較ができます。

他にも、キッチンや洗面台の収納も、一度入れている物をすべて出して、配管から水がもれていないか、カビやにおいはどうかなどを確認してください。

Q:リビングなどはどうでしょうか。

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A:壁紙の表側、それにすき間の部分や、壁紙がはがれかけて裏側が黒ずんでいるような場合、カビが広がっていないかどうか、一度確認してください。大丈夫なら再び接着剤で張り付けて、カビはふき取ってください。
もし裏側にもカビが広がっている場合、結露や雨漏りの可能性があるということです。

【マンション特有の注意点も】
Q:マンションの場合、特に注意する点はありますか。

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A:戸建てと違って共用部分がありますから、全部自分では対処できません。例えばベランダも共用部分です。ただし、劣化して水が溜まっていたり、一部に穴が開いていたりする場合もあるかもしれません。
また、ベランダ部分に限らず外壁がはがれていることがあるかもしれません。しかし共用部分のリフォームは無断ではできません。

Q:どうしたらよいのですか。
A:「さくら事務所」の田村さんは「マンションの不具合は管理組合や管理会社に報告して、情報を共有してください」と話しています。同じ建物なので、実は他の部屋でも同じような不具合が起きている可能性があります。その場合共用部分の修理を一緒に行うこともできるということです。

【実家などの空き家の注意点は】
Q:それから実家が空き家で、この時期に一緒に掃除をするという方もいるのではないでしょうか。

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A:空き家の場合の注意点も聞きました。
特に古い住宅の場合換気が行われておらず、ずっと空気がとどまってカビが生えやすくなっている家も少なくありません。

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そこで空き家を掃除する際には、まず、家じゅうの窓や玄関を一度開けてくださいということです。押し入れやクローゼットもできるだけ開けて、風をよく通してください。こうした場所は湿気がこもりがちです。
それから、すべての部屋の電気をつけてみてください。水も一度出してください。漏電していないか、下水が逆流しないかどうか。水道管や排水管が痛んでいないかどうかを見てください。

もう1つ。時間があれば水を止めてから、空き家の水道メーターを確認してください。漏水していればメーターが回り続けます。
古い住宅の場合、特に水や湿気に注意が必要だそうです。不具合が起きていないか十分な確認が大事です。

【住まいの健康状態も確認して新年を】
Q:大掃除に合わせて、いろいろとチェックするポイントがありました。気を付けたいと思います。
A:柱や壁が腐食していたり、シロアリの被害を受けていたりすれば、住宅が弱くなって、地震などの災害で倒壊するおそれも高まります。そうなると命にもかかわります。
家の汚れを落とすことに加え、この機会に住まいの健康状態も確認して、新年を迎えてほしいと思います。


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