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「新型コロナウイルス対策 国民の意識は」(くらし☆解説)

曽我 英弘  解説委員

新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言は5月14日、39の県で解除された。感染の勢いは一時より落ち着きがみられる一方で、気の緩みや流行の第2波も懸念される中、国民は現状と今後をどう見ているのか。5月のNHKの世論調査をもとに考える。

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【内閣支持率】

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5月の安倍内閣の支持率は「支持する」と答えた人は4月より2ポイント下がって37%、「支持しない」は逆に7ポイント上がって45%となった。一方で「わからない、無回答」は5ポイント減った(18%)。「支持しない」が「支持する」を上回るのは「森友・加計問題」をめぐり国会などで激しい議論となっていた2018年6月以来のこと。
「支持しない」が増えた背景はとして考えられるのは、新型コロナウイルスをめぐる政府の対応と、国会で与野党が鋭く対立した検察庁法の改正案だ。

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このうち新型コロナをめぐる政府の対応を「評価しない」と答えた人は53%に上った。(「評価する」44%)。また内閣を「支持しない」理由として「実行力がない」をあげた人は、国内で最初に感染が確認された1月以降上昇傾向にあり、5月は24%になった。
また検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案は今国会での成立が見送られたが、週末の時点で「反対」と答えた人が62%と「賛成(17%)」を大きく上回った。
政府は繰り返し否定してきたが「政治の介入により恣意的な人事が可能になるのではないか」という批判や、コロナ対応の最中になぜ成立を急ぐのかという疑問も、内閣を「支持しない」と答えた人が増えた一因とみられる。

【緊急事態宣言解除の評価】
東京、大阪など7道府県を対象に宣言が最初に出されたのは、1か月半前の4月7日。
その後対象が全国に広げられたが、新規感染者数が低い水準に抑えられている39県が5月末の期限を待たずに解除の対象となった。

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宣言解除の評価について聞いたところ、「適切なタイミングだ」は36%、「早すぎた」は48%、「遅すぎた」は7%となった。
一方で東京、大阪など8都道府県は宣言が継続されている。期限となっている5月末までにすべての都道府県で解除できる状況になると思うか聞いたところ、「そう思う」は22%、「そうは思わない」は69%となった。
政府は、解除の基準として人口10万人当たりの1週間の新規感染者数が0.5人程度以下となることなどを挙げ、5月21日をめどに改めて解除の可否を判断することにしている。ただ、14日の宣言の解除が「早すぎた」と答えた人が5割近くいたことからも、人口が集中する地域での解除には慎重な見方もうかがえる。

【生活の不安】

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今回感染拡大によって生活にどの程度不安を感じているかどうか聞いたところ、「大いに」、「ある程度不安を感じている」人は83%、「あまり」「まったく不安は感じていない」人は15%となった。
不安解消に向けて今後は、東京や大阪などでも宣言が解除されて国全体で社会・経済活動が本格的に回復すること。それと並行して医療提供とPCR検査などの体制強化が何より重要だ。

【一律10万円給付への変更】

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社会・経済活動が本格的に再開するまでの生活支援として、すべての国民に1人あたり給付されることになった10万円。先に成立した補正予算で政府が柱のひとつに位置付けた。
一度は閣議決定していた世帯主の月収が一定水準まで落ち込んだ世帯に限って1世帯当たり30万円を給付することを取りやめて実施することになった。
この決定が適切だったと思うか聞いたところ、「適切だ」は61%、「適切ではなかった」は26%だった。
当初の案には、対象が限られ、金額も少ないなどといった批判や疑問が出ていただけに、方針を見直したことは肯定的な評価につながっているとみられる。

【PCR検査 相談目安見直し】
経済と並んで生活の安心にとって重要なのが医療や検査体制だ。
中でもPCR検査の件数は、諸外国に比べて著しく少ないまま。そうした中、政府は5月になってPCR検査を受診すべきかどうかの相談の目安を見直した。

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具体的には「37度5分以上の発熱が4日以上続く場合」などとした内容を改め、「息苦しさや高熱などの症状がある場合」などとした。
見直しによって検査が受けやすくなると思うかどうか聞いたところ、「受けやすくなる」は50%、「受けやすくはならない」は37%となった。
安倍総理大臣も記者会見で「目詰まりがあった」と現状の不備を認めている。自分自身はもとより、家族や職場の同僚に感染が見つかれば影響も大きいだけに、体調に異変を感じたら速やかに検査が受けられるようにならなければ、生活への不安もなかなかなくならないのではないか。

【9月入学】
宣言解除に伴って子どもたちの学校が再開されつつあるが、一方で9月入学という言葉もよく聞くようになった。

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9月入学に賛成か反対か聞いたところ、「賛成」は41%、「反対」は37%と拮抗する一方で、「わからない、無回答」は22%と2割を超えた。また年代別では「賛成」と答えた人が、18歳から40台で半数近くに上る一方で、70歳以上では3割余りと低くなった。
9月入学の検討はこれまでも行われてきたが、あくまで大学に限っての話。秋入学が多い欧米と足並みをそろえて留学を促そうというのが主な目的だった。それが今回は、休校の長期化による子供たちの授業時間を確保するため、大学に限らず、小中高校などで導入できないかという議論が起きている。
安倍総理大臣は「有力な選択肢の一つだ」と述べたほか、積極的に支持する知事がいる一方で、教育界にとどまらず社会全体に影響を及ぼす可能性もある。政府の最終的な結論がどうなるのか現時点では見通せないが、質の高い学習の機会をどう確保するかという点を最優先に検討を進めて欲しい。

今回、緊急事態宣言が解除された住民などからは歓迎ばかりでなく、不安や戸惑いも出ている。また宣言が続く東京や大阪などでも解除を待たずに、人出が増える兆しが見えつつある。気の緩みによって再び感染が拡大することを阻止し、流行の第2波に備えるには国民の理解と協力が不可欠なだけに、政治への信頼、科学的な根拠に基づいた十分な説明が一層重要になる。

(曽我 英弘 解説)

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