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「食い止められるか? 『オーナー商法』の被害」(くらし☆解説)

今井 純子  解説委員

「健康器具などのオーナーになれば、高い配当金が得られる」として、消費者からお金を集める、いわゆる「オーナー商法」の被害が後を絶たないことから、国の消費者委員会は、被害を防ぐための法制度などを検討するよう求める「建議」をまとめました。今井解説委員。

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【オーナー商法。どのような商法ですか?】
例えば、こちら。磁気を埋め込んだ治療器(ベスト)ですが、こうしたモノなどを消費者に買わせ、オーナーになってもらう。と同時に、それを消費者に渡すのでなく、事業者が預かって、別の人に貸し出したり運用したりする。そして、その利益の中から、オーナーに、配当や利子を払うという触れ込みの商法です。

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おととしには「磁気治療器のオーナーになれば、年6%の高い配当金が得られる」とうたって、おカネを集めていたジャパンライフという健康機器の販売会社が、経営破綻をして、話題になりました。被害者はおよそ7000人とみられています。

【ほかにもあるのですか?】
はい。時系列が逆になりますが、
▼ 2011年には、「繁殖用の牛のオーナーになれば、その牛が産んだ子牛を買い取る形で、年に3%から4%という利益をオーナーに配当する」と宣伝して、7万人以上の会員から資金を集めていた安愚楽牧場。
▼ そして、去年は、「干し柿やヨーグルトなどの加工食品のオーナーになれば、半年で、10%の利子を加えた金額を払い戻す」と宣伝して、およそ3万人からお金を集めていたケフィア事業振興会という事業者が、いずれも経営破綻しました。

【被害者の数が多いですね】
そうなのです。このオーナー商法。他の悪質な消費者被害と比べても、被害の規模が大きいのが特徴です。特に、一人当たりの被害額を見ますと、数百万円から数千万円と、非常に大きいのです。

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【なぜ、被害が大きいのですか?】
その理由は、オーナー商法の仕組みにあります。
被害者の大半は、年金収入だけでは、この先の生活が不安だというお年寄りです。無料の説明会や無料のエステに誘われて店に足を運んだら勧誘された。あるいは、通販サイトで食品を買ったら、ダイレクトメールが送られてきたというのが、きっかけです。そして、「いつでも販売価格で引き取ります」など、元本は保証。つまり、リスクなしで「銀行に預けるより、高い配当や利子が得られる」という説明をうけます。半信半疑で、少ない額で始めた人も多いのですが、最初のうちは、配当金や利子がきちんと払い込まれます。そこで、安心して、契約額を増やしてしまうのです。いい話だと信じて、友達や知り合いを誘ったというケースも、少なからずあったといいます。

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【はじめに配当や利子が払われると、信じてしまいそうですね】
そうです。でも、実態を見てみますと、いずれも、消費者が買ったはずの商品は、そもそも存在しなかったり、オーナーに対してごく一部だったりする。つまり、レンタルなど事業の実態はほとんどありませんでした。新しいオーナーが増えている間は、その人が払う、いわゆる「商品の購入代金」を、元からいるオーナーの配当や利子に充てていたのです。解約したいという申し出があれば、それにも応じるので、苦情や被害相談もほとんどありません。

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事業者もかなり儲けたはずですが、最終的には、経営に行き詰って配当などの支払いが滞ります。それまで消費者はだまされていたことに気付かないわけです。気付いた段階では、金庫はからっぽ。結局、経営破綻に陥り、被害のおカネはほとんど戻ってきません。先行きに不安を抱えるお年寄りの心理にたくみにつけこんで、老後の蓄えをだましとる、本当に悪質な手口です。

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【これまで、対策はとられてこなかったのですか?】
とられてはいました。1980年代に社会問題になった豊田商事の事件をご記憶の方もいるかと思います。「金の現物を買って会社に預ければ、高い利子を払う」と言われて、多く人が被害にあいました。これがいわばオーナー商法の先駆けです。
この事件をきっかけに、「預託法」という法律ができました。その中に、
▼ 客にウソをつくなどして強引に勧誘することを禁止することや
▼ 国が業務停止命令などの処分を出せることが盛り込まれたのです。

【効果はなかったのですか?】
先ほども言ったように、オーナー商法は、初めは消費者からの苦情がないので、行政の対応は遅れがちになります。その上、業務停止命令を出しても、やり方を変えて事業を続けます。最終的には、警察の捜査が入った事例も多いのですが、立件するのに時間がかかります。その間に、被害が広がってしまっているのです。

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そこで、有識者や消費者の代表でつくる国の消費者委員会が、今の法制度では、悪質な事業者によるオーナー商法の被害を防ぐには限界があるとして、先月末に、消費者庁などに対して、取り締まりを強化することとあわせて、新しい法律を含め、被害を防ぐ対策を改めて検討するよう求める「建議」を出したのです。

【被害を防ぐ対策。どのような内容が考えられるのですか?】
消費者委員会は、例えば、
▼ 事業者に対する参入規制を導入して、国があらかじめ事業者の実態を把握できるようにする。
▼ 元本を保証することは禁止する。
▼ 消費者が買った商品が存在しないといった悪質なケースは、罰則つきで禁止する。
▼ さらに、悪質な事業者について、早い段階で収益を没収して、被害回復に充てる仕組みをつくる。
こうした内容を提案していて、来年2月までに対応状況を報告するよう求めています。

【消費者庁はどう反応しているのですか?】
消費者庁は、オーナー商法はほとんどが、詐欺まがいの悪質なものだとして、警察と連携して、より早い段階で取り締まりできるよう、体制を強化していきたい。その上で、建議を重く受け止め、被害を防ぐための法制度の在り方も真剣に考えていきたいとしています。ぜひ、対策を急いでほしいと思います。

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【対策はぜひとってほしいと思いますが、消費者としても、被害にあわないよう気をつけなければいけませんね】
そうですね。
全国の消費生活センターには、最近でも、ゲームなどのアプリが入ったレンタル用のカード型USBメモリーや、太陽光発電パネル、カード決済端末機など、様々な商品をめぐって、オーナー商法の相談や問い合わせが寄せられています。USBメモリーについては、レンタルの実態がないとして、消費者庁が、ウィルという事業者に対して、2度にわたり業務停止命令を出しています。

【これは気を付けた方がいいですね】
ぜひ、気を付けていただきたいと思います。その上で、そもそも、リスクなしで確実に高い配当や利子が得られるという、もうけ話は、世の中にほとんどありません。特に、オーナー商法については、消費者庁が、ほとんどが詐欺まがいだと話しています。まずは、疑うこと。そして、一人で決めずに、家族などに相談することが大事です。困ったら、身近な消費生活センターに相談をしてください。全国共通の電話番号188で、窓口につながる仕組みになっています。事業者に聞いても「心配ない」としか言いません。

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事業者に聞くのではなく、契約をする前に、第三者に相談することが大事だと思います。

(今井 純子 解説委員)

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