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「来月からどう変わる? 携帯料金」(くらし☆解説)

竹田 忠  解説委員

来月(10月)から携帯電話料金の仕組みが、大きく変わります。
「高くてわかりづらい」と批判されることの多い携帯電話の料金。
本当に安くなるのか?使いやすくなるのか?
担当は竹田忠(たけだ・ただし)解説委員です。

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【 携帯電話の料金は本当に高いし、わかりにくい。
何とかしてほしい!と思っている人は多い筈。来月から、良くなるのか? 】

携帯料金というのは、ザックリ言うと、
業界にもっと競争させて、値下げをさせたい政府と、
少しでも安定した収益を守りたい業界とのせめぎあいで作られています。
特に今回は、政府が法律を改正してまで新ルールを作って
料金体系にメスを入れようとしている。

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たとえば、この画像は、発表されたばかりのiPhoneの新機種。
日本ではスマホのシェアトップがiPhoneなので、
新機種が出るたびにニュースになるが、
この新機種も、来月以降は新ルールに沿った料金プランで販売しないといけない。

【 その新ルールというのは、具体的にどういうもの? 】

最大の狙いは、携帯電話料金の、いわゆる「2年縛り」を厳しく制限すること。

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2年縛りというのは、2年以上、契約を続けることを条件に
通信料金と端末をセットで割り引くというもの。
そして、途中で解約しようとすると、解約料として高い違約金を取る。
この違約金の高い壁が、顧客を囲い込んでいる。
そこで、この2年縛りを制限するために、
セット割引と、違約金、この両方について新たな規制をします。

【 セット割引きは、セットで値段を安くして
買いやすくするのが狙い。利用者にとっては、ありがたいのでは? 】

確かにそういう面もある。しかし、問題もあるわけです。
たとえばこの例でみてみます。

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2年間で端末と通信料、合わせて24万円かかる、という場合。
この場合、本来の端末代金は12万円だったとします。
それが、半額の6万円に割り引かれた。
では、この割り引いた後の6万円分の穴は、どうやって埋めるのか?
つまり、値引きの原資はどうなっているのか?
それは結局、その分を通信料金で払っているのではないかと。
つまり、端末代金を安くする分、それだけ通信料金が割高に設定されていて、
この場合だと、本来の12万円が18万円になって、
これが通信料金の高止まりになっているのではないか?
政府はそう見ているわけです。
なので、もうこのセット割引は、来月からは禁止です。
通信料金と端末代と、それぞれ完全に分離して
別々の値段で売ってくださいと、求めているわけです。

【 利用者にとって、どちらの方が得なのか? 】

例えば最初の2年間だけを見てみると、
完全分離でも、セット割引でも、
払うお金はトータルで同じ24万円で、負担は同じです。

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ところが、その後、契約を更新して長く続けた場合どうなるか?
セット割引を利用した方は、すでに端末の代金を払い終わった後も、
高い通信料金がベースとなっていて、割高な料金を払い続ける、
ということになるのではないか?
これでは同じ端末を大事に長く使っている人ほど、不利になってしまう。
そうならないように、最初から完全分離しておけば、
通信料金も適正な負担に抑えることができるはず。
それが、政府の考えなんです。

【 違約金の引き下げについては? 】

2年縛りをなぜ“縛り”というのか?
それは、この違約金で縛っているから。
2年契約の途中で、よその電話会社に乗り換えようとすると、
特定の期間以外は、9500円の違約金を払わされることになる。
そこで、来月からは、この違約金を、
およそ10分の1の1000円以下に引き下げるよう規制します。

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これで、一気に壁が低くなって、他社への乗り換えがしやすくなる。
それに2年縛りの意味そのものも薄れてくる。
事実、ソフトバンクは、この新ルールを受ける形で、
先日、大手では初めて2年縛りを廃止すると、発表しました。

【 結局、来月から携帯料金はどう変わるのか? 】

まとめると、こうなります。

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基本的には、
〇通信料金は、今より安く
〇端末代は、逆に今より高く、なるとみられます。
〇そして、電話会社を乗り換える際の違約金は大幅に安くなる、
ということになります。

また、端末代と通信料金が完全分離で明確化されますので、
よそと比較がしやすくなって
値下げ圧力が強まることも期待されます。

ただ一点、この端末代金については
早くも、新手の対抗策が業界から出始めています。
というのも、セット割引が禁止されると、高価格な端末は、
売れにくくなるおそれあります。
(事実、今、携帯ショップの中には、新ルールを前に、
最後のセット割引と銘打って、一括1円のような、
過激な売り込みをしている所があります)

それを避けるために、
新たに、端末だけの長期の分割払いと下取りを組み合わせて
事実上、大幅な値引きをして、
新たな囲い込みを目指すとみられるプランが出始めました。
政府はルールの穴をつかれた形で、
今後も政府と業界の攻防戦は続きそうです。

【 新たに楽天がこの業界に参入する話しは、どう影響するのか? 】

楽天は、すでに楽天モバイルのブランドで
いわゆる格安スマホなどのサービスを行っています。
これは先行大手から通信回線を借りて、サービスをしているんです。
それが、今度からは、自分で通信回線を設置して
ドコモ、au、ソフトバンクに続く、
第4の携帯電話会社として、新規参入するわけです。

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当初は、来月からサービスを開始する予定でしたが、
基地局の建設が大幅に遅れていて、とても10月には間に合わない。
そこで来月からは、とりあえず、無料の試験サービスを、
小規模限定で実施することになりました。

当初は、新ルールの適用開始と、楽天の新規参入が重なって
業界全体に本格的な値下げ競争が起きるのではとみられていたんですが、
本格参入は、最長で来年春ごろまでずれるおそれがあって、
それまで値下げ競争は足踏み状態、ということになりそうです。

【 それでも今回の新ルールで、違約金が1000円ですむようになれば、
  乗り換えが進むのでは? 】

実は、そこは注意が必要です!
今回の新ルールが適用されるのは、
基本的には、あくまで10月以降、新たに契約をした人です。
すでに契約をしている大勢のユーザー、つまり既契約の人たちは、
その時のルールのまま、つまり違約金も、9500円のままでいい、
ということにルール上はなるんです。

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今後は、各電話会社が、自主的に、既に契約している人たちにも
新ルールを適用するかどうか、そこが焦点なんです。
すでに一部の電話会社は、
自社の古いプランから、新プランに移る場合は違約金はとらないことにしています。

顧客の囲い込みではなく、
ユーザーに自由に選んでもらう競争にシフトできるか?
そこが焦点になってきます。

(竹田 忠 解説委員)

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