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「変わる!? 2020年夏のインターンシップ」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

今年は、多くの大学で、夏休みの始まりが遅くなっていますが、そろそろ始まり、主に大学3年生を対象にしたインターンシップが本格化します。今井純子解説委員。

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【インターンシップというと、大学生が企業で仕事の体験をして、就職の参考にする活動ですよね】
はい。今年は、このインターンシップ。就職活動が、今後、厳しさを増すのではないか、という見方から、例年以上に注目されているのです。

【注目ですか?】
はい。今年は、春に緊急事態宣言が出たことで、今の4年生の採用活動が遅れ気味なのですが、そうした中でも、次の、主に3年生を対象にしたインターンシップを実施するという企業は、半数を超えています。学生を対象にしたアンケートでも、94%の学生が、参加したい、参加する予定と答えています。

【ほとんどの学生が参加を希望しているのですね】
このインターンシップ。学生にとっては、いろいろな業界、いろいろな企業の実態を見ることで、やりたい仕事、志望する企業を絞っていく。そのための大きな経験になります。
それに加えて、もう一つ。インターンシップは、事実上、就職活動のスタートになっているという面もあります。

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【ここから就職活動が始まるのですね】
今の3年生も、4年生も、政府が要請している、就職活動のスケジュールはこちら。説明会やエントリーシート=応募の受付は大学3年生の3月。面接・内定は、大学4年生になった6月から。その前に行われるインターンシップは、多くの企業で採用とは関係ないということになっていますが、実際に、インターンシップを実施する企業に、採用活動との関係を聞いたアンケートでは、
▼ インターンシップ参加者だけを選考の対象にする。あるいは
▼ 優秀な学生は考慮すると答えた企業が、あわせて70%近くに達しました。

【インターンシップから、採用に結びつくのですね】
一部の動きですが、優秀と判断した学生について、早いうちから「面談」などの口実で接触をはかり、早めに内定を出していく企業がある。インターンシップが、事実上、採用の一つのルートになっているのは間違いありません。

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【学生にとっても、企業にとってもインターンシップは大きな意味を持っているのですね】
特に今年は、例年以上に注目されています。
というのも、今の大学4年生の就職活動。遅れ気味と言いましたが、実際には、2極化です。

【2極化ですか?】
はい。4月までは、感染が拡大していく中、企業の間では、過去にインターンシップを受けた学生の中から早めに内定を出す動きが相次ぎました。4月時点では、内定率は、前の年を上回る勢いでした。それが、その後、緊急事態宣言が出され、内定を出す動きが遅れ気味になりました。7月の内定率は、前の年を下回っています。早く決まった学生も多かった一方、まだ活動している企業や学生も多いという状況なのです。
そして、今の3年生は、こうした動きを見ています。

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今後、コロナの動きがどうなるかわからない中、できるだけ早く内定をとりたいということから、
▼ インターンシップで、早くから多くの企業との接点をもちたい。そう考える、学生が多いのです。1人の学生が、インターンシップを希望する企業の数は、平均で8.1社。去年より1人あたり3社増えているのです。

【たくさん参加したいということですね】
はい。ただ、今年、インターンシップのやり方も、例年とは様変わりしそうなのです。

【どのように変わるのですか?】
今年は、3密を避けることが求められているため、一つの会場に、多くの学生を集めることはできません。インターンシップを実施する予定の企業のうち、コロナ対策として
▼ 「オンラインで実施する」と答えた企業が55%近く。
▼ 「少人数制で実施する」が63%あまりに達しました。
両方実施するという企業も多くあります。

【少人数制?参加できる学生が減るのではないですか?】
実際に対面する形式だと、どうしても、今年は人数を絞る必要がでてきます。ただ、オンラインですと、会場の制約もありませんので、多くの学生が参加できるのではないかという見方もあります。
少人数でも、直接に学生に会いたいという企業は多いのですが、ここへきて、本社が多く集まっている東京で感染の拡大が目立っています。地方と東京との移動に不安の声が上がる中、オンライン実施に切り替える企業が増えるという見方もでています。実際、対面式で学生を募集しているけれど、オンラインに切り替えられるよう検討をしているという企業もあります。

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【オンラインでのインターンシップ。どんなふうにやるのですか?】
例えば、今年初めて、オンラインでの実施を決めている日立製作所では、
▼ 1日のコースでは、参加者がグループに分かれて、例えば、新興国への鉄道車両の導入という課題について、社員の助言を受けながら、会社が持っている様々な技術やサービス、製品を使いながら、解決方法や収益性について、検討していく。ゲーム形式の作業で、会社や仕事について理解をしてもらう。
▼ また、技術系については、例えば「AIを活用したセキュリティ技術の研究」など、具体的な研究・開発テーマについて、少人数で、1~3週間、専門性を持った社員の指導のもと、プログラミングや解析など実際の業務に近い体験をしてもらう。
このような内容を検討しているということです。日立は、在宅勤務をしている社員が多いので、双方が在宅というケースが多くなるそうです。

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【オンラインでも、十分仕事の体験ができそうですね。学生の受け止めはどうなのでしょうか?】
会社に行かないので、
▼ 現場の雰囲気がわからない
▼ 家族に発言を聞かれるので嫌だ
といった声がある一方、
▼ 感染の不安がない
▼ 地方から参加しやすい
▼ 時間とおカネをかけずに多くの企業のインターンシップに参加できる
▼ 本番の就職活動でもオンライン面接が増えている、今からその環境に慣れることができる。こうした前向きの声もあがっています。実際、大学の授業もオンラインという学生が多いので、心理的な抵抗も低くなっているという見方もあります。

【前向きの受け止めも多いのですね。学生は、どのようにインターンシップに臨めばいいでしょうか?】
先ほど述べたように、企業の業績悪化で、今の大学3年生の就職活動は、今の4年生以上に厳しくなるという見方がでています。ただ、在宅勤務やタッチレス技術への需要が増え、IT産業など業績が拡大している企業もあります。この夏は、旅行に行けない。クラブ活動も制約があるという学生さんも多いと思います。就職活動の始まりと言っても、まだ、第一歩です。特に、オンラインの場合、遠くの企業のインターンシップも受けやすくなりますので、視野を広く、幅広い企業のインターンシップを体験するというのも一つの考え方だと思います。

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企業も、希望する学生ができるだけ参加できるよう、(感染対策を徹底したり、また、学業の妨げにならないよう、お休みの日を利用したりするのはもちろんですが)、積極的にインターンシップの機会を検討してほしいと思います。 

(今井 純子 解説委員)

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