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「新型肺炎 東京2020 広がるか?テレワーク」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

きょうは、新しい働き方。テレワークについて、今井純子解説委員です。

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【テレワークというのは、自宅などで仕事をすることですよね】

そうですね。今、パソコンひとつでできる仕事が増えています。そうした仕事を、会社には行かず、自宅での在宅勤務、あるいは、自宅に近い場所にある専門の企業が運営している「サテライトオフィス」に行って仕事をするといった働き方です。
最近では、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、
▼ 大手複合機器メーカーのリコーが、仕事で中国や香港地域に滞在して帰国した社員に対して、14日間は、業務上可能であれば、テレワークをするよう求めることを決めましたほか、
▼ 楽天は、社員本人だけでなく、同居している家族が、中国に滞在して帰国した場合も、14日間、その社員を在宅勤務にすることを決めました。楽天は、それだけでなく、妊娠中の社員や喘息などの持病を持っている社員が希望して、上司が承認をすれば、在宅勤務を認めることにしました。
ほかにも、在宅勤務を社員に認める企業が次々出てきています。

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【テレワークで感染拡大を防ごうというのですね】

そうですね。もともと、テレワークに力を入れてきたため、こうした事態に直面してスムーズに対応できたという企業もあります。

【もともとテレワークに取り組んでいる企業は多いのですか?】

総務省の調査では、20%近い企業が導入していると答えています。
きっかけは、東京オリンピック・パラリンピックです。都心の電車は、通勤ラッシュで混み合いますが、大会の期間中は(平日が19日あります)、さらに大勢の観客が訪れて大変な混雑、混乱が予想されます。そこで、政府と東京都が、少しでも混雑を和らげようと、企業に対して、大会期間中、テレワークに取り組むよう呼びかけているのです。

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先進的に取り組んでいる企業を紹介したいと思います。
ひとつは、先ほども触れたリコーです。オリンピックの期間中、大田区内にある本社を閉鎖する方針を決めています。

【本社の閉鎖ですか?】

はい。製品の開発実験など、どうしても会社でやらなければいけない仕事を除いて、およそ2000人の社員のほとんどが、2週間、自宅あるいは、会社と契約しているサテライトオフィスでテレワークをすることになります。

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この1年、そこに向けて、試験を繰り返していて、先月も、多くの社員が3日間のテレワークに臨みました。写真は、自宅で、社内の会議に参加した社員の様子です。

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夏には2週間本社が閉鎖されますので、テレワークでの会議も必要になってくる。ということで、今回の試験では、テレビ会議に取り組んだということです。パソコンはきちんとセキュリティ対策がとられていて、お客さんとは携帯電話でやりとりをしているということです。

【それにしても、本社を2週間閉鎖するというのは、思い切った取り組みですね】

この会社では、もともと働き方改革の一環としてテレワークの制度を整えてきて、今では、誰もが1か月に10日間テレワークができる制度になっています。ですが、実際には、「子育てや介護を抱えている一部の社員以外は、取りづらい」「会社に行くことが当たり前で、テレワークには抵抗がある」という声があったそうです。そこで、東京大会という機会に、思い切って全社で一斉に取り組もうということになったのです。

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試験を繰り返す中で、初めてテレワークをした社員からは、
▼ 話しかけられたリ電話がかかってきたりしないので、仕事に集中できた。
▼ 必要な時には、チャットなどで同僚に相談できるので、孤独感もなかった。
▼ 通勤の苦痛がなく、
▼ 家族と一緒にご飯が食べられたり、ジムに通えたりと、家族との時間や自分の時間がとれた。
と、前向きな声が多くあがったというのです。

【前向きな声ばかりだったのですか?】

当然、課題の声もあがっています。例えば、
▼ 家族になかなか理解してもらえない。(本番は夏休み中なので、おこさんが家にいるので心配だという声も)
▼ 膨大な資料が必要な決算のとりまとめなどの作業をどう進めるか。
▼ 部下が仕事をしているかなど、管理職の不安をどう取り除くか。
こうした課題もあり、今後検討していくとしています。その上で、全体としては、
▼ 社員の満足度も高いこと。そして、
▼ 大学生の関心が高く、エンジニアなどの採用にアピールになること。
などから、東京大会の後も、希望する社員がテレワークできるよう、全社的に定着させていきたい考えです。

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【社員だけでなく、会社も前向きなのですね】

さらに進んだ取り組みをしている企業もあります。ソフトウェアの開発をてがけるシックス・アパートという会社です。社員はおよそ30名で、本社は都内にあるのですが、写真をみると、がらがらです。社員の働き方も・・・

【いろいろなところで仕事をしていますね】

はい。この会社。制度上、どこで、いつ働いてもいいことになっています。ですから、
▼ リゾート地で遊ぶ合間に仕事をする(車の中で仕事をしています)。
▼ カフェでこどもと一緒に仕事をする。
▼ 帰省先(秋田県)で仕事をする。
こうした働き方は当たり前になっているといいます。
ぼかにも、介護で親に付き添って病院に行き、待ち時間に仕事をする社員もいます。都心から離れた地域に住んでいる社員も多く、中には、もともと長野県に住んでいる社員を採用したケースもあるそうです。

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【なぜ、そこまで徹底しているのですか?】

きっかけは、東日本大震災でした。夏の節電を乗り切るために、週一回のテレワークに取り組んだところ、社員に好評で、その後取り組みを進め、2016年から今のスタイルにしたということです。オフィスを小さくして経費が4分の1程度に削減できた効果もあり、社員には、働く環境を整えるために月1万5000円のテレワーク手当も出しています。システムの開発だけでなく、テレビ会議システムを使って商談をすることもあるそうです。
会社は、この制度があるから、各地の優秀な社員を採用できるとしていて、これは、逆からみると、過疎化対策につながる働き方と言うこともできると思います。

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【でも、テレワークではできない仕事もありますよね】

もちろんその通りで、総務省の調査では、テレワークを導入しない理由として70%余りの企業が、「テレワークに適した仕事がない」という点を挙げています。ただ、先ほども触れたように、営業の社員がテレビ会議で商談をする。あるいは、仕事先から自宅に直接戻って報告書を書く。企画書を書くというように、考えると、時折でもテレワークでできる仕事はあるかもしれませんね。
もともとは「どこでも、いつでも働けるようになる」社会の実現に向けた、働き方改革のために取り組みが始まったテレワークですが、冒頭で触れたように、感染症対策として。さらに、台風で電車が計画運休になった時など災害が起きた時にも、社員の安全・安心を守りながら、事業を継続する手段としても、改めて注目されています。

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東京大会の時だけでなく、その後も新しい時代の働き方として、広がっていくのではないかと、思っています。

(今井 純子 解説委員)

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