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年末年始の新型コロナ対策は

中村 幸司  解説委員

新型コロナの感染が拡大しています。こうした中、2022年から23年にかけての年末年始に向け、どういったことを心がけたらいいのでしょうか。

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Q:新型コロナが流行してから、3回目の年末年始ですね。
A:過去2回は、年明けに感染が拡大して、1月に、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置といった強い対策をする結果になりました。

Q:そうならないために、この年末年始の感染対策は、どういったことがポイントなのでしょうか?
A:一言で言って、「医療のひっ迫につなげないようにする」ということになります。

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上図の左は感染の現状です。全国的には、2022年10月ころから増加傾向です。地域によって、状況にばらつきがあります。12月26日までの1週間の感染者が、前の週から増えた都道府県が「赤」、減ったところを「青」とすると、上図の右のようになります。北海道と東北地方など北の地域で減少しています。

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ただ、医療ひっ迫を示す「新型コロナ用の病床の使用率」をみると、全国で高くなっています。多くの都道府県で、50%を超えています。北海道や東北も、高いままです。
1日の死者数をみても300人を超える日が続くなど、第7波のピークに迫っています。
医療のひっ迫を抑えることが重要になっています。

Q:医療のひっ迫をまねかないために、どういったことが必要でしょうか?
A:熱が出るなど体調に異変があったときの行動が大切とされています。国は次のように求めています。

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重症化リスクの高い人=つまり、高齢者や基礎疾患のある人、妊婦、小学生以下の子ども(上図の左)は、発熱外来やかかりつけ医など医療機関にかかって、新型コロナの検査をし、陽性なら新型コロナの治療を行う、という流れです。
一方、基礎疾患のない若い世代など、重症化リスクの低い人(上図の右)には、すぐに医療機関にかかるのではなく、まず自分で抗原検査キットを使って、検査をするよう求めています。陽性なら、感染者の支援などを行う自治体の健康フォローアップセンターなどに連絡して、自宅療養する、といった流れです。
なぜ、自分で検査する(自己検査)するのか。それは、医療機関をリスクの高い人たちに優先して利用してもらえるようにしようという考えがあるからです。

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ただ、リスクが低い人といっても、症状が重い場合もあります。そうしたケースでは、かかりつけ医などに連絡して、上図の左側の流れで対応してもらうということです。

Q:かかりつけ医といっても、年末年始は診察を休んでいることが多いと思います。どうしたら、いいのでしょうか?
A:そうしたときとや判断に迷ったときは、都道府県に「受診・相談センター」といった窓口があるので、まずは電話で相談してください。

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あらかじめ、自宅のある自治体のセンターを確認しておくとともに、出かける予定がある人は、旅行先のセンターも調べておくことが大切だと思います。「受診相談センター」で検索すると、連絡先を探すことができます。
もう一つ注意が必要なのが、インフルエンザです。

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上図は、インフルエンザの患者数の傾向を示したデータです。新型コロナが広がった2020年以降は、冬になっても、ほとんど患者は報告されていませんでした。
それが、2022年12月は、コロナ前の年よりは少ないですが、患者が増え始めています。過去2年と違います。

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医療機関あたりの報告数が1を超えるかどうかが、流行の目安になっています。12月23日に発表されたデータで、6つの都県で1を超えました。報告数が多い順に、岩手、富山、青森、熊本、東京、神奈川で、それぞれの都県は「インフルエンザの流行期に入った」としています。インフルエンザは、海外で感染が広がっている国があります。そうした影響を受けて、日本で増えている可能性があります。
専門家は、「新型コロナとインフルエンザの同時流行が現実的になってきている」と危機感を示しています。

Q:同時流行したときの対応は、どのようにしたらいいのでしょうか?
A:先程の流れに準じた行動が、求められています。

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新型コロナの重症化リスクの高い人と子どもは、発熱外来、あるいは、かかりつけ医で検査や診察をしてもらう、リスクの低い人は新型コロナの自己検査をするということは、変わりません。リスクの高い人たちに医療機関を優先的に利用してもらうという考えは同じです。

リスクの高い人と子どもは、新型コロナとあわせて、インフルエンザの検査も行って、インフルエンザ陽性であれば、従来のようなインフルエンザの治療を受ける。
リスクの低い人では、新型コロナ陰性であれば、ここからは従来の治療と同じ対応になります。かかりつけ医などでインフルエンザの検査を受けて、検査結果が陽性なら、インフルエンザの治療を受けます。
こうすることで、同時流行に対応しようとしています。

Q:年末年始、感染を広げないために、どのように行動したらよいでしょうか?
A:この年末年始、国や専門家は、基本的な感染対策を実践してほしいとしています。

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3密の回避、必要な時はマスクをする、手や指の消毒、換気の徹底、といったことです。
特に年末年始は、対策が難しい局面もあります。ふだん会わない人と会う機会が多くなる、寒いので部屋を閉め切っていて、十分な換気ができないといったことです。さらに、冬は、呼吸器の感染症が広がりやすいとされているので、一層の注意が必要です。

Q:帰省や初詣を予定している人は、どういった対策が考えられるでしょうか?
A:帰省して、高齢の家族と会うといった時には、注意が必要です。

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あらかじめ、新型コロナの検査しておくといったことが一つの方法です。自治体によっては、駅などで、無料で検査を受けられるところもあります。こうしたものを利用するのも方法です。帰省の前から、リスクの高い行動=大勢での会食などですが、そうしたことを控えるということもあると思います。
大勢の人が訪れるところに初詣に行くときは、注意が必要だと思います。屋外であっても、混雑しているのでマスクをすることが大切だと思います。人出が少ないところに行くとか、なるべく人が少ない日や時間帯を選ぶというのも、ひとつの方法です。
そして、大切なのが、体調が悪いと感じた時は、外出せず、自宅などで静養することです。予定があるからと言って、無理をしてしまいがちですが、ここはリスクの高い行動は控えるということです。

さらに、対策として、専門家が強調しているのが、オミクロン株対応のワクチン接種です。

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ワクチン接種により、重症化が抑えられるとされていますが、最近はオミクロン株対応ワクチンによって、「BA.5」の発症を抑える効果もあるという研究が国内からも海外からも報告されています。年末年始に限らず、第8波の感染対策として、接種を検討してほしいと呼び掛けられています。
この年末年始、多くの人が移動するとみられます。感染拡大や医療ひっ迫を抑えるために、どういった感染対策=行動が必要か、あらためて、確認することが大切になっています。


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