NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「飲食業界ピンチ どうなるGo To イートキャンペーン」(くらし☆解説)

神子田 章博  解説委員

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、飲食店は来店客が減り、厳しい経営が続いています。こうした中で、飲食業界を支援しようという政府の動きが本格化しています。

k200827_0.jpg

Q 飲食業界、まだまだ厳しい状況が続いているようですね

A そうですね。まず外食の消費の動向についてこちらをごらんください。

k200827_01.jpg

これは、データ分析会社のナウキャストとクレジットカード大手JCBが、カードの利用情報をもとにプライバシーを保護したうえで、半月ごとの消費動向を指数で示したものです。このグラフは外食の消費が感染拡大前の1月後半と比較してどれだけ減ったかを示したものですが、4月から5月にかけて大きく落ち込んだ後改善に向かっていた動きが7月に入って足踏みしています。感染が再拡大したことを受けて、会食や飲み会の自粛や営業時間の短縮が要請されたことなども影響しているとみられます。
そこで飲食業界と、食材を供給する農林漁業者を応援することを目的にGo To イートキャンペーンの準備が進んでいます。

Q  Go To イートというのはどういう仕組みなんですか?

A お店に来てもらう為の方法、大きくいって二つあります。

k200827_03_1.jpg

 ひとつは、購入した金額の25%分上乗せした額の食事ができるプレミアム付きお食事券を購入します。500円と1000円の券があって一回の購入あたり、最大あたり2万円分のお食事券が購入できます。例えば2万円の食事券を二人で使った場合、一人1万円の料理に加えて5000円のワインが一本飲める計算です。このワイン一本がただで飲めるという勘定ですね。

Q そう聞くとお得な気がしてきますが、そのお食事券どうやって買うんですか?

A 具体的にはこういう仕組みです。

k200827_03_3.jpg

各都道府県ごとに、商工会議所や商工会、それに民間企業などが関係する民間の企業体が農林水産省から委託を受ける形で、食事券発行事業者となります。食事券をどこで買えるかというと、コンビニ、それに郵便局、商工会議所の窓口などのアイデアがでていますが、実際にはそれぞれの発行事業者が具体的に考えていくということです。そして、このお食事券は、地元の都道府県内で購入し同じ都道府県にある飲食店でしか使うことができません。

Q Go Toイート、ふたつあるという話ですがもう一つは?

k200827_03_5.jpg

A オンライン飲食予約ポイント還元です。
 こちらは、まず、ネットの予約サイトを通じて自分のアカウントから飲食店を予約します。実際その店に行って飲食すると、自分のアカウントにポイントがたまります。ランチを予約して店に行くと500円分、夕食なら1000円分です。そして、次に食事に行ったとき、これは最初に行ったのと同じ店でもいいし、別の店でも良いのですが、お会計の際にこのポイントが使えるんです。利用回数に制限は設けないということです。

Q 何度いってもいいんですね。

A 予約して店に行って食べて、もう一回店に行って食べる。このプロセスを繰り返せば、何度でも使えるということです。

Q これいつから使えるんでしょうか?

k200827_03_6.jpg

A まずプレミアム付きお食事券のほうは、おととい農水省が事務を委託する食事券発行事業者が決まりました。33府県の35の事業者が委託されました。

Q 33府県というと、Go Toトラベルのように東京は入っていないんですか?

A いえ、今回は東京が除外されるということはありません。14の道府県は、申請の準備が間に合わなかっただけで、来月の追加の公募に応募するものとみられます。一方、オンライン予約を担当する予約サイトも、多くの都道府県をまたいで展開する13の事業者が委託先に決まりました。ただもともと今月下旬にも始めたいといわれていたキャンペーンの開始は遅れることになりました。

Q  それはやはりコロナの感染が心配だからでしょうか?

k200827_03_7.jpg

A  その通りです。Go Toトラベルが様々な批判を受けたことを教訓に、このキャンペーンは感染防止によりいっそうの注意を払いながら行おうとしています。実際にこのキャンペーンに登録できる店は、「業界のガイドラインに基づいて感染予防対策に取り組んでいること」を条件にしていて、これから政府が、飲食店が守るべき対策を具体的に示すことにしています。キャンペーン開始はその後ということで、地元完結型のお食事券の方は来月には始まりそうです。オンライン予約のほうは都道府県をまたいだ利用も想定されることから、感染状況をみながら開始時期を慎重に判断するということです。

Q 感染拡大の防止には注意をはらってもらいたいと思いますが、「業界ガイドライン」というのはどういうものでしょうか?

k200827_04.jpg

A これは今年5月、様々な業界の団体が感染防止対策をまとめたものです。
外食業界では、来店客には入り口で消毒液をかけて手指の消毒をしてもらい、最低でも1メートル以上離れて座るか、対面する場合はテーブルの上に透明なアクリル板を設ける。従業員はマスクかフェースガードを着用し、徹底した換気を行う。ことなどが求められています。 
またある外食チェーンでは、マスクに紙ナプキンを挟み込んで、ナプキンが口を覆ったままの形で飲食ができる方法を考えて、お客さんに提案しています。食事中の会話の際に飛沫を防ぐ効果が期待できるのではということですが、これで感染を防止できるかの検証は行っていないとしています。少しでも感染リスクを下げたいという店側の思いが伝わってきますが、感染症の専門家は、食べるとき以外はマスクをするのが望ましいとしています。食べるならしゃべるな、しゃべるなら食べるな、というわけです。実際にそうやろうとしてもなかなか難しいですけどね。
 
Q お店側もいろいろ考えているようですが、私たちも注意しないといけませんね?

A そうですね。いくつか大事なポイントをまとめました。

k200827_05_1.jpg

まず感染予防対策を徹底した店を選んで利用する。食事の前には、手洗い・消毒。食事中の会話は控える。それと三密の回避、大人数の飲み会で、大きな声で乾杯、お酌をしあう、大皿料理をとりわけて食べると、感染リスクは高まります。それから大人数だと万一感染した場合クラスターの規模も大きくなるおそれもあります。

Q 感染防止と両立しながらということですが、飲食業界はGo To イートでどれだけ助かるんでしょうか?

A これをきっかけに外食する人が増えれば、その分、助かる店も少なくないと思いますが、これだけ事態が長引きますと店の家賃の支払いなど台所事情も一段と厳しくなっているお店もあるでしょうから、別途対策を検討する必要もでてきそうです。
そうした中でやはり必要なのは感染防止と経済活動の両立です。人類がコロナに打ち勝つといいますが、みんなが家に閉じこもっていれば、感染拡大は防げるかもしれませんが、それでは経済が死んでしまいます。飲食店でいえば、お気に入りの味の店とか、友達とよく立ち寄る憩いの場とか、大切な思い出のある店とか、そういった店が経営難でなくなってしまうかもしれないわけです。それで、人類がコロナに打ち勝ったことになるのでしょうか。
経済活動と感染拡大の防止の両立に必要なのは、飲食店など業界側だけでなく、私たちも感染防止の対策を怠らないこと。新しい生活様式をどれだけ徹底できるのかが改めて問われているのだと思います。

(神子田 章博 解説委員)

キーワード

関連記事