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「接触確認アプリ 効果は? プライバシーは?」(くらし☆解説)

三輪 誠司  解説委員

新型コロナウイルスに感染した人が、過去に近くにいたかどうかを確認できるスマートフォンのアプリが公開されました。このアプリの効果と普及に向けた課題についてお伝えします。

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アプリを早速入れたという人もいると思いますが、6月23日、厚生労働省は不具合が見つかったと発表しました。加藤厚生労働大臣は「それほど時間をかけずに対応したい」と説明しましたが、この対応のために、アプリ本来の機能が十分に使えなくなっていますので、一刻も早く修正して欲しいと思います。

71日までに不具合を解消した接触確認アプリが配布されました。アプリは今後もバージョンアップされる予定です。最新版の利用をお願いします。

まずは、このアプリに期待できる効果を説明します。高校時代の同窓会が飲食店で開かれたとします。全国から同級生が集まりました。しかし、その5日後、ひとりの体調が悪くなり、新型コロナウイルスに感染したことがわかったとします。そこで5日前の同窓会のことが気になりました。あそこで感染したかもしれないが、逆に、自分が感染させたかもしれない。こんなとき、どうしたらいいでしょうか。

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メッセージアプリで一斉連絡をすることが出来るかもしれません。しかし、あまり自分が感染したことを知られたくないと思う人もいるかもしれません。また、同じお店で、すぐ隣に別のグループがいたとしたらどうでしょうか。もちろん連絡先はわかりません。そういうときに、アプリが効果を発揮するのではないかと国は見ています。

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使い方を簡単に説明します。接触確認アプリは、公式のアプリストアからインストールします。偽物が出回る可能性がありますので、それ以外のところからはダウンロードしないよう気をつけて下さい。そしてBluetoothという近距離無線がスマートフォンについていますので、ONにします。起動すると、近くに同じアプリを使っているスマートフォンと互いに通信します。そして、1メートル以内に15分間以上滞在したスマートフォンがあると、お互いのアプリの中にその情報を保存します。個人情報は送信されません。

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その後、このうちの1人が新型コロナウイルスの陽性とわかったとします。その人は、保健所を通じて「処理番号」という番号をもらいます。それを自分でアプリに入れて送信します。その情報は、国の管理するサーバーを通じて、アプリを利用している全ての人に送信されます。届いたデータは、それぞれのアプリの中で処理され、過去14日間、1メートル以内の距離に15分間以上近づいていたという記録があれば、接触歴ありとわかります。

利用者が情報を確認するには、アプリの「確認する」というボタンを押します。接触歴があるという場合は、過去14日間の件数が出てきます。一覧を押すと、日付ごとの件数もわかります。

もし、ありと表示された場合、症状があるかを確認する画面になり、症状があると答えた人は、帰国者・接触者外来などの連絡先が表示されます。

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いたずら目的で、自分が感染したというウソの情報を流すのではないかと心配する人もいると思いますが、保健所が発行した8桁の処理番号が正しく入力されているかチェックされるようになっています。また、公開後、民間のセキュリティー研究者でつくる「日本ハッカー協会」が検証しました。もともと個人情報を使わない仕組みであり、プライバシーを守る仕組みや安全性について問題無かったとしています。

一方、海外の同じようなアプリの中には、個人情報を国に送信するものがあります。

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例えば、中国・インド、シンガポールなどは、電話番号やGPSによる位置情報を国が管理するサーバーに送信しています。この情報は、公共施設への立ち入り制限や、隔離、さらに、感染経路の推定に使われます。しかし利用者としては監視されているようで気持ちの悪いものです。このため、利用率は、公表されているものについては最大で3割にとどまっています。

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このため、日本では、プライバシーに配慮することで安心してもらい利用者を増やそうと考えたわけです。例えば、感染した人が情報を送信するのは、本人の同意を得た上で行います。電話番号や位置情報は送りません。また、他の利用者のアプリは、国のサーバーから情報を受け取りますが、逆に個人情報などを送信することはありません。そのかわり、利用者が自らアプリを操作することが求められます。陽性と診断された人は、自分で情報を送信する。他の利用者は、自分で確認ボタンを押さなければなりません。いずれも強制ではなく、互いの健康を守るために自主的に行うことが求められています。

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このアプリ、23日の午後5時までのダウンロード数は、およそ392万件だったということです。この普及率について、「接触確認アプリを人口の6割が利用すれば、感染の拡大を止められる」という研究もあります。これは、日本でいうと、すべてのスマートフォン利用者がアプリを利用するくらいの数になります。今のダウンロード数は全国民の3パーセント程度なので、6割を実現するのはかなりハードルが高いと思いますが、それが難しいから意味がないと頭ごなしに決めつけるのではなく、万が一に備えるという気持ちがあれば積極的にインストールしていいのではないかと思います。

さらに必要なのは、接触歴ありと表示された人に対する相談と検査体制の充実です。アプリで「接触あり」と表示されても、それだけで検査を受けることが出来るかどうかは自治体によって違います。接触したと表示されても感染しているとは限らないのですが、利用者はとても不安になります。相談や検査を優先的に受けられるようにするなどの対策が必要だと思います。

また、不具合によって、一部のアプリの機能が使えなくなっています。できるだけ早く直してもらい、修正版が公開されたら、そちらの方をインストールすることをおすすめします。

(三輪 誠司 解説委員)

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