今回のテーマは電動アシスト自転車。
子育てなどに便利で人気上昇中ですが、転倒して子どもが大けがをするなど事故があとをたたず、
注意が呼びかけられています。水野倫之解説委員の解説。
電動アシスト自転車、こどもの送迎によく使われているが
加えてこのコロナ下で密が避けられると、買い物や通勤・通学などに使わたり、
宅配も増えていて業者が利用したりと人気上昇中。
出荷台数は右肩上がりで、2021年には79万台まで増。
ただ、それにともない事故もあとを絶たない。
Q:電動アシスト自転車の事故、どれくらい起きている?
A:自転車全体の事故はおととし全国で6万7000件あまりで、2012年から半減。
その一方、電動アシスト自転車が関係した事故はおととし2600件あまりで
2012年の1250件から10年足らずで倍増。
中でも注意が必要なのは子どもを乗せている時の事故。
今年4月には大阪で、母親と幼児2人の3人が乗った電動アシスト自転車が転倒して
3歳の幼児が路上に投げ出され、トラックにはねられ死亡する痛ましい事故も。
もともとは自転車にこども2人乗せるのは法律で禁止されていたが、子育て世代の要望を
受けて2009年から、強度などの安全基準が確認された自転車に限り、
幼児2人まで乗せることが認められた。
安全基準に適合している製品にはマークがついている。
ただ、その分フレームも太く頑丈に作られ、バッテリーも搭載された車体に
大人1人と幼児2人が乗れば、総重量は100キロを超えることもあり、
一般の自転車よりバランスを崩しやすい点に注意が必要。
過去に東京都内で電動アシスト自転車の事故で救急搬送された幼児のデータを
消費者庁が分析。毎年200人ほど搬送されているが、2011年からの7年間で
詳細が判明した1221人の幼児のうち、停止中に起きた事故での搬送が972人と
80%近くを占め最も多い。
消費者庁では電動アシスト自転車の利用実態を把握しようと、
首都圏や大阪の保育園などに協力を得て、駐輪場にカメラを設置。
そのうち、都内の保育園の子どもの送迎時の映像をみると、
偶然にも子どもを乗せた自転車が転倒する様子が捉えられていた。
保護者が自転車の前の座席にこどもを座らせていた時に
倒れかけた隣の自転車に気を取られ、子どもから目を離した一瞬のすきに、
自転車が子ども、もろとも倒れてしまった。
幸い子どもはいすから放り出されることなく、けがはなかったということだが、
一歩間違えば深刻な事故につながったおそれも。
消費者庁ではこのケースはいくつかの要因が重なって起きたと分析。
① つ目は駐輪場の傾き。左に向かって緩やかな傾きがあるほか、
前輪がマンホールの端のくぼみにかかっており、車体全体が傾いていた可能性。
② つ目はハンドルにかけられた荷物。
傾斜の低い側の左のハンドルにこどものリュックがかけられ、車体の重心が左に偏る。
③ つ目はこどもの動き。倒れた自転車に気を取られた保護者の方に顔と体を向け
手を伸ばしたため、さらに重心が左に寄って不安定に。
④ つ目、ほんの一瞬だが、保護者が子どもから目を離したため、
倒れてくる自転車を支えることができなかった。
一般的な幼児乗せ用の電動アシスト自転車はスタンドをたててとめるが、
このとき自転車は前の車輪とスタンドの両端の三角形で支えられている。
この3角形から重心がはずれてしまうと、自転車は倒れやすくなる。
消費者庁では、乗る前、乗り降りする時、それぞれ注意が必要という。
まず乗る前、こどもにヘルメットをかぶせること。
例え転倒する事故があっても子どもがけがをするリスクを確実に減らすことができる。
次に乗り降りするときの注意点。
まず自転車をとめる時は傾斜がない場所を選び、スタンドがしっかり立っていることや、
ハンドルがぐらつかないようハンドルロックがかかっていることを確認。
そして子どもの乗せ方、幼児2人を乗せられる仕様の自転車で見てみるが、
まず一人の場合は先ほどの映像で見たように前に乗せると
ぐらつく可能性があるので、後ろに乗せた方が安定する場合が多いという。
乗せたら必ずシートベルトを。
子どもが2人いる場合は1人目をまず後ろに乗せてから2人目を前に乗せるとバランスが
くずれにくく、
降りるときはその逆で、前の子を降ろしてから後ろの子を降ろした方が
バランスが崩れにくいということ。
次に重要なのが子どもと荷物を載せる順番。
子どもは座っている間に動いてしまうことが多く自転車が不安定になることがあるので、
乗っている時間をできるだけ短くするのがポイント。
子どもは最後に乗せて、最初に降ろすのが鉄則。
荷物を先に載せて次に子どもを乗せ、
降りるときも先に子どもを降ろしそのあと荷物を降ろす。
それと荷物も自転車の左右の中心から外れた場所に載せると転倒しやすくなるので、
ハンドルにぶら下げるのではなく、かごに入れるように。
次に走行中の注意点は
アシスト機能があるのでこぎ出すときは、停止してサドルに座った状態でこぎ出すこと。
走りながら乗ると、アシスト機能で急にスピードが出てバランスを崩すことがあるので
注意。
また気をつけたいのが、歩道と車道の間などにある段差。
浅い角度で進入するとハンドルを取られて転倒するおそれ、
スピードを落として角度をつけて、できれば90度真正面から進入するとよい。
このほかにも電動アシスト自転車ならではのトラブルとして
バッテリーの発火事故も報告。製品評価機構によると製造時の不具合によるものが多く、
リコールとなっているものも。
対象となっていないかどうか、この際メーカーのホームページなどで確認を。
子育て中は忙しく、少しの時間だからと子どもから目を離すことがありがちだが、
一歩間違えば命にも関わることにもなりかねない。保護者の方はこどもを乗せた
電動アシスト自転車は一般の自転車とは違うという意識を持って
注意して利用してほしい。
(水野 倫之 解説委員)
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