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「ラグビーW杯を楽しもう!」(くらし☆解説)

西川 龍一  解説委員

4年前、強豪南アフリカを破った日本代表。終了間際の大逆転でした。あの感動をもう一度!あと1週間、いよいよラグビーワールドカップが日本で始まります。

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きょうのテーマは、「ラグビーW杯を楽しもう!」。西川龍一解説委員です。
Q1.1週間後、東京スタジアムで行われる日本代表対ロシア代表の試合が開幕戦ですが、そのラグビーワールドカップ、どんな大会なんでしょう?

A1.第1回大会が行われたのは1987年、今回が9回目ですから、サッカーに比べるとそれほど歴史がある大会ではありません。それでも今や、夏のオリンピック、サッカーワールドカップとともに世界3大スポーツイベントと言われる一大スポーツイベントです。
これまでイギリスやニュージーランドなど、ラグビー強豪国と言われる国で行われてきましたが、日本大会は、それ以外の国で初めての開催です。

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Q2.来年は、夏のオリンピック・パラリンピックも東京で行われるわけなんですが、ラグビーワールドカップは、オリンピックにはない魅力があるようですね?

A2.ラグビーワールドカップの魅力は、開催期間の長さと、日本全国を会場に行われることです。試合数は予選から決勝トーナメントまであわせて48試合。44日間にわたって北海道から九州まで全国12会場で熱戦が繰り広げられます。チケットの販売枚数は180万枚です。リオデジャネイロオリンピックの117万の観客数に比べると1.5倍です。海外からチケットを求める人も多く、組織委員会によりますと、50万人以上が海外から観戦に訪れると言うことです。

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Q3.どんな試合が行われるのですか?

A3.参加するのは、3連覇を目指すニュージーランドなど20の国や地域の代表です。試合は5チームが4つのプールに分かれて総当たりで予選を行い、上位2チームが決勝トーナメントに進みます。

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日本代表は、プールA。初戦のロシアのほか、アイルランド、スコットランド、サモアと対戦します。日本は世界ランキング10位。決勝トーナメント進出を果たすには、ランキングでは下位のロシア、サモアを破ったうえで、格上のアイルランド、スコットランドのどちらかにも勝つことです。前回、日本は冒頭の映像の強豪南アフリカに勝ちました。これは、スポーツ史上最大の番狂わせと言われ、競技場の場所にちなんで「ブライトンの奇跡」と呼ばれています。ハリー・ポッターシリーズの原作者、JK・ローリングさんが「こんな話は書けない」とSNSでつぶやいたほど、世界に衝撃と感動を呼びました。あれから4年、監督が代わり、戦術も大きく変わる中で、日本代表は着実に力を付けてきたと評価されているだけに、格上相手にも臆せずどんな試合を見せてくれるのか期待が高まります。

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Q4.せっかく日本で開催されるわけですから、生で見てみたいですよね。チケットはまだ取れるんですか?

A4.残念ながら日本戦はほとんどが売り切れ状態です。組織委員会によりますと、全体でみても先月末には9割方売れたといいます。このうち、交通の便が悪く、発売前には売れ行きが心配された岩手県釜石市の鵜住居スタジアムは、まっさきにチケットが売り切れたということです。
釜石市は、かつて日本選手権7連覇を成し遂げた新日鉄釜石の地元です。ラグビーを通して東日本大震災からの復興を世界にアピールしようと、地元釜石市や新日鉄釜石ラグビー部のOBの方々が尽力してきたことがこうした結果に結びついたと言えます。

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実はチケットが取れなくても、ワールドカップをみんなで楽しむ方法があります。

Q5.どんな方法ですか?

A5.各試合の開催都市に設けられる「ファンゾーン」です。ファンゾーンは、先週金曜日、日本代表と南アフリカの試合の際、東京・調布市に設けられました。ファンゾーンは誰でも無料で入場でき、大型ビジョンで試合のライブ中継が見られるほか、国内外から訪れるファン同士の交流などのイベントも計画されています。公式のファンゾーンは、16設けられ、組織委員会では期間中100万人の来場を見込んでいます。
また、ファンの間でラグビー神社として知られる京都の下鴨神社で3年前に亡くなった元日本代表キャプテン・監督の平尾誠二さんを偲んでパブリックビューイングが行われるなど、各地でパブリックビューイングが計画されています。ちなみにNHKも一部の放送局で大画面のパブリックビューイングを行いますので、こうしたイベントを利用する手もあります。

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一方で、競技場と観戦にはワールドカップならではの規制があるので、注意が必要です。

Q6.どんなことですか?

A6.持ち込み荷物の制限です。国内のラグビー観戦では、これまでほとんど規制がありませんでしたが、ワールドカップでは、セキュリティ上の理由からお酒はもとより、清涼飲料水も含めて飲食物は持ち込み禁止です。折りたたみではない長い傘もだめです。Wi-Fiルーターなども電波を発するために持ち込めないことになっています。

Q7.お酒は飲めないんですか?

A7.ラグビーと言えばビールとも言われています。会場内で販売されているので、その心配はありません。ただ、持ち込み禁止のものが手荷物検査で見つかると、預かってはくれません。組織委員会は、安全確保のための制限なので、手荷物は最小限にしてスムーズに入場できるよう協力して欲しいと話しています。

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会場に入ると、観客席はひいきチームに関係ないため、お互いのサポーターが隣あって応援することになります。これもラグビー文化の一つなんですが、実は今回、日本大会の会場でしかできない取り組みが計画されています。試合前に斉唱される各国の国歌をみんなで歌って、おもてなしをしようという取り組みで、歌詞をカタカナにしてネットに動画を公開しています。元日本代表キャプテンで、大会アンバサダーを務める廣瀬俊朗さんが中心となって始めました。実はラグビー強豪国というのは、例えばフランスとイングランドなど、お互いに侵攻を繰り返した歴史があり、他国の国歌を歌うことは心情的に難しいわけです。歌詞をカタカナにするというのは、外国語教育的には問題かもしれません。しかし、日本ならではのこうした取り組みがラグビーを通した国際交流の輪を広げることにつながれば、ラグビーワールドカップを強豪国以外の地域で行うことの意義を高めることになるのではないでしょうか。
とかくルールが複雑で難しいと思っている人も多いラグビーですが、こんな形で楽しめるのもワールドカップならではです。日本が決勝トーナメントに進めば、初戦はニュージーランドと対戦となる可能性があります。そうなるようしっかり応援したいですね。

(西川 龍一 解説委員)


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