NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「『日韓』『桜を見る会』 国民の視線は?」(くらし☆解説)

太田 真嗣  解説委員

12月のNHKの世論調査がまとまりました。臨時国会は9日に閉会しましたが、いま、内外の諸課題について、国民はどう見ているか。この国会を振り返りながら考えます。

k191210_01.jpg

≪安倍内閣の支持率≫
今月の調査は、今月6日から8日までの3日間で実施しました。

k191210_02.jpg

安倍内閣の支持率は、「支持する」が前の月より2ポイント下がって45%。「支持しない」は、逆に2ポイント上がって37%で、依然として「支持する」が上回っていますが、「支持しない」との差が、ちょっと縮まりました。
内閣支持の底堅さは感じるものの、国会召集前の今年9月の調査からですと、「支持」と「不支持」の差は7ポイント縮まった計算ですから、安倍総理大臣にとって、この国会は、決して『楽な国会』ではありませんでした。

k191210_03.jpg

内閣とすれば、この国会で、▽日米の新たな貿易協定が承認されましたし、▽政府が提出した法案も大半が成立し、成果は上げました。
しかし、▼いわゆる「政治とカネ」の問題で閣僚が相次いで辞任したほか、▼来年度から予定していた、大学入学共通テストの英語の民間試験の導入は延期せざるをえませんでした。さらに、国会の中盤以降は、▼総理主催の「桜を見る会」のあり方をめぐり、野党の厳しい追及を受けました。

≪“桜を見る会” 首相の説明「納得できる?」≫

k191210_05.jpg

今回の調査で、桜を見る会について、「安倍総理の説明に納得できるかどうか」を聞いたところ、「大いに納得できる」は、わずか2%、「ある程度納得できる」は15%です。これに対し、「あまり納得できない」は30%、「まったく納得できない」は41%に上っています。与野党の支持別にみても、野党支持層だけでなく、与党の支持層でも厳しい評価です。

k191210_06.jpg

桜を見る会をめぐっては、招待者の選考基準が明確でないといった批判が出ています。政府は、「招待者の名簿は、『保存期間が1年未満』で、電子データとともに全て廃棄した」としています。ただ、今回の結果を見ると、とても、それで国民の多くが納得しているとは言えず、政府の説明責任が問われています。

≪桜を見る会 「再開の是非は?」≫
政府は、とりあえず来年の実施は中止した上で、▽招待基準を明確にしたり、▽参加人数を見直したりして、「全般的に見直す」としています。

k191210_07.jpg

会自体を廃止する考えはないということですが、今回の調査で、その再開の是非を聞いたところ、「再開してもよい」は33%。それに対し、「廃止すべき」は53%と半数を超えました。参考までに、先ほどの「総理の説明に納得できるかどうか」の結果を縦軸にして見てみますと、やはり、「説明に納得できない」人の中には、「廃止すべき」という声が強いのがわかります。
「桜を見る会」は、昭和27年から続いてきたもので、民主党政権時も含め、歴代政権が、当たり前のように引き継いできました。問題の根っ子は、時代と共に、国民の『公金への意識』が変化し、『政治の慣習』とのギャップが大きくなっていたのに、政治家やその関係者が、それに気付けなかったところにあります。改めて、会の趣旨や必要性をしっかり検討し、国民の納得を得るのはもちろんですが、これを機に、他にもそういうものがないか、きちんと点検する必要があります。

≪各党支持率 野党の対応≫
このように、安倍内閣にとって、決して“楽な国会”ではありませんでしたが、では、「政府を追及した野党が評価を上げたのか」というと、必ずしもそうはならないのが、いまの野党の苦しいところです。

k191210_08.jpg

今回の調査の各党の支持率を見ますと、野党側は、第1党の立憲民主党をはじめ、軒並み厳しい結果です。巨大与党に対抗するため、立憲民主党などは、統一会派を組んで、この国会に臨みました。しかし、全体的にみれば、野党の支持率は低下傾向で、その分、いわゆる「無党派層」が増えた形となっており、かえって、『有権者の政党離れ』が進んだ印象です。
野党の支持率が低迷している理由は、端的に言って、いまの政権と違う、「自分達はこれをやるんだ」という『メッセージ』が、なかなか伝わってこない。そして、それを実現できると思ってもらえる『体制』を描けていないところだと思います。

k191210_11.jpg

立憲民主党の枝野代表は、先週、国民民主、社民両党の党首らに合流を呼びかけました。まずは、「政権交代可能な、『体制』を整えたい」ということでしょうが、難しいのは、安倍政権に対抗しうる、『政策の軸』を明確に示せるかどうか。各党の間には、憲法改正や原子力政策で違いもあります。
こうした動きに対し、与党からは、「顔ぶれからしても、元の民進党が復活するように見える」という声が聞かれます。今回の動きも、国民から『選挙を意識した離合集散』と受け取られるようであれば、新党が期待を集めるのは難しいでしょう。

年明けの来月には、再び、通常国会が始まります。政府・与野党とも、それまでに、しっかり体制の見直しを行い、次の国会は、充実した政策議論が交わされる国会にしなければなりません。

≪“日韓” GSOMIA維持で「関係改善?」≫
一方で、国会の会期中には、国際社会・外交の分野でも様々な動きがありました。

k191210_12.jpg

このうち日本に直接関係する話では、韓国・ムン政権が、先月22日、日韓の間の軍事情報包括保護協定=GSOMIAの終了を停止し、維持することを決めました。

k191210_13.jpg

そこで、今回の調査で、これをきっかけに、日韓関係が改善に向かうと思うかどうかを聞いたところ、「改善に向かうと思う」は16%、だったのに対し、「向かうとは思わない」は62%。国民もなかなか厳しいと感じているようです。

≪日韓関係 改善に向けた取り組みは?≫
日本と韓国の間には、このGSOMIAの問題のほか、輸出管理の強化、そして、太平洋戦争中の徴用をめぐる問題などがあります。韓国側は、まず、日本が、韓国への輸出管理の強化を見直すべきだと主張しているのに対し、日本は、両国の関係悪化の根源にあるのは、徴用をめぐる問題で、韓国は、国際法違反の状態を速やかに解消すべきだと主張しています。
そこで、今回の調査で、「日韓関係の改善に向けて、どちらの国が歩み寄るべきだと思うか」を聞いたところ、「日本」は5%、「韓国」が28%で、「日韓両国」が49%、「関係改善をする必要はない」が11%でした。「日本」か「韓国」か、という点では、「韓国」と答えた方が多かった一方で、半数近い人が、双方が歩み寄るべきだと考えています。
これら結果から見えてくるのは、「隣国・韓国との関係改善は、決して簡単ではないが、両政府がもっと努力してほしい」ということだろうと思います。安倍総理は、今月下旬にもムン大統領と日韓首脳会談を行う方向で調整しています。安倍総理には、守るべきはしっかり守ながら、大局に立って、両国の間に再び良好な関係を築いていく。そういった『王道の外交』を期待したいと思います。

(太田 真嗣 解説委員)

キーワード

関連記事