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「定着するか? テレワーク」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワークが広がっています。今後、定着するのでしょうか。今井解説委員

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【テレワークを経験したという方多いですよね】
はい。テレワークには、在宅勤務だけでなく、家に近いサテライトオフィスなどで仕事をするというのもありますが、今回は、外出を避ける。ということで、在宅で仕事をした方が多かったと思います。
特に大企業では、テレワークを実施した企業が83%に達した、という調査結果もあります。どうしても必要な業務を除いて、出社を禁止とした企業もありました。

【中小企業はどうなのですか?】
同じ調査で、テレワークを実施したという中小企業は、50%あまりにとどまりました。社内のネットインフラ環境やセキュリティ対策が整っていない。また、テレワークができる仕事の分担になっていない。ということで、大企業と比べると導入が進んでいないのです。

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【緊急事態宣言が解除された後、どうなるのでしょうか?】
NHKが大手企業に行ったアンケートでは、今後、テレワークの活用を「拡大する」と答えた企業が54%あまりに達しました。「縮小する」は、10%あまりにとどまりました。

【今後もテレワークの活用に前向きの企業が多いですね】
はい。工場やライフラインを支える仕事など、どうしても現場に行かなければいけない人もいますが、そうした人を除いて、例えば、
▼ 日立製作所は、7月までは、原則、在宅勤務。その上で、来年4月以降も、「在宅勤務」を標準にする考えを示しました。週に2日から3日は在宅にして、出社する人を半分程度に抑えたいとしています。また、
▼ 日本IBMも、7月までは、原則、在宅勤務。8月からシフトを組むなどして出社を徐々に広げ、10月以降は、もともと毎日出社していた社員は、週2~3日の出社を目指す。
▼ 中には、動画投稿サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴのように、今後も、全社員を原則、在宅勤務とする方針を打ち出したところもあります。

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【なぜ、テレワークを続けるというのですか?】
今回は、やむをえず在宅勤務を始めたところが多かったと思いますが、やってみたらよかったと、評価の声が結構あったのです。
今後もテレワークを行いたいですか?という質問に対して「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人が60%を超えた。こんな調査の結果もあります。

【働く人の支持が高いのですね】
感染リスクを減らせることに加え、
▼ 通勤の時間を減らせることがこんなに楽だとは思わなかった。
▼ WEB会議を利用することで、思った以上に効率的に仕事を進めることができた。
▼ こどもと向き合う時間がとれた。
こうした評価の声があったということです。中には、
▼ 新商品や新サービスについて、オンラインのセミナーを開いたところ、これまで足を運んでくれなかった遠方の顧客も多く参加をしてくれ、WEB会議で商談を進めている。広い会場を使うコストが減ったうえ、新規の顧客開拓にもつながっている。こんな声もあります。

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【時間とかコストとか、いろいろな無駄が省けたということですね】
そうなのです。その点、経営側からも評価の声があがっています。研修所でテレワークをしていたというトヨタ自動車の豊田社長は、
▼ WEB会議になって、膨大な資料を省き、効率化することができた。
▼ 以前は、海外の企業のトップなどに会いたいと思うと、会えるのは例えば1か月先。時間をかけて現地に行ったのが、WEBでの5分、10分の会議だと、話したい時にすぐに話ができることがわかった。
▼ これを機に一気に仕事のやり方を変えることが必要ではないか。このような考えを示しました。

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【テレワーク。大企業では、一気に定着していきそうですね】
方向としては、そう思います。ただ、この2ヵ月で、課題も見えてきました。
まずは、仕事の効率。先ほどの日本生産性本部が行った調査では、
▼ 自宅での勤務で効率が下がった。やや下がった。と答えた人が65%を超えたのです。

【効率が上がったという声もありましたが、全体では、下がったと感じている人が多いのですね。なぜですか?】
同じアンケートで、効率を上げるための課題を聞いているのですが、最も多かったのは、
▼ 職場にいかないと閲覧できない資料がある。ネット上で共有化することが必要だ。という点でした。その他にも、
▼ 通信環境の整備 
▼ 部屋や机、いすなど物理的な環境の整備
▼ セキュリティ対策
▼ 決済のデジタル化を進める
といった声が上がりました。決済手続きがデジタル化していないと、ハンコをもらうために会社に行かなければいけなくなるのです。

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その他にも、働く側からは、
▼ 光熱費などの出費が増えた。
▼ 小さい子どもがいると、仕事に集中できない。 
▼ 孤独感を感じる。といった声。
管理職の側からも
▼ 部下の仕事をどう評価していいかわからない。
▼ きめ細かな指導が必要な新入社員や若手社員の育成が難しい。
▼ チームワークのためには、顔を合わせることも必要
こんな声もあがっています。

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【様々な課題も見えてきていますね。どうしたらいいのでしょうか?】
在宅勤務を標準にすることを目指す、日立は、対策として
▼ すべての社員に、光熱費などへの補助として、月3000円出すほか、
▼ 一人一人の職務を明確にして、働く時間ではなく成果で評価する制度への移行を急ぐ。
▼ オンラインで健康の相談ができる窓口を設置するといった方針を打ち出しました。
また、自宅で集中しにくい社員のために、自宅近くのサテライトオフィスも引き続き整備することにしています。

【在宅勤務の人が増えると、オフィスの中も、もかわってきそうですね】
そうですね。例えば、ホンダは、在宅勤務を推奨する一方、オフィスでの3密を避けるために
▼ 社員が座る机やいすの間隔をあけたり、ついたてをたてたりする。
▼ 会議室に入れる人数の上限を決める。
▼ 一定以上の社員が集まらなければいけない日は、会議室などにも分散して作業をする。
こうした対策を進めています。

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この他、企業の中には、在宅勤務で無駄なスペースがでてきたことで、経費を減らすために
▼ オフィスを小さくしたり、
▼ あいたスペースを他の企業に貸し出したりする。
▼ あるいは、郊外に移転をする。といった動きも出始めています。
今後は、地方に住みながら都心の会社に勤める。そんな働き方が広がるかもしれません。

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【働き方。大きく変わりそうですね】
はい。ただ、「直接会ってコミュニケーションをとること」の大事さも、今回、改めて認識された面があります。テレワークと出社して働くことを、うまく組み合わせて働く。そんな働き方が主流になっていくのではないかと思います。
その上で、今回、中小企業だけでなく、多くの非正規社員の人たちからも、例えばセキュリティ上資料やパソコンを持ち出せないといった理由で在宅勤務を認められなかったという声が上がっています。第2波、第3波に備えて、感染リスクを減らすために、こうした人たちが在宅勤務をできる態勢をどう支援してくのかも、大きな課題です。

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緊急事態宣言が解除された今、様々な課題の解決に向け、取り組みを急ぐことが求められると思います。

(今井 純子 解説委員)

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