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「お試しのつもりが・・・ トラブル急増 定期購入販売」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

1回切りのお試しのつもりで購入したら、実際には違ったというトラブルが急増しています。今井解説委員。

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【どのようなトラブルですか?】
例えば、健康食品の広告です。「通常一袋5000円が、初回、お試しで500円」とあります。

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【とりあえず安く買って、効果を試すことができるということですね。商品に興味がある人なら、試してみようか思いますよね】
はい。試しに1回。安く買おうと、「お得に始める」のタブを押すと、注文フォームに飛ぶ仕組みになっています。そして、必要な情報を打ち込んで注文をしたところ、2万500円の請求がきたというのです。

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【今なら500円と書いてありましたよね。なぜ、2万500円請求されるのですか?】
飛んだ部分に、「最低5回の定期購入が条件」で、2回目以降は、通常価格の1回5000円で買う契約だということが書いてあったのです。

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【スマホの広告は、縦に長いので、飛んだ部分を遡って読もうとはしないですよね】
そうですよね。さらに、申し込みの最終確認の画面には、最低5回の定期購入契約だ、といった条件が書かれていましたが、小さく、めだたない表示のため、気が付かない人も多いのです。
こうした広告は、「初回お試し価格」を強調して、「定期購入」だということを、わざとわかりにくくして申し込みをさせようとしていると言われても、仕方ないと思います。

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【解約できないのですか?】
最低5回買うことが条件と書いてありますよね。契約は成立しているので、払う義務があるとして、応じてくれない事業者がいるというのです。中には、こういうケースもあります。化粧品の広告です。

【こちらは、3回の定期コース。そして、いつでも解約できます。と、わかるように書いてありますね】
だから、安心してとりあえず、初回試してみた。でも、効果がない。肌が荒れたので、一回でやめようと電話をしたら、解約するなら4700円払うよう言われたというのです。

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【300円と書いてありますよね。なぜですか?】
小さく、「解約の場合は、お試し価格は適用できません」と書いてあった。だから、通常の価格5000円との差額分を払うようにというのです。

【小さい文字だと気がつかないことがありそうですね】
中には、
▼ 解約は電話だけで受け付けると書いてあるのに、何度電話をしても、何十分かけ続けてもつながらないというケースもあります。
できるだけ解約させないようにしていると言われても仕方ありません。

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【クーリングオフはできないのですか?】
確かに、訪問販売や電話勧誘の場合は、「突然の勧誘で、消費者が冷静に判断できないまま契約してしまうことがある」ことから、一定の期間、無条件で解約できる「クーリングオフ」の制度があります。ですが、インターネット通販は、対象になっていません。

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【なぜですか?】
突然の勧誘ではないから、ということなのです。でも最近は、
▼ パソコンを使っていたら、突然、自分が関心を持っている商品の広告が表示されたり・・

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【パソコンを利用した履歴から、その人が関心を持つような広告を出してきますよね・・】
つい見てしまいますよね。さらに、
▼ 受付終了までのカウントダウンの表示があって、注文を急がせたりと
ネット通販でも、突然の勧誘で冷静に判断できないまま注文を急がせるような広告が増えています。それでも、制度上、クーリングオフは適用されません。

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このように、一回だけのつもりだったのに、実際は定期購入の注文になっていたという相談。全国の消費生活センターには、去年、4万5000件近く寄せられました。前の年のおよそ2倍。今年に入って、さらに、2倍のペースで増えています。新型コロナウイルスの感染拡大で、外出を控えて、新たにネット通販を始める人が増えていることも背景にあるとみられています。
この定期購入の場合、金額は、多くが数千円から数万円と、それほど大きな額ではない、ということもあり、泣き寝入りする人が圧倒的に多い。消費生活センターへの相談も氷山の一角とみられています。逆に言うと、その分、儲かるということで、次々と、事業者が参入して、トラブルが増えている面もあります。

【違法ではないのですか?】
これまでも規制は強化されてきていまして、お試しの安い価格やいつでも解約できることを強調する一方、それに条件があることを、
▼ 気づかないような小さな文字で書いたり
▼ 何度もスクロールしなければいけない場所に表示したりすることは、法律違反の可能性が高いと言えます。

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実際、消費者庁や一部の県が、悪質な事業者に対して業務停止命令などの処分を出しています。ただ、価格に近い場所に、少し大きく、でも、めだたない色で条件を表示するなど、表示の仕方が巧妙化していることから、もっと明確なルールが必要だという声があがっているのです。

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【どのようなルールが考えられるのでしょうか】
先週、国の消費者委員会が、
▼ 少なくとも、申し込みの最終画面で、定期購入の契約であることや、解約のための具体的な条件などについて、「お試し価格」の近くに、お試し価格と「同じ大きさ」、「同じくらい目立つ色」で表示するよう義務付けるなどの、緊急対策をとるよう消費者庁に求める意見を出しました。

消費者庁も、おととい有識者の検討委員会を開き、この中では
▼ そもそも「初回お試し」といった、定期購入だということがわかりにくい表示は禁止し、最終画面などに、定期購入分を含めた支払総額を「明確に」表示するよう義務付けること。
▼ 「解約できる」という表示のある契約については、インターネットでも解約を申し出ることができるようにすること。
▼ 消費者を突然勧誘するような広告、誤解をさせるような広告については、消費者が取り消しできる権利を設けること。
▼ 違法な広告について、国の認定を受けている消費者団体が、消費者に代わって差し止めを求めることができるよう対象を広げること。
こうした意見が相次ぎ、消費者庁も法律の改正を含め対策を検討する考えを示しました。

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【前向きなのですね。実際に対策が取られるまで、消費者はどうしたらいいのでしょうか】
まず、
▼ 「お試し価格」「初回割引」あるいは「モニター価格」といった表示の広告については、「定期購入」が条件になっていないか、支払い総額はいくらになるのか。
▼ また、「いつでも解約できる」と表示されていても、追加のおカネを払わなければいけないなどの条件がないか。慎重に確認し、納得した上で申し込むことが大事です。

【事業者とトラブルになったらどうしたらいいのですか?】
身近な消費生活センターに相談してください。全国共通で「188」の番号から、つながります。

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ただ、先ほども述べたように、今の時点では、なかなか解約に応じない事業者もいますので、やはり、トラブルにならないよう、「お試し価格」「初回割引」といった表示には、特に注意して画面をチェックするようにしていただきたいと思います。

(今井 純子 解説委員)

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